星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~   作:伊達 翼

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第十二話『俺の答えは…』

 朝になり、精霊歌亭で朝食を済ませた俺は、そのままケルヴィンさんの屋敷へと向かった。

 

 言わずもがな、昨日のメルさんの提案への答えを伝えるためだ。

 

 

 

 そうして屋敷の前までやってきた俺は…

 

「よ、シノブ」

 

 屋敷の家主ことケルヴィンさんの出迎えを受けていた。

 

「どうも、ケルヴィンさん」

 

 俺はケルヴィンさんに頭を下げる。

 

「堅苦しいのは無しにしよう。メルから聞いてはいるが…メルの独断ですまないな」

 

「いえ。考えるのにはちょうどいい機会でしたので」

 

「もしかして、緊張してる?」

 

「あはは…まぁ、それなりには」

 

 堅苦しいのは無しと言われたにも関わらず、丁寧な口調になってるのがその証拠だ。

 

「それで、シノブはどうしたいんだ?」

 

「俺は…」

 

 俺の出した答え…それは…。

 

「ご迷惑でなければ、仲間になりたいです」

 

 仲間になることを選択した。

 

「そうか。なら、このまま皆のところに改めて挨拶に…」

 

 そう言ってケルヴィンさんが屋敷の中へと案内しようとするが…

 

「ただ…」

 

 俺はそれを手で制する。

 

「?」

 

 それに首を傾げるケルヴィンさんに対し、俺は続く言葉を発する。

 

「パーティには入れません(・・・・・)

 

 これが、俺の出した答えだ。

 

 そう…入らない(・・・・)んじゃない。入れない(・・・・)んだ。

 

「え…?」

 

 俺の言った言葉の意味がわからず、ケルヴィンさんもポカンとしてしまう。

 

 この決断をしたのにはちゃんとした理由がある。

 

 まず、レベル差だ。

 この間のレベリングはリオンちゃん達と一緒に行い、レベルが若干俺にも分配されただろうから想定よりも低いはず。

 俺がパーティメンバーとして増えることでその経験値が俺にも流れるのは俺の本意ではない。

 寄生プレイは一回だけで十分だ。

 それに戦闘経験から考えても俺はきっと足を引っ張るし、ケルヴィンさんの考えているだろう編成の邪魔をするのも、なんだか心苦しい。

 

 次に、冒険者としてのランクだ。

 近い内にS級試験を受ける人のパーティにいきなり出自のわからないE級冒険者が参加したら、それこそ足を引っ張る結果になるだろう。

 それは俺も望まない。

 ケルヴィンさんは気にしないかもしれないが…世間というのは案外そういう風聞を気にするものなのだ。

 それがS級になるかもしれない人なら尚更だろう。

 

 それと、俺のこの世界への理解度。

 この世界に来てからまだ一週間にも満たない。

 知識が無いなら何かしらの方法で覚えればいい。

 それは必ずしも人である必要はない。

 本からだってある程度の情報は収集できる。

 俺なりに知識を身に着けたいのだ。

 

 最後に、これは物凄く個人的なことだが…見習いだったとしても、探偵としての勘だ。

 時には己の感じた直感…いわゆる勘も大事だと、親父や伯父さんも言っていた。叔母さんは非合理的だと言っていたが、俺も親父の息子だ。そういう理屈ではなく、感覚的なことを潜在的に理解しているのだろうな。

 俺の感じた勘…それはこの好条件の裏側だ。

 確かに俺には不足していることだらけだ。

 しかし、それを差し引いたとしても、向こうへのメリットが少ないように感じた。

 俺にとってのメリットが、必ずしも向こうのメリットと繋がるわけではない。

 だから、俺はパーティメンバーとしては一緒に行けないと思った。

 

 それらが俺なりの決め手となり、ケルヴィンさん達の仲間にはなっても、パーティメンバーには入れない理由だ。

 

 そのことはケルヴィンさんにもしっかりと伝えた。

 

「………………」

 

 ケルヴィンさんはちょっと難しい顔をしていたので…

 

「申し訳ありません。身勝手な条件なのはわかっています。ですが…俺はケルヴィンさんの仲間になれても、パーティメンバーには入れません」

 

 そう言って俺は、もう一度深く頭を下げた。

 

 身勝手な条件を突きつけたのは重々承知だ

 恥知らずと罵られても構わない。

 だが…それが俺の出した答えなのだ。

 後悔は欠片もない。

 それだけは自信を持って言える。

 

 なので、顔を上げて真っ直ぐケルヴィンさんの目を見る。

 

「………………そっか」

 

 俺の言葉を咀嚼し終わったのか、ケルヴィンさんは一言漏らす

 

「………………」

 

 続く言葉を待っていると…

 

「わかった。シノブの好きにすればいい。ただ、仲間ってことなら、こいつ(・・・)を預けておくぞ?」

 

 ケルヴィンさんはそのように言い放ち、青いゲル状の小さな物体を俺に差し出してきた。

 

「? これは…ブルースライム、の幼体?」

 

 首を傾げてよく観察してみると、そうとしか表現できない物体だった。

 

「こいつは俺が最初に配下に加えたブルースライムの『クロト』。その分身体だ」

 

 そう説明された。

 

「そういえば、昨日の影の狼とも契約したとか言ってましたね」

 

 その後、すぐにウルドさんのパーティがやって来たのでうやむやになって聞きそびれたが…。

 

「アレは、俺の転生特典で得た『召喚術』によるものだ。だから、俺の本来の職業は『召喚士』。これはオフレコで頼むぜ?」

 

「召喚士?」

 

「結構レアな職業とスキルでな。公にすると、方々からスカウトが来るらしくて、秘密にしてるんだよ」

 

「な、なるほど…」

 

 ちょっとまだ理解が追い付いてないが、この言い方や昨日の契約から推察し、スキル『召喚術』というものでモンスターを配下にするということだろうか?

 いや、モンスターだけとは考えにくいか?

 もしかしたら、人も?

 

 という推測を立てていると…。

 

「まぁ、いずれちゃんと説明するさ。それで、受け取ってくれるのかい?」

 

「あ、はい。ちゃんと預かります」

 

 ポヨン、とケルヴィンさんの手から俺の手に移ったクロト…さん、でいいのかな?…の分身体。

 

「これでシノブも配下ネットワークを見れるな。そいつは『意思疎通』と『保管』のスキルを持ってるが…保管については大元であるクロト本体と共有だから自前で保管のスキルを取得しといた方がいいかもな。あと、意思疎通でいつでも俺達の会話に入れるから気軽に使ってくれ」

 

 なんだか物凄いアイテムを貰ってしまった気分だが…。

 

「いいんですか? 俺がこれから何をするかもわからないのに、クロトさんの分身体を預からせてもらって…」

 

 一応、そう尋ねておくが…。

 

「いいんだよ。離れていても『仲間』だって証拠だよ」

 

「ケルヴィンさん…」

 

 その言葉に俺は不意打ちをくらった気分だ。

 

「ありがとうございます。クロトさんの分身体、確かに預からせていただきます」

 

「うんうん。それで、シノブはこれからどう動くつもりなんだ?」

 

 クロトさんの分身体を受け取った俺にケルヴィンさんが尋ねてきたので、素直に答えた。

 

「一度パーズから離れようと思ってます」

 

「そうかそう……え!? パーズを出るのか!?」

 

 俺の答えが意外だったのか、ケルヴィンさんが驚く。

 

「せっかく冒険者になったんですから、ちょっとあちこち見て回ろうかと思ってます」

 

「そ、そうか。結構アクティブなんだな」

 

「そうですかね?」

 

 パーズに屋敷を構えていることを踏まえると、ここが基本拠点となるケルヴィンさん達はなかなか遠出とか遠征とかできなさそうだしな。

 それなら、俺は俺でレベルとランクを上げつつ放浪でもしようかと思っただけだ。

 特定の拠点を持たないスタイルの冒険者だっているだろうしな。

 

「そういうわけで、近い内に準備をしてからパーズを発ちます。その前にギルドの皆さんにも挨拶しとかないとかな?」

 

 そんなことを呟いていると…。

 

「あ、だったらギルド長にも挨拶しとけよ」

 

 というケルヴィンさんの一言に…。

 

「そうですね。会ったことはありませんが、挨拶しておかないと…」

 

 俺は素直に頷く。

 

 

 

 そうして、俺はケルヴィンさんの『仲間』となり、その証としてクロトさんの分身体を預かることになった。

 皆さんにも改めて挨拶しておかないとな。

 お世話になったクレアさんやウルドさん、まだ見ぬギルド長にもしっかり挨拶しつつ旅準備を進めないとか。

 他にも最後の火のエレメントに属するメモリの確認もしないとか。

 あ、スキルの振り分けも…。

 やることがたくさんだが…妙な充実感を覚えてしまう。

 さてと…いっちょ頑張りますかね。

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