カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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56 店長とエレア様を研究所でセイメイノシンピに触れていただきたく

「店長様、エレア様。次のこの店の定休日、お二人の予定は空いているでしょうか。ピガガピー」

 

 ふと、我らがロボット店員メカシィがそんなふうに話を切り出してきた。

 仕事中の俺と、休みだが特にやることが無くて店でダラダラしているエレアの前にやってきての一言である。

 

「予定ですか? んー、ないですけど」

「何もなければ、いつも通り二人で飯でも食って終わりだな」

 

 我がカードショップ「デュエリスト」には月に一度定休日がある。

 主に、俺とエレアがのんびり羽休めするための定休日なのだが、今回はメカシィが店にやってきてから初めての定休日だ。

 メカシィがやってきてからというものの、シフトにはかなり余裕が生まれた。

 定休日も、ぶっちゃけ必要かと言うと少し疑問だ。

 先日のメカシィワンオペ成功も相まって、わざわざ店を閉める必要がないんだよな。

 まぁ、開ける必要もないんだけど。

 

「でしたら、提案があるのデス。ピガガピー」

「提案ですか?」

 

 首を傾げるエレア、ついでに椅子に腰掛けた状態で体が少し傾いて――

 

 

「店長とエレア様に、研究所でセイメイノシンピに触れて頂きたくおもうのデス。ピガガピー」

 

 

「セイメイノシンピ!? んぎゃっ」

「あ、エレア。……大丈夫か?」

 

 傾いた状態で驚いたせいで、エレアが椅子から転げ落ちてしまった。

 頑丈な異世界人ボディのおかげでダメージはなさそうだが、手を差し伸べてくるのでとりあえず引き上げておく。

 

「失礼いたしました。お二人をワタシが開発されたファイト工学研究所にお招きしたいのデス。ピガガピー」

「おー、あのヘンテコ研究所の」

「ヘンテコ研究所て」

 

 いやまぁ、なぜか予算を絶対にメカシィのデッキ強化に回さない変な人達の集まりだけどさ。

 

「いやだって、ネットでも有名なんですよ。マッドサイエンティストが多いって」

「マッドサイエンティストかぁ……」

 

 変人の多いこの世界でマッドサイエンティストって、相当だぞ?

 しかもメカシィは善のファイトロボ。

 変人ではあっても、悪事を働いたりしないのだろう。

 それでマッドサイエンティストと呼ばれるあたり、絶対変な人しかいないに違いない。

 

「でも、急にどうしたんだ? いや、定休日じゃないと俺達二人を誘えないからなんだろうけどさ」

「はい、それなのデスが――」

 

 わざわざ、俺達を誘うあたりただ研究所を案内する以外にも理由があるのだろう。

 実際その通りのようで、メカシィもそれを明かそうとしたその時。

 

「ん、店員が三人集まってるなんて珍しいわね」

「ヤトちゃーん、こんにちはですよー」

 

 ヤトちゃんが入店してきた。

 学校帰りなのだろう、制服姿である。

 珍しい、ヤトちゃんの制服姿ってほとんど見ないぞ。

 パンクファッションに並々ならぬこだわりを持つヤトちゃんは、店に居座るつもりなら学校が終わったあとに着替えて店に来るのだ。

 

「今日は、そこまで長居するつもりはなかったから。このあと、機関の事務所に行くついでにちょっとパックをいくつか買ってくるようお使いを頼まれてて」

「ははぁ、ヤトちゃんも大変ですねぇ」

「事件自体はそうでもないんだけどね、姉さんが大暴れしてるから」

 

 ここ最近、この街の治安は比較的安定している。

 理由は月兎仮面となって、この街有数のファイターになったハクさんが八面六臂の大活躍を繰り広げているから。

 突如として、俺やレンさんに肉薄するレベルで強くなったからな、並のダークファイターなら相手にならん。

 代わりに、「この街には痴女がいる」なんて噂が広まってしまっているが。

 ……俺を睨むんじゃない、エレア。

 

「っと、そうだメカシィ。俺達を研究所に招きたい理由って?」

「露骨に話題を逸らしましたね!?」

「はいデス。ピガガピー……実は、今度我が研究所でカードパックの生成実験を行うことになったのデス」

 

 閑話休題、それはさておき。

 どうやらファイト工学研究所がカードパックを作るらしい。

 生成実験……というとピンと来ないかも知れないが、まぁそこは長くなるので一旦説明を後回しにするとして。

 

「ってことは、もしかして出来立てホヤホヤのパックを剥けるんですかぁ?」

「もちろんデス。可能なら、それを使ったテストファイトにもお付き合いいただきたく。ピガガピー」

「そりゃあいいな。カード生成の現場に立ち会うなんてそうそうないし」

 

 レンさんのファイト喫茶で俺が無からカードを生み出したような状況でもなければ、一般人はカード生成の現場にそうそう立ち会わない。

 貴重な機会だ、断る理由はないな。

 まぁ、研究所の人たちは外部の強いファイターにテストを頼みたいんだろうけど。

 それも含めて、光栄な話である。

 

「へぇ、カード生成の現場を見学できるの? 羨ましいわね」

「――何を言っているんですか?」

「んえ?」

「私のターンはまだ終わっていませんよ!」

 

 ひょ?

 狂戦士の魂が発動しそうなエレアの発言に、ヤトちゃんが首をかしげる。

 唐突なパロ発言……に見えて、この世界では割とよくある言い回しだ。

 なぜならカードゲーム至上主義の世界だから……!

 

「ヤトちゃんも一緒にいきましょうよ!」

「え、いや、ダメでしょ!? 店長とエレアの二人きりのデートなのよ!?」

「……エレアがいいっていうなら、いいんじゃないか?」

「それに、平日だから学校もあるのよ!」

「むしろ、カード生成の現場に立ち会える貴重な機会、学校に話せば即許可が降りると思いますが」

 

 カードゲーム至上主義なこの世界で、カードを“生み出す”現場を見学できるのは光栄なことだ。

 一般常識からして、申請すれば許可が出ることは不思議じゃない。

 ヤトちゃんは割と生真面目なところがあるから、気になってしまうのだろうけど。

 

「とにかく、今度の定休日は三人でメカシィさんの研究所にお邪魔しましょう! けってーい!」

「……まぁ、エレアがいいなら私も行くけど」

 

 楽しげなエレアに、諦めた様子の……けれどもまんざらでもなさそうなヤトちゃん。

 多分、先日のデートで俺成分を補給できたから、今は友人を巻き込んで遊びたい気分なんだろうな。

 エレアが楽しそうなら、俺もそれに異論はない。

 

「というわけだ。よろしく頼む、メカシィ」

「はいデス。ピガガピー」

 

 話は纏まった。

 俺も楽しみになってきたぞ、研究所見学。

 

 

 □□□□□

 

 

 ファイト工学研究所は、俺達の住む街のはずれにある広い施設だ。

 隣町につながる道の途中にあるから、車で隣町に向かう時目にする機会が多い。

 そして何より、一般公開している見学スペースもある観光施設でもある。

 この街で、一番観光客を集めている……と言ったらその凄さがわかるだろうか。

 それ以外にこの街の観光資源って何かないのかって? ないです……。

 俺も何度か足を運んだことはあるが……向こうが招いたゲストとしてやってくるのは初めてだな。

 

「本日はカード生成実験のため、見学スペースは休館となっていマス。ピガガピー」

「はえー、私達の貸し切りですよ、店長!」

「私、研究所に来たの初めてなのよね……」

「実験まで時間がありますので、自由に見学してくださって構いません。ピガガピー」

 

 各自が口々にこぼす中、静謐な室内を俺達は進む。

 ふと、エレアが研究所内の案内マップに目をつけた。

 

「……むむ、このメイドロボ研究開発室、とは? 前回来た時はありませんでしたよ?」

「メイドロボ研究開発室デス。ピガガピー」

 

 いや、なんでそんなもの開発してるの?

 

「これは……行くしかありませんね! メカシィさん、案内をお願いします!」

「かしこまりました。ピガガピー」

「あ、ちょっとエレア!?」

 

 そして、メイドロボなんてオタクの夢みたいなものエレアが見逃すはずもなく。

 目を輝かせたエレアは足を渦巻き状にして(漫画的表現)、メカシィとともに走り去ってしまった。

 あとには俺とヤトちゃんが残される。

 

「……エレアって、自由よね」

「まぁ、いいことだと思うよ」

 

 元がひどい扱いを受けた偵察兵だったからな。

 楽しそうなのはいいことなんだろうが……

 

「……とりあえず、俺達は俺達で回ろうか」

「そうね……」

 

 カード生成実験までは時間がある。

 前回、エレアと二人でやってきて以来のファイト工学研究所を楽しむことにした。




実は店長たちが暮らす街で一番の観光施設らしいファイト工学研究所。
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