特別な青春を、キミと   作:おいしいこっぺぱん

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プロローグ
ep.1 あの日の事を忘れません。


目覚めは、最悪だった。

 

「ん、んん……うわっ、臭いッ!!!」

まず初めに感じたのはとてつもない生臭さ。

あまりの臭いのキツさに転げる様に逃げ、地面に倒れ込む。

 

「いっ…たぁ……何処だ、ここ……」

 

辺りを見渡してみるが、見覚えのない場所だ。

人気のないゴミ捨て場。一体どうしてここに居るのか、全く思い出せない。

憶えている限りでも自分は夜に寝ようと布団の中に入っていたはずだ。

それが一体どうしてこんな所に……

そんな疑問だらけの状態の中、1つの違和感を覚える。

 

「……?あ、あ~~~……あ、あぁ??」

 

声が違う。喉が枯れたとかそんな次元じゃない。

明らかに高すぎるのだ。そもそも男性のはずなのに、自身の口からは女声が発せられている。

手を確認する。白く細く、綺麗な指をしている。

そうして改めて自身の体を確かめていく。

胸、ある訳ではないが確かな膨らみがそこに存在する。

脚、綺麗な脚が見えてしまう。ミニスカートだから。

髪、長くサラサラとしている。というか銀髪だ。こんな奇抜な髪色はしていないはずだ。

そうして自身の状態をしっかりと確認し終え、今置かれている状況を少しずつ理解する。

 

「知らない誰かに、なってる………」

 

 

 

「困った………」

 

今までなにをしていたか、それすらも全く思い出せずに

気付いたらゴミ捨て場に倒れてた知らない女性になっていました、はどういう事なのだろうか。

いや本当にどういうことだ。

 

「荷物…も無いし。スマホも財布も無いのは本当になんでなんだ……」

 

それらしい手掛かりはこの制服。恐らくは中高どちらかなのだろうが…

そのぐらいの子供が夜中、こんな場所に財布もスマホも無く居るのは正直かなりおかしい。

考えられる可能性で言えば……いや、あまりそれは考えたくはない。

それに、この子の体には一切傷が存在しない。体調も至って普通。

それならば何かしら私の考えつかない理由があったのだろう。

深く考えるのはやめにして、とりあえず歩いて人が居るところに行こう。

ここが何処なのかを確認しなくちゃいけないしな……

 

「いらっしゃいませ~。」

 

街を歩いて10分程。ようやくコンビニを見つける。

まだそんなに歩いていないはずなのだが、やけに疲れた。

女性の体だからだろうか、それとも結構な時間、食事が取れていないのだろうか。

まぁいい。折角コンビニに来たのだから、お茶と、おにぎりぐらいは買ってここについて質問してみよう。

 

「…」

「お会計、2点で260円になりますっ…」

「…………あ」

 

不味い。完璧に忘れていた。財布もスマホも無いんだったこの子。

店員さんはあからさまな反応に気付き、心配そうにこちらを見てくれている。

うぅ…申し訳ない……チャーミングなおでこと頭に変なアクセを浮かせた店員さ……

浮いてる?

 

「え、あ………え…!?」

「…?ど、どうしました…?」

「そ、その頭の奴ってなんです……?」

「あたま、の……???」

 

そう言って彼女は不思議そうに頭をペタペタと触り始める。

そ、そこじゃなくて…!

 

「その変な、浮いてる…!」

「…ヘイローの事、ですか……?変なの、って…普通に貴方の頭にも……」

 

ヘイロー。

妙に聞き覚えのある単語だ。何処かで聞いた事のある…ん?

 

「私にも!?!??!?!?!?!?!??!?!?」

「え、あ、は、はい…?」

 

すっかり財布の事や買い物の事を忘れ、コンビニのお手洗いの方へと向かう。

そこの鏡で見た女性の顔。綺麗なんだな私…

いや違う!頭に………ある!というか、これ、ヘイローって、まさか……!

 

「………あ~~~っ!!!!」

 

瞬間、今自分の置かれた状況を理解する。

ここは…!この世界は…!!!

“青春型シューティングゲーム”、ブルーアーカイブだ!!!!!

 

 

「あ、すみません……財布を忘れてしまって…あと騒いで…他のお客さんも居たのにごめんなさい…商品戻してきます…」

「あ、えっと…はい…」

 

店員さんの方には先程の事は謝罪し、少しずつ考えを進めていく。

ブルーアーカイブ。『特別な青春を、キミと』という紹介文で発売されているプレスタ4のゲームだ。

その内容は学園都市【キヴォトス】と呼ばれる世界で、銃器を持った少女たちと青春を送る、と言ったもの。

主人公も学生。様々な学校で日々を過ごし、時に強大な敵と戦ったり、時に誰かと学校生活を楽しんだり…

クオリティの高いストーリー、キャラクター達の人気の高さ、またゲームの難易度が話題になったゲームだ。私もそのプレイヤーの一人。友達に勧められるまま初めて、久しぶりにオフラインゲームに没頭することが出来たあの楽しさを憶えている。

 

「あっすみません。」

「大丈夫だよ。」

 

他のお客さんにもすれ違う時に一応頭を下げて通り過ぎる。

さて、結局何も買わずにコンビニを出てしまったが…………

一先ずは情報を手に入れたから良しとしよう。

 

 

「さて……」

 

近場の公園のベンチに座って、これからの事を考える。

恐らく、私はこのブルーアーカイブの世界に転生したのだろう。

転生モノはあまり知らないが、来た世界がここで本当に良かった。

100%クリア、までは行かずとも様々なエンディングを見てきた私には、ゲームの知識がある。それを活用出来れば……

 

「………でも。」

 

心配はいくつか存在する。

この体の事、主人公の事、そして自分が介入したことによる原作改変。

一つ目はこの体が本当に私が持つべき物だったのか。

一般生徒から無意識に奪ってしまった体ならどうにか返し……どうにか……いや、どうにかして共存ぐらいまでで許したりして貰えないだろうか。

もしくは何かしら別の体を手に入れるのもアリか…ここの技術なら可能なのだろうか?

二つ目は主人公の存在。

ブルーアーカイブでの主人公は序盤はともかく終盤にもなればぶっちぎりの最強キャラだ。

もしも私がソレならば、これから出来る事はかなり多いだろう。しかし…

結局あれはゲームだったからこそ存在した様な物だと言われれば正直そう思う。

プレイヤーの腕によって実際の実力は変われど、作中の描写だけでもあらゆる武器を扱い、どの武器で戦ってもキヴォトス有数の怪物達と同レベルかそれ以上の実力を発揮している。

一部の実力考察サイトでは「主人公は例外なので考えません」と言われたりするレベルだ。

この世界に居るかはわからないし、今は見つけられない。見た目が定まってる訳じゃないからな…

 

「…自分があの子な可能性は、無きにしもあらず、って感じか…」

 

しかしこれに関しては私も動いてるうちに本人に出会えるか、自分が主人公ならどこかで気付く事になるだろう。だから一旦置いておいて問題はない。

最後…原作改変。正直これが一番怖い。

ブルーアーカイブが有名になった理由の1つでもある、『膨大なマルチエンディング』。

学園ごとに変わるストーリーから、更に主人公の行動で分岐が起こる。

下手をすれば一部のキャラクターとは交流不可になる結果だって存在する。

全てを終え、幸せな彼女達を見る度に「プレイヤーの操作する主人公だからこそこの結末に辿り着くことが出来た」という実感があった。あの時では達成感を感じる上で大きなものだったが、今は違う。

出来るのなら、会いたいし、仲良くしたい。

だが、誰と関わる?何処を救う?そもそも本当に自分に救えるか?

ストーリーでは様々な学校で問題が起こっていた。

そこは基本は交わる事が無い。

時期も詳細に出ている訳じゃないから被っている可能性は多いにある。

そしてここには私の意識がある。ならばこの世界はゲームなんかじゃない…ハズだ。

生徒一人一人に感情があり、思惑がある。そんな中で、私はただ少し熱中したゲームの記憶だけであの細い正解を辿る事が出来るのか。

 

「無理だなぁ…」

 

好きなキャラならある程度憶えてはいる、が…

それでも完璧じゃない。私の知識で100%どうにか出来るだろうか、というのは難しいかもしれない……

 

「…………まぁ、一旦は明日だな!」

 

そうだ。まだこの世界が本当にブルーアーカイブそのままじゃない可能性もある。

そうだった場合は、私は特に前世?の記憶に左右されず自由に生きてもきっと大丈夫だろう。

だいぶ世紀末な世界観ではあるが、生徒である以上突いてはいけない所を突かなければ楽しい生活が送れるんじゃなかろうか、なんて思いながら

それじゃあ明日に備えて寝床を、と思った所

 

ぐぅ……

 

腹の虫がきゅうきゅうと鳴り始める。

考え事をしていたから気になっていなかった空腹感が途端に襲い掛かってくる。

頭を使っていた所為で更にお腹が減ってしまっていたのだろうか……

 

「…………うぅ……」

 

流石に少し冷える夜中にこんな場所で眠るのは不味い……

でも空腹で動ける気がしない……そう思っていた所

 

「大丈夫?」

 

後ろから声が掛かる。

振り向いてみれば、先程見たコンビニの男性だ。

 

「隣、失礼するね。」

「あ、はい……」

 

そう言って彼はベンチに座って、こちらにおにぎりとお茶を手渡してくる。

先程、私が戻していたものだ。

 

「え、っと……?」

「お腹、空いてるんでしょ?きちんと食べなきゃ駄目だよ。」

「いや、いやいや!そんな、申し訳ないですよ!」

「いいからいいから。」

「でも…」

「いいからいいから」

 

そう言ってグイグイとこちらに無理矢理手渡される。

気持ちでは抵抗したいのだが、体の方は正直で、素直に受け取ってしまう。

それを見て満足そうな表情の男性は、袋からパンを取り出して食べ始める。

もう、返そうにも返せないと諦めてしまった私は「ありがとうございます……」とだけ言いおにぎりを食べる。

 

「……!」

「ははは、良い食べっぷりだね。一応、まだ他にも買ってるから、欲しかったら言ってね。」

「いいんですか!……じゃ、なくってぇ……」

「大丈夫、どうせ私一人じゃ食べきれないだろうしね。一緒に食べよう?」

「………」

 

結局「いいからいいから」とニコニコ笑顔の彼(と食べ物の誘惑)に抗う事が出来ず、パンとおにぎりを追加で貰ってしまった。

申し訳ない気持ちがありつつも、空腹に耐えきれず必死に頬張ってしまう私の姿を、向こうはニコニコと笑顔のまま見守っていた

 

「本当にありがとうございます。おかげで生き返りました…」

「うんうん。それならよかったよ。次は財布を忘れないようにね。」

「あ、あはは…」

 

財布どころか自分の名前や家すら忘れてる(?)状態なんですけどね…なんて事を思いながらも去っていくあの人に手を振る。いやぁ、良い人だった。

ヘイローが無いのを見るに一般人だろうか。笑顔の素敵な男性…………

男性…………

ヘイローがない市民って皆見た目人外じゃなかったっけ。

 

「ちょ、ちょーーっと待ってください!」

「?どうかしたの?」

「えっと……あの、変な質問するんですけど……」

「うん」

「貴方みたいな人って、凄くありふれてます?その…ヘイローのない普通の人、みたいなのって……」

「………」

 

向こうはなんとも言い難い表情でこちらを見ている。返答に困っている様子だ。

そりゃそうだろう。私も向こうの立場なら「何言ってるんだコイツ?」となる。

数秒の沈黙。

 

「あの…キミは…」

「や!やっぱなんでもないですすみませんでした!!!!!!!!」

「あ…」

 

結局、沈黙に耐えかねてその場から走って逃げ出してしまった。

何か言おうとしてくれてたなぁ…もう少しだけ待ってれば良かったなぁ……!!!

なんて事を思ってももう遅く、逃げ出してしまった今戻るなんて出来る訳もなく

 

「………ちゃんと向こうの返答聞いとけばよかった……」

 

と少し冷える夜中、一人反省会を行いながらその日は丸まって眠った。




思い付きの突発で書いてしまった創作。
やりきれるのか…そもそもこれはアリなのか、わからず震えながら書かせていただいております。
面白いと思ってもらえれば嬉しいです。
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