カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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49 ロックバーンお嬢様と地属性2m超え美女に足りないものって?

 ロックバーン使いのアロマさん。

 それと同様にファイト喫茶向きじゃないリュウナさんのデッキ。

 それがどんなものかと言えば――

 

「リュウナさんのデッキはあれだな、相手の行動を対策するような動きが多いな」

 

 つまるところは「メタビート」だ。

 地属性ドラゴンを中心として、相手のサモンやエフェクトを無効化するように動く。

 どんな相手にも行動させないことで「対策」を取るデッキだ。

 俺も、ダークファイターを相手している時はこういう動きがメインになるな。

 まぁ、俺の場合は相手に何もさせないから「封殺」というのが正しい表現になるわけだけど。

 流石に、リュウナさんのデッキはそこまで相手のサモンやエフェクトを無効化するわけではないが。

 俺の場合はね、アレだからね、悪いファイター相手だからね。

 良い子は真似してはいけない。

 どっちにしても、ロックバーンデッキと同じく相手にしていてつまらないと思うファイターがいるかもしれないデッキだ。

 

「むぅ……これまで執事としてファイト喫茶に従事してまいりましたが、そういった指摘をされたのはこれが初めてのことでございます」

「従事……といっても、日常的にやってるわけじゃないんだろ?」

「ええ、まぁ……本分はお嬢様の従者でありますから、店のシフトに入るのはあくまで人手が足りない時だけ」

 

 羨ましいことに、この店は闇札機関のエージェントがわんさか働いているから普通は人手に困ることなんてないだろう。

 ダークファイト組織が暴れているとかで、そっちに人手が割かれてるとかそういう時くらいで。

 それにしたって、ひどい時はそもそも店自体を臨時休業にするだろうからな。

 

 つまり、リュウナさんは働いているファイターの多い店で、レアキャラをしていたということだ。

 

「問題になるほど、リュウナさんがこの店でファイトしてなかったってことさ。そもそもカードとの相性って生まれつきの適性みたいなものだからな。仮に戦いたくない相手とファイトしてしまっても、文句は言いにくい」

「なるほど……」

 

 加えて言えば、この店は強いファイターが多い。

 強いファイターを目当てにやってくる客も多い、ということだ。

 そういう客はメタビートデッキを嫌がりはしないだろう。

 

「しかし、恐縮ながらこのリュウナ、固定ファンがごく少数ながらついているのですが……」

「それは……」

 

 多分、顔のいい従者お姉さんにいじめてもらいたい女性ファンとかだろう。

 なんとなく想像できるが……ちらりと、レンさんとアロマさん……お嬢様二人のほうに視線をむけて。

 

「……まぁ、特殊な趣味なんだよ」

「は、はぁ……」

 

 若干声を潜めてオブラートに包んだ。

 ……いや、これリュウナさんにも伝わってるか?

 リュウナさんも結構箱入りな雰囲気あるぞ、モンスターだし。

 ともかく。

 

「まぁ、正直リュウナさんに関しては、今のところで問題ないっちゃ問題ない。メイドにふさわしいデッキをプロデュースしてほしいんだよな?」

「そのとおりです、店長」

「この店の店長は我なのだが!?」

 

 言われてみればそうだな。

 いや、レンさんは経営を行うオーナーであって、現場を回す店長ではなくない?

 ……もしかして店長業務もレンさんがやってるのか?

 この人の時間ってどうなってるんだ。

 

「毎日八時間ぐっすり寝ておるぞ!」

「すごい」

 

 まじで時間どうなってるの?

 

「……多分、今リュウナさんの熱烈なファンをしてくれてる人は、リュウナさんがメイドになったことは喜んでくれると思うが、デッキをメイドに寄せるのはそこまで肯定しない気がするぞ」

「そ、そうなのですか?」

「ああ」

 

 どう考えてもこじらせたオタクだからな……!

 エレアを見ていれば分かる。

 

 メイドらしいデッキ、プロファイターらしいデッキ。

 そういったデッキを俺がプロデュースすることはできる。

 カードとの相性は中々難しい問題だが、それをクリアできるよう工夫を凝らすこともできる。

 でも、それをして果たして既存のファンが喜ぶだろうか。

 基本的にファンが望むのは発展であり、変化ではない。

 だからこそ、言えることは一つ。

 

「リュウナさんが、リュウナさんらしく振る舞うのが一番なんだ、そういうのは」

「そう……なのですか」

「わたくしも、勉強になりますわ。師匠店長様」

 

 この話は、プロファイターを目指すアロマさんにも言えることだな。

 何にしても、自分らしさを貫くのが一番他人の心を動かすのがこの世界だ。

 それがカード相性とか運命力として、実力にダイレクトで繋がるからな。

 

「とはいえ、二人が今のデッキに対してできるアプローチはある。それが何だか……アロマさんは分かるか?」

「わたくし、ですか? ……申し訳ございません。答えがわかりませんわ」

 

 なるほど、と頷く。

 アロマさんはまだまだ発展途上だ。

 答えがわからないのも無理はない。

 

 ……レンさんは、言いたそうに目を輝かせているが、言っちゃダメだからな?

 

「リュウナさんは?」

「……そう、ですね。上手くは言葉にできないのですが……今の私たちに必要なのは、デッキを大きく変えずに変化を加えること……であっているのでしょうか」

「ふむ……ではそうだな、香の民」

「はい、なんでございましょう。レン様」

 

 そこで、突如としてレンさんがアロマさんに問いかける。

 あ、これはもしかして――

 俺は止めようかと思ったが、少し逡巡して……問題ないと判断した。

 

「香の民の、ここ最近のマジカルファイター活動はどうなっている?」

「ですわ!?」

「隠す必要はないぞ、この街でデビラスが発生していたからな。その痕跡を調査したらすぐにわかったのだ!」

「ですわー!?」

 

 おそらく、自分の秘密が突如として暴露されたどころか、普通に知られていたとは思わなかったのだろう。

 アロマさんがですわと繰り返しながらカタカタ震えている。

 

「レンさん。そんないきなり隠してた秘密を暴露するとびっくりするだろ」

「む? 問題ないだろう。ユースティアは守護の一族だ」

「あ、その……両親には話しておりますし、隠してはいないのですわ。公にはしていないだけで」

 

 まぁ、そりゃそうだ。

 レンさんの実家とユースティア家が同じ立場なら、秘匿エージェント活動は把握していないわけがない。

 だから俺も問題ないと判断したわけだが。

 一応、ここはちゃんと言葉にしておかないとな。

 

 で、レンさんがアロマさんのマジカルファイターとしての活動を質問したなら、それは必要なことだ。

 

「んじゃあ、突然で悪いけど話してもらえるか?」

「か、かしこまりましたわ。ええと……あのあと、あの子のことを色々と知ろうとして……それに関しては成功いたしましたの」

 

 いわゆる、マジカルファイターに関わるなと言ってくるクール系ライバルの考えを知ろうとしたアロマさん。

 どうやら、その真意を確かめることには成功したようだ。

 

「ちなみに、どうやったんだ?」

「ええと、わたくしのデッキはその……長期戦になりますから」

「そうだな」

「…………あの子が根負けするのを待ちましたの」

 

 恥ずかしそうに、アロマさんは言った。

 ああそれはなんというか……想像できるなぁ。

 魔法少女アニメ主人公特有の根気強さ。

 アロマさんはアニメの主人公ではないけれど、ポジション的には似たようなものだし。

 あと単純に、そういうことが似合うというのもある。

 

「…………一度ではダメでしたので、二度、三度と」

「それは……大変だったな……」

 

 お互いに。

 いや、相手をしたライバルの子もそうだけど。

 アロマさんも、ロックバーンで長期戦をするのは疲弊するだろうに。

 

「ただ……真意は聞き出せたのですが、ファイトに勝つことができなくて……あと一歩ではあるのですけど、どうしても力負けしてしまうのです」

「そのあたりか」

 

 つまり、なんとかするまであと一歩というところ。

 しかしその一歩に必要な何かが足りない。

 その何かを二人から引き出そうってことだな。

 

「……なるほど、理解できました」

「わかったかい、リュウナさん」

「はい。私達に必要なのは――」

 

 さすがに、リュウナさんはエージェントとしての経験がある。

 すぐに答えにたどり着いたようだ。

 

「エース、ですね。それも絶対的な」

 

 エース。

 デッキの中核であり、ファイターの魂と言ってもいい存在。

 そんな、イグニッションファイトの花形とも呼ぶべきカードが、二人のデッキにはない。

 デッキの特性上、エースが必要ないからだ。

 あくまで、普通にファイトする分には。

 

「ただ、やっぱりファイトを他人に見せる分には、そういうエースは必要なんだ。見ている側もそうだが――ファイター自身にとってもな」

「……わたくし達にとっても、ですか?」

「ああ。エースとは象徴、自分の写し身。プロファイターは、エースモンスターの名前で自分を認識されてこそっていうのもあるからな」

 

 何にしたって、まずは二人がエースを手に入れないことには始まらない。

 エースを手に入れる方法はいくつかある。

 作ったり、いつの間にかデッキに加わっていたり、拾ったり。

 今回はその中で、特にオーソドックスな方法で二人にはエースを手に入れてもらおう。

 俺は、腰に取り付けたデッキケース(かっこいい)を開ける。

 中には俺のデッキと、数枚の予備のカードが入っていた。

 

「むむ、天の民よ。まさかすでに二人のエースカードを用意していたのか?」

「あー、いや。用意するんだ」

「……は?」

「――今から」

 

 キョトンとした様子のアロマさんとリュウナさん。

 そして俺の言葉に、レンさんが珍しく素で停止した。

 

 さて、何をするかと言えば単純で、デッキケースの予備のカードが入っている部分から――カードを引き抜くのだ。

 二枚ほど。

 

 それを俺はちらりと眺めて……

 

「このカードをアロマさんに」

「……よろしいんですの?」

「ああ、そのカードはアロマさんのためのものだからな」

 

 同じように、リュウナさんへも渡す。

 それらは、どちらも二人のデッキにとって相性の良い大型モンスターだ。

 これがエースになるかは二人のデッキ構築と、カードとの相性次第だが……まぁ、二人なら使いこなしてくれるだろう。

 

 ふたりとも、俺が何をしたのかピンと来ていないからか、すんなりとカードを受け取ってくれた。

 対するレンさんは、俺のしたことが本人にとってあまりにも信じられないことだからか、アロマさんとリュウナさんを見て固まっていた。

 それを見て、リュウナさんが問いかけてくる。

 

「あの、一体何をなさったのですか?」

「ああ、簡単だ」

 

 リュウナさんは、俺がデッキケースから取り出したカードがあまりにも自分にとって都合がいいカードだったから、訝しんでいるのだろう。

 

「デッキケースの中に“紛れ込んで”たんだよ」

「紛れ込んでた……?」

 

 時折、この世界では見知らぬカードがデッキに紛れ込んでいたりする。

 俺の店に買い取りを出すと、なぜか<ゴッド・デクラレイション>や「古式聖天使」カードが混じっていたりするアレ。

 それを、意図的に起こす。

 つまり、

 

 

「今、創ったんだ」

 

 

 フラグを立てて、運命力を上げ。

 こう、シャイニング的なドローを行う。

 強者のドローは常に必然だからな、そうすると状況に見合った都合の良いカードが紛れ込むのだ。

 

「り、理論上はできるのだろうがな、天の民よ。流石の我もドン引きだぞ」

「ええ? レンさんもやろうと思えばできると思うけど」

「できてたまるかー! そんなことができるのは、この世において貴様以外におらん! いてたまるか!」

 

 めちゃくちゃ怒られてしまった。

 いやでも、これをやろうと思った経緯は別のファイターが同じことをしていたからなんだけど。

 具体的に言うと、初代ファイトキングがこんな感じでカードを他人に手渡したことがあるらしい。

 噂話程度の話だけどな?

 

 ともあれ、ぷんすかするレンさんとそれをなだめるリュウナさん。

 そんなレンさんに怒られる俺……という賑やかな空間で。

 アロマさんは俺が渡したカードを、大事そうに抱えていた。




なお、舞台裏で古式聖天使達が干からびた蛙のようになっていたことを知るものは、誰もいない……
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