カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
その日、買い出しから帰った俺が見た光景は、エレアとハクさんががっしりと握手を交わす光景だった。
――――やべえ連中が手を組んじまったぞぉ。
一瞬で冷や汗がこぼれる。
俺は慌てて、買ってきた荷物をカウンターの裏に置くと、味のある表情で二人を眺めるヤトちゃんの元へ急いだ。
「な、何があったんだ?」
「……姉さんがエクスチェンジスーツを購入して、エレアに使い方を教えてもらうことがきまった」
やべぇ。
いうなればそれは鬼に金棒。
痴女にエクスチェンジスーツ。
エクスチェンジスーツと言えば、メカシィの研究所が開発した衣装を自由に変更できるホログラフスーツだ。
先日のファイトでアロマさんが使用して、店の常連にもその存在が周知されたのだが――
まぁ、ハクさんは買うよね。
「いやしかし、販売されたばかりのエクスチェンジスーツ、めちゃくちゃ高かったはずだが……」
「今の姉さん、すごいお金持ってるのよ。月兎仮面としてあちこちのダークファイト事件を解決して、その報酬がたんまり」
それはなんというか。
趣味と実益がめちゃくちゃ伴っているんだろうなぁ……!
何の関係もない痴女に倒されたダークファイターの皆さんには同情の念を禁じ得ないが。
いや、世界が平和になるってことだし別に問題ないな!
「ただまぁ、姉さんって機械に疎いのよね」
「そうなんだ? 意外……ってわけでもないか?」
「ゲーム機は全部ピコピコだし」
「割と意外だな!?」
そこまでなのか!?
確かハクさんって、エッチなソシャゲに重課金してるって話だったよな?
「ただし、エロに関することは除く」
「納得」
腑に落ちた。
いやでも、それだったらエクスチェンジスーツの使い方も何とかなる気がするけど。
……流石に近未来の装備すぎるか、エクスチェンジスーツ。
「さて、ハクさん。それでは指示した通り、アレは着てきましたよね?」
「え、ええ……着てきました」
おっとぉ、なんかエレアとハクさんが同人誌みたいなやり取りをしているぞぉ?
ちょっと俺達は退避してようか、ヤトちゃん。
「……ここで退避したら、後でエレアから死ぬほどからかわれると思うけど」
「退避しなくてもからかわれるだろ!?」
ええい、詰んでた!
そんな俺達を尻目に、ハクさんが着ているコートを脱ぎ始める。
エレアはニヤニヤしながらこっちを見るんじゃない!
「はしたないお姉ちゃんでごめんね、ヤト……」
「絵面がギャグすぎるから、そこまで気にならないわよ姉さん……ここにいる人になら見られても恥ずかしくないし」
俺も恥ずかしくない判定でいいのか!?
ヤトちゃん少し俺のこと信頼しすぎじゃない?
そもそもまだ開店してないから、ここに俺達しかいないのは当然で。
全員わかってやっているから茶番でしかない。
俺もちょっとツッコミが楽しくなってきているし……あ、変な意味ではないぞ。
それはそれとして、ハクさんは本気で興奮していた。
生粋の痴女……!
「どう、でしょうか……」
「わぁ……すっごいですね……」
コートを脱ぎ去ると、そこには衣装を変化させていないエクスチェンジスーツが。
ダイブスーツみたいなピッチリスーツである。
「リュウナさんやシズ姉もそうですけど……えっちなお姉さんのぴっちりスーツ……いいですよね」
「いいわね……」
「ちょっと解るわ……」
解るのか……ヤトちゃん。
俺はそっとヤトちゃんから距離を取った。
いや、単純にシモい話をしている女性は近寄りがたいというのもあるけれど。
「じゃあ、早速使い方を説明していきますね」
「ええ、お願いしますエレアさん。うふふ……ついに、このときが。昨日から待ちわびていたんです」
「……まさか、昨日からスーツを着てたんじゃないよな?」
「…………」
ヤトちゃんは沈黙とともに視線をそらさないでほしいんだが?
こっちを見てほしいんだが?
ともあれ、なんか恥ずかしそうに興奮しているハクさんを、エレアが色々と指導していく。
そういえばリモコンもなしにどうやって衣装を変化しているのだろう……とエレアの時もアロマさんの時も思っていたが。
どうやら、右手――もしくは、設定で左手に変更可能――を設定したポーズにすると対応する衣装に変化する仕組みらしい。
うーん、ハイテク。
さすが、創作にありがちなVRMMOが実在する世界。
なお、デスゲームも割とよくあります。
全部解決すれば、ゲーム中で死亡した人もちゃんと帰ってこれるから安心安全……なわけないだろ!
「と、まぁこんな感じです」
「なるほど……ありがとうございますエレアさん。やってみますね」
「姉さんが、機械の説明を一発で理解している……!」
そこ感動するところなんだ……
ともあれ、早速ハクさんはポーズを取って――
「転……身!」
あ、そこは真似しなくていいからね。
とか思っていると。
ハクさんの衣装は、ビキニの水着に変化した。
かなりエグめの露出度である。
グンバツのマブいスケである。
「初手水着……!? やはりハクさん……できる!」
「うふふ……エクスチェンジスーツの存在を知ってから、最初に変化させる衣装は絶対にこれと決めていたんです……!」
いや、何ができる! なんだよ?
そういえば、こうして露出度の高い衣装を身にまとって思うことが一つ。
「これ、肌の露出は映像で再現してる感じだよな? すごいな」
「ああ、それは私も少し思うわね」
ヤトちゃんとうなずき合う。
アロマさんの衣装――特にブラックアロマさんの方が顕著だが、アレも結構露出が多い。
肌とか色々見えているわけだが……そういう部分もホログラフで再現しているんだな。
「じゃあ、次はこれですね」
そう言って、次に変化させたのはだいぶ魔改造されたレンさん経営のファイト喫茶のメイド服。
執事服の方にも変化していた。
体のシルエットがはっきりわかるようになっているけれど、露出度の低い執事服とは……少し意外だ。
と思ったら違う、腰のあたりに謎の穴が空いている!
ソシャゲでよく見るやつだ!
他にも、色々と馴染みのある衣装に変化させていく。
ハクさんの通ってる高校の制服をギャルっぽく改造したものとか。
いっそヤトちゃんの中学の制服とか。
ヤトちゃんのパンクメイド衣装とか!
「なんか私への精神攻撃みたいになってないかしら? 姉さん!?」
「違うの! 若さって……エッチよね!」
「攻撃してるわね! いいわよその喧嘩買った! 店長、フィールド使ってもいい?」
「ああ、いいけど一応500円な」
そろそろ開店するし。
後どうでもいいけど、ハクさんも高校生だったよな?
ピコピコに対する忌避感みたいなもののせいで、おばあちゃん感覚になってないよな?
「そういえば気になったんだけど、ハクさん」
「はい、なんでしょう。店長さん」
「どうして月兎仮面にはならないんだ?」
素朴な疑問。
衣装をバニースーツに変更してフィールドに向かうハクさんに問いかける。
「あの衣装でしたら、着替える必要がないので」
「そうなのか?」
「はい、<ヴォーパルバニー>にお願いしたら、いつでも変身させてくれるんですよ」
便利だな、あの伝説のカード。
なぜか煤けている気がするが、まぁ気のせいだろう。
「それに……やはり月兎仮面は私にとって特別な存在なので。ホログラフで再現するのは味気ないかな、と思ったんです」
「それは……まぁ、普通の発想なのか?」
「はい。エレアさんにとっての店長さんみたいなものですね?」
「突然こっちに被弾したんですけどー!?」
そこは同一なのか……いやまぁ、本人的には同一でいいんだろうな。
ともあれ。
ハクさんとヤトちゃんがフィールドに立ち――
「いくわよ姉さん! 今日こそ<仮面道化>使用時の姉さんに勝ってみせる!」
「姉として、負けられないわ」
二人が構えた。
「イグニッション!」
かくしてファイトを始める二人。
それをエレアは、配信用のカメラで捉えていた。
……ん? 配信用のカメラ?
※姉妹の許可は得て配信しています
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