その日はいつも通りいい天気で、実家である祖父の経営する喫茶店の新メニューの開発や親戚の引っ越しの手伝いなどとまあ色々と予定はあったもののなんの変哲のない日常を過ごしていた。朝から上記の諸々の予定を片付けて家でいつも通り祖父の手伝いをしてた時のこと。カランコロンと扉の開く音が鳴る。しかし今、扉のところはCLOSEとなっている。つまりもう店じまいをした後でただいま絶賛店内清掃をしてる最中だ。そこへ1人の女の子が入ってきた。見た目はそうだな、俺より少し年下くらいだろうか。しかし今は仕事中だ、相手が知り合いでない限りは基本的に愛想よくしておかないとな。そう思い俺こと
「いらっしゃいませ。すみませんお客様、今日はもう閉店ですのでまた別の日に・・・」
そう言って仕事モードで接客してやんわり帰ってもらおうと思ったらその少女は少し驚いたがすぐに笑顔を浮かべた。
「お店にいるたつきってそんな感じなんだ。なんかいつもと違ってすごく新鮮だね。たつきーーーっ!」
そう言った後、その女の子は俺めがけて思いっきり抱きついてきて尻餅をついて倒れてしまう。加減を全く知らない抱きつくというよりタックルに近い感じだが。初めて会うはずなのにこのスキンシップには少し違和感を覚えていた。
「ぎゅーっ、えへへたつきの匂いだぁ。安心するなぁ、えへへこれでたつきともずっと一緒だね。たつきだーいすきっ。すきすきすきっ」
そう言って俺は名前も知らない女の子に抱きつかれて頬擦りをして甘えてくる。その仕草は人間ではなくそれはまるで犬のような感じだった。しっぽがないはずなのにしっぽをふりふりしてるのが伝わってくる。
確かに俺は彼女がいなくて犬系女子が欲しいとは願ったほど恋愛面で思春期拗らせてはいるが・・・そもそもそう願ったことによる代償なのかはたまたまた別の理由なのかは分からないが・・・きっと目の前にいる女の子は犬系女子。もしくはその系統に限りなく近いかもしれない。彼女を欲しいと願った手前流石に見知らぬ女の子に好きという感情をぶつけられても困惑するだけなのだがならなんで彼女は俺を知ってるのか。そこが1番の疑問だったが・・・そんなことを思ってたらもう1人来店者が現れてそれは俺にとってよく知る人物だった。
「ハァハァ、やっと追いついた。急に走り出したと思ったらやっぱりここにいた・・・」
そう言って大汗をかいた幼なじみこと
って、ふざけてる場合じゃなかった。俺は頭の中で思考を巡らせる。考えろ考えるんだこの状況を乗り越える方法を・・・というよりそもそもまずコイツ誰だよ。いい加減離れて欲しい。いくらなんでもスキンシップで頬擦りは過剰すぎる。そんなのが許されるのは犬や猫などの動物だけだ。
「もうダメでしょ!
「うぅ・・・たつき・・・ごめんね、嫌だった?」
そう言ってその子は今にも泣き出しそうな顔をしていた。ここで泣き出してしまえばいよいよ俺の人生は詰んでしまうだろう。どうにかしてこの子を泣き止ませないと。とりあえず・・・
「嫌じゃない・・・からっ」
そう言って俺は優しく、優しく彼女の頭を撫でることにした。宥める相手がいろはの飼ってるペットのこむぎくらいしかいないからこれでいいのかは分からないが・・・その子はみるみるうちに笑顔になっていく。
「えへへ、そうだよね。ほらっ、いろは。たつきも嫌じゃないって言ってるよ」
そう言ってその子は抱きしめる腕の力を少し強めて頭をぐりぐりと服にしてくる。まるでマーキングをして匂いをつけるかのような仕草だ。
「そういう問題じゃないよ!ただでさえメェメェにはバレたらいけないって言われてるのに真っ先にその姿のまま辰輝くんに会いに行くなんて」
「だってこの姿になったらずっとたつきに会いたいって思ってたんだよ」
「そうだとしても人間の姿のままで会いに行っちゃメッだよ。確かに現状に対する理解者の1人や2人は必要だと考えてたけど・・・」
「・・・とりあえずいろは。話が全く見えないんだけど。こちらのお嬢さんは?」
いろはは少し考えてからハァとため息をつく。
「えっと・・・驚かないで聞いて欲しいんだけどね今、辰輝くんに抱きついてる子はねこむぎなんだ」
「はぁ・・・・こむぎちゃんって言うのか・・・・はぁ?えっ、なにっ、こむぎ?ちょっと待ってくれいろは。こむぎって・・・俺の知ってるこむぎは1人・・・じゃなくて1匹のはずなんだが」
というのもさっきも少し触れたが、俺の知ってるこむぎというのはいろはが飼っている犬種パピヨンの子犬だ。雨の日に弱ってたところを俺といろはが保護してるので必然的にたまにいろはの家に顔を出す俺もこむぎとは長い付き合いになる。しかしタックルして抱きつく、過剰とも呼べる頬擦りとかのスキンシップ、頭をぐりぐりしてマーキングする行為、確かにこれらを考えればこむぎと目の前の女の子は当てはまる。いやそれにしても・・・
「犬が人間になるなんて有り得ないだろ・・・」
「あーそれはなんというかガルガルが出て私を助けようと飛び出したこむぎが不思議な力でプリキュアになったというか・・・」
「ガルガル?プリキュア?」
「あーうんっ、余計分からなくなったよね。その辺はおいおい説明するとしてとりあえずガルガルに襲われそうになったのを人間になったこむぎが助けてくれたの」
「なるほどな・・・」
要するにいろはを助けようとしてこむぎが人になったってことでいいのか。まあ全然状況理解できてないが、にしても犬が人になるとか非科学的すぎるだろう。
「というより信じてくれるの?こんなめちゃくちゃな話」
「いろはが嘘をつける性格ではないのは誰よりもよく知ってるからな。それより本当にこの子がこむぎだと仮定して両親にはなんて言うんだ?」
「それは・・・本当にどうしよう」
人間になったこむぎについて2人で目をつぶって考えていたらふと違和感がある。さっきまで抱きつかれてたのに今は全くそんな感じはなかった。というより膝の方を見るとすぴーといいながらこむぎは寝ていた。俺のよく知ってる方のこむぎだった。
「・・・まあ、アレだな。とりあえず本当にこむぎっぽいな」
「でしょ。けど良かった。犬の姿に戻れて・・・人間の姿のこむぎはとーってもワンダフルだけどとりあえずこの先どうするか考えないと。辰輝くん・・・相談、乗ってくれるよね?」
「当たり前だろ。こむぎがこんなことになったんだ。しかし事情が事情だ。他の人に話すわけにもいかないが・・・よしっ、悟に頼んでそれとなく調べてもらうことにするか。あいつなら動物について詳しいし」
「そっか、悟くんなら動物詳しいし何よりアニマルタウンの鏡石とかそういう歴史方面のことも調べてから事情を知れば協力してもらえるかも」
俺の親友である
キャラ紹介①
竜崎 辰輝《リュウザキ タツキ》
本作の主人公。祖父と二人暮らしで実家は喫茶店をやっている。基本的にはスペックが高いがいろはとの距離が近すぎるせいで告白されることもないせいで絶賛思春期を拗らせてる。
名前の由来は今年の干支から。動物テーマの作品かつ現実に存在しない架空のものモチーフで考えた結果こうなった。