カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
二人して、ひとしきり学生みたいな空気を醸し出すものの。
結局俺達は、長年一緒にやってきた仲だ。
少しすればいつもどおりの感じになるのは自然なことで。
とりあえず、予定通りデートを開始するのだった。
まぁ、行き先は――
「というわけで、着きましたよアニメショップ」
オタク向けのグッズが置いてある、アニメショップだったわけだが。
前世で言うメイトとかあの辺りのアレな。
この世界だとアニメショップっていうそのままのが最大手だ。
「初手がここのあたり、エレアはブレないな」
「なんですか。いつもの定休日だって、何の予定もなかったら初手はここじゃないですか」
「それもそうだけどさ」
いつもの定休日は、普段着で出かけるじゃん。
今日は完全にめかしこんでるじゃん、そのうえで初手アニメショップは流石としか言いようがない。
マジで褒めてるぞ?
というか、そういう相手だからこそ普段から気楽に付き合えるというのもあるし。
「むしろ、俺はエレアに感謝しないといけないかもな」
「何の脈絡もなしに何をいいますかこの人はぁ!」
「おっと悪い」
にょわって感じの悲鳴を上げるエレアに詫びを入れつつ、中に入る。
中は……まぁ、いつも通りって感じだな。
もともとこの街に一つしかないアニメショップだ、毎日ほどほどに需要があるのだろう。
「んで、今日は何を買うんだ?」
「読んでるコミックスの新刊を少々と、CDを少々。こういうのは現物を集めたくなるんですよねー」
「俺はめっきり電子派だな……大学で一人暮らしする時に、荷物になったのがトラウマだ」
かつては俺も名うての物理書籍派だったのだが、膝に引っ越しを受けてしまってな……
いや、四年間抱え込んだコレクションを運び出すだけで、当時の悪夢が蘇る。
おかげでカードショップの内装の準備はほぼ業者頼りでしたよ。
ともかく。
「ま、私はあの部屋を出ていく予定はありませんから」
「整理整頓はしっかりしろよ」
まぁ、配信で見せる可能性があるからか、見える部分はきれいなようだけど。
それ以外はどうだかな。
リビングはきれいだし、そこまで心配はいらないか?
とか考えつつ、中を見て回る。
「あ、見てくださいよミツルさん。この子かわいいですよ」
「あれ? そのアニメチェックしてなかったのか。エレア向きだぞ?」
「し、してないです……どういう……」
ふと、適当に見つけたラバストにエレアが反応していた。
可愛らしい少女のラバスト、如何にもエレアが好きそうな感じだ。
しかし、今期のアニメだからエレアもチェックしてると思ったんだが。
名前を教えると、エレアはぐあーと頭を抱えた。
「独占配信だから見れないやつ……!」
「ああ、そういう……俺も原作をちょっと読んだくらいだからな」
「原作買います……」
いいながら、近くに置いてあった原作のマンガを手に取っていた。
とりあえず一巻だけ、無難だな。
なんて話をしながら、買い物を終えて店をあとにする。
なんか、俺の方もエレアに勧められてマンガを一冊買ってしまった。
雰囲気に流されているな……これは。
その後も、いくつか店を回りつつ用事を済ませていく。
いくつかお互いによりたい場所があって、そこを順番に回るのが今回の予定だ。
というか、ここは所詮ただの地方都市でしかないので、買い物以外の娯楽は映画くらいしかない。
あとは温泉でも行くか? ゲーセンもありだな。
ちょっと足を伸ばしてファイト工学研究所の見学スペースなんて選択肢もあるが……流石にちょっとな。
あ、研究所の見学スペースが何なのか……って話はまた後日。
まぁ、どっちにしてもそれくらいか。
昼飯はいわゆる「映え」を意識したおしゃれな店にした。
流石にこういう時くらい、それっぽいスポットを選ぼうという俺とエレアの共通見解だ。
普段はファミレスで済ませるんだけどな。
それに、ファミレスもそれはそれでいいものだ。
二人でピザを一枚頼んで、シェアしたりするのである。
これが結構楽しい。
まぁ、今回は
「うーん、やっぱりファミレスにすればよかったかもです」
「まぁ、ああいう店は量少ないもんな」
エレアはいわゆる「ご飯はたくさん食べるタイプ」だ。
こういう店に寄り付かないのも、当然だよな。
みたいなことがあって。
午後も色々と買い物を続ける。
適当にふらっとゲーセンに寄ってみたり。
「あー! また取れませんでした!」
「……そろそろ諦めるか、店員に泣きついても許されると思うぞ」
「駄目です! これは自分で取らないとダメなんです!」
「沼にハマりやすいタイプだなぁ、相変わらず」
――そのゲーセンで見つけたプライズを取れず、数千円溶かしたり。
結構遅くなったから、そのまま夕飯の材料とかも買い込んだり。
「あ、店長見てください! これおやすいですよ!」
「いやまて、これは見切り品だ。今日中に使い切れるならいいが、そうでないなら買って帰ってもダメにするだけだぞ」
「……使い切ります!」
「いや、結構な量あるんだが……まぁ、エレアなら行けるか」
「人を腹ペコ虫みたいに!?」
やたら量のあるお買い得の見切り品をやいのやいの言って買い込んだり。
まぁ、色々あって。
いつの間にか日も暮れる時間帯だ。
大分歩いたので、今は二人で公園のベンチに腰掛けて休んでいるところだ。
「いやー、なんか随分と回りましたね」
「まぁエレアのコーデ以外はいつもどおりだったけどな」
デートと言っても、やることは普段と変わらない。
結局のところ、これが俺達の日常なのだ。
多分、これからもそうだろうな。
とか思っていると……メカシィから連絡があった。
「ん、どうしたんだろう」
「何かあったら連絡するって話ではありましたが……もう遅い時間ですよね?」
とりあえず出てみることにする。
すると、メカシィのカメラを通して店の様子が映し出された。
そこには、申し訳無さそうにネッカ少年とクロー少年が立っている。
ビデオ通話ってやつだな。
メカシィが高性能なお陰で、映像はとても鮮明だ。
さておき。
「どうしたんだ、ふたりとも」
『店長ゴメン! デート中に悪いんだけど、どうしても聞きたいことがあって!』
「今は休憩中ってところだから、問題ないさ。どんな質問だ?」
質問は、ルールの疑問に関するものだった。
基本的にイグニッションファイトは効果をテーブルやボード、フィールドが処理してくれるから、わからないならわからないまま処理しても問題はない。
ただ、やはりそこは熱心なファイター、どうしてそういう処理になるかは気になるのだろう。
「……というわけだ、わかったか?」
『ありがとう、店長。すげーわかりやすかったよ』
「おう、そっちももう暗くなる時間だから、早めに帰れよ」
ネッカ少年の、元気のいい声と共に通信は途切れた。
最後に、メカシィも感謝の言葉をメッセージで送ってくる。
ロボだから、声でもメッセージでも、言葉の価値が同じだと前に言っていたな。
SFみたいな話だ。
何にせよ、サクッと答えられてよかった。
仮にも店長として、こういうのに答えられないと恥ずかしいからな。
「っと、悪いエレア。急な連絡で……どうしたんだ?」
「――――」
デート中に仕事の話かよ、みたいな文句が飛んでくるかと思ったら。
エレアは、ぼーっとした様子でこちらを見上げていた。
俺が改めて呼びかけると、ハッとした様子でなんでもないとごまかす。
「あ、いえ。別に変なことじゃないんです」
「ならいいけど」
「ただ……」
ただ? と疑問符を浮かべる。
「……ネッカくんたちの質問に答えてるミツルさんを見て、いいなぁ……って思ったんです」
「それは、急にどうしたんだよ」
「あ、いえ。その……ミツルさんはやっぱり、ミツルさんらしいところがいいんだなって」
そう言われて、流石に少し気恥ずかしさを感じる。
「……私、こういうの好きです」
「こういうのって?」
「全部ですよ。ミツルさんのそういうところも、何気ないお出かけも」
そうして、エレアは空を見上げる。
そこには、もう既に月と星が空に浮かび始めている。
「店でのことも、配信も、アニメもマンガもゲームも。この空だって、なんだか好きって感じです」
「曖昧だな」
「言葉にしにくいんですよー」
まぁ、たしかにな。
ともあれ、そういうことなら俺から言うべきことは一つだけだ。
「なら……帰るか、俺達の店に」
「……!」
そうして、立ち上がりエレアに手を差し伸べると――
「……はい!」
エレアも、嬉しそうにその手を取るのだった。
ちょっとした日常の延長。みたいなデートです。
もっと本格的にそれっぽい場所回るのは……多分次章でやるんじゃないですかね? 内容的に。
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