カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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82 フィールドのオンライン機能って?

 その日、俺は閉店した店内で「イグニッションフィールド」を弄っていた。

 通称フィールドと呼ばれるそれは、店内でイグニスボードを使用せずド迫力なファイトを行うための装置。

 これにはオンライン対戦機能が存在し、世界中のファイターと実力を競い合うことができる。

 お客が申請すればこれを利用することができる、ウチだと店内のファイター同士がファイトに使うことが多いが。

 店によっては、このオンライン対戦機能が店の収入源ってところもあるな。

 カードショップの規定で、オンライン対戦機能には通常のフィールド利用料の他に、オンライン対戦機能の利用料も発生するからだ。

 

 大都市なんかだと、十台くらいフィールドを完備したオンライン対戦専用ショップなんてのもある。

 まぁ、ウチだとほとんど使われないから、もっぱら俺が閉店後にただで遊び倒すための機能とかしているのだが。

 だってほら……うち強いファイターが多いから……。

 

「よーし、今日はやっちゃりますよー」

 

 そんなオンライン機能を、今日はエレアが利用していた。

 普段エレアは、このオンライン対戦機能を配信でしか使わない。

 ぶっちゃけ、やってる時間がないのだ。

 店が閉まったら、そこから色々やって夜には配信。

 エレアの体が頑丈だから、夜ふかしで体力が持たないということはないものの……流石に時間が足りない問題は大きい。

 

 しかし、今日はそんな配信もお休み。

 完全に趣味でネット対戦の海に乗り込むのである。

 

「気張っていけよー」

「見ててくださいね、店長! 私、勝ってみせますから!」

 

 何か、やたらと気合の入っているエレアを俺が近くのテーブルに腰掛けながら応援している。

 せっかくエレアが趣味でネット対戦をするのなら、観戦しようというわけだ。

 

 エレアが、フィールドの中央で操作をしている。

 彼女の眼の前には、前世だと創作の中でしか見たことないような、宙に浮かぶホログラフのパネルが存在していて。

 それを操作すると、フィールドの機能の一つであるオンライン対戦機能を使用できる。

 

「とりあえずランクマに潜る前に、軽く慣らしがしたいですねぇ」

「ランダムマッチって、ランクマッチ以上に修羅の国じゃないか?」

「気兼ねなく行けるのがいいんですよ」

 

 オンライン対戦機能には主にランクマッチとランダムマッチが存在する。

 まぁ、普通のネット対戦機能があるゲームと同じだと思ってもらえればいいだろう。

 ちなみにランクマッチのランクは下がブロンズ、一番上がマスター。

 ん? 何か見覚えがあるな?

 なお、マスターの一つ下がダイヤモンドだ。

 

「今月はランクマ配信サボってるので、プラチナTier5からのスタートなんですよね、先が長い……」

「マスター目指そうぜ」

「正気で言ってます?」

 

 あ、各種仕様も見覚えのあるゲームに準じます。

 ただし、マスターはこの世界だと本当にマスタークラスのファイターじゃないと登れない。

 俺だったらマスターTier1踏めるけど、エレアだとマスターTier5がギリギリかな。

 というわけで、まずはランダムマッチを開始するエレア。

 ランダムマッチは、ランク関係なく相手に当たるので、相手の実力は完全ランダムの闇鍋だ。

 忖度とかも一切ない。

 

「よーし、マッチしました」

 

 俺から観てフィールドの左端にたったエレアが、相手がマッチしたのを感じ取り気合を入れる。

 すると、反対側のスペースに、一人の少女が出現した。

 

「わ、見て下さい店長、<星道の魔女>ちゃんですよ。かわいー」

「これ、結構なレアアバターだったと思うんだけど……プレイヤー名は『極光』さんか」

 

 どんな人なんだろうな。

 少なくとも、俺は聞いたことがない。

 

 そして、オンライン対戦機能で相手とマッチすると、設定したアバターが相手側のフィールドに投影される。

 この人は、<星道の魔女>アバターを使用しているようだ。

 元カードが数億するとんでもないレアカードだが、それ故に人気と知名度も高く。

 アバターとして存在しているわけだな。

 

「とにかく……イグニッションです!」

 

 かくしてファイトが始まる。

 ファイトは、かなりイーブンなファイトになった。

 相手のランクがシルバーだったことから鑑みるに、最近オンライン対戦機能を使用し始めただけの実力者なのだろう。

 デッキも完全初見だ、それにうまく対応してるエレアはよくやってるな。

 そして――

 

「勝ちました! ブイ!」

 

 勝ったのはエレアだった。

 

「おー、見事。よく勝てたな」

「最後の<開拓者>が通らなかったらやばかったですねぇ」

 

 終わったら、二人で少しの間感想戦をする。

 今回は勝てたしミスもなかったから、純粋に褒めるところしかないわけだが。

 エレアは真面目なので、大きいミスをするとだいぶ引きずってしまう。

 個人的にはプレイングミスも楽しみの一つだと思うんだがな。

 

「よーし、次はこの勢いでランクマ逝きますよ!」

「逝くな逝くな」

 

 本人的にはそれくらいの心持ちなんだろう。

 いややっぱ逝くな。

 とか思ってると、マッチングが終わり対戦相手が反対側に現れる。

 

「この時間帯は、強者が多いから気をつけろよ」

「わかってますって! さぁて、お相手は――」

 

 何故この時間帯に強者が多いかと言えば、多くのカードショップがすでに閉店してるからだな。

 そうなると、オンライン対戦をするのはフィールドを自分で所有してる金持ちか、所有できるだけ稼げてるファイターになる。

 まぁ、この世界だとショップの中には二十四時間営業のショップもある。

 さっき言った、フィールドを大量に設置してる店舗なんかはそういう傾向が強い。

 どっちにしても、こんな時間までそういうショップに入り浸ってるオンライン対戦ジャンキーである可能性は否めないわけだが。

 

 さて、そんなこんなで最初の対戦相手は――

 

 

「って、ダイアじゃねーか!」

 

 

 思わず叫んでしまった。

 プレイヤー名『ダイア』、アバターも逢田トウマ本人である。

 確か、以前のオンライン対戦機能を使ったイベントでダイアが優勝した際に作られたアバターだったな。

 本人だからって本人のアバターを使いやがって。

 っていうか公式マークがついてる!

 

「無理ゲーですよこれー!」

「あいつ、先月のランクマサボってたな……?」

「く、当たって砕けろです!」

 

 色々言っている間に、無情にもファイトは始まってしまう。

 相手は本物の逢田トウマ、人類最強クラスのファイターは流石に分が悪かった。

 多少健闘するものの、ほぼ一方的にエレアは敗北してしまった。

 

「理不尽ですー!」

「アレはしょうがない、俺でも勝てるかわからん相手だからな」

 

 と、このようにオンライン対戦機能はぶっちゃけ魔境である。

 しょうがないじゃない、フィールド高いんだもの。

 土日の昼なんかは、普通にランク相応の様々なファイターとファイトできるんですけどね。

 

「次です! どうせ今なら降段しませんしね!」

「その意気だぞ」

 

 かくしてエレアはランクマを続けていく。

 次にあたったのは「リデル」という、汎用女性アバターを多少デコったプレイヤーだ。

 この名前は、ダイヤ帯で観たことがあるな。

 実力的にはエレアより少し強いくらい。

 

「このリデルさんって方の<ミラーキングダム>デッキ、メルヘンで可愛らしくていいですよね」

「そうだなぁ。しかし、ネット対戦で見かけた時の既視感はいったい……」

「多分、現実で知り合いなんじゃないですか?」

「かもなぁ」

 

 ――ネット対戦には、二種類のプレイヤーがいる。

 一つは正体を隠していないプレイヤー、もう一つが正体を隠しているプレイヤー。

 というのも、この世界は基本的に相性の問題でデッキは複数持てない。

 持てても、サブデッキがメインデッキと同じくらい強いということはほとんどない。

 だから、本気のデッキをネット対戦で使うと、匿名で正体を隠しているのにバレバレなんてことになってしまうのだ。

 そこで、いっそ正体を隠さず戦うか、隠すかの二択を迫られることとなる。

 さっきの「ダイア」アカウントは前者だな。

 わざわざ公式マークをつけているあたり、むしろ本人だと積極的に喧伝している。

 

 そして、正体を隠しているのがこの「リデル」さんだ。

 「ミラーキングダム」モンスターを使用したデッキを使う。

 きっとこのデッキはサブデッキだ。

 あえてサブデッキを使用して、本来の実力より強さを落としつつも正体を隠している。

 なので、リアルではより強者……下手するとマスターランク並の実力を持っている可能性がある相手だ。

 多分、顔見知りだと思う。

 

「……よし、勝ちました!」

「途中で向こうにミスがあったな」

「ちょっと白熱して、薄着になったタイミングで動揺してませんでした?」

「向こうにはアバターしか見えてないんだから、わかるわけ無いだろ」

 

 あ、薄着と言っても元々エレアは着込んでるタイプだからな?

 せいぜい長袖が半袖になったくらいだ。

 しかし、それで動揺するのは意味がわからない。

 相手が薄着であることにトラウマを感じていて、条件反射で動揺してしまうとか?

 ……どんな経験をしたら、薄着のファイターに動揺するんだよ。

 

 とまぁ、こんな感じでエレアはファイトを重ねていく。

 順調にランクも上がり、いよいよ次はダイヤ帯への昇格戦……となったところで。

 

 

 不意に、フィールドにノイズが走り始めた。

 

 

「げっ、店長これって」

「……こんなときにサイバー・ダークファイターかよ!」

 

 サイバー・ダークファイター、もしくは電脳ダークファイター。

 オンライン対戦にもダークファイターは存在するのである。

 厄介なことに、勝手にランクマに潜ってきて、強制ダークファイトを仕掛けてくる。

 負ければ当然魂が囚われ、勝ってもランクマに影響しない。

 完全な罰ゲームだ。

 

「代われエレア! 今なら間に合う!」

「わ、わかりました!」

「いいところで邪魔してくれたな、今日こそはボコボコにしてやるぞ!」

 

 ランクマに影響しないということは、オンライン対戦機能とは直接関係ないということ。

 本来なら途中でファイターがすり替わることはできない仕様になっているが、電脳ダークファイトならその限りではない!

 卑怯なことに強者のアカウントには勝負を仕掛けてこないのだが。

 今日プレイしているのがエレアだから、向こうも油断したな!

 

 というわけで、全力でボコしてやった。

 俺が戦える辺り、こいつは末端も良いところなんだろうけど。

 とりあえず、これでサイバー・ダークファイター事件が解決に向かうことを祈る。




サイバー・ダークファイター以外は本編登場済らしいですね
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