カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「じゃじゃーん、観てください店長」
「なんだそれ……ダイブスーツ?」
開店前の準備を終えて、カウンターでひましていた俺の前に、今日は休みのエレアがバックヤードから出てくる。
その姿は、なんというかぴっちりとしたダイブスーツみたいなものを身にまとっていた。
小柄な割に、比較的出るところ出ているボディラインがくっきりと出ている。
ううん、水着姿までなら観たことあるけど、流石に気恥ずかしいな。
いやまぁ、フル武装エレアのインナースーツほどじゃないんだけどさ。
「ニヨニヨ」
「何ニヨニヨしてんだ」
「はっ、これは別にダイブスーツじゃないですよ」
「じゃあなんなんだ?」
俺が促すと、エレアはイグニスボードを取り出して構える。
このポーズはもしかして、あれか……?
「転……身!」
いわゆる、変身ポーズだ。
そこは変身じゃないんだ、と思ったがこの世界の仮面ライダーに相当する作品だと転身だったな、と思い出す。
こういうところも微妙に前世と違うんだよなぁ。
で、ダイブスーツみたいなスーツが光ると、エレアの衣装が変化する。
これは……エレアの帝国兵時代の軍服じゃないか。
「なんだ、モンスターとしての自分を思い出したのか?」
「忘れてませんよ!? これはホログラフによる電脳衣装です。このように……」
イグニスボードを操作すると、光を帯びて別の衣装に変化する。
あ、俺の部屋に飾ってある遊戯さんの服!
「別の衣装に変更できます」
「……なんでその服?」
「いや、あんなに大事そうに飾ってあったら、ああいうのが好きなのかなって思うじゃないですか」
アレは芸術品みたいなものだから、衣装として好きなわけではないのだが。
それはそれとしてさすがエレア、素体がいいので似合っている。
「というわけでこれは、衣装を好きなタイミングで好きな感じに変更できるスーツです」
「プロファイターによさそうだな……」
プロファイターといっても、プロレス興行系のファイターだけど。
プロファイターと一口に言っても、色々いるのだ。
中には、パフォーマンス重視のファイターもいる。
いわゆる「
「今度、商品化するらしいですよ? メカシィさんのところの研究所の作品です」
「あの研究所、カード研究所だよな? メカシィもそうだけど、どういう研究してるんだよ」
とか話をしつつ、エレアは最終的に普段エレアが着ていそうなフリフリのワンピースに衣装を変更した。
うむ、これがやっぱり落ち着くな。
「そろそろ開店なので失礼しますね」
「ああ、また……な」
と、そこで視線を入口に移すと。
顔をべたーっとさせたアロマさんが、扉に張り付いていた。
「うおっ!」
「ひゃっ!?」
二人して、思わずびっくりしてしまうのだった。
□□□□□
「か、開店前に失礼しましたわ。その、エレア様のスーツが面白くて見入ってしまいましたの」
「ガラスに顔を貼り付けるのは、衛生的にやめておきましょうね?」
「大変申し訳無いですわ……」
どうやら、開店とほぼ同時に店にやってきたら、エレアが面白いことをしていたから観察してしまったらしい。
「あの……そのスーツ……ええと」
「商品名はエクスチェンジスーツになるらしいですよ」
「そうなのですわね! エクスチェンジスーツ……わたくしとても興味がありますわ! プロファイター志望として!」
「おわかりになりますか!」
エレアとアロマさんが目をキラキラさせている。
流石にそこはプロファイター志望、エレアのスーツが価値あるものだと分かるらしい。
「でも、流石にまだ開発中の試作品ということで……結構お高いんですよね」
「お幾らですの?」
「ゴニョゴニョ」
「あ、その程度ですのね……わたくしもほしいですわ!」
「お金持ち!?」
そりゃまぁ、アロマさんはお金持ちだしな。
というか、話を聞いてる感じだと、エレアも金を出して買ったんだろうこの試作品。
俺としては、エレアも金があるなぁと思うのだが。
「完成までのフィードバックを条件に、色々おまけしてもらってます。あと、完成したら完成品と交換してくれるおまけ付き。交渉頑張ったんです」
「そうか……よかったな」
ふふん、と胸を張るエレア。
昔は随分とおとなしい性格だったのに、人は変わるもんだ。
そういえば、昔と言えば帝国兵時代の軍服を着ていたが、アロマさんにバレてないだろうか。
と思ったが、偵察兵のエレアが気づかないわけ無いか。
流石に入口のガラスに張り付くのはびっくりしたみたいだけど。
「それで、アロマさんはどうしてこんな早い時間に?」
「あ、はいですわ」
休日とはいえ、朝から店にやってくるのはどういう理由だろう。
俺が本題に入ると、アロマさんはチラチラエレアの方を見た。
なるほど、マジカルファイター関連の話か。
「ええと……エレア様にあのことを説明したいのですが……」
「あ、マジカルファイターのことですか?」
「ご存知でしたの!?」
どうやら、別に隠す必要がないから説明しようとしていたらしい。
そして、エレアはそのことを知っている。
知っていることに驚いたのは、俺がエレアにそのことを話していないと思っているからだろうな。
まぁ、実際話してないんだが。
「情報には聡い方なのです。それで、どうしたんですか?」
「はい、実は……」
これまでの経緯について、アロマさんがかいつまんで話す。
すると、何だかエレアの俺への視線が呆れたものに変化していく。
「……何だ?」
「いえ、別に? ちょっと店長のカード入手方法にドン引きしてるだけです」
く……できるからやっただけなのに。
知り合いの前でこれを披露すると、毎回ドン引きされる。
アロマさんみたいに、付き合いの浅い人のほうが普通に受け取ってくれるのは何なんだ。
「それでわたくし、アウちゃんとファイトして……」
そこで、アロマさんが一呼吸置いて。
「――勝利しましたの! その後お友達にもなれましたわ!」
華やぐような笑顔で、報告してくれた。
俺とエレアも、顔を見合わせて笑みを浮かべる。
「おめでとう、アロマさん」
「すごいですよ!」
「ありがとうございます。師匠店長様、エレア様……」
ひとしきり、そうやってアロマさんをたたえたあと。
でも、とアロマさんが続ける。
「……でも、デビラスとの戦いはまだ終わっていませんわ」
「まぁそりゃ、デビラスとそのライバルの子……アウちゃんは無関係なわけですしね」
とはいえ、事件はだいぶ進行しているだろう。
彼女にアロマさんが勝利したことで、アウちゃんの凍りついた心を溶かすことに成功した。
この辺りで、だいたい一年やるタイプのホビーアニメなら、2クール目が終わったあたりかな。
「その後……デビラスキングというデビラスの親玉が現れたのですわ」
「そのままですね!」
こら、あまりこういうボスを安直とかいうな。
君のところのカイザスだって、皇帝だからカイザスみたいな安直さだろう。
「デビラスキングは、この世界をめちゃくちゃにするために誕生した悪の王だとフードの方はおっしゃっていましたわ」
「うーん、何から何までそのまますぎます」
「デビラスキングは、ファイトエナジーを集めて完全復活を遂げるので、それを防ぎたいのですわ」
ファイトエナジーというのは、ファイトによって発生し、発散される運命力のことだな。
これを集めるダークファイターというのは、それなりにいる。
デビラスが悪魔のカードを使うと幻惑効果があり、たとえそれを乗り越えて勝利してもかなりの疲労感があるそうだが。
その疲労感は、幻惑効果以外にもそのエナジーを奪われているという理由もあるだろう。
「復活……ってあたり、デビラスキングは定期的に出現するものなのか?」
「……そうですわ。デビラスキングは完全復活すると、不死身になってしまうのですわ。なので、もし完全復活を許したら、その時は封印という手段を取るしかないんですの」
それは、なんというかいたちごっこになりそうだ。
話からするに、デビラスキングは過去に幾度も復活したのだろう。
そのたびに、封印するしかない状況に追い詰められたことが察せられる。
「そのたびに、ダークファイトで消滅しちゃう人とか出てくると思うんですけど。封印でも消滅した人は帰ってくるんですか?」
「幸いにも、帰ってくるそうですわ」
ダークファイトは、敗北すると敗北したファイターが消滅する。
消滅したファイターを取り戻すには、黒幕を倒すしかないのだが……封印でもいいのか。
「そうなると、封印と復活を繰り返してるだけの存在になるな、デビラスキング」
「……言われてみると、そうですわね」
「世界をめちゃくちゃにするために復活しては、何もできずに封印されていく。できたとしても、封印されれば元通りになって、無意味になってしまう」
俺は、そんなデビラスキングに思いを馳せる。
「……それ、本人は一体何が楽しいんだ?」
なんか、めちゃくちゃ身も蓋もない話だ。
考えてみると、割と真面目に謎である。
とはいえ、その言葉に答えを出せる人間は、今のところいなかった。
なんと、拙作「カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている」がKADOKAWA様より書籍化することが決定しました!
イラストはtef様(https://twitter.com/tef_tech)
に書いていただけるとのこと、刊行時期は秋頃とのことです。
二章もだいぶ佳境に入ってまいりました。
今後とも本作を応援いただけますと幸いです。
感想、評価、お気に入り等々お待ちしています。
よろしくお願いします。