カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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73 人の集まるところに変人は集まる

 忙しい。

 めちゃくちゃ忙しい。

 何が忙しいって、ヤトちゃんとハクさんのファイトが死ぬほどバズったからだ。

 というか、先日のアロマさんとのファイトでバズってたのが姉妹ファイトで完全に爆発した感じ。

 

 以前、俺とダイアが謎に世紀の一戦を始めた結果、それが動画としてアップされて大バズリしたことがある。

 その時も、店に多くのお客さんがやってきて大変なことになった。

 あの時並みのバズである。

 更にはエクスチェンジスーツなんていう新技術がしれっとお披露目されているからさもありなん。

 

 現在、ファイト工学研究所はアレを完成させて販売するためにめちゃくちゃ忙しいそうだ。

 基本的に変人の集まりで、資金源が見学スペースにやってきた観光客の落としたお金だった研究所は今、一大ビジネスの原点となりつつある。

 ここで稼げば数年分の予算は使い放題だ、と所長の“博士”は大喜びだった。

 ちなみにメカシィのデッキの予算は、未だに俺の店の給金以外で増えていない。

 ここまで来たら、メカシィ自身が稼ぐことに意味があるとしか思えないが、所長は何も言わなかった。

 意味深に振る舞いたいだけだろこれ。

 

「店長、広場のスペースでメカシィさんが応援を求めてます」

「了解、レジは任せるぞ」

「ラジャ!」

 

 というわけで、俺達は店員三人フル稼働でお客の相手をしていた。

 これでもメカシィがいるおかげで、前回よりは余裕がある。

 いなかったらどうなっていたことか、考えたくもないな。

 

 さて、前回のバズ繁盛でもそうだったが、客が多すぎる場合、俺は近くの広場を借りて店の臨時スペースにしている。

 現在そちらはメカシィが取り仕切っており、主にファイトスペース兼パック売り場となっているのだが。

 どうもそちらで何かがあったようだ。

 

「どうしたんだ、メカシィ。大丈夫か」

「店長ピガガピー。ショップ破りの方々が列をなしているのデス」

「俺の名前がピガガピーみたいになってる……」

 

 ともあれ。

 道場破りならぬ、ショップ破り。

 割とよくある話だ。

 カードショップには、店長を始め多くの強いファイターが集まる。

 繁盛する店ならなおさらだ。

 そういう店にやってきて、実力をためそうというファイターは多い。

 最近は顔を出していないが、秘境”剣風帖”の次期当主にしてサムライの風太郎なんかがまさにこれだ。

 それに対して、店長や店員はその挑戦を受ける義務がある。

 自分の実力に覚えがあるなら、なおさら断れないしな。

 

 というわけで、パックの販売を受け持ちながらそれの相手をしているメカシィだったが、数が多すぎて処理しきれないらしい。

 状況を理解した俺は、早速挑戦者の方を受け持つこととした。

 

「というわけで最初の挑戦者は――」

「店長殿!」

「うお、風太郎じゃないか!」

 

 なんと、ちょうどその風太郎がやってきたではないか。

 「極北風」デッキに目覚めた風太郎は、次期当主として色々秘境の方で忙しくしていると聞いていたが。

 こうして会えるとは、僥倖だな。

 

「お久しゅうござるな、店長殿! 壮健のようでなにより!」

「そっちもな。少し見ない内に、随分たくましくなったんじゃないか?」

「正式に、次期当主として父から色々と学んでいる最中でござる故」

 

 おー、と素直に感心する。

 初めてあった頃の風太郎は、なんというかまだまだ若造という感じだったのだが。

 その頃からそこまで時間は経っていないのに、随分と成長したものだ。

 

「今日は、また武者修行に来たのか?」

「残念ながら違うでござる。我が親友が店長殿と戦いたいと」

「挑戦者は風太郎じゃないのか?」

 

 それにしては、風太郎しかそこにはいないのだが。

 

「うむ、しかし確かにここにいるでござる。なぜならば――」

 

 風太郎がそう言いかけた時。

 

 

「忍!」

 

 

 掛け声とともに、一人の偉丈夫が俺の眼の前に現れた。

 その姿は――

 

「忍者!?」

 

 忍者だ! サイバーパンクなニンジャでもない! ハクさんみたいな衣装の退魔……くノ一でもない!

 正統派の忍び装束を身にまとったニンジャである!

 

「失礼、拙者の名は任次郎。当主風太郎様の親友にして右腕」

「お、おおう……流石は剣風帖」

「店長殿、拙者と一戦火札を願いたく」

 

 過去に、ここまで正統派な忍者がいただろうか。

 いや、いっぱいいるだろうけど……最近は逆にそれが新鮮まである。

 ゴウランガなニンジャや、頭から爪先まで退魔な感じのくノ一が飛び交う昨今。

 正統派忍者は紛れもなく希少である。

 

「しかし、そうだな。君の事を知るならファイト以外に方法はないだろう」

「如何にも。拙者も店長殿をファイトにて勉めさせていただきたく候!」

「では……」

 

 俺達は、イグニスボードを構えた。

 忍者の任次郎は、クナイ型のイグニスボードである!

 

「イグニッション!」

 

 かくしてファイトが始まった。

 

 

 □□□□□

 

 

 任次郎とのファイトを終えても、挑戦者はやまない。

 というか、すごい数のファイターが押し寄せてきている。

 そして、なぜかやたらキャラが濃かった。

 

「貴公がかのデュエリスト店長だな、お会いできて光栄だ」

「こ、こちらこそ……貴方の名前は?」

「私の名はベアトリクス。ユースティア家に仕える騎士家系の出身だ」

 

 ――女騎士! 女騎士じゃないか!

 如何にもといった感じの甲冑を身にまとった、美しい金髪の騎士である。

 ユースティア家に仕えるってことは……アリスさん辺りから話を聞いてきたのだろうか。

 

「先のアロマ様との一戦、見事であった。あの動画を見た時から、私も貴方とのファイトを熱望していたのだ」

「ああ動画から……」

 

 コッテコテな女騎士さんから、動画って単語が出ると脳がバグる。

 いや、ベアトリクスさんはあくまで普通に現代の人で、今回はわざわざ正装の甲冑を持ち出しているだけなんだろうけど。

 さっき風太郎たち秘境の人間とファイトしたから、ここが異世界ファンタジー世界だと錯覚しそうになっているのだ。

 

「では、いざ勝負を!」

「解ったよ、本気でいかせてもらう!」

 

 というわけでイグニッションを始めたのだが……

 

「私は<ライラックコロセウム グラディエーター>をサモン!」

 

 クッコロ!?

 ごふごふ、この場にエレアがいなくてよかった。

 興奮のあまり口に出してそうだからな、クッコロ……

 どうやら、ベアトリクスさんは<ライラックコロセウム>という、花畑の決闘場みたいなフィールドを配置して戦うファイターらしい。

 一対一の決闘を重んじるデッキで、中々普段と違う戦い方を求められて楽しかった。

 

 まぁ、勝ったのは俺だが。

 

「くっ……見事!」

 

 あ、くっとは言うんだ……

 

 

 □□□□□

 

 

 さらには、驚くべき挑戦者が現れた。

 

「ワレワレハ、オルタナティヴイグニッション星人デアル」

 

 宇宙人である。

 またしても喉元に手を当てて自己紹介してきた。

 なんで喉元に手を当てた?

 

「イグニッション星人とダークイグニッション星人が世話にナッタな」

「あいつら仲良かったりするのか……?」

「終生のライバル同士だ。無論、我モナ」

 

 そもそもどんだけいるんだよイグニッション星人。

 

「此度はダークイグニッション星人を破り、イグニッション星人が注目するファイターの一人である汝とのファイトを求めてこの星にやってきた」

「解りやすい動機だな……!」

 

 お互いにイグニスボードはすでに構えている、これ以上の言葉は不要……!

 

「ワレが勝利したアカツキには、このスーパー宇宙洗浄ウォッシャー液を買ってもらう」

「なんで押し売りしてるんだよ……!」

 

 イグニッション星人は侵略者だし、ダークイグニッション星人はテレフォンショッピングの回し者だし。

 宇宙人って何なんだよ!

 

「宇宙船のマドがピカピカだ……!」

「この星に宇宙船はない……!」

 

 まだな!

 というわけでファイトを開始した。

 なお、勝ったのは俺だがオルタナティヴイグニッション星人は、サンプルのウォッシャー液を一つ置いていった。

 ちゃっかりしてやがる。

 何に使えばいいんだよ……。

 

 

 □□□□□

 

 

 その後も無数の挑戦者を俺はなぎ倒していった。

 相手もさるものだが、俺だって店長としてのプライドがある。

 そうそう負けてはいられない。

 んで、ある程度ファイトを終わらせた時のことだった。

 

 

「……いや、お前はダメだろダイア……」

 

 

 ダイアがいた。

 身長2メートル近いがっしりした体格の不審者が、立っていた。

 いや、お前はダメだろ常連側の人間だろ!?

 他の常連は、ファイトを受ける立場としてやってきた挑戦者とファイトしてくれてるんだぞ!?

 というかこんなところでお前とファイトしたら、更にバズって店の勢いがキャパ越えるだろ!

 

「私はダイアではない……」

「いやダイアだろ……」

「タイヤキングだ!」

「てめぇ!」

 

 それいい出したら反則だろうが……!

 なお、結局ファイトはすることになった。

 だってぶっちゃけ、俺もダイアと戦いたいんだもの。

 ファイターの悲しき性である。

 そして増えた店の勢いは、ダイアを一時的に店員として雇って捌き切った。

 余計勢い増えるって? まぁ、そうね……




Q.この世界にはこんな奴らしかいねぇのか。
A.はい。
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