星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~ 作:伊達 翼
なんだかんだと数日間、適当に歩いてきた結果…。
「………暑い…」
辺り一面の砂、砂、砂……俺はどうやら砂漠地帯に足を踏み入れていたようだった。
別に方向音痴というわけではないのだが…本当に適当に歩きすぎてこうなってしまった。
森を歩いている間、適当なモンスターも狩って素材を入手したりもしたが、保管のスキルがまだ未熟なのでそこは取捨選択している。
で、森から抜け出してしばらくしたら、この通り砂漠に出てしまったわけだ。
砂漠地帯があるということは東に出たということだろうか?
東ってことは、確か軍国トライセン方面だったはず…。
ふむ…限りなく黒に近い噂のある国ではあるが…俺はそれを目の当たりにしたわけではない。かと言って擁護するつもりもない。各国を説明する際のケルヴィンさんの言葉には棘を感じたが、実際に俺の目で見ないことには何とも言えないのも事実。
ならば、このまま進んでみるのも一つの道か。
未だE級冒険者の身であれど、このまま依頼をこなしていけば………はて? そういえば、軍国トライセンでの冒険者とはどういった扱いなのだろうか?
その辺のリサーチ不足は否めないな。
とは言え、ずっと砂漠を彷徨うわけにもいくまい。
………………とりあえず、首都目指すか。
行き当たりばったりだと笑わば笑え。
しかして、これが俺の進むべき道だ………と思いたいな。
そういうわけで、まずはサーチだな。
『
起動した魚座のメモリをネクサスに装填し、魔力を少し用いてその魔力波動を周囲に拡散し、広範囲での索敵を可能にし、そこから得た情報をネクサスに表示させる。
ふむふむ。
この過酷な環境下で生きていく内に進化してきたモンスターもいるとは思っていたが…思ってたよりも数が多い。
あ、この場合の多いとは、今拡散した魔力波動に引っ掛かったモンスターの反応であって、その種類とかまではよくわからん。
そして、あくまでも魔力の波動を拡散しただけなので、それに引っ掛からないものには当然反応しない。
S級の装備やアイテムだとしても、そこまで万能ではないということだ。
しかし、モンスターを狩りながらだと時間がかかるし、特に依頼も受けてないからなんかもったいない気持ちになる。
せっかくなら首都のギルドで依頼を受けてから討伐したい。
ただ、モンスターを狩るということは、経験値稼ぎしながら進むということでもあるので、それはそれでおいしいのだが…実に悩ましいところだ。
とは言え、時間は有限なのは前世で死んだ際に痛感した。
なので、ここは…。
………
……
…
結局、俺はモンスターを狩りながら首都を目指すことにした。
とりあえず、経験値は必要だよ。
ここで一つ補足を。
確か、経験値倍化スキルもあったはずだが…取得ポイントの桁が一つ大きかった記憶がある。
転生初期の段階で俺は取得してないが、その存在を知らなかったわけではない。単に取得しなかっただけである。
考えてもみてほしい。確かにレベルアップの効率化には一役買うだろうし、他の倍化系スキルと併用すれば成長速度も上がっただろう。
だが…それは性急が過ぎないだろうか?
確かに戦闘ではレベル差が致命的な場面に出くわすこともあるだろう。
しかし、レベルはあくまでも目安であって、その差は絶対的な致命傷ではない、と個人的には考えている。
要するにスキルの使い方や組み合わせによっちゃ十分にジャイアントキリングなんてのも可能だろう。
それこそ俺のように転生特典で得たモノなんて初見殺しにもなりうる。
つまるところ情報戦だ。鑑定眼や隠蔽を取得してなかった俺は落第ものだな。
持ちうる手札を如何にして隠し、適切な場面で切り、最大限の力を発揮させるか。
それが前世も通して今を過ごしてきたからこそわかった事柄でもある。
若干の脱線は否めないが、要するに経験値倍化スキルは俺には必要ないということだ。
生き急ぎ過ぎないことも必要だ。
レベルアップ時の恩恵が何もないってわけでもないし、何事も程良い方がなにかといいこともある。
それに俺はこういう周回系のゲームもあまり苦にならないくらいには楽しめてた方だからな。ま、好きなジャンルに関しては、という補足はあるが。
そういう理由もあって、俺は成長率とスキルポイントの倍化だけでも十分だという感じなのだ。
以上、補足終了。
そんな感じのわりとどうでもいいようなことを考えながらも、モンスターを狩り、ケルヴィンさんのおかげで上がったステータスや星導者の装備などの武器を用い、いくつかの関所をギルド証と身分証を使って突破した結果…。
「とりあえず、首都には来れたか」
軍国トライセンの首都に入った俺は小さく呟く。
ふむ。
聞いてた以上に貧富の差が激しそうだ。
人間至上主義を全面的に肯定する気はないが…それを声を大にして言うと目をつけられそうだ。
とは言え、服装的に目立つか。
ロングコートのおかげでナイトブレスやスタードライバーがある程度隠れているのも地味にありがたい。
ま、スリに遭う可能性も否めないが……そこは何とでもなるから問題ない。
さて、ではまず冒険者ギルドにでも顔を出すかね。
一応、パーズからやって来たことくらいは伝えておかねば…。
そう思って軍国トライセンの冒険者ギルドへと向かう。
向かう途中、何回かスリ行為に遭ったが、即時スリ返したので問題はない。
え?
何故そんな技術を持ってるかって?
親父から裏世界に入るなら、このくらいの術は持っといて当然と言われて教え込まれた。ちなみに伯父さんからも似たような技術をいくつか修得させられている。
何の役に立つんだよ、と当時は思ったが…今は凄く役立っております。
こういった肉体面での技術は父方の系譜なんだろうなぁ、と最近実感している。
逆に精神的な面でのことは母方の系譜な気が、と最近は思っている。
まぁ、どちらにしても…近場の親戚の中では俺しか男の子供がいなかったしな。従姉妹や妹達…この時点で察してほしいが、俺の下や従姉妹は全員女性だけだったから、余計に俺に期待が向いていたんだろうな。
別に女系の家系ってわけではなかったはずだが…親父と伯父さんは男兄弟だし………あれ? 逆にそこしか男兄弟いなくね? 祖父さん祖母さん世代となると、あんま聞いてなかったな。
………………まぁいいか。これも深く考えたらダメな気がしてきた。
それから俺は軍国トライセンの冒険者ギルドに顔を出した。
案の定、というべきか…パーズに比べたらだいぶ男の率が高いし、いずれもガラや人相が悪そうな人物が多い印象だった。
逆に女性も少数だが、いるにはいた。ただ…ちょっと気が強そうな印象を受け、受付嬢もあまり愛想が良いとは言えなかったように見える。
さらに俺を見てくる目の大半は値踏みに近かったと思うし、あとは金目の物があるかどうか、そういった視線を感じていた。
まぁ、国柄…ということもあるのだろうが…おそらく、この軍国トライセンは実力主義な面も多分にあるのだろう。
実力を示さなければ、上には行けなさそうだ。
ともあれ、この調子だとあまり目立つようなことは避けた方がいいと見た。
とりあえず、今日は顔出しだけで冒険者ギルドを後にしたのだが…俺がギルドを出て少しして冒険者の一団…五、六人程度…も出てきて俺の後を一定の距離を置いて追い掛けてくる。
絶対に面倒事だ。
微かに見えたナイトブレスか、スタードライバー辺りを金目の物と見たか。はたまたこの衣装に目を付けたか…いずれにせよ、絶対に絡んでくるな。
現状、土地勘もないことだし……う~む。やるか?
こういう時の行動は伯父さんからも叩き込まれている。
舐められるな。
そのために必要なのは…。
そう考えながら、俺は敢えて路地裏へと足を踏み入れる。
それから浮浪者っぽい人達も見えたが、無視して歩くこと少し…。
「よぉ、兄ちゃん」
前の狭い十字路地の左右からガタイの良い男と、小柄でいかにも盗賊っぽい男が二人が現れ、俺に声をかけてきた。
さらに後方から三人の気配を感知する。
「何か?」
俺は至って平静に目の前のガタイの良い男に尋ね返す。
「随分と良い身なりしてんじゃねぇか。どこかのボンボンかい?」
ゲヘへ、という下卑たる笑いが前方と後方から聞こえてくる。
今の俺ってそう見えんの?
「いえ、別にそういうわけではありませんが…」
ちょっと頭が痛くなりつつ、適当な返答をする。
「はん。まぁいいさ。命が惜しかったら、その服と金目の物を全部置いてきな」
はい。こういう時のお約束がきましたね。
「え、嫌ですけど?」
何を言ってるんだ、みたいな表情で俺は前方のガタイの良い男に言う。
「なら、痛い目に遭ってもらうか。なに、これも社会勉強だと思ってくれや。不用意にこんな場所に足を踏み入れた、な?」
目の前の盗賊っぽい二人が臨戦態勢に移行する。
背後からもちょっとした殺気と魔力の流れを感知。
実は『魚座』のメモリをまだネクサスに装填したままなので、このくらいの索敵はお手の物だったりする。
しかし、場所が狭いから火と地のエレメントは除外だな。
となると…。
「へへっ。悪いな、兄ちゃん。こんなとこで上物の服を着た自分自身を恨んでくれや!」
そう叫び、盗賊Aが俺に襲い掛かってくる。
『
保管の中から蠍座のメモリを取り出し、即座に起動させて腰裏に収めたままのファルゼンに蠍座のメモリを装填する。
「な、なんだ!? 今の変な音は!?」
盗賊Aが驚いて動きを止めた瞬間…。
ちなみに他の連中も音の発生源を探しているのか、周囲を見回している。
「フッ!」
両足に展開された蠍座の武装…脚甲で動きを止めた盗賊Aを蹴り飛ばし、すぐに駆け出す。
「がっ!?」
壁に激突した盗賊Aの腹に追撃としてさらに右足を刺しながら、俺は前後から左右になった立ち位置で双方の様子を見る。
「ちっ! ただのこけおどしだ! やっちまえ!」
脚甲を着けてたかどうかも確認せずに次の行動か…。
ま、それはそれで対処しやすいが…。
右側から盗賊B、左側から魔法…感覚的に風だから緑だな…が放たれたので、俺は即座に身体を捻り、左足で盗賊Aの側頭部を力弱めに蹴って魔法の盾にし、その勢いを使って盗賊Bに肉薄する。
「ぐべぇ!?」
「げっ!?」
「あっ!?」
声がしたから死んではいまい。
それはともかく、俺は盗賊Bに蹴り…ではなく、右拳で殴りつけた。
「ぐぼっ!?」
蹴りを予測してたらしく、俺の足に意識が向いてたのか、随分とアッサリ決まった。
このままガタイの良い男に向かってもいいが、魔法が面倒だ。
だから俺は左拳で盗賊Bをガタイの良い男の方へと殴り飛ばした。
「ちっ!」
ガタイの良い男は俺の殴り飛ばした盗賊Bを受け止めずに避けた。
その間に俺は後方に走る。
魔導士を守る役は二人。普通なら悪手に見えるが…。
ダンッ!!
狭い路地の壁を蹴って壁役を飛び越え、魔導士の背後に着地する。
ステータスが上がってたからできた芸当だな。
「『
俺は三人の背後から水でできた弾丸を後頭部に向けて撃つ。
魔力がそんなにないからあまり使いたくはないのだが、この場合は仕方ないだろう。
「「ぐわっ!?」」
「なぁっ!?」
壁役だとしても背後から撃たれちゃ意味はないわな。
ついでに魔導士の方も気絶させた。
「テメェ…そんななりで魔導士だったのか!?」
ガタイの良い男が喚くのが聞こえる。
「それ、答える必要あります?」
上昇したステータスのおかげもあるが、とりあえずはガタイの良い男以外の動きは封じた。
「このまま引いてはくれませんかね?」
「ふざんけんな! ここまでコケにされて引き下がれるか!!」
そう言うと、ガタイの良い男は腰裏にしてただろう短剣を引き抜く。
結局そうなりますか。
冒険者として動きにくくなりそうだけど…しゃあないか。
怒りのまま短剣を構えて一直線に向かってくるガタイの良い男を見ながら俺は、いやに冷静だった。
そして、俺は…。
「『
ガタイの良い男に手の平を向け、魔法を発動する。
実を言うと、S級まで引き上げた青魔法だが、俺はそこまで魔法名や効果には詳しくはない。なので、別に
この魔法は、一言で言えば、拡散型砲撃、とでもいうのか?
細長いレーザー状の細かな砲撃を拡散して放つのだ。
そして、当たった者には絶賛、凍結効果を付与して動きを鈍くする効果がある。
で、今回、俺は面倒なので襲ってきた連中を纏めて凍結漬けにした。
「さ、サブ、い…つか、か、身体が…!?」
ガタイの良い男を含め、気絶したであろう連中も凍結し、突撃中だったガタイの良い男は勢い余って前のめりに倒れてしまう。
ま、砂漠の中にある首都だ。その内、解けるだろ。仮に夜まで残ってたら…まぁ、知らん。
俺は襲われたから撃退しただけだしな。
「これ、正当防衛になるかね~?」
と明後日のことを考えながらその場を後にした。
ちなみに蠍座のメモリはファルゼンから抜いて保管に収納済みだ。
魚座のメモリはまだ何があるか、わからんから継続して装填中。
さてさて、これからどうしましょうかね?
こんだけ治安が悪いなら、宿屋もあんまりお勧めはなさそうだな…。
どっか人の出入りしてねぇ廃墟に潜伏でもしようかね?
ともかく、俺はしばらく首都を散策することにした。