あり職×黒執事   作:紫道麻璃也

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プロローグ

 月曜日──それは一週間の内で最も憂鬱ゆううつな始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。

 そして、それは郊外にある霧被る森の中に聳え立つ豪奢な洋館の主人たる白崎香織も例外ではなかった。

 

「全く………お嬢様のギリギリ登校には肝を冷やしますよ」

「あら?間に合っているから良いじゃないかしら?」

「………はぁっ」

 

 香織は、いつものように始業チャイムが鳴るギリギリに執事たる南雲ハジメと共に登校し、教室の扉を開けた。

 その瞬間、教室の男子生徒の大半からハジメに向けての舌打ちやら嫉妬故の睨みやらを頂戴する。女子生徒は友好的な表情をする者が多い。

 香織は学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍とてつもない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな白髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。そしてスッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、薄い桜色の唇が完璧な配置で並び右眼には眼帯をしている。

 そして香織の後方に一歩程下がっているハジメは、品位・教養・武術・料理・容姿など、すべてにおいて完璧な人物。その能力にもかかわらず物腰は柔らかくきわめて謙虚である。

 非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだ。

 そんな香織達の下へ三人の男女が近寄って来た。

 

「香織に南雲君、おはよう。毎日遠くから大変ね」

「香織、おはよう………ハジメさん、おはようございます」

「おはようございます師匠!よろしければ今日も稽古をつけてください‼︎」

 

 三人の中で唯一の女子生徒の名前は八重樫雫。香織の親友だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。

 百七十二センチメートルという女子にしては高い身長と引き締まった体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。

 事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい。後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で〝お姉さま〟と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。

 次に、声を掛けたのが天之河光輝。いかにも勇者っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能のハジメに次ぐ完璧超人だ。

 サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった体。誰にでも優しく、正義感も強く思い込みが激しかった。

 小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で、雫と同じく全国クラスの猛者だ。雫とは幼馴染である。ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、いつも一緒にいる雫や香織に気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。

 最後の男子生徒は坂上龍太郎といい、光輝の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプである。

 龍太郎は努力とか熱血とか根性とかそういうのが大好きな人間で、ハジメとの手合わせで差を見せつけられ、ハジメを師と仰いでいるのだ。

 

「おはよう雫ちゃん、光輝くん、龍太郎くん。まぁ、仕方ないよ」

「おはようございます雫様、光輝様、龍太郎様。稽古についてはいつも通り放課後になりますが」

 

 そうこうやりとりしている内に始業のチャイムが鳴り担任である畑山愛子先生(二十五歳)が教室に入ってきた。そしてそれを皮切りに香織達はそれぞれの席へと着き当然のように授業が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

──────それから数時間後、教室にはさっきまで生活を送っていたと思われる食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品だけを残し誰もいなくなり、この事件は白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。

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