カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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「はぁい! 頼りになる助っ人がやってきたわよ!」

 

 今日も今日とてエレアが頭を抱えるカードショップ「デュエリスト」。

 そんな店内に、一人の女性が入店してきた。

 水面シズカさん。

 我らが女性トッププロファイターであり、彼女の言う通り今回の助っ人だ。

 

「シズ姉! まってましたよシズ姉!」

「うーん、切羽詰まってる感じねぇ、エレア! でも大丈夫。私が来たからにはもう安心よ! そう――この、カリスマインフルエンサーーSIZUがね!」

 

 というのも、シズカさんはこの世界でも有数のインフルエンサーである。

 それはもうすごい勢いで、ネット上でも有名人なのだ。

 そのアカウント名が「SIZU」である。

 Hがないのは、中学時代に開設したアカウントを未だに利用しているからだ。

 もっというと、彼女のショップ大会に出る際のハンドルネームでもあった。

 

「うう、見ただけでわかりますか?」

「私、これでも人間観察は得意なつもりよ? 店長ほどじゃないけどね」

 

 現在のエレアは、相変わらず企画がつまりにつまって、それはもうスランプに陥っている。

 日常生活にはまだ影響を出していないものの、見るものが見れば一発でわかるだろう。

 というか、日常生活に影響が出たら俺権限でストップだ。

 それが理解っているからこそ、限界までエレアは影響が出ないよう気を使っている……とも言う。

 

「んじゃ、早速エレアの企画を見せてもらう……前に、まずはガス抜きね」

「はひ……お願いします」

「店長、貴方も手伝ってもらえる?」

「ん、俺か? ああ、理解った」

 

 そんな二人の様子を、俺は遠巻きに眺めていたのだが。

 ここで呼びかけられた。

 エレアのガス抜きは、これまでにも何度か手伝っているのだが。

 ――先日、アロマさんに最近の近況を聞いたのもその一環だ。

 すぐにまた行き詰まってしまうので、今回も息抜きは必要ってことだろう。

 

 店は現在、人がいない時間帯。

 というか、そういう時間帯を狙ってシズカさんと予定を調整している。

 店の中で何かをする分には、俺が手を貸しても問題ないだろう。

 

「じゃ、フィールド借りるわよ、使用料いる?」

「流石にいらんだろ、ファイトするわけじゃないし……」

 

 言いながらシズカさんがフィールドの中央に立ち、ホログラフのパネルを操作する。

 このイグニッションフィールド、非常に多機能でオンライン対戦機能の他にも、インターネットの閲覧なんかもできる。

 フィールドの中央に、これまた宙に浮かぶホログラフの画面が現れ、そこに投影される感じ。

 それを観て創作だとよくあるけど、実際に目にすると近未来だなぁ、となるのが俺だ。

 

「シズ姉は何を見るんですかね?」

「シズカさんがこういう時にアイスブレークに使うのは、決まってシズカさんが面白いと思った企画動画だよ」

 

 それも結構マイナーな。

 まぁ、ぶっちゃけメジャーな企画動画はエレアも把握してるからな。

 シズカさんほどではないけれど、エレアも立派なインターネットファイターなのだから。

 字面が最悪だなこれ?

 

「というわけで、最初に見せたいのはこれ。モンスターと戦ってみた系の動画ね」

「おー、定番ですね」

 

 モンスターと戦ってみた系動画。

 この世界における定番の企画動画だ。

 イグニスボード等の立体投影技術を用いて、人がモンスターとプロレスする動画である。

 基本的にモンスターは投影なので、掴んだりすることはできない。

 そこをうまく戦ってるように見せるのが、動画投稿者の腕の見せ所。

 まぁ、たまに実際のモンスター――ようするに、エレアのような人間タイプ――と戦ってる動画もあるけど。

 アレは割とずるじゃないかなぁ、と思ったりしなくもない。

 

「今回エレアは、ファイターがモンスターに仮装する企画を考えてるんでしょう? いいインスピレーションになるわ」

「そうですねぇ……ちなみにどんな動画を見るんですか?」

「タイトルは……これよ!」

 

 えーとどれどれ……?

 『ファイターとモンスター、禁断の愛!? ついに結ばれる最終決戦編』……?

 何それ……

 

「これは非常に珍しい、本物のモンスターと人間の戦ってみた動画よ!」

「おー、虎型の獣人モンスターなんですねぇ……」

 

 どうも、人間タイプのモンスターだけど体毛とかがある関係で、一発でモンスターだと理解ってしまうタイプのモンスターらしい。

 そこで、それを利用して相棒のファイターと戦ってみた動画を投稿している……らしい。

 すごいなツッコミどころしかないぞ。

 

「というわけで早速再生よ」

「ひゃー」

「いや、なんでそんな恥ずかしそうに指の隙間から見るんだよ」

「だ、だって店長、だって……!」

 

 内容は、ぶっちゃけファイターとその相棒モンスターのイチャコラを濃密に見せられる十分間だった。

 最終的に、私達結婚します! と宣言して動画が終わる。

 SNSを調べたら本当に結婚したらしい、おめでとうございます!

 

「い、いいんですか!? あんなにやっちゃっていいんですか!?」

「結構こってりしたイチャコラだったけどさ……ソコまで言われると俺も恥ずかしくなってくるんだが!?」

「ふふ……愛し合う二人を少しいやらしい雰囲気にしてやったわ……」

 

 シズカさんはドヤ顔で変なことを言い出すんじゃない……!

 と言いたいところだが、実際なんか変な雰囲気になってるので文句は言えない。

 

「あ、いややっぱドヤ顔のシズカさん見てたら落ち着いてきたわ」

「……私もです。シズ姉を見てると落ち着くっていうか」

「あんたたち!?」

 

 その後、少しの間すったもんだした。

 まぁ、どんだけいやらしい雰囲気になっても、シズカさんを見てると落ち着いてしまうんだから仕方ない。

 俺達は悪くない。

 

 さて、次の動画だ。

 

「こほん。次はプロファイターの挑戦企画よ!」

「逢田トウマ、ファイトオブマウンテン単独無酸素登頂って何やってんだあいつ……」

 

 ファイトオブマウンテンは、この世界に存在する最高峰の山だ。

 前世の“山”と少し違うのは、この世界の山が秘境に通じていること。

 大抵の場合、山の頂上は秘境であり、この世界とはまた違う光景が広がっている。

 ファイトオブマウンテンはその典型で、道中は険しい冬山でありながら頂上は火山の火口になっているという。

 そしてそんな火山の火口に暮らす人々がおり、彼らは火山の主を信仰しているというわけだ。

 まぁ、最近はそのことが有名になりすぎて、火口で暮らす人々がSNSを始めたりしてるんだけど。

 それでも単独無酸素登頂となると、一大事である。

 

「いやでも、ダイアさんですよ?」

「まぁ、そうだな……」

 

 ただし、挑戦するのが逢田トウマでさえなければ、だが。

 

 動画の内容は非常に単純だ。

 険しい雪山を、ダイアは何ら苦も無く進んでいき。

 危なげなく登りきってしまった。

 それもこれも、ダイアという人間が非常に優れたファイターであるが故。

 優れたファイターは身体能力も桁違いである。

 ダイアはその典型で、見た目すらそもそも身長2メートル近い巨漢なのだ。

 雪山を進む姿は、さながら雪男系モンスター……!

 

 んで、それを見た感想は――

 

「……塩過ぎません?」

「あまりにも……波乱がない。あいつはファイトオブマウンテンへ遠足に来たのか?」

「企画者がトウマの身体能力を甘く見すぎていたが故の、悲しい事故ね……」

 

 なお、その動画とは別に、火口の住人とガチファイトした動画が上がっていた。

 こちらは余裕で数千万再生される大人気動画で、俺も見たことがあるものだ。

 まさかその裏で、こんな塩い企画が進行していたとは誰が思っただろう。

 

 その後も、いくつかのマイナー企画動画を見せてもらった。

 それらの動画は主に二つの種類に分けられる。

 一つは結婚報告動画のように、あくまで個人が趣味の範疇で投稿している動画。

 もう一つは本気で企画したものの、うまくヒットしなかった動画だ。

 

「どちらも、動画のクオリティ自体は高いものばかり。でも、趣味だから宣伝に力を入れていなかったり、想定外の理由で企画がうまくいかなかったりするの」

「前者はともかく、後者はそもそも企画がうまく行っていてもヒットするかは未知数だしなぁ」

「そこをうまくバズらせるのが、企画者としての腕の見せ所よ」

 

 イベントを企画しようとしている身としては、色々と耳が痛い内容だ。

 ある程度息抜きをしたところで、最後に俺達にも関係のある話をして〆る。

 シズカさんはしっかりしてるな。

 

「んじゃ、早速今出来てる部分の企画を見せてもらおうかしら?」

「あ、はい……うう、緊張してきました」

「大丈夫よ、私はエレアには特別甘いんだから、絶対厳しいことは言わないわ」

「それはそれでどうなんでしょう!?」

 

 そもそも、この企画はエレアを責めたくてやってるわけじゃないしな。

 早速エレアが、企画をまとめたタブレットをシズカさんに手渡す。

 それをシズカさんがペラペラめくって……

 

「……なんてこと」

 

 ぽつりと、そんな事をつぶやいた。

 にわかに、俺とエレアの間に緊張が広がる。

 なにかまずかったか? わからないです……と、視線を交わして。

 

 

「……ほとんどできてるじゃない!」

 

 

「へ?」

 

 と、二人でシズカさんの言葉に間の抜けた声を出した。




UA280万ありがとうございます!
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