カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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45 プロファイター水面シズカの裏の顔を追え!

 結局、その後シズカさんとファイトを行い、俺が勝利した。

 俺とシズカさんがファイトした際の通算成績は、シズカさんが僅かに勝率が高い。

 と言ってもこれは、大学時代に散々テーブルでのファイトを重ねたからで。

 基本的にフィールドやイグニスボードを使ったファイトでの勝率は俺のほうが高い。

 そういうファイトは、大抵観客のいる一発勝負だからな。

 

 これは、別に俺だけの話ではない。

 この世界のファイターは、基本的にエージェント畑の人間の方が一発勝負に強く、プロファイター畑の人間の方が平均した勝率が高い。

 まぁ俺の場合は特性上エージェントには絶対になれないし、プロファイターになるにも実力にムラがあるせいでカタログスペックが発揮できなかったりと、とことんエージェントにもプロファイターにも向いていないのだが。

 それもまた、俺がカードショップを開店すると決めた理由の一つなんだよな。

 

 んで、その日はシズカさんと普通に別れて、次の日。

 珍しく刑事さんが店にやってきた。

 雰囲気的に、非番だから遊びに来たのではなく、何かしらネオカードポリスとして用事があったから来たように見えるな。

 

「どうも、刑事さん。ダイアやシズカさんとの呑みは明日のはずだけど」

「ああ、悪いな。……その水面先輩の件で話がある」

 

 声を潜めて、刑事さんはそんなことを言ってくる。

 ふむ、穏やかじゃないな。

 店内に人はいないので、このまま話を聞くことにする。

 もとより、人が少ない時間を狙ってやってきたのだろうから、そこら辺は心配する必要もないが。

 

「店長は、水面先輩がどうしてこの街にやってきたか聞いているか?」

「野暮用……としか聞いていないが。いくらシズカさんとはいえ、女性の用事を踏み込んで聞けるわけ無いだろう」

「……それを水面先輩に面と向かって言ったら、どつかれそうだな」

 

 相変わらず、刑事さんはシズカさんに苦手意識があるな。

 まぁ、シズカさんは見ての通りイケイケな人なので、巻き込まれると調子が狂うことがあるんだろう。

 そこらへんはダイアも似たような感じらしい。

 俺がそういう苦手意識を持っていないのは、単純に付き合いが浅いからだろう。

 ダークファイターと戦っている時のシズカさんはおっかないらしいからな……

 

「その水面先輩なんだが……最近、怪しい連中とやり取りをしているという情報が入ってきててな」

「怪しい連中?」

 

 なんだ、今度はシズカさんが闇落ちするのか。

 強いファイターは一度は悩みを抱えて闇落ちするか、闇落ちしかけることがある。

 これまでそういうことのなかったシズカさんも、ついに闇落ち初体験か……と少し感慨深くなる。

 これで、俺の古い知り合いで闇落ちしかけていないのはダイアだけになったな。

 

「その調査を、店長に手伝ってもらいたいんだ」

「俺に? ……ってことは、シズカさんとやり取りしてる連中がダークファイターだっていう確証はないのか」

 

 なるほど、と頷く。

 刑事さんからのこういう依頼はこれが初めてじゃない。

 仮にもカードショップ店長とはいえ、一般人に依頼することじゃないだろと思うかも知れないが。

 結構有用なのだ、俺が調査を手伝うというのは。

 

 相手がダークファイターであるかどうかの確証がない場合は、俺が関わることで裏取りができるからだ。

 なにせ俺は悪魔のカードに関われない。

 もし俺が本格的に調査しようとしたら、それが悪魔のカード関連の事件なら色々な偶然が重なって調査から遠ざかることになる。

 なので、その事件が悪魔のカード関連かどうかの判別に有効なのだ、俺の特性は。

 炭鉱のカナリアかなにかか。

 とは思うものの、こうやって俺の手を借りないと手が回らないくらい世間には事件が多いので、こんな特性でも役に立つなら大歓迎だ。

 

 まぁ、一つ問題があるとすれば……

 

「……仮に俺が関われたとして、今回は頭が痛くなるタイプの事件じゃなければいいな」

「そうだな……」

 

 もしも俺が関われた場合、大抵その事件はギャグ一歩手前か、ギャグでしかない事件の場合がほとんどなことだ。

 

 

 □□□□□

 

 

 その後、店をエレアにまかせて――美味しいおみやげで手を打ってくれた。シュークリームでも買って帰ろう、エレアの好物だからな――刑事さんと調査に赴く。

 こうして調査するのも慣れたもので、尾行調査もお手の物だ。

 

「んで、シズカさんの様子は……」

「……凄まじく挙動不審だな」

 

 初っ端っから怪しさ全開だった。

 サングラスして、帽子被って。

 どうやら変装してどこかへ向かっているらしい。

 

「おいあれ見ろよ……水面シズカじゃねぇか?」

「噂は本当だったのか……聞いたか? あの店長って、水面シズカと知り合いらしいぜ」

「まぁ、店長もトップクラスのファイターだしな……」

 

 ほら、周りもシズカさんのことに気付いてるし、シズカさんの話題でもちきり……いや大部分俺のことじゃない?

 ここまで俺の存在がこの街にとって大きいとは……というのはさておいて。

 

 怪しげなシズカさん、それを尾行する俺達。

 緊張の一瞬、シズカさんがたどり着いたのは――

 

「……ファイト喫茶?」

 

 ファイト喫茶。

 簡単に言うと、店員がファイターで注文すると食事の他に店員とのファイトが楽しめる喫茶店だ。

 一応コンカフェの一種になるのだが、コンカフェという言葉が生まれるずっと前から存在する、この世界の定番娯楽施設みたいな感じだな。

 中では、店員がモンスターに仮装したりして客を楽しませてくれる。

 中には本物のモンスターが店員をしてる店なんてのもあるらしいぞ。

 

 で、シズカさんが入っていったのは……従者ファイト喫茶だ。

 メイドや執事が接客してくれるファイト喫茶である。

 というか……

 

「レンさんの店じゃないか」

「ああなるほど、水面先輩は大のメイド好きなんだが……イメージが崩れるとか言ってそのことを隠してるからな」

「よく知ってるな?」

「向こうから一方的に語られたんだよ……」

 

 刑事さんが解説してくれた。

 なるほど、それで挙動不審で変装もしてたのか。

 ……でもこの調子だと、シズカさんのメイド好きってバレバレじゃない?

 スマホで調べたら……あ、公然の秘密扱いされてる。

 

「とりあえず……中には入らないほうがいいよな、刑事さん」

「そうだな……これを尾行されてるってバレたら、何されるかわからん」

 

 一応、こういうのは怪しいことをしてる本人が悪いっていうのがこの世界の常識だが――なにせ、放置してると世界の危機に関わりかねないしな――それでも、バレたら文句を言われても仕方がないというのはある。

 

 ともあれ、それからも調査は続く。

 裏路地に入ったと思ったら、隠れた名店として有名なラーメン店に入店するためだったり。

 オタク向けショップの18禁コーナーにこっそり入っていくのを目撃してしまったり。

 色々と怪しい動きはしているのだが、決定的な証拠は見つからないまま時間が過ぎていく。

 

「これは……どっちだ?」

「まだわからん……でもこの流れは、一見ギャグに見えて悪魔のカードに関わっているか、完全にギャグかの二択だ……」

 

 困惑する刑事さん。

 もはやある程度パターンを掴んで、このあとの状況を予測できてしまっている俺。

 

 そして、その答えは人気のない公園にシズカさんが足を踏み入れた時、明らかとなった。

 

「……水面先輩はどこだ?」

「……! おい、アレをみてくれ刑事さん!」

 

 そう言って、俺が指差す先には――

 

 

 宙に浮かぶ円盤と、そこから浴びせられた光によって、アブダクションされるシズカさんの姿があった。

 

 これは、アレだな。

 ……うん。

 

「とりあえず、悪魔のカード関連の事件では、なさそうだな」

「突入するぞ、ついてきてくれ店長」

 

 お、おう。

 まぁ乗りかかった船だ、俺は刑事さんに促されるままUFO的ななにかの元へと急ぐ。

 そうして俺達もまた、光によってキャトられるのだった。

 

 ……これ、今日中に帰れるかなぁ!?




こういうことが毎日のように世界中の何処かでおきているのが、ギャグ寄り日常系ホビーアニメの世界だと思います。
この世界はシリアスな事件もおきますが。
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