星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~   作:伊達 翼

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第十五話『トライセンでのあれこれ』

 あの後、俺は首都の外縁部に当たるところにある今は手つかず、かつ誰も出入りがしていないだろう廃墟の中で考え事をしていた。

 

 それは俺のここまでの道のりについてだ。

 

 俺は特に気にしてなかったわけだが…不意に思ったので、クロトさんの分身体を通じて配下ネットワークに繋ぎ、ケルヴィンさんに尋ねたのだ。

 ちょっとこの大陸の地図を見せてもらえないかと。

 

 その結果、俺は物凄く恥ずかしくなってきた。

 

 ケルヴィンさんに配下ネットワークを通じて見せてもらった地図とメルさんからの証言から、パーズから軍国トライセン…つまり、東に向かう最短経路は『朱の大峡谷』を通ることだと教えてもらった。

 しかしながら、俺はその『朱の大峡谷』なる赤き険しい山々を通った記憶がない。

 つまり、俺はまず森…おそらくは南に南下したが、途中方向も決めず適当に歩き過ぎたため、南から東への経路を辿ったのだろう。

 結果、俺は水国トラージに行けそうだったのに、軍国トライセンに行き着いてしまったわけだ。

 

 方向音痴ではないと自信を持って言った手前、物凄く説得力のない言葉と化したし、物凄く恥ずかしい。

 なにしてんだ、俺ぇ…。

 

 そんな感じで俺は廃墟の中で体育座りして黄昏ていた。

 

 …………はぁ……。

 しかし、来てしまったものは仕方ない。

 しばらくは滞在してみるつもりだ。その中で、この国がどういうものかを知っておきたい。

 

 黄昏タイムからなんとか抜け出し、俺は廃墟の屋根に跳ぶ。

 

 そういえば、魚座のメモリを使って砂漠の移動中に索敵した時、やたら編隊を組んでた反応もあったな。

 なんだったんだろうか?

 見える範囲で地上にはいなかったはず。なら、地中か、或いは空か?

 まぁ、調べてみればわかるか。

 

 そう思いながら空を見る。

 

 雲があまりない。今夜は寒くなりそうだ。

 

 こうして、俺の軍国トライセンでの生活が始まった。

 

………

……

 

 トライセンに滞在して早数日。

 

 なんか冒険者ギルドで依頼を受けようとしても、国が睨んでるとかでなかなか受注できない…。

 昇格するに必要な依頼達成数が稼げないのが現状だ。

 とは言え、何でも規制されてるわけではない。

 討伐系の依頼が受けづらいだけで、採取系や護衛系、特殊系などは………いや、正直に言おう。この軍国トライセンに関してはいずれの依頼も討伐が含まれる場合があるので、受けづらい。

 総じて依頼が受けづらい状況だ。

 まぁ、C級以上の依頼は受けられないのだが、それを込みで考えても規制が厳しいのだ。

 故に…達成数が稼げない…。

 困ったものだ。

 

 あと、この国について色々と聞いてみたりもした。

 流石に軍国と言われることだけあり、ほぼ軍事関係の話が出てきた。

 また、その中で異種族に関してはほぼ徹底した差別意識を持っていることはわかった。だって異種族関係って言ったらほぼ奴隷としか答えが返ってこないんだもの。

 

 ただ、一つだけ例外があった。それが『竜騎兵団』と呼ばれる、この国の最高戦力軍団だ。

 曰く『アズグラッド様が直々に指揮するこの国で最強の軍団』や『竜を使ってはいるが、それを差し引いても人間が竜を従えてるなら、最強だろ』といった人間至上主義の意見は言っても全体的に好印象といった具合の認知だ。

 その要因の一つは、やはり『アズグラッド様』…この国の第一王子だろうな。

 その第一王子が直々に指揮してるというのもあるだろうが、親の七光りで将軍になったわけでもないらしく、本人も将軍たりえる器を持ち、そこに至るまでの努力を積み重ねていたのだろう。

 その証拠に他の王子達は将軍職に就いていないらしい。

 

 そして、この国には『竜騎兵団』の他に『鉄鋼騎士団』、『混成魔獣団』、『魔法騎士団』、さらに噂の域にある『暗部』とやらが存在するとのこと。

 

 まず、『鉄鋼騎士団』。

 将軍の名は『ダン・ダルバ』。長年トライセンに仕えてきた老将とのことだが、その実力はかなり高く、重装兵や騎兵、攻城兵器など様々な兵種を取り纏めている鉄鋼騎士団を率いるだけの実力を持つ歴戦の将なのだとか。

 将としてだけではなく、個人の武勇にも優れており、ガウンの獣王と並び称されることもあるとか…。

 トライセンの保有戦力の中でもかなりバランスが良いんだろうな。

 

 次に『混成魔獣団』。

 将軍の名は『トリスタン・ファーゼ』。トライセン内の名門貴族出身とのこと。それ以上はよくわからん。

 混成魔獣団とは名乗っているが、その概要は調教したモンスターを使役する他、亜人奴隷も組み込んだトライセンの思想を体現したかのような部隊構成なんだとか。

 正直、あまり良い感情を抱けそうにない。

 

 そして、『魔法騎士団』。

 将軍の名は『クライヴ・テラーゼ』。女性人気が高いらしいが…どうも女癖が酷いとの噂もある。ただ、最近は公の場に顔を見せていないとか…。

 肝心の魔法騎士団の方は女性のみで構成されているらしく、軍の中でも高嶺の花のような場所なのだとか。

 そんな中に女癖の悪い将軍…嫌な想像しか湧かんね。

 

 最後に『暗部』。

 噂程度だから具体的なことはわからないが…おそらくは前世で言う諜報機関に近いのだろう。

 ここにも将軍がいるのだろうか?

 ともかく、こればかりは噂の域を出ないから何とも言えん。

 とは言え、そういう部署があっても不思議ではないのも事実。実際、情報は大事だからな(俺も身をもって知った)。

 

 そんな具合にトライセンの軍事関係の話はよく耳にする。

 さらにトライセンの国民達の反応を見る限り、実力主義な面も多分に含まれているのだろうな。

 

 それを踏まえた上で第一王子であるアズグラッドは間違いなく傑物なのだろう。

 王子の中で唯一将軍職に就き、竜騎兵団という一つの組織を作り出したカリスマ性、竜という異種とも心を通わそうとする態度、一般市民から伝え聞く武勇伝と、俺の中ではかなり警戒度が高い。

 まぁ、そんなおいそれと顔を突き合わせることはないとは思うが…。

 武勇伝の中身を軽く聞いたところ、なんか知人と似たような気性を感じる…ような、気がしないでもない…かな?

 と、ともかく…あまり積極的に会いたいとは思えない。

 

 あと、気になるとしたら…。

 トライセン唯一の姫についてか。

 『シュトラ・トライセン』。

 聞くところによれば、第三王子と同じ母親から生まれたらしいが…市民はそれに懐疑的なのだとか。

 その二人を直接見たことがないから知らないけど…市民にまで懐疑的って、それ大丈夫なの?

 あまり情報は出回っていないが…それでも見目麗しいと姿を見た市民達は憧れにも似た感情を抱いているようだ。

 

 で、肝心の気になる点だが…これも探偵見習いとしての勘でしかないが…。

 情報統制がしっかりし過ぎているように思える。

 姿などは仕方ないとしても、それ以外の情報は他の将軍達にも言えることだが、ある程度の線引きはされている。

 まぁ、それは当然と言えば、当然なことなのだが…ある程度の情報を与え、他の情報に目が行かないようにしているというか…。

 英雄気質なアズグラッド将軍や昔からいるダン将軍は仕方ない面も多々あるが、他の将軍に関してはあまり情報が見えない、というか見えづらい。

 特に暗部は噂程度だが、それでもきっと存在しているし、将軍もいるはずだ。

 そして、俺はこの細やかな情報操作は女性が主導でやっているのでは?と疑っている。

 そうなると、トライセン内でそれなりの地位があり、女性かつ頭の回りが速く、情報の価値を理解している人…後半は俺の憶測だが、前半だけの条件で見れば、シュトラ・トライセンが最有力候補だ。

 

 仮にこの国唯一の姫であるシュトラ・トライセンが暗部の将軍だったとして…それが俺に関係あるのか、と思わなくもないが…ま、頭の体操にはちょうどいいだろうさ。

 定期的に頭は使わないと、勘が鈍ると親父も伯父さんも言っていたし。

 勘と推理は別物?

 いやいや、勘である程度の方向性を結論付けてから推理で理詰めする探偵だったからな、俺の親父。

 伯父さんも武術に関しては似たようなこと言って俺をコテンパンにしてきたからな…。

 徹底した理詰めの叔母さんは…もう呆れたというか、諦めた感じだったけど…。

 

 で、なんで俺がこんなことを考えているのかというと…。

 

「そのまま…振り向いたら命はないと思いなさい」

 

 なんとなく…つけられてると感じてはいた。

 その正体を探るべく、敢えて路地裏に入ったものの…結果は背後を取られて短剣か何かの刃を突きつけられている。

 しかも刃の先は心臓を狙っている。

 ステータスは上がってるし、エフィルさん謹製の服を着ているから問題ない。

 ない、とは言え…正直、それを知られても面倒なのでここは大人しく従っておこう。

 

 そう思い、俺は後ろを振り向くことなくコクリと頷く。

 

「よろしい。では、このまま話を聞きなさい」

 

「………………」

 

「あなたにはダン・ダルバ将軍と共に新たなS級冒険者のお披露目の場に参加してもらいます。名目上は将軍の護衛の一人ですね」

 

 な~んで?

 

 そんな当然の疑問が湧く。

 

「俺、E級冒険者なんすがね?」

 

 答えが返ってくるかはわからないが、一応、問い掛けておく。

 

「承知しています。単なる数合わせです。最近は使えそうな冒険者も減ってしまいましたから」

 

 いや、知らんがな。

 だったら規制解除してくれや。

 

 と思わなくもないが…それを馬鹿正直に言うほど俺もアホではない。

 

「それはギルドを通しての正式な依頼で?」

 

「えぇ。私が消えたら、早々に受けてきなさい」

 

「………………」

 

 まぁ、考えようによっちゃこの国から出るいい機会ではあるが…曲がりなりにも将軍の護衛だしな…。

 行き先にもよるが、絶対に行き帰りになるよな…。

 後ろの人も数合わせと言ってるし、そこまで気負う必要はないか…。

 てか、本当にE級冒険者の俺が受けてもいい依頼なんですかね?

 

「それでは」

 

 その言葉を最後に背後の気配が消え去ってしまった。

 

 仕方なく、俺は冒険者ギルドに向かい、護衛依頼を探す。

 特殊も含まれているのか、依頼主の希望により、ランクは不問とするとあった。

 これくせぇ…。

 しかし、少しでも依頼数を稼ぎたい俺としても受けざるを得ない。

 しばしの葛藤の後、この護衛依頼を受けることにした。

 

 

 

 しかし、新しいS級冒険者のお披露目、ね。

 これは十中八九、ケルヴィンさんのことだな…。

 ということは、ケルヴィンさんは試験をクリアしたのか。

 直接会って『おめでとう』と言いたいね。

 まぁ、そんな暇があればいいが…。

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