――本当にすごかったですよ!!
私、部屋で一人で盛り上がってましたもん!!
そっちはどうだったの? トレーニングは順調だった?
――心配するべくもないです!
この間もほんの少しですけど、タイムが縮まりました!!
まぁ、少しずつでも前進するのが大事よ。……
フェアリィルナとソードクレインが転校して、既に半年が過ぎた。
放課後の廊下。フェアリィは寮室へ、クレインはトレーニングへ向かう途中の、僅かな時間。二人はいつものように、雑談に興じている。
「早いものね。ここを見てでっかーいって叫んでたのが懐かしいわ」
「そうですか? ついこの前叫んだとこですけど!」
「何言ってるのよ。もう半年近く前のことでしょ?」
「へ? 言いましたよ? 一昨日くらいにちょうど」
「あんた……私の与り知らないとこで何してんのよ……」
そんな何度も叫ぶことあるか、と呆れながらも、まぁこの子ならあり得なくもないか、などと妙に納得もする。ともあれ……フェアリィルナの様子は、特段変わった様子はなさそうで、クレインはほっと胸を撫で下ろしていた。
不安なところは合ったのだ。自分が遠征している間、挑んだ試合の結果は……知り及んでいたから。
「他の皆さんの勢いもすごいですよ! キタさんも、ダービーの雪辱を果たそうと気合い入れてるみたいです! 今度の菊花賞はすごいことになりそうですよ……!!」
「菊花賞か……」
菊花賞。10月頃に開催される、クラシック戦線の最後を飾る一戦。自分たちが転校してきたのは11月。それを迎えるころには、転校から一年まであと少しになる。
本当に時間というのは──早い。こうして過ごしていって、気が付けば卒業を迎えているのだろうな、とクレインはぼんやり考える。それと同時に、少し気になりもする。いざその時を迎えた時、自分は自分の思い描くような人物になれているだろうか、と。
最悪、理想通りのウマ娘になっていなくともいい。少なくとも自分が――納得出来る自分で居られているだろうか、と。
……悔いを残さずに。
走り切れているのだろうか、と。
「? クレインさん?」
「ん」
「いえ! ちょっと暗そうだったので! 大丈夫かなーと!」
「……うぅん。平気よ。気にしないで」
──時間が来る。
──日々が来る。
「それより、私たちも次に向けて頑張らないとね。まずは夏合宿からかしら」
「そうですね! 私も最弱なりに、頑張らせてもらう所存です! ……」
──時間が過ぎる。
──日々が過ぎる。
「――、――……」
「――! ――……!」
来て、通り過ぎて、その果てで――
何度も振り返り、思い出すことになる。
……二人にとっての。
始まる。
泥に塗れた私たちへ
run into the mudness
承章
-fin-