星に導かれし者 ~戦闘狂の外部協力者は、転生した探偵見習い?~ 作:伊達 翼
精霊歌亭から新居に引っ越しするというケルヴィンさん達に街を軽く案内してもらう、はずだったのだが…。
俺は今、何故か道すがらケルヴィンさん達に包囲され、ケルヴィンさんから『ご同輩』と呼ばれてしまっていた。
「ご、ご同輩?」
ま、マジで意味がわからん。
どういうことだ?
俺の困惑が伝わったのか。
「ねぇ、ケルヴィン。この人、本当に何も知らないんじゃないの?」
「そうだのう。王よ。こやつさっきから困惑しっぱなしじゃぞ?」
「はい。嘘を吐いているようには見えませんが…」
赤髪の女性、騎士の御仁、エルフっぽい少女の順に他の三名が俺を弁護してくれた!
「そうか? 俺と
「企むって何を?」
ケルヴィンさんがそう言うと、赤髪の女性が逆に尋ねていた。
「そりゃ、血沸き肉躍る戦いとか、お互いの全力をぶつけ合う戦いとか、得体のしれない力による戦いだったり…」
全部、戦いが絡んでんな…。
そう思ったのは俺だけではなかったようで…。
「それは全部王の欲望だろうに」
「第一、全部真っ向勝負じゃない。全然企んでる感がないわよ?」
騎士の御仁と赤髪の女性も呆れていた。
「あれ?」
ツッコミが入ったせいか剣呑な表情が一変、ケルヴィンさんはちょっと間の抜けた表情で首を傾げだした。
えっと…今までの言葉から推測するに…俺とケルヴィンさんには共通点があり、それがご同輩の意味に繋がるんだろう。
で、たった今言った『同じ境遇の立場』という言葉から察するに…。
もしかして、ケルヴィンさんも…転生者、なのか…?
あくまでも推測の域を出ないが、これまでの少ない言動から察するに、その可能性が一番高い。
そういや、俺がカレーと口走った時も凝視してきたしな。
それを決定打にするわけにはいかないが…。判断材料の一つとしては使えなくもないかな?
そんな風に思考を巡らせていると…
「んっん…とりあえず、家に招待しよう。詳しい話はそこでしようか?」
と、咳払いしてから改まった様子でケルヴィンさんが提案してきた。
「は、はぁ…わかりました」
断るのは簡単だが、せっかくのお誘いだし、ここは受けておくか。
………
……
…
というわけで、精霊歌亭からそれほど離れていないだろう立地にあった大きな家…いや、これはもう屋敷というのが正しいだろう…にケルヴィンさん達が入ってくのを見て、本当にいいのだろうか、と迷ってしまった。
正直、引っ越しの邪魔になってるんじゃなかろうか…。
という疑念も当然ながらある。
「どうした? 遠慮せずに入ってくれよ」
そんな俺を見てか、家主であるケルヴィンさんが中に入るよう促してくる。
「いや、引っ越しの最中なのでは? 本当にいいんですか?」
「見た目に反して随分と謙虚だな」
「これでも日本人なんで…」
「え? そうなのか?」
そこを驚かれてもなぁ………って、あっ。
そういや、スキルポイントを使って髪と瞳の色は転生時に変えてたな。
鏡を見てなかったから完全に忘れてたが…。
つか、今更ながらケルヴィンさんも黒髪黒目だな。ということは同じ日本人なのか?
そんなことを思っていると…
「まぁ、確かに今日新居を買ったばかりで、引っ越しもしたが…荷解きもそんなに時間もかからないから大丈夫だ」
「なるほど…? って、今日買ったばかり!?」
一瞬納得しかけたが、それを聞いて余計他人が入っていいのか、疑問が湧いてきた。
「やっぱ、日を改めた方が…」
「王がいいと言うておるのだから気にする必要もあるまい」
騎士の御仁に言われ、これ以上は失礼かと俺も腹を決めた。
しかし…
「『王』って、ケルヴィンさんのことですか?」
さっきから疑問に思ってたことを騎士の御仁に尋ねる。
「うむ。今は忠誠を誓ってる身故、王と呼ばせてもらっておる」
ケルヴィンさんのパーティメンバー、という認識でいいんだろうか?
どういう経緯で仲間になったのだろう?
身のこなしから相当な手練れと見える。
親父の探偵稼業の手伝いで培った観察眼で、伯父さんの扱き中に何度も見てきた武人としてのそれをこの騎士の御仁からも感じられるのだ。
「して、王よ。何も知らなそうなこやつから何を聞こうというのだ?」
騎士の御仁がケルヴィンさんに改めて問うた。
それは俺も気になっていた。
俺なんかよりも、明らかにケルヴィンさんの方が色々とこの世界のことを知ってそうだし…。
「ちょっとした情報交換と忠告だな。シノブはこの世界に転生したばかりなんだろう?」
情報交換はありがたいが…忠告?
「はい。そうですけど…」
「俺も転生当初に言われたことなんだが、特殊な職業は隠した方がいいし、持ってるスキルや装備がレベル帯と不釣り合いだと違和感を持たれやすいんだ。特にシノブの場合はその装備品だな。この世界では明らかに浮いてるし、目立ってる」
なるほど。
確かに今の俺のレベルからしたら破格な性能の装備品だしな。
それに固有スキルのせいか、職業も決まってるし…この装備もそれらに付随してるものだったしな…。
「冒険者ギルドへの登録の際は、青魔導士で登録しました。流石に特殊な職業持ちだと色々と不便だと感じましたから…」
「そっか。それは俺も同じだからなんとなくわかる。けど、鑑定眼や隠蔽のスキルを持ってないのはいただけないな」
「鑑定眼については失敗したと思ってましたけど…隠蔽のスキル…?」
隠蔽…つまり、スキル所持者の情報を隠す。
隠す…?
「………………あっ」
ケルヴィンさんに言われて初めて気づいた。
鑑定眼で相手の情報を見れるということは…。
こちらの情報が一方的に筒抜けになるということ。
つまり、俺の星導者という真の職業もわかる人からしたら、簡単に見破られてしまうということ。
それに相手の情報が見えるということはステータスやスキル構成なんかも筒抜けになるということで…。
そこまで考えてしまい、俺の顔が一気に青ざめたのだろうか、ケルヴィンさんが満足そうに頷いていた。
「俺が何を言うでもなく気付いたか」
「はい。迂闊でした。今は鑑定眼のことだけを考えてたので、その逆の発想に辿り着けなかったのは迂闊としか言いようがありません…」
「うんうん。素直でよろしい」
ケルヴィンさんの言葉を聞きつつ、俺は頭の中でこれからの予定を組み立て直す。
となると、スキルの取得順を見直さないとか。
隠蔽が最優先で、次点で鑑定眼と青魔法、身体を使う系やそれに関連するスキルは現時点では除外しよう。
しばらくはこの三つを重点的に取得するとして…Sまでには上げておきたいな。特に隠蔽は…。
今あるスキルポイントは、確か80だったな。現時点では最低でもD級までか。あまりで鑑定眼をF級を取得しておけば後はレベルアップでどうにでもなるか。
法則的に10ポイントのF級から順に二倍ずつされてる気がするから、E級が20、D級が40、C級が80、B級が160、A級が320、S級が640となるはず。
そこからざっと計算してF級からS級までのランクに上げるには1270のスキルポイントが必要か。
俺のレベルアップ時の取得ポイントは80…そこからさらに計算すると…約16レベルアップすれば、S級まで上げれるな。
ただ、今回は隠蔽にほぼ振ることになるから…残り15レベルで、隠蔽はS級まで上がる。
で、鑑定眼と青魔法も同じくらい上げるとして…もう16×2となるからレベルが32必要…。
つまり…。
「最短でもレベル49か…」
「何が!?」
俺の呟きにケルヴィンさんが驚く。
「え? あぁ、失礼しました。現時点で必要そうなスキルをS級まで上げるにはそのくらい必要かな、ってのを計算してまして…」
「思考の海に沈んでると思ったらそんなこと考えてたのか」
「まぁ、ザックリ大まかな計算ですけどね」
スキルポイントの平均取得値なんて、正直わからんしな…。
少なくとも俺には倍化があるから、それを抜いても40ってことになるし…これは、多い方なのか?
いや、おそらくは多いんだろうな。そんな気がする。
俺が転生したからなのかはよくわからんが…。
それは置いておくとしても、問題は最適なレベリングの方法か。
現状、F級の鑑定眼でどれだけ装備やメモリの効果を参照できるのか、そこが不安要素ではあるが…。
とりあえず、魚座はネクサスに装填した時以外は確認済みだしな。
他のメモリも確認しつつ、討伐系の依頼を中心にやってくか…地道だが、確実性のあるのはこれくらいか。
「ありがとうございます、ケルヴィンさん。これである程度の目処は付きそうです」
「別に礼なんていいぞ。それよりも…」
「?」
はて?
今、一瞬…ケルヴィンさんの目が光って見えたような…?
「その装備の力を見せてくれないか? 具体的には俺と一対一での戦いをだな!」
なんか物凄く食い気味に戦闘を迫ってきたんだが!?
それから俺はケルヴィンさんの戦いたいアピールに晒されてしまい、それを断るのに手一杯になってしまった。
いつものことなのか、知っていたのか、は定かではないが、他の皆さんは平常運転…なのか?…のようで、家具の配置を相談していた。
いや、それよりもさっさと引っ越しを終えてください!
いつまでも居座る程の度胸は俺にもないから!
いや、マジで…。
ていうか、忠告メインで情報交換らしい交換をしてないような…?