カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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81 まだ壊れてないからセーフ

 エレアの迷走を眺めた後。

 俺達は休憩を兼ねてバックヤードでお菓子を食べていた。

 三十分したらメカシィと俺が交代である。

 

「そういえば、アロマさんは最近どうしてるんだ?」

「もぐもぐもぐですわねー」

「なんて?」

 

 食べてるときに話しかけたのは俺が悪かったけど、なんで「ですわねー」だけ正確に発声できてるんだ?

 お嬢様だから? お嬢様だからか?

 

「ごくんですわ。ええっと、まずアウちゃんがわたくしの学校に転校してきましたの」

「え? アロマさんの学校にですか!?」

 

 俺が飲み込む音にでもですわがついてる……と感心していると。

 エレアが転校のことに突っ込んだ。

 定番の流れというか……仲良くなったライバルが転校してくるというのはクロー少年もそうだったし、よくあることだと思うが。

 

「アロマさんの学校の制服って、あの超乙女ヶ丘女学園の制服ですよね?」

「超乙女ヶ丘女学園!?」

 

 いや、名前は知ってるけど。

 あまりにも個性あふれる名前で、一度聞いたら脳裏に焼き付いて離れないせいで、聞いた時点で驚いてしまうようになっただけだけど。

 ……俺の出身私立中学の名前? 超絶火札中学ですけど?

 …………この話はやめよう!

 

 あと、エレアはなんでその超乙女ヶ丘女学園の制服だってひと目でわかるんだ?

 おいこら、視線を逸らすんじゃない。

 こほん。

 

「ええ、そうですわ。運営母体がユースティア家ですので。当然わたくしもそこに通っておりますの」

「マジで!?」

 

 それは初耳なんだけど!?

 確か俺の母校も運営は超乙女ヶ丘女学園と同じって聞いてたけど。

 ……原因はユースティア家だったのか。

 おのれアリスさん……アリスさんのネーミングセンスは普通なのに!

 

 まぁでも逆に言うと、一応ユースティア家は秘匿エージェント機関だ、俺が運営してることを知らないのも納得である。

 いや、調べればユースティア家の歴史はでてくるんだけど。

 現行の活動内容に関しては秘匿されてるんだよね。

 

「それでわたくし、中学卒業と同時にプロ入りすることを目指すことにしたんですの」

「険しい道のりだけど、アロマさんなら十分可能な実力はあると思うよ」

「アウちゃんも、一緒にプロを目指してくれることになりまして! それでわたくしがプロを目指すことになったことで、学園が講師を招いてくださったのですわ」

 

 何でも、非常に優秀な講師だそうで、元は優秀なエージェントだったらしい。

 そんな講師をユースティア家の御息女とはいえ、アロマさん一人のために呼びつけるなんて流石お嬢様学校……とも思うが。

 アロマさんは将来有望だ、たとえアロマさんがユースティア家の御息女でなくとも学園はその講師を招いていたことだろう。

 

「ダイアがプロを目指すって宣言した時を思い出すな」

「有望なファイターの道を閉ざしてはならない、むしろ全力で後押しするべし。それがユースティア家の家訓ですもの」

 

 とはいえ、それ自体に不思議はない。

 俺の中では前例があるからだ。

 そう、ダイアのことだな。

 あの時も、優秀な元トッププロの講師が俺の母校に講師として招かれた。

 ただまぁ、そういうのって大概新たな事件の始まりなんだよな。

 俺の時は、その元講師が裏でダークファイター組織と繋がっており、最終的にダイアがファイトで倒すことになった。

 俺? 俺は何も関わってないよ。

 表向きはちゃんと仕事をする人だったから、聞かされてびっくりしたものだ。

 

 そして、二度あることは三度ある。

 もしかしてアロマさんの方も、なにか事件の匂いがするんじゃないだろうか――

 

「そしてなんと、その講師の方が先々代のマジカルファイターだったんですの!」

 

 ほらやっぱり。

 俺とエレアは視線を交わす。

 こういうのが、事件の導入であることをよくよく知っているからだ。

 自分たちが関わったことはないけれど。

 

「先々代ってことは……アリスさんの一つ前か」

「ちょうど、店長と同じくらいの世代ですかね?」

「なるほど。他に大きな事件とかってあったのか?」

 

 だいたい、二十代後半から三十ちょうどくらいか。

 何にせよ、ここからアロマさんの新たな物語が始まるわけだな。

 流石にセカンドシーズンまで俺が要所で出張ることはないと思うが……それなりに応援することになるだろうから、状況を見守ろう。

 

「他に大きな事件としましては……新たな敵が現れたんですの」

「どんなやつだ?」

「ええと……ネオデビラスを名乗っておりまして」

 

 なんてわかりやすい……!

 しかしそうなるとアロマさんも困るのではないだろうか。

 マジカルファイターの能力は、デビラスキングを封印した時点で大半を使い切り、残りもゆっくりと消失していくという。

 今のアロマさんは、マジカルファイターに変身できないはずだ。

 

「……そうなのですわ、ですので困ってしまったんですけれど。アリスお姉様の提案で、デビラスキングを封印した場所に向かったんですの。そこで力を取り戻せるかも知れない……と」

「アリスちゃんって、今ヨーロッパ大会でいそがしかったですよね?」

「はい、テレビ通話にてアドバイスをいただきましたわ!」

 

 ファーストシーズンの強キャラが、理由をつけて遠ざけられる奴!

 多分セカンドシーズンのアリスさんの出番は、以降終盤までないんだろうな……。

 とにかく、デビラスキングの封印に行ってみるというのはわかりやすい方法だ。

 マジカルファイターの能力を封印に注ぎ込んだのなら、その力は封印された場所に封印として残ってるはずだからな。

 

「そして行ってみると……なんと、デビラスキングが復活しておりましたの!」

「え!? 大丈夫なんですか!?」

「そこで、デビラスキングはネオデビラスの刺客とファイトしていたんですわ」

 

 あ、これ知ってるぞ?

 前シーズンのラスボスをカマセにするやつだ!

 ネオデビラス、なんて奴らだ……!

 

 

「まぁ、ファイト自体はデビラスキングが勝利しましたけれど」

 

 

「勝ってる――――!?」

 

 思わずガビーンという効果音が出そうなくらい驚いてしまった。

 エレアも同じ反応を見せている。

 二人してガビーン、としか言いようのない表情をしていた。 

 

「え、ちょ、本当に勝っちゃったんですか!?」

「はいですわ! ネオデビラスはデビラスキングのカードを徹底的に対策していたのですけれど……気合でデビラスキングがふん! とやってしまったんですわ!」

「やってしまったかぁ……」

 

 いやぁ、どうなるんだろうこれ……。

 本来はネオデビラスとの戦いになるんだろうけど。

 もしかしてデビラスキングも合わせて、三つ巴になるのか?

 最終的にはデビラスキングとなら共闘できるだろうけど、最初から共闘してくれるタイプではないだろうしなぁ、デビラスキング。

 

「そしてなんと……」

「まだあるのか」

「未来のマジカルファイター様がタイムトラベルしてきたんですの!」

「タイムトラベルですか!?」

 

 いや、この世界ならそういうこともたまにあるんだろうけど。

 なんでも、その未来のマジカルファイターが、アロマ達に再びマジカルファイターとして戦う力を与えてくれたらしい。

 なるほど、力を失ったアロマさん達が再び戦うための介入者か。

 ついでにマジカルファイターは魔法少女だから、新しいヒロインの登場ってわけだな。

 

「なんでも、タイムトラベルの実験中に事故でこっちまでやってきてしまったとか」

「どういう理由ですか!?」

「まぁでも、その方……キリアちゃんのおかげでわたくし達もマジカルファイターの力を取り戻せましたの。ありがたいことですわ!」

「なんでそんなめちゃくちゃピンポイントに、マジカルファイターがピンチの状況にタイムトラベルできるんですかね」

 

 それは……多分、運命力だろうな。

 なんかこう、本来の時間軸だと過去を変えるために決死のタイムトラベルをする必要があったんじゃないか?

 デビラスキングが負けて、アロマさん達がマジカルファイターの力を取り戻せないと色々大変なことになるのかもしれない。

 

「んで、デビラスキングが勝っちゃって色々変わっちゃったけど、運命力が歴史を正しく修正するために無理やりタイムトラベルさせた……とか」

「確か、キリアちゃんも友人のミっちゃんがそんな事を言っていたと仰ってましたわね。転移事故も、そのミっちゃん様との実験の最中の事故だとか」

 

 ……ミっちゃん?

 何故だろう、不思議とその名前に違和感を覚えるのだが。

 でも、違和感以上のものにはならない。

 まぁ、今は気にすることでもないだろう。

 

「それでデビラスキングはどうなったんですか?」

「封印が破られたことで、姿を消してしまいましたわ。ネオデビラスの刺客も同様に……ですの」

 

 姿を消したデビラスキングに関しては、特火室が捜索しているらしい。

 特殊点火事件対策室、通称特火室。

 ネオカードポリスと双璧をなすこの国の公的エージェント機関だが……ネオカードポリスじゃなくて特火室が動くのか。

 まぁ、デビラスキングは存在を知られていないダークファイターだし、そうなると特火室の方が適任か。

 いやぁ、でも人のいない特火室の仕事がまた増えてしまったのか……元気にしてるかな、周防さん。

 

 とにかく、アロマさんもアレから色々積極的に活動しているようだ。

 アロマさん自身、高校進学と同時にプロ入りできるほどのポテンシャルはあるもののまだまだ荒削り。

 アウローラさんも、アロマさんに付き合ってプロを目指すために努力しているそうだが、そんな自分に疑問を感じているらしい。

 ようするに、目標がないからとりあえず友人に付き合っているのが、今のアウローラさんらしい。

 

 他にも、ネオデビラスのこと。

 逃げてしまったデビラスキングのこと。

 まぁ、デビラスキングはどう考えてもこの後デレる前フリだからいいとして。

 未来のマジカルファイターキリアさんや、ネオデビラスの刺客なるファイターの存在もある。

 

 ともかく、日常も非日常も、課題は様々なようで。

 今後ともアロマさんには頑張ってもらおう……といったところで話はお開きになった。

 

 ……ところで。

 ぶっちゃけ、この刺客って講師としてやってきた元エージェントの人だと思うんだけどどうかな。




ミっちゃん……何チルなんだ……
個人的にデビキンをカマセにするより、ツンデレ第三勢力にした方が映えると思います。
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