カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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41 エレアの爆死配信会場はここ!

「というわけで、始まりましたよ店長」

「本当にやるのか……」

 

 夜、すでに店は閉店し、カードショップ「デュエリスト」には俺とエレアしかいない。

 メカシィも退店したしな。

 そうして俺達がどこにいるかと言えば、二階のリビングである。

 そこには配信機材と、俺とエレア。

 それから……うず高く積まれたボックスの山。

 

「こんばんは、カードショップ“デュエリスト”店員のエレアです。今日はパックの開封配信を行って逝きますよー」

 

 今逝かなかった?

 大丈夫?

 

 ともかく。

 何をしているのかといえば単純、エレアの生配信に俺が参加させられているのである。

 

『こんエレー』

『店長いるじゃん! もっと店長映して!』

『店エレてぇてぇ』

 

 さすがの賑い、伊達に銀盾所有の人気配信者ではない。

 それにしては、俺に対するコメントがやたら多いけれど。

 まぁ、配信に顔を出さない人間がいたら、そこに意識が向くのは自然なことなんだろう。

 ともあれ。

 

「ついにこのときが来ましたね、店長」

「お、おう。そうだな」

「もっと乗ってくださいよー! ほら観てください!」

 

 そう言って、エレアが積まれたボックスの山を一つ、カメラに掲げて見せる。

 

「<ミチル>ちゃんのパックが再販したんですよ! もっと喜びましょう」

「いや、俺は別にそのパック必要としてないし……」

「う、裏切り者ー! 店長もファイターなんだから<ミチル>ちゃんをすこってください!」

 

 すこるって何だよ。

 とか思っていると、あるコメントが目に付く。

 

『エレアの爆死配信はここ!』

 

 ド直球に爆死を期待されている……。

 まぁ、エレアってなぜか配信で爆死してること多いしな。

 フラグの回収が上手いからだろうか。

 

「むきー、これは許せません。私は今日こそ勝利して、フラグ建築士の汚名を返上します。そのために店長をサモンしたのですから」

「すごい、話が何一つ繋がってない」

「そうだ、聞いて下さいよ皆さん、この裏切り者……もとい店長、箱一つで<ミチル>ちゃんを引き当てたんですよ?」

 

『は?』

『は?』

『は?』

 

 うお、すごい数の怨嗟の声。

 しょうがないだろ、エレアの激推に圧されて買ったら出たんだから。

 

「ともあれ、再販に合わせて1カートン買い足したことで、手に入った<ミチル>ちゃんはこれで二枚。このボックス達は、残念ながら追加の1カートンを購入できなかったことで前回と同じく、各地を駆け巡って手に入れてきたものになります」

「再販だからか、入荷する数が前回より少なかったんだよな」

 

 それに、うちの店の常連共はことごとく<ミチル>を引けなかったからな。

 引けたのは刑事さんだけだ。

 でも刑事さんは別に<ミチル>が目的ではなかったので、物欲センサーの存在を俺は感じざるを得ないな。

 なお、目的ではないけれど当たると嬉しいカードに違いないので、刑事さんが<ミチル>を手放すことはなかった。

 

 というわけで、再入荷したカートンは、うち一つがエレアの手に。

 残りは他の常連客の手に渡った。

 俺? 俺が買ったのは通販だから、店のカートンには手を付けてないよ。

 果たして、今度は誰の手に<ミチル>が渡るんだろうな。

 

 話が大分それた。

 今回は俺という触媒を交えての開封配信である。

 果たして、本当に俺が触媒になるかは知らないが。

 

「では、一箱目!」

「たしか、箱に一枚シークレット枠があって、1カートンに1枚そのシークレット枠が<ミチル>になってるボックスがあるんだよな」

「ですね、つまりシークレットが出たらその箱は残念箱……!」

 

 前世でもそうだが、パックには通常のレアリティの他に、特殊仕様のカードが収録している場合がある。

 それがいわゆる、シークレットレア。

 この世界ではレアカードとは、一枚数百万する高額カードのことを指すのでシークレット枠をシークレットレアと呼ぶことはない。

 純粋にシークレットと呼ばれるのがほとんどだな。

 

 そしてこのシークレット、<ミチル>以外のカードはあくまで別レアリティで収録されてるカードのシークレットバージョンだ。

 しかし、<ミチル>だけはこのシークレット枠からしか出てこない。

 現実でも、カートンに1枚しかないカードってのはたまにあるけど、大抵はあくまで別レアリティのシークレットバージョンだ。

 何たる鬼畜封入率。

 ……まぁ、この世界ならそういうことはよくあるんだけど、前世ですらたまにそういうことがあるのって、よくないと俺は思いますね!

 

 話がそれた。

 俺が適当なことを考えている間にも、エレアはパックを開封していく。

 パックを開封する時は、カードを傷つけないようハサミを使って丁寧に開封しようね!

 

「ん、これは……来ましたよ! シークレット加工!」

「確か<ミチル>は素でシークレット加工されてるんだよな。で、このカード枠は……<ミチル>と同じか」

「はい! これは勝ちましたね」

 

 あ、フラグが立った。

 ちなみにカード枠っていうのは、カードの縁の装飾のことだな。

 遊戯王でいうと、モンスターが茶色……でいいのか、アレは? で、魔法が緑、罠が赤みたいな感じの。

 イグニッションファイトでもモンスターカードと、カウンターエフェクトカードで種類が違う。

 そして、モンスターの中にも枠の色が違うカードがある。

 シンクロとエクシーズみたいな。

 で、今回は<ミチル>と同じ枠なのでエレアは勝ちを確信したのだが――

 

「にゃああああ! <ケミスト・ミーシャ>ちゃんですうう!」

「残念……」

 

 案の定、<ミチル>ではなかった。

 <ケミスト・ミーシャ>は錬金術師の美少女モンスターカードだ。

 何とかのアトリエとかにでてきそうな感じ。

 

「でも……これはこれで可愛いです! あと、シークレットの<ミーシャ>ちゃんは持ってなかったのでまだ致命傷ではありません」

「……既に最低5カートンは買ってる計算になるのに、一枚も持ってないシークレットがあったのか?」

「ぐふ……!」

 

『エレアが死んだ!』

『この人でなし!』

 

 多分自爆だと思う……!

 倒れ込んだエレアが、その後何とか起き上がり、開封は続いていく。

 しかし……

 

「あああ! 枠の時点で違います!」

 

 そのことごとくが、

 

「また<ミーシャ>ちゃんですううう!」

 

 ハズレ、ハズレ、またハズレ。

 1カートン分あったボックスは、みるみると開封されていく。

 最初のうちは爆死に盛り上がっていた視聴者達も、オイオイオイって感じの空気になっていく。

 もはやエレアは暴走していた。

 その表情は、どこか狂気的な笑みに歪んでいる――

 

「落ち着けエレア! これ以上はダメだ! エレアが持たない!」

「離してください店長! まだ、まだ1ボックス残ってます。あそこに<ミチル>ちゃんがいるかもしれないんです!」

 

『店エレてぇてぇ』

『店エレてぇてぇ』

『店エレてぇてぇ』

 

 君たちはこれすら店エレてぇてぇになるのか!?

 鍛えられすぎている視聴者に戦慄しつつも、俺はある提案をする。

 

「……エレア、最後のボックスは俺が開封する」

「はっ……それです!」

 

 どうして思いつかなかったのかと、エレアは手を叩いて俺を指さした。

 俺からすると、この配信の主役はエレアだろうと思って今まで黙っていたのだが。

 後、そもそもボックスは既に購入されている、誰が開封しても中身は同じだから意味がないだろという考えもあった。

 

 しかし、ここまでエレアが暴走してしまったなら、多少の願掛けも必要だろう。

 かくして、最後の1ボックスは俺の手に委ねられた。

 

 固唾をのんで、エレアと視聴者が見守る中、パックを開封していく。

 緊張の瞬間。

 

「……! シークレット枠だ」

「……ごくり」

 

 俺は、パックの中にシークレット枠が入っていることに気がつく。

 カードの枠は……<ミチル>と同じ。

 最低限の条件はクリア。

 後は、このカードを詳らかにするだけ。

 

 言葉無く、俺とエレアは視線を交わしてうなずきあった。

 『店エレてぇてぇ』で埋まるコメント欄、静まり返った室内。

 そうして、現れたのは――

 

 

「……<ミチル>だ」

 

 

 これまで、散々求めてきたカード、<ミチル>がそこにいた。

 

 ()()()

 

 

「………………<極大古式聖天使(フルエンシェントノヴァ) クリスタル・ミチル>ですけど」

 

 

 俺の「古式聖天使」の、他人の空似シリーズの<ミチル>だが。

 おそらく、いつぞやの<エクレルール>のように無からパックに入り込んだのだろう。

 というわけで、出てきたのは<ミチル>ではあるが、目当ての<ミチル>ではなかった。

 しかし<極大古式聖天使>て。

 俺の一番強い古式聖天使モンスターが背負う冠だぞ、それは。

 なんなんこの<ミチル>、こわいんですけど。

 

「そ……」

 

 しばしの間、俺が引き当てたカードを見て停止していたエレアが、

 

「そんなの、ありですか――――」

 

 勢いよく、その場に崩れ落ちるのだった。




なお、それはそれとして貴重なので<クリスタル・ミチル>は現在二階リビングに飾ってあります。

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