星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~   作:伊達 翼

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第十話『初ダンジョンは講義と共に』

 『暗紫の森』。

 比較的高レベルモンスターがいるというパーズ近郊のB級ダンジョン。

 その入り口付近に陣取り、まるでピクニックでもするかのような気軽さでケルヴィンさん達一行は居た。

 エリィさんなんかはちょっと不安そうにしているが…他の面子は気もが据わってるのか、それほど慌てた様子がない。

 むしろ、リオンちゃんなんかはワクワクしてそうな感じだ。

 かく言う俺も人のことは言えず、初ダンジョンにちょっと心が躍っている。

 

 そう…俺も一時的にだが、ケルヴィンさんパーティに入れてもらうことにしたのだ。

 

 はい、寄生プレイに走りました。

 誰に言い訳するでもないが…ごめんなさい。

 でも、条件が魅力的過ぎたんだ。許してほしい…。

 流石に依頼は受けていないから昇格するための達成数はカウントされないが、それでもレベリングに四苦八苦してた状況にこれは棚ぼたとしか言いようがないんだ。

 

 という具合に内心で言い訳じみたことを言っている俺だが…ケルヴィンさんの説明では特に何をするでもなく、寛いでいいと言われてしまった。

 流石にA級冒険者パーティと肩を並べる、なんて大それたことは言わない。

 しかし、E級になったばかりの俺に何ができるんだという話でもある。

 なので、今回は大人しくしてるつもりだ。

 寄生プレイに走った以上、プライドなんてドブに捨てるね。

 まぁ、火のエレメントの検証ができないのは残念だが…。

 いや、ケルヴィンさん達の前ならいいのか…?

 う~む…どうしよ。

 

 あと、お弁当やらシートやらを用意していたとは…。

 本当にピクニック気分だな。

 ケルヴィンさんの話では、ジェラールさん、セラさん、ともう一方がダンジョンに潜ってモンスターを狩り、ケルヴィンさんの持つ経験値共有化というスキルで、経験値をパーティメンバーに配分するとのこと。

 そんなスキルもあったんか…。

 で、ケルヴィンさん、エフィルさん、メルさんの三名が護衛に付くのだと…。

 

 というか、もう一方とはいったい何者?

 今んとこ見てないような気が…?

 斥候担当?

 盗賊系の職業の方だろうか?

 

 まだ見ぬもう一方への人物像を空想していると…

 

「では、行ってくるかのう」

 

 ジェラールさんとセラさんがダンジョンに潜っていく。

 何やらモンスターを狩った数で勝負だのなんだの言ってるが…流石はA級冒険者パーティのメンバー…余裕というか、貫録が違うね。

 

「こっちも始めるか。ついでにシノブも聞いてくれ」

 

「あ、はい」

 

 そして、ケルヴィンさんが懐から小冊子を取り出し、色々と教えてくれた。

 リュカちゃんは嫌そうな顔をしてたが…俺としてはありがたい。まだ、この世界に来て数日なのだ。色々と聞かせてもらいたいところだ。

 リオンちゃんも特に嫌というわけではなさそうだ。

 

 しかし、これらの反応を見る限り、彼女も…もしや?

 と思ってしまうが、決定的なモノがないので、あくまでも俺の推測でしかない。それをこの場で喋るのは違うだろう、と結論付けてケルヴィンさんの話に耳を傾ける。

 

 ちなみにエフィルさんは木に登って弓を構えて警戒し、メルさんはシートに座っていた。

 

 ………………一応、ここってダンジョンの入り口だよね?

 

 虚しいとわかっていても、問わずにはいられなかった…。

 まぁ、口に出さず内心で、だが。

 

………

……

 

 この世界には東西に大陸があり、俺達がいるのは東大陸の方だという。

 その東大陸だが、昔は戦乱の時代があったようで、大小無数の国が覇権を取ろうと争い合っていたらしく、終戦まで残り疲弊した国同士は停戦協定を結んだそうだ。

 で、現在は四つの国があり、俺達が活動している静謐街パーズはその四つの国の国境が交わる唯一の地点に作り上げられたのだとか。

 四つの国は北の『獣国ガウン』から、東の『軍国トライセン』、南の『水国トラージ』、西の『神皇国デラミス』という風になっている。

 

 各国についても少し触れられた。

 

 まず、北の『獣国ガウン』。

 身体能力に富んだ獣人族の国で、端的に言えば、実力主義な国柄らしい。

 代々の王は国内最強から選出されるという、至極シンプルなもの。

 正に力こそが正義、とでも言うのだろうな。

 今代の王もその例に漏れず、バトルロイヤルを勝ち抜いてその王座を勝ち取ったらしい。

 文官とか肩身が狭そうであるが…どうなんだろうか?

 まぁ、あまり率先して敵対したいとは思わないな…。

 

 次に東の『軍国トライセン』。

 和平が結ばれた今でも軍事に力を注いでいるという、その名の通りの国らしい。

 国柄は支配的、他種族を認めない人族至上主義であるという。事実として和平後も北のガウンとは何度か小競り合いもあったようだ。

 さらに秘密裏に他国から奴隷を調達しているという黒い噂もあるらしい。

 気のせいか、ケルヴィンさんの言い方、というか当たりがきつく感じる。

 何か私的な理由でもあるんだろうか?

 俺も別に擁護するつもりはないが、正義や主張は人の数だけある。だから、軍国で人族至上主義と謳っていても、中には清濁併せ呑む人物もいると考えたいな。

 まぁ、火のない所に煙は立たぬ、とも言うから、噂という時点でかなり怪しいとも思うが…。

 

 次は南の『水国トラージ』。

 水竜王という…いわゆるドラゴンの王の一角の住処があるとされる竜海に土地が面しているとのこと。

 その影響か、造船技術や農業に優れた国で、王族も農民出身だったことからそちら方面に力を入れているのだとか。

 驚くことに、なんと米も作っているとのこと。

 マジか!?

 日本人としては是非ともお近づきになりたい!

 というのはケルヴィンさんも思ってたことらしく、今はトラージの女王と懇意にしているらしい。

 素直に羨ましいです!

 ただ、ケルヴィンさん達が有能過ぎて仕官しないかと何度も迫られているらしい。

 

 最後に西の『神皇国デラミス』。

 教皇をトップとした、いわゆる宗教国。

 転生神メルフィーナを崇拝していて、代々の巫女は特殊な召喚術を受け継いでいるらしい。

 魔王の出現が近いらしく、今代の巫女は四人の勇者を異世界から召喚しているそうで、今は西大陸に向かっているとのこと。

 また西大陸との唯一陸上で繋がる『十字大橋(クルスブリッジ)』を保有しているが、西大陸の『帝国』との関係は最悪らしい。

 ちなみにケルヴィンさんは勇者達の師匠的な立ち位置なのだとか。

 トラージの女王といい、デラミスの勇者といい、ケルヴィンさんは交友関係が広いな。

 しかし、転生神『メルフィーナ』か。以前ケルヴィンさんが口にしたのは、この転生神の名前だったのか。つまり、ケルヴィンさんの転生は転生神が絡んだものなのか?

 あと、あの女神様が言ってた『あいつ』とは、十中八九メルフィーナという転生神だろうな。ちょっと愚痴ってたし…。

 

 という具合に各国の簡単な説明を受けた後、今度はスキルについての講義を受ける。

 

 やはり、体感的に感じてたことだが、スキルと動きは密接な関係のようだ。

 そのスキルを取得したからといって、すぐには開花はしない。練習することで練度が増すみたいだな。

 まぁ、スキルは取っておいて損はなさそうだし。俺的には身体に染み付いた動きがよりスムーズになるなら取っておいた方がいい。問題は…そこまでのスキルポイントが貯められるか、かな?

 

 まぁ…さっきから凄い勢いでレベルアップのファンファーレが鳴ってるけどな?

 ちょっとステータスを見るのが怖い…。

 というか、流石A級冒険者パーティ…一体どうすればここまで強くなれるのか…。

 

 ちょっと遠い目をしちゃう。

 で、ちょうど魔法関連の説明を受けていた時だった。

 

 不意にケルヴィンさんが教本を閉じた。

 

 はて?

 なんぞ?

 

 と思っていると、森の奥から黒い毛並みに紅い眼の大きな躯体を持つ狼…後で知ったが、B級モンスターの『影の狼(シャドーウルフ)』というらしい…が、こちらに向かってきた。

 

 っ!

 

 俺もすぐさまメモリを取り出すが…

 

「大丈夫だ。ここは任せろ」

 

 そう言ってケルヴィンさんが手で制して前に出る。

 

『ワォーン!!』

 

 遠吠えを発し、狼がケルヴィンさんに向かって襲い掛かる。

 が…。

 

重風圧(エアプレッシャー)

 

 詠唱一つで狼が身動きを封じられたようにその場から動かなくなった。

 

 どういう現象なんだ?

 この微かに感じる感覚は…風?

 緑魔法の一つだろうか?

 

 だが、次の瞬間、さらに驚く光景を目の当たりにする。

 

 狼が光りだし、ケルヴィンさんの中へと消えてしまった!?

 なんだ、今のは?!

 

「よし、契約成立だな」

 

 契約!?

 

 驚いているのは俺だけではなく、リオンちゃんやリュカちゃん、エリィさんも驚いているようだ。

 ただ、俺とはちょっと毛色が違う驚き方のようだが…?

 俺が素で驚いているのに対し、他の三名は事前に知っていたのを初めて目の当たりにした時のような驚き方、と言えばわかりやすいだろうか?

 

「あなた様。彼にまで見せてよかったのですか?」

 

 メルさんがケルヴィンさんに尋ねる。

 

「あぁ。いずれ見せようとは思ってたんだ。それに…あっちも面白そうなもんを持ってるしな。その実演が見れたかもしれないな」

 

 あっ。

 

 その言葉にハッとする。

 

 咄嗟のことだったから、メモリを出してしまったのをしっかり見られたらしい。

 これは、なんだかマズい気が…。

 今更隠しても遅いよなぁ。

 

 そんな風に嫌な汗を掻いていると…

 

「おお! 誰かと思えば、ケルヴィンじゃねーか。こんなとこでシートなんか広げて、何してんだ?」

 

 暗紫の森の入り口から冒険者パーティらしい一団がやってきて、ケルヴィンさんに声をかけてきた。

 ちなみにエフィルさんはいつの間にか、ケルヴィンさんの横まで来ていた。

 

 

 

 てか、どなた?

 とりあえず、メモリは麻袋に戻しておくか。

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