星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~   作:伊達 翼

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第十六話『再びパーズへ(出戻りとも言う)』

 トライセンの冒険者ギルドで(将軍の)護衛依頼を受注した後、俺は指定された合流場所へと向かった。

 

 合流場所は首都を守る城壁の外だった。

 護衛の詳細な手筈はそこで通達されると、受付嬢から言い渡された。

 

 そして、俺は魚座のメモリをネクサスに装填させたまま合流地点に赴くが…。

 

ヒュ~~~~……

 

 城壁外の砂漠の砂が風で舞っていった。

 

 これは、そう…閑古鳥が鳴いていた。

 と錯覚するほどに人がいない。というか俺しかいない。

 どういうことだろうか?

 日の傾き方からして時間は間違いないだろうし。

 この国の冒険者は時間にルーズなのだろうか?

 

 様々な疑問が脳裏を過ぎる中、護衛対象がやって来る時間になった。

 

 いや、ホントに誰も来ないんだが…どうして?

 

 俺が思い悩んでいると…

 

「やれやれ。シュトラ様にも困ったものだ。この程度の遠出でワシに護衛などいらぬというのに」

 

 そう呟きながら城壁の門から現れた、ちょっと目深に外套を身に纏ったやや威圧感のある老騎士…鉄鋼騎士団のダン・ダルバ将軍だ。

 その後ろには馬が数頭控えていた。

 

(この人が…確かに歴戦の猛者感があるな。しかも自然体で隙らしい隙が無い)

 

 俺は不躾覚悟で将軍を観察してしてまった。

 

「まぁ、新参者、かつこの国に前から居る者以外でワシの護衛を買って出る者は普通いない」

 

(そういうことか~。妙に納得した)

 

 つまるところ、ダン将軍の実力を知ってるからこそ、護衛なんていらないってことなのな。

 しかし、あんな脅され方したらなぁ…。

 俺って意外と小心者だったり?

 

 などと考えていると…

 

「小僧。帰っていいぞ。お前のような若造に護衛など任せられんからな」

 

 いきなりダン将軍から護衛を拒否られた。

 

「まぁ、確かにいりませんかね?」

 

 と俺も素で返す。

 

「ほぉ?」

 

 その返しにダン将軍は少しだけ俺に視線を向ける。

 

「だって、歴戦の猛者な将軍様に護衛っていうのもねぇ。いや、体面的に必要なのはわかりますよ? いくら将軍だとしても、早馬で駆けてちょっとS級冒険者の試合を見るだけ、って言っても立場がそれを邪魔するじゃないですか?」

 

「………………」

 

 俺の言葉にダン将軍は黙って「続けろ」とでも言うかのような視線を俺に送ってくる。

 

「護衛はいらない、って本人が言っても、周りはやっぱ体面的なものを気にするもんですよ。将軍が個人的にお忍びで、っていうなら百歩譲っていいとしても…国が関わってくるなら面子もあるわけですし、護衛の一人くらいいた方がいいのかな~、って思ったりしますけど。ぶっちゃけ、最近依頼が受けられてないんで、ランクアップのためにちょい稼いでおきたいんですよね~」

 

 前半は結構まともなことを言ったつもりだが、最後は本音を漏らしてしまった。

 

「フン、若造のくせに生意気なことだ。だが、ワシを前にして物怖じしない胆力は褒めてやろう」

 

「ど~も~」

 

「仕方ない。おそらくはシュトラ様の手回しの可能性もある。今回だけは護衛として同行を認めてやろう」

 

 と、ダン将軍から護衛として同行の許可を頂いた。

 そうなると、言わない方がいいかもだが、流石に言わないと不味い気がするので、伝えておこう。

 

「ちなみに言っときますけど、自分E級冒険者ですからね?」

 

 それを聞いたダン将軍は…

 

「E級だと?」

 

 露骨に目付きが鋭くなった。

 

「えぇ。最近冒険者になりたてのパーズからやって来ました、新人も新人で~す」

 

 その視線を受けつつ、ちょっと間抜けな返答をしてみた。

 

(その割には物怖じしなさ過ぎる。しかもずっとワシを観察しておる。人をおちょくるような言の割には、動きに迷いがない。ふむ…それにこの身なり。本当にE級かどうか怪しいところだ。それともどこかの貴族の道楽息子か。それならそれで噂くらい聞こえてきそうだが、シュトラ様がそのような者をワシの護衛に推挙するかどうか…)

 

 さてさて、何を考えているのやら…。

 

 ダン将軍の沈黙を俺も沈黙で待つ。

 

(まぁいい。仮に無能なら即座にその場で切り捨てるのみ。シュトラ様には悪いが、この僅かな旅の道程の時間で見てみようか)

 

 そろそろ結論出たかな?

 

 と思っていると…

 

「名前と職業は?」

 

 ダン将軍が簡潔に聞いてきた。

 つまり、同行しろってことかな?

 

「シノブ。青魔導士ですよ」

 

「魔導士。それも青か」

 

「? えぇ」

 

 青魔導士に何かあるのだろうか?

 

「ならば行くぞ。好きなのに乗れ」

 

 そう言ってダン将軍は、先頭の馬に跨る。

 

「はいさ」

 

 俺も答えながら他に控えていた数頭の中から一頭の馬に触れる。

 

「騎乗の経験はあるのか?」

 

 ダン将軍の今更な質問に…

 

「まぁ、一応は…」

 

 俺は曖昧に答えた。

 

 前世で伯父さんに訓練の一環で三か月に一回くらいのペースで乗せられたこともあるからな…。

 つか、伯父さんの場合…一回の訓練の密度が濃いんだよな…。

 

「乗せてくれるかい?」

 

 そんな風に考えつつも、目の前の馬に語り掛けるように呟く。

 

ブルル…

 

 その馬の了承を得たと判断した俺は、その馬に跨り、先頭の馬に跨るダン将軍の少しだけ後ろに陣取る。

 

「行くぞ。遅れるなよ」

 

「了解ですよ、将軍殿」

 

「ハッ!!」

 

 そして、俺とダン将軍の短い旅が始まった。

 

………

……

 

 早馬を駆り、俺とダン将軍は朱の大峡谷を通り過ぎ、パーズへと向かっていた。

 

 ダン将軍の先導もあり、今度は迷わずに行けそうだが…。

 俺は本当にこの大峡谷を迂回したのか…しかも無自覚に…。

 

 その実感が地味に俺の心に突き刺さる。

 

「どうした?」

 

 俺の負のオーラにでも気付いたのか、ダン将軍が尋ねてくる。

 

「いえ、無自覚な自分が恨めしいだけです」

 

「? 意味がわからんぞ」

 

「気にしないでください…」

 

「……よくわからん奴だ」

 

 そら、ねぇ?

 こんなところを無自覚に迂回してたなんて…誰が思うよ。

 

 ともかく、早馬と言えど、何回か休息を取りながら俺達はパーズへと着実に足を進めていた。

 

 

 

 ちなみにだが…。

 魚座をずっとネクサスに挿しっぱにしてたので、索敵は問題なく行えており、モンスターを見つけて先制攻撃を仕掛けたりして、少しだけ経験値を稼いだりもした。

 その際、ダン将軍は後方から俺の行動を見るに留めていたが…。

 値踏みされてる感が凄まじいのと、既にネクサスに装填してた魚座以外の他のメモリをむやみに使えないのが痛かった。

 一応、青魔導士として青魔法でモンスターを討伐したのだが…やはり、どこかぎこちない感じが自分でもわかるくらいにはしてたので、ダン将軍からも何か言われそうな気がしてならない。

 今のところ、特に何も言ってこないが…この沈黙が妙に怖くも感じる。

 

 何事もなければいいんだが…。

 早くパーズに着いてくれ。

 

 と、俺は心の中で願っていた。

 

………

……

 

 パーズを目前にして最後の休息を取っている時の事だった。

 

「小僧。貴様、本当に青魔導士か?」

 

 痛いとこを突かれてしまった。

 正直、腹芸しようにも…相手が悪そうだから誤魔化しきれる自信がない。

 

「………………」

 

 質問を質問で返してもよかったんだが…正直、それした時点で答えてるようなもんだからな…。

 

 俺は沈黙してしまった。

 正直、これも悪手な気がするが…。

 

「だんまりか。密偵、の可能性もなくはないが…それにしては小僧の言動は若い。ある程度は見た目通りだ。これが演技なら大したものだが…まぁ、限りなく白いな」

 

「黒じゃなく?」

 

 ダン将軍の言葉に思わず、声を挟んでしまった。

 

「黒なら即斬り捨てておるわ。あと、今の反応も白い要因だな」

 

 うむむ。難しい…。

 

「モンスターを倒した時の動き方からして、貴様、前衛向きだな?」

 

「まぁ、ここまできたら否定はしませんけど…」

 

 あんま手の内は曝したくねぇけど…どうしたもんか…。

 

「やはり、まだまだ若いな」

 

「そら、将軍に比べたら色んな経験値が足りないのは自覚してますけど…」

 

「フン。それがわかってるだけでも及第点か。じきにパーズに着く。そこで新たなS級冒険者の腕前も見ておこうか」

 

「うっす」

 

 まぁ、パーズでS級って言うと、十中八九ケルヴィンさんだろうけどさ。

 

「そういえば、小僧もパーズから来たとか言っておったな。此度のS級、知り合いか?」

 

 やっぱ、鋭ぇ!!

 

「まぁ、はい。先輩っす」

 

 俺は正直に答えた。

 

「そうか。なら、挨拶する時間くらいはあるだろう。なんなら護衛依頼もそこで達成にしておいてもいい」

 

「えっ…」

 

 思いがけない言葉に俺も少し固まる。

 

「不満か?」

 

「いえ…ただ、ギルドになんて説明しようかと…」

 

「ワシから話しておいてやる。小僧もパーズに残るか、他に行きたい場所でもあれば、そこに行けばいい」

 

「はぁ…?」

 

 なんだ?

 この妙な違和感は…?

 

 俺はダン将軍の言葉に小さな違和感を覚えていた。

 

「いえ、こいつも返さないとなんで、帰りもついていきますよ」

 

 俺がそういって俺が乗ってきた馬を見ながらダン将軍に伝える。

 

「フン、律儀なやつだ」

 

 それ以上、ダン将軍は何かを言うことはなかった。

 

 さっきの違和感…。

 こういう小さな違和感にこそ己の直感を重ねろ。

 とは、親父や伯父さんの言葉だ。

 二人曰く、『こういう些細なことにも気を留めておけ。理詰めは後でもできるが、俺達にとってその直感は本能みたいなもんだからな』、ということらしい。

 未だにサッパリわからんが…俺にもあの二人の血が流れてる…のか?

 よくよく考えれば転生したわけだから、そこはちょっと不安しかないが…。

 ま、まぁ、ともかく…親父と伯父さん譲りのこの直感とやらに従ってみるか。

 

 ………叔母さんはいい顔をしないだろうが…。

 って、いずれにせよ転生したからもう会えんのか…。

 

 ちょっとセンチメンタルな気分になった。

 

 

 

 そして、ダン将軍の護衛という依頼であったが、俺はこうしてパーズに出戻りしたのだった。

 

 久々に戻ってきたパーズは…なんか異様に盛り上がっていた。

 そら、街からS級が出たら、お祭り騒ぎにもなる…のか?

 やはり、俺はまだこの世界について詳しくはないのだろうな。

 

 ちなみに、パーズに着いたのは昇格式当日の朝だった。

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