カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
メカシィがうちの店員になって、結構な時間がたった。
もとより、どう考えてもこの世界の技術力でもここまですげーロボは作れないだろうというオーパーツっぷりもあって、メカシィは非常に優秀な店員だ。
何なら俺やエレアよりも優秀かもしれない。
掃除、洗濯、炊事まで自分の機能でこなしてしまえる万能性。
ロボだからどこにどの商品があるか完璧に記憶しているし、内蔵している配信機能でショップ大会の配信までこなしてしまうのだ。
……だから、どうしてその予算をデッキ構築に回さなかったんですか?
ともあれ、そんなデッキの予算問題も、バイトの給料で賄えるようになって。
メカシィはファイターとしても、店員としても最強クラスの実力を手に入れつつあった。
だからだろう、メカシィはこんな提案をしたのである。
「店長、ワタシも一人前になったと個人的には思っているのデスが。ピガガピー」
「お、おう。一人前どころか一流を越えて、この国でメカシィより接客のできる店員がいるのか疑問なくらいだが……そうだな」
「恐縮デス」
本音だよ。
だから謙遜しないでね。
「よろしければ、ワタシ一人にお店をお任せしてくださらないでしょうか」
「ふむ? どうしてだ?」
「ハイ。ワタシは現在、ロボとしてさらなる進化を遂げようとしていマス。ピガガピー」
まだ進化するのかよ、すげぇな。
いや、これ以上進化してどうするんだよ。
既にロボとしても店員としても、ファイターとしても一流以上だぞ。
いや、まぁファイターとしてはまだもう少しトッププロクラスになるには修練が必要だが。
それでも、明日メカシィがプロとしてデビューすると言われても、めちゃくちゃビックリするだけで無茶だとは思わないだろう。
めちゃくちゃびっくりするけど。
「デスので、ワタシには経験が必要なのデス。何事も挑戦なのデス」
「アロマさんに感化されたりした?」
「それもあるかもしれまセン。ピガガピー」
メカシィの恐ろしいところは、他人に影響されるというところかもしれない。
人間は、良くも悪くも他者の影響を受けて成長するものだ。
対してロボは、他者からの影響もすべて計算に含まれる。
他者の影響を感情によって精査するような非合理性が存在しない。
それは、良くも悪くも成長が常に一定であるということだ。
しかしメカシィは、その成長に非合理性が存在する。
もはやほとんど人間だ。
やっぱり、ロボを模したモンスターじゃないだろうか、この子。
「つきましては、このワンオペが店員としてのワタシの進化への挑戦なのデス。ピガガピー」
「……まぁ、これまでは何やかんや二人体制でやってたからな」
とりあえず、これまではメカシィ一人で店を回すことは難しかったのも事実。
しかしそれは、あくまでメカシィが慣れるまでのこと。
今ならメカシィが一人で店を回すことは難しいことじゃないだろう。
それでも、単純にメカシィだけに店を任せるつもりが今のところなかったのだ。
理由は一つ。
単純に、二人で仕事したほうが圧倒的に楽だからだ。
これまで、この「デュエリスト」は俺とエレアの二人だけで回してきた。
別にそれでも回せないわけじゃないのだが、流石に一人の時に客がいっぱい来ると対応が難しい。
具体的に言うと、土日は基本ふたりとも休めない。
別にそれでも構わないっちゃ構わなかったのだが、やはりメカシィが来て三人で回せることで土日を休もうと思えば休めるようになったのは大きいな。
特に、この間のクロー少年とヤトちゃんを連れて修行に出かけた件は、土日じゃないと難しいことだった。
「しかしまぁ、そういうことなら……」
「それに、デス」
「まだ理由があるのか?」
「ハイ。ピガガピー」
別に問題はない、と許可を出そうとしたところで。
どうやらメカシィにはまだ言いたいことがあるようだ。
でも、なんだろう。
別にわざわざ言及する理由なんて、そうないと思うのだが。
と、その時である。
「店長ー、色々資材買ってきましたよー」
「ああ、レシートは資材と一緒にカウンターに置いといてくれ」
エレアがお使いから帰ってきた。
現在、開店までもう少し時間があるタイミング。
今日のシフトはエレアとメカシィで、俺はそもそも休みである。
なんで店にいるのかと言えば、昨日遅くまで遊んだ際に酒を入れたからだな。
酔ったまま家に帰るよりは、泊まったほうがいいだろうということで店に泊まったのだ。
そのついでに、店の開店準備を少し手伝っている感じである。
エレアにお使いを頼んでしまったからな。
まったく、ちょうどいいタイミングで資材が色々と切れるんだから。
あ、もちろん、酒は完全に抜けてるぞ。
「むむ、メカシィさんから真面目反応を検知」
「ご明察です、エレア。ピガガピー」
なにやら、偵察兵の直感か、乙女の勘か。
エレアはメカシィが先程まで真面目な話をしていたのを感じ取ったようだ。
というわけで、カクカクシカジカ。
「ほほう、お一人で店を。……メカシィさんも、成長しましたね!」
「エレア……! そう言っていただけてメカシィも嬉しぃデス。ピガガピー」
「完全に感情を発露させている!」
嬉しいって言っちゃったよ!
っていうか、もしかして嬉しぃってメカシィとかけてらっしゃる?
「で、一人で店を任されるのに、別の理由もあるんでしたね」
「ハイ。ピガガピー」
「別の理由……なぁ、正直見当もつかないぞ」
なんて話をしつつ、メカシィがもう一つの理由を切り出すのを待つ。
それは――
「私が一人で店を切り盛りできれば、お二人がデートをする時間も作れるかと思いまして。ピガガピー」
俺とエレアの目を白黒させて。
「で、でぇと!?」
エレアが、顔を真赤にして叫ぶには十分な理由だった。
□□□□□
どうも、エレアを初見で「ミセス」って呼んだりするあたり、メカシィは俺とエレアが結婚していると思っているフシがあるな。
……まだしていないぞ、まだ。
うん、嘘は言っていない。
ともあれ、そういうわけで俺達はメカシィのはからいでデートをすることになってしまった。
いや、別に嫌というわけではないのだけど。
恥ずかしいものは恥ずかしい。
恥ずかしいのに、メカシィが厚意で提案してくれたものだから拒否はできない。
というわけで、なぜか俺達は初デートに出かける学生みたいなテンションでデートをすることになった。
二人で出かけるくらいなら、月イチでやっているというのに。
なんだこのテンション。
『同衾までしてるのに、その距離感なのが憎いのよ――――!』
はっ。
不意にシズカさんの声が聞こえた気がする。
あと、同衾と言っても同じ建物の中で寝ただけだからな!?
まぁ、あの人のことはさておいて。
「……そろそろ時間か」
謎テンションのまま、なぜか駅で待ち合わせをすることになってしまった。
別に店を一緒に出発すればいいだろうに。
いや、それだと常連に見つかる可能性がある? ならこれでいいのか?
「とにかく……エレアのことだ、間違いなく時間ピッタリに来るだろうな」
雑なところは雑だが、真面目なところはとことん真面目なのがエレアだ。
まぁ、なぜ真面目かって言えば、偵察兵時代にさんざん染み付いたからなんだが。
とか、考えていると。
「お、おまたへしました」
エレアの声がした。
ちょっと声が甘ったるい気がするのは、緊張しているからか?
甘ったるいと言うか、噛んだ?
ともあれ、俺はそちらに振り返る。
すると――
「ええと、どう……でしょう」
楚々とした美少女が、そこに立っていた。
普段のフリルマシマシの可愛い系ではない、白い清楚なワンピース。
ワンピースと髪色に合わせた白い帽子も相まって、深窓の令嬢という言葉がぴったり当てはまりそうだ。
とにかく……かける言葉など一つしかない。
ええと、あれだ。
「あー……似合ってるよ、エレア」
「……はい!」
そんな俺の言葉に、エレアは嬉しそうにはにかんで。
こうして……俺達のデートは始まった。
というわけで次回デート……デート? 回。
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