カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
デートを終えて店に帰る。
もともと夕飯は店で食べるつもりだったというのもあるが、メカシィに今日の出来事を報告してもらう必要もある。
まぁ、メカシィの仕事ぶりは信頼しているのだが、体裁というものは存在する。
というよりも、どちらかといえばメカシィがどれくらい立派に仕事をしたのか知りたいのだ。
きっとメカシィなら、何の問題もなく仕事をこなせるだろうから……と。
そう思いながら店に入ると――
「わぁ……」
思わず、エレアは声を上げていた。
視線を店の中を彷徨わせている。
俺も、息を呑んでしまった。
なぜなら――
「めっっっっっっちゃ店がきれいになってます……!」
めっっっっっっちゃ店がきれいになっていたからだ。
まるで、見違えたかのよう。
さながら生まれ変わったかのようだ。
「これ、絶対開店当初よりきれいですよ……!」
「メカシィすごいな……」
いやほんと、びっくりである。
エレアの言う通り、開店した時よりもきれいになっている。
新品よりも新品になったというか。
一種の矛盾を生み出してしまうくらいきれいだ。
もう閉店間際ということもあって、客はいない。
少し前までネッカ少年とクロー少年がいたはずだが、彼らがいたのだってもう三十分以上前のはずだ。
静まり返った店内は、美しく磨き上げられ俺達を出迎えた。
ある意味、壮観だ。
「そういえば、メカシィはどこにいるのでしょう」
「姿が見えないな、バックヤードか?」
「ちょっとまってくださいね……」
そう言って、エレアが集中する。
偵察兵であるエレアは気配察知が非常に得意だ。
とはいえ、今はオフなのでエレアの中でスイッチが入っていない。
スイッチを入れずにエレアがオートで感知できる気配は敵意だけだ。
メカシィに、敵意はないからな。
集中しないと、判別はつかないだろう。
「……バックヤードみたいですね」
「行ってみよう」
俺の言葉にエレアがハイと頷いて、二人でバックヤードに入る。
すると、そこにはメカシィの姿があった。
「ぴ、ピガガピー、ピガガピー」
メカシィは、バックヤードに倒れていたのである。
体中からプスプスと煙を上げて、力尽きているかのようだ。
「メ、」
思わず、息を呑む。
そして、
「メ、メカシィさーーーーーーんッ!」
エレアの叫びが、店中に響き渡った。
「あ、無事デス。ご心配おかけしマス。ピガガピー」
無事だった。
□□□□□
「で、一体どうしてそんなことになったんだ?」
「ハイ。ネッカとクローが退店した後、ワタシは店の清掃を始めマシタ。ピガガピー」
なるほど。
「人のいない店で掃除をするのは初めてのコト。熱の入りすぎたワタシは、気がつけば店をとてもきれいにしてしまったのデス。ピガガピー」
「まぁ、はい。そうですね……いやアレの形容をとてもきれいで済ませていいんですか!?」
納得しかけてから突っ込むエレア。
まぁ、異次元にピカピカだったからな、気持ちはわかる。
「とてもきれいデス。修正が必要であれば代替案を提示します。とてもきれいきれい、でいかがでしょう。ピガガピー」
「まぁ、そこらへんの議論は脇に置いておこう」
「は、はい」
「はい。ピガガピー」
話が脱線するからな。
「続きを頼む」
「……そうしてきれいにした結果。ワタシはオーバーヒートしてしまいました」
「それは……大変でしたね」
「要するに疲れました。ピガガピー」
「その要約必要ですか!? 解りやすいですけど」
まぁ、実際一発でどうしてこうなったのかはわかったから、多分必要なのだろう。
つまり、疲れた結果バックでプスプス言いながら休んでいた……と。
そりゃあアレだけ店をきれいにしたんだ、疲れるに決まってる。
「しかも、話を聞くにネッカ達がいなくなってから……三十分でここまできれいにしたんだろう? そりゃあ疲れるに決まってる」
「人間には不可能な清掃能力ですね……」
「照れます。イヤガピー」
「イヤガピー!?」
イヤンとピガガピーが合体したのか!?
いやわかりにくいって!
「休憩による冷却が完了しましたので、続けてエネルギーを補給したいのですが。ピガガピー」
「お、おう。そういえばメカシィのエネルギー源って?」
「水デス。ピガガピー」
エコだなぁ。
「大変恐縮なのですが、そちらのカバンに補給用の水分が入ってます。デスので持ってきて頂いてもよろしいでしょうか。ピガガピー」
「ああ、それくらいはお安い御用だ」
ともあれ、補給に必要な水分をメカシィのカバンから取り出す。
……なんでスクールバッグなんだろうな。
俺の前世の学生時代でしか見たことないぞ、こういうの。
「……ってこれ、<ブルーウォータードラゴン>じゃないですか。超高級飲料水ですよ」
「なんかどっかで聞いたことあるな……いくら位するんだ?」
「三千円です」
あのそれブルーアイズマウンテン……
「今回、こうして成長のためワタシだけで店を切り盛りしました。そのご褒美として用意していたのデス。ピガガピー」
「自分へのご褒美ってやつだな」
気持ちはわかる。
でも、水の美味しさってメカシィのエネルギー補給に影響するのか?
まぁ、しそうだよな……プラシーボ効果かもしれないけど。
それでも影響がありそうなのがメカシィの恐ろしいところだ。
ともあれ。
「それと……もう一つ。ピガガピー」
「もう一つ……? なんですか?」
補給用の穴に容器ごと水を放り込みつつエレアが問いかける。
……いや、容器そのままでいいのか?
「それは……パックの袋デス」
「袋? ……って、あれだよな? パックの外装ってことでいいんだよな?」
「ハイ。ワタシはロボファイターとして、ファイター達が残したパックの袋を取り込むことで強くなるのデス。ピガガピー」
いや、その理屈はおかしい。
「メカシィって、やっぱりオカルト的な理由で感情が宿ったロボじゃないか?」
「わかりません。ワタシはワタシを、メカシィとしか認識できないからデス」
そうなんだ……
いやまぁ、感情が宿っているかどうかはどうでもいいのだ。
そうとしか思えないくらい、メカシィが人間臭いというだけで。
ともかく、パックの袋ならゴミ箱に山ほどある。
普段はそのまま捨ててしまうものだが、今後はメカシィに渡すこととしよう。
リサイクルってやつだな。
適当言ってるけど。
「それにしても……一日店を回してみて、メカシィはどう思った?」
「どう思った……デスか? ピガガピー」
エレアと二人がかりで、パックの袋をメカシィに突っ込みつつ。
今日一日の感想を聞いてみる。
「そうデスね……普段、店は店長かエレアを中心に回っていマス」
「回ってる……っていうのは、なんともむずがゆい表現ですね」
「お二人には、それだけ人を引き付ける力があるのデス。ピガガピー」
そう言われると照れるわけだが、メカシィの発言はそこが肝ではない。
まだ、答えまでたどり着いていないからな。
「ワタシは……お二人のように店を“まとめる”力はありません。なんとなく、そんな気はしていたのデスが」
「いや、それは……」
「デスが、その分ワタシは周囲の方々の助けを借りることができました。結果、ワタシはこうして店を一人で回すことができたのデス。ピガガピー」
俺達の店をまとめる力は、経験に由って培われたものだ。
一朝一夕で身につくものではない。
そのうえで、メカシィの言うことは本質を突いていた。
「正直、私達だって最初から今みたいな接客ができてたわけじゃないですよね」
「そりゃそうだ、どんなことだって習熟には時間がかかるものだからな」
「そうなのデスね……何事も奥深いデス……ピガガピー」
もしかしたら、ロボはプログラムでその習熟をスキップできるかもしれない。
しかしメカシィは、敢えてその習熟に重きを置くことでファイターとして最強を目指すロボだ。
こういう経験も、貴重な成長のプロセスなのだろうな……と思うのだった。
□□□□□
後日。
「聞いてください店長。先日のワンオペが評価され、ワタシの予算が増えました。ピガガピー」
「おお、それはすごい」
「さしあたって、新たな機能が追加されたのデス」
……ん? 予算が増えたならデッキの強化にまわしてもよくない?
というか、無理に機能追加する必要なくない?
「そしてこれが……その機能。七色に輝く機能です」
「ゲーミングメカシィ!?」
色々疑問符を浮かべていたら、メカシィが光りだした。
「ゲーミングメカシィさん!? ゲーミングメカシィさんですか!?」
ドタドタと、二階から非番のエレアが降りてくる。
いやなんでそんな興奮してるんだよ!?
あと、偵察兵とはいえ一階の会話を聞き取らないで!?
「うわあゲーミングメカシィさんです! すごい!」
「そ、そうか?」
「オタクは七色に光るメカが大好きなんですよ」
それはまぁ、理解らなくもないけど。
「光っています。光っています。ピガガピー」
「うひょー、ピカピカですね」
……やっぱり、デッキに予算回すべきじゃなかったかなぁ。
と、楽しそうなメカシィとエレアを見ておもうのだった。
無駄に高性能なのですごいゲーミングです。なおデッキに予算を回さない理由は不明です、ホビーアニメ世界の住人のやることなので……
UAも二百万を越えていました。
本当にありがたい限りです、今後も頑張ります。