カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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47 おかえりなさいませ、ごファイター様

 ある日、俺はレンさんに呼び出された。

 呼び出された場所は、いつだか話題に出た従者ファイト喫茶である。

 これまで度々この店の常連であるエレアから店の話は聞いていたが、実際に入るのは初めてだ。

 

 というか、週イチくらいの頻度で通ってるんだよな。

 可愛いもの好きだし。

 シズカさんにも布教成功するほどだ、オタクの執念恐るべし。

 

 俺が今いるのは、俺の住んでいる地方都市で一番大きな駅の近くにあるビルの前。

 一階がファイト喫茶で、二階より上はマンションになっている。

 こういう立地のマンションってかなり高級だと思うんだけど、なんでその一階がファイト喫茶なんだ? とか思わなくもない。

 とはいえ、このファイト喫茶自体は非常に繁盛している。

 

 理由? それは単純、ファイトしてくれるメイドと執事が強いからだ。

 平均レベルで言えば俺の店の常連客とそう変わらないらしい。

 まぁあの店は、主にダイアが平均値をバグらせているんだが。

 ともあれ、そろそろ予定の時間なので早速店に入る。

 

 すると――

 

「おかえりなさいませ、御主人様ー」

 

 

 ヤトちゃんが、いい感じの笑顔で出迎えてくれた。

 

 

「ぴっ」

「ヤトちゃん? どうしてここに?」

 

 自力で。

 ともあれ、そこにはヤトちゃんがいた。

 可愛らしいメイド姿……いや、色が黒ベースだし所々にパンクっぽい意匠があるな。

 まぁ、どっちにしろフリル盛り盛りで可愛らしい印象は変わらないが。

 

「て、店長!? どうして!?」

「どうしてって……レンさんに会いに来たんだよ。ここを集合場所に指定されたんだ」

「レンさんに!? ……ってことは、レンさんの個人的な客って店長のことだったのね」

 

 思わず赤面して、すごいことになっていたヤトちゃん。

 しかし俺の用事を聞けば、すぐに理由を思い至って冷静になる。

 なんというか、そんなにも俺がこの店にやってくるのが想定外だったんだろうな。

 

 ともかく、入口でやり取りをしていても周りの迷惑になるだけだ。

 どうも、レンさんはこの店の個室を使う予定だったそうで、俺はその個室に案内された。

 んで、色々と事情を聞くことにした。

 

「ここって、レンさんが経営してる店でしょ?」

「そうだな、どこに時間があるんだかわからないけど、この様子なら経営者としても敏腕なのは想像できる」

 

 なんて考えつつ移動しながら、時折すれ違うメイドさんや執事を見る。

 なんというか面識のあるメイドさんや執事がいた。

 具体的に言うと、昔レンさんに闇札機関の本拠地へ案内された時にすれ違った覚えがあるぞ。

 つまり、

 

「だから、ここで働いてるのは全員闇札機関のエージェントなのよね」

「やっぱりか……」

 

 そりゃあ、従業員がやたら強いわけだ。

 秘匿組織とはいえ、機関に所属するエージェントなんだから。

 確か闇札機関には入るための試験があるはずなので、それを突破できる実力者がこの店に集結していることになる。

 

「そもそも、どうしてレンさんはこういう店を?」

「闇札機関って、秘匿組織でしょ? で、所属してるエージェントは十代が多数。帰りが遅かったりして周りに怪しまれると大変なのよ」

「なるほど、その隠れ蓑としてこのファイト喫茶が必要なわけか」

 

 確か、ハクさんはバイトとエージェント機関と、学校のファイトクラブの三足のわらじを履いていたはず。

 無茶じゃね? と思ったけど、バイトとエージェント機関は実質イコールだったわけだ。

 それなら、まぁギリギリなんとかならなくはない……のか?

 

「……で、なんでファイト喫茶なんだ?」

「……趣味じゃないかしら、レンさんの」

 

 まぁ、あのゴスロリ幼女がこういうの好きそうか好きじゃなさそうかでいったら、好きそうだよな。

 よくエレアに着せ替え人形にされてるけど、普通に楽しそうだし。

 

「ちなみに、ヤトちゃんはどうしてここでバイトを? 中学生だけど、いいのか?」

「バイト……っていうと少し違うわね、家の手伝いみたいな感じなのよ、私」

 

 そういえば、ヤトちゃんとハクさんはレンさんの一族に保護されてるんだったな。

 なんでも、自宅もここの二階にあるらしい。

 だからあくまでバイトではなく実家の家業を手伝っているような感じらしい。

 

「ぶっちゃけエージェントになる前は手伝ってなかったし、エージェントになってからはエージェントとして給料が出てるから。ここを手伝う意味ってあんまりないんだけど……」

「ないんだけど?」

「このパンク風メイド服のデザインがよくって、たまに着たくなるのよ」

 

 ああうん、見るからに可愛らしいものな。

 パンク風になってはいるものの、あくまでメイドとしての可愛らしさを維持している。

 エレアが好きそうな衣装だ。

 

「ちなみに、デザインはエレアよ」

「あいつも大概器用だな……」

 

 実際にエレアデザインだった、すごい。

 そういえば、帝国兵時代の軍服は自分で改造してたんだったか。

 まぁ、何でも自分でやらないと、って場所だっただろうからできても不思議ではないのだろう。

 なぜか、天井に半透明のエレアが笑顔でサムズアップしている幻覚が見えたが。

 何にしても、話をしながら俺達は個室に入る。

 

「というわけで、ここで待っててね。今からレンさん呼んでくるから」

「ああ」

「レンさんが何か一品自由に頼んでいいって言ってたわよ、代金は自分持ちだって」

 

 はいこれメニュー、と言われつつ渡されたメニューを眺めながらヤトちゃんを見送る。

 メニューは……なんというか横文字が長くて今どきっぽさを感じる。

 まだ二十代だというのに、こういう今どき感についていけないのは前世でも二十年以上生きていたせいか……?

 

「にしても、レンさんの用事ってなんなんだ?」

 

 わざわざこのファイト喫茶を指定しているあたり、何かしら事件が起きたわけではないだろう。

 事件があったら、直接機関の本部に呼ばれるか俺の店にレンさんが直接やってくる。

 まぁ、ここは話を聞いてみるしかないだろう。

 

 というわけで難解なメニューをなんとか読み解いていると――

 

 

「待たせたな、天の民! 大地の化身たる翠蓮が、いまここに再誕した!」

 

 

 勢いよく、レンさんがやってきた。

 いつも通りのゴスロリ姿だ。

 隣に、身長2m超えの美女、リュウナさんを従えている。

 

「どうも、レンさん。今日は一体何の用事だ?」

「うむ、まぁ色々と頼みがあるのだが……」

 

 そう言いながら、席につくレンさん。

 なんかめっちゃ足をバタバタさせてるな。

 子供かな……子供だった。

 レンさんを見てると、レンさんの年齢がバグってくるからいかんな。

 ともあれレンさんは俺の言葉を一旦制しながら、メニューを開いて俺に促す。

 

「話をする前に……メニューを頼むぞ。天の民よ、我が頼んでいいと伝えたにも関わらず何も頼んでないではないか」

「いや……なんて書いてあるか理解できなくって」

「年上の民め!」

 

 それ、俺のことおじさんって言ってる?

 いやまぁそれは別にいいんだけど。

 前世の年齢を合わせると四十代……とかいい出すような境遇でもないが、それ含めたらおじさんなのは否定できないし。

 実際メニューの横文字には年を感じていたし。

 とりあえず、レンさんに解説を受けて俺はメニューを頼むことにした。

 サンドイッチとサラダのセットだ、そこまで腹は空いてないからな。

 

「では、我は――」

 

 そう言って、レンさんもメニューを頼む。

 

「“コンパクト・エクスプローション・デライト”を頼もうか」

 

 ――なんて?

 

 俺が思わず首をかしげていると、リュウナさんがそれを受けて外に去っていく。

 ああ、リュウナさんも一応従業員って扱いなんだ……

 執事服だし、そんなもんか……

 

「では、一時の微睡みにうつつを抜かした後、ことの本題に切り込むとしようか、天の民よ」

 

 そう言いながら、レンさんは食事をする時に使う紙のエプロンを自分で身にまとうのだった。

 そこはリュウナさん任せじゃないんだな……いないんだから当然だけど。

 

 なお、運ばれてきたレンさんのメニューはお子様ランチだった。




デュエリストの店員でなければ、私はここの店の店員になっていた……血の涙を流しながらエレアはそう語った。

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