星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~ 作:伊達 翼
ケルヴィンさんと親しく話す男性冒険者…パーティメンバーも含め、いずれもなかなかのマッチョマン…は、この光景を目にして何をしているのかと問うてきた。
「はは、天気もよかったですから、ちょっとしたピクニックをね」
「こんな危険なダンジョンの入り口でか?」
誰もが思うだろう疑問を、その男性冒険者が呆れたように言ってくれた。
「『ウルド』さん達こそ、暗紫の森に来るなんて珍しいですね」
「あぁ。やっと俺達のパーティもB級昇格試験を受けれるようになってな。今は試験中ってわけだ」
ケルヴィンさんの疑問に男性冒険者…名前は『ウルド』さんというらしい…が満面の笑みで答える。
ウルドさん達のパーティは昇格試験の最中だったのか。
ということはベテランの皆さんということか。
これは是非ともお話を聞きたい。
と思っていたら…
「にしても、見ない顔が……って、なんで美人美女美少女ばかりなんだよ!? ついでに美形もいやがるな!? どういう組みあわせだよ!? つか、これ全員お前の新しい仲間なのか!?」
俺はついで扱いか…。
まぁ、間違ってはないからいいけど。
というか、まぁ…確かに、ウルドさんの言ってることはあながち間違いではないな。
俺がいなければ、ほぼ女性陣ばかりではないか。
エリィさんやリュカちゃんは使用人だから厳密には仲間ではないだろう。
俺も臨時で組ませてもらった感が強いし…。
そんなことを思いながら俺が頬を掻いていると…
「え、えぇ、まぁ。エリィとリュカは今度屋敷に住むことになったので、それで雇ったメイドですから、厳密には冒険者の仲間というわけではありませんけどね?」
ケルヴィンさんの紹介にエリィさんが会釈し、それに倣ってリュカちゃんも会釈していた。
心なしか、ウルドさんの後ろにいるパーティメンバーから暗い眼差しがケルヴィンさんに向けられ、ちょっとした?嫉妬心から何やら呟いているようだが…。
こればかりは弁護のしようがない…。
「落ち着け、お前等!」
それをウルドさんが一喝して場の空気を引き締めるが…。
「で、こっちの二人は…」
「初めまして。メルと申します」
「ぼ、僕はリオンっていって…ケルにいの妹です!」
ケルヴィンさんによる天然?の追い打ちが炸裂し、ウルドさんのパーティメンバーの方々が羨望と嫉妬心から叫び出した。
さしものウルドさんも唯一の妻子持ち…ケルヴィンさんによると、奥さんは精霊歌亭の女将ことクレアさんで、娘さんもいるという…だったことから一人での鎮圧は難しそうだった。
すると、森の奥からジェラールさんとセラさんが戻ってきて、ジェラールさんも鎮圧に参戦したことでなんとか落ち着きを取り戻していた。
「あと、最後になりますが、最近E級になったばかりで駆け出し中のシノブです。今回は特別に同行させています」
「あ、どうも。シノブです。最近、パーズに来たばかりで冒険者になりたてです。一応、この四日間くらいでE級まで上がりました。あと、ウルドさんの奥様にはお世話になってます」
「「「「美形のくせに謙虚だ!!」」」」
ウルドさんのパーティ全員がそう叫ぶ。
え~…その反応のされ方もどうなの?
若干引きつった笑みを浮かべた俺は、今の反応に苦笑してしまう。
「ところで、ウルド殿達は何をしに来たのじゃ?」
すると、ジェラールさんがウルドさんにそんな質問を投げかけていた。
「えぇ、実はここでB級昇格の試験がありましてね。モンスターを規定内討伐するんですよ」
そのウルドさんの答えに…
「「えっ…」」
ジェラールさんとセラさんが同時に声を漏らす。
「マズいのう…」
「ヤバいわね…」
そして、次に発したのはやっちまった感のある神妙な声音だった。
「あの、ご主人様。モンスターの姿が森の中に見当たりませんが…」
今度はエフィルさんからそのような発言が飛び出す。
「………………」
ぎぎぎ、と首を動かしてケルヴィンさんがジェラールさんとセラさんを見る。
「狩り尽くしちゃった☆」
てへっと可愛げにセラさんが申し開く。
そういや、時間制限はまだちょっと先だったような…。
そうか。
狩り尽くしたのか…。
………………二人…いや、三人で?
うそん…。
その事実に、俺は言葉を発せなかった。
………
……
…
その後、俺達はウルドさんのパーティと共にパーズに帰還した。
B級昇格試験を実質的に延期されたようなものだが、ウルドさんは問題ない、むしろ仲間に気合を入れ直すいい機会だと朗らかに笑ってケルヴィンさん達を許していた。
なんて出来た人なんだろうか…。
こんな良い人過ぎる夫婦はなかなかお目にかかれないだろう。
きっとクレアさんがしっかりとウルドさんの胃袋を掴んだに違いない。
それはさておき、今回の件はケルヴィンさんの方からもパーズのギルド長に報告し、ウルドさん達のパーティに再試験を受けられるように打診するそうだ。
今回に限っては間が悪かったのだろうな。きっと…多分…。
ただ、その際、ウルドさんからこのような情報を耳にした。
ケルヴィンさんのS級昇格試験が近々行われるのだとか。
ギルド長が受ける本人も知らぬところで秘密裏に動いているようだが…それはそれでどうなのだろうか?
サプライズだとしても、こんなサプライズは…正直、嫌だな。
普通に事前準備も必要になるだろうし、心構えの問題もあるような気もする。
また、ケルヴィンさんは屋敷のこともウルドさんに伝えていたようだ。
そうして和やかな雑談をしながらパーズへと戻ってきた俺達は、屋敷に戻るケルヴィンさんを除く面々と、ギルドへと向かうウルドさんパーティとケルヴィンさんという二組に分かれていた。
何故かまたも屋敷への招待を受けてしまった俺。
断るのは簡単だったが、メルさんがちょっと確認したいことがあるから、と精霊歌亭に戻ろうとしたのに呼び止められたのだ。
正直、嫌な予感がしないわけでもないが…虎穴に入らずんば虎子を得ず、とも言うからな。
ここは思い切って招待を受けることにした。
第一、ケルヴィンさんが転生者だということはエフィルさん達も知ってるようだし、おそらくはそれ関係の口止めか何かだろうと俺は思っていた。
しかし、それは間違いだったようで…。
「………………」
とりあえず、ケルヴィンさんの屋敷の庭園で正座をさせられている俺…。
………………なして?
そして、俺の目の前にはメルさん。
さらに近くには野次馬根性なのかどうか知らないが、観戦モードな屋敷の人々(エリィさんとリュカちゃんは除く)。
「あの…俺、何か悪いことしましたっけ?」
俺のそんな当然の疑問に…
「いえ、特には何も。強いて言うなら、気分ですかね?」
気分と来たか~。
「まぁ、半分は冗談ですが…」
もう半分は本気ってことですね?
そんなことを考えていると…
「まず、私の部下が申し訳ありませんでした。まさか、別の女神を代理にして転生の仕事をさせるとは…」
「…………はい?」
いきなり謝罪されたので意味がわからなかった。
いや、ちょっと待て。冷静に考えろ。
今の文言を通訳してみると………つまり、『部下に任せてた転生の仕事を代理で別の女神させていたことを謝罪します』ということか?
それって…。
「転生神メルフィーナ?」
「はい。私がその『メルフィーナ』です」
………………………………。
ええええええええ……。
まさかの転生神ご本人、ここにいましたか。
ケルヴィンさんと一緒にいるってどういうことですか?
神が地上に現界するって…よっぽどのことなのでは?
驚きよりも困惑が勝り、俺はきっと変顔を晒していることだろう。
「数日前に新しい転生者がやってきたと報告を受けた時には驚きましたが、そこはそれ。私も承認したので問題はありません。ただ、別の女神に借りを作ったようなものなので、どうしたものかと…」
絶対に愚痴なり文句なりがいきますね。
あの女神様も結構最後の方は愚痴ってたし…。
「まぁ、そこはまた今度考えましょう」
問題を先送りにしたか…。
「そこで一つ提案なのですが……私達の仲間に加わりませんか?」
俺が…仲間に?
「仲間になれば、あなた様…ケルヴィン様と経験値共有化のスキルで成長速度は爆上がり、固有スキルも変に秘匿せずに済みます。あと、なにより美味しい食事と寝床もありますよ?」
大変魅力的な提案をされてしまった。
今日はプライドを捨てて寄生プレイに走ってしまった訳だが…それを継続しないかという提案だ。
これ以上、プライドを捨ててもいいものか?
いや、しかし…仲間になるメリットは確かに大きい。
まぁ、他の人が承認するかはともかく、魅力的な提案なのは間違いない。
これは……即答、出来ないな…。
「………………」
「どうかしましたか?」
俺の沈黙が気になったのか、メルさんが尋ねてくる。
「すみません。一晩だけ考えさせてくれませんか? 明日には答えを出しますので…」
俺はメルさんにそう伝えていた。
「逆に問いましょう。この好条件を即答ではなく、一晩考える、でいいのですか?」
「一晩あれば十分ですよ。それに…即断即決も大事ですが、こういう時こそ冷静に物事を見ないとね」
それが親父から叩き込まれ、伯父さんや叔母さんから口酸っぱく『甘い』だの『
「よいでしょう。ケルヴィン様も帰ってきたら、私の提案のことは話しますから一晩じっくり考えてみてください」
「ありがとうございます」
それを最後に俺は正座から解放され、屋敷から出て精霊歌亭へと戻る。
夕食を食べ、部屋に戻ってベッドに横になった俺は天井を見上げて思案する。
転生神メルフィーナ……いや、普通に呼んだらマズいか。
仮にも宗教国の崇める存在が現界してるなんて知られたら…ヤバいよなぁ。
ということで、メルさん…と呼ぼう…の提案は、ケルヴィンさんにももう伝わってるはず。
ケルヴィンさんはどう思うのだろうか?
いや、先方の反応を気にしてたらダメだな。
こういう時は俺がどうしたいかによるか…。
ふむ…。
確かに魅力的だ。しかし、魅力的過ぎる…。裏に何かあるかもしれない。
その裏が何かなのかは俺にもハッキリとはわからない。
探偵として、その裏を読み取れればいいんだが…生憎と、俺は探偵見習いで、前世を去った。
そんな俺が、この世界でも一般常識やら情勢なんか知ってるわけでもないのに、相手の裏の思惑が何かわかるはずもない。
大局に身を任せるのも一興。蹴るのも一興。いずれにしても、ここが俺の…第二の人生でのターニングポイントになるか。
そうして俺は寝るまでずっと考えた。
ステータス画面を見るのを忘れるくらいに考え抜き、翌朝になって目覚めてから出した答えは…。