「というわけでユキちゃんが本当にいなくなってるのか調査したいと思います」
朝、いつも通りこむぎやいろはと学校に来たらまゆがずっとため息をついていた。話を聞くと最近、たまにユキがいなくなってることがあるらしい。「このままいなくなったらどうしよう」なんて言ってるがはっきり言ってユキに限ってそれはあり得ないだろ。
付き合いの長い俺だからこそ分かるがまゆはユキが嫌がるレベルで過剰なスキンシップや当たり前のように猫吸いをするけど側から見るとユキも大概まゆのことが好きなんだよなぁ。ユキが仮に人間だとしたらツンデレみたいな感じなんだろう。だから杞憂だと言いたいんだけどいろははまゆのために上記のことを提案したのだ。
確かにこむぎとケンカしてこむぎが家出する事態に発展したことあったもんな。それにこの前のこともある。ウイスキー入りのチョコで酔って本音をぶちまけたあの日。いろははひとりぼっちは寂しいと言ってた。それはきっとまゆと同じだろう、それに友達がいなかったまゆにとってユキは唯一と言っていいほどの心の拠り所だったはずだ。もしユキが本当にたまにいなくなってるんだとしたら・・・
「辰輝くん、力を貸してくれる?ユキちゃんのこと心配でしょ?」
「そうだな・・・分かった、週末まゆの家に行ってユキの調査をしよう」
そんなわけで俺といろはとこむぎの3人で次の休みにユキについて調査することにした。最も俺は朝、少し用事があるのでそれが済んでからになる。11時くらいにまゆの家に行くから二人は先に行っててとだけ伝えた。そして当日の朝、俺は喫茶ドラコネットの店内で待機していた。というのも・・・
「辰輝よ、今日は約束があると言ってなかったか?」
「少し気になることがあってな。時間になったら合流するといろはとまゆには伝えてあるから」
というのも先週の休みの時に会った例の子が気になる。というのも別れる前に忠告で彼女は山に行くなと俺に言った。そしてそのあといろはたちは見晴山でクマのガルガルに遭遇した。つまり彼女はガルガルの存在を知っている。もしそうならキラリンベアーが言っていたもう一人のプリキュアというのは・・・
しかし待っても待っても来る気配がなかった。同じ曜日と同じ時間くらいなら会えると思っていたんだが甘かったか。仕方ない時間も時間だしまゆの家に行こう。じいちゃんに例の子が来たら教えてくれとだけ伝えて家に出る。メールでいろはたちはもう先に着いてお茶してるから辰輝くんも早く来てねという内容だった。差し入れはもしかして必要なかったのだろうか。まあすみれさんのことだからまゆの家に友達が来るなんて初めてのことだから張り切ってるかもしれない。あの人ならあり得る。そんな事を考えていたらまゆの家ことPretty Holicに到着した。ユキがたまにいなくなってるのかの調査だったよな。今は部屋にいるのだろうか。とりあえず店から入るか。
「にゃあ」
「うわっ!?びっくりした、お前近くにいたのかよ」
「にゃあ?」
「ああっ・・・びっくりしたよ。いきなり声かけてくるなって」
ユキがしてやったりみたいな笑みを浮かべてくる。最近なんとなくではあるがユキの考えてることが少しだが理解できるようになってきた。てかユキがいなくなってるのかの調査なんだけどあいつらはのんきにお茶でもしてるのだろうか。今日の目的のユキは今ここにいるんだが。まあでもせっかくだし・・・
「とりあえず撫でていいか?」
「にゃあ!」
「そっか、じゃあ遠慮なく。にしても相変わらず柔らかくてサラサラな毛並みだなぁ。そういえばユキ、お前をモチーフにして作ったラネージュ・ラング・ド・シャなんだけどはお店に大人気でなこのまま行けばレギュラー入りしそうなんだよ。今後もメニューとして置いてくれるかもって話になってるらしい」
というのも家族連れのお客さんのお子様にウケが良く縦長のクッキーに猫の模様をつけてるから小さい子たちに大好評である。親御さん曰く値段もお手軽で子どもも喜んでるから是非今後も置いてほしいと言われてる。当初の目的である中高生向けに狙った商品は意図せずに小さい子に大人気を得てしまった。まあ当初の目的と違うが人気が出たならそれはそれで喜ばしい事だ。
「まあ何より最初にお店で食べてくれたのが偶然にも俺と近い年頃の子でな。なんというかすげぇ綺麗な人なんだよ。不思議なことに初めて会ったはずなのな敬語はいらないって言われたんだよなぁ」
果たして本当に会ったこと無いのだろうか。俺は何か大事な事を見落としてる気がするがそれが全く検討がつかない。もっと別の切り口・・・見方があるはずなんだが。
「前回と同じ時間なら会えると思ってたんだけどなぁ。まあ仕方ないよな」
「にゃあっ」
「そっか、ユキもそう思うか?」
「コクコクッ」
まあまたそのうち会えるかもしれないしもし次会うことがあるならちゃんと話したいと思ってる。あの子はどこまで知ってるのかを・・・
「さてとそろそろまゆの部屋に行くけどお前も来るか?」
「にゃっ」
そう言って胸へとダイブしてくるユキをしっかり受け止めてから抱っこしてまゆの部屋に向かう。お店の正面から入ってすみれさんに会ったから差し入れとして用意したラネージュ・ラング・ド・シャのクッキーの方を渡した。代わりに俺はすみれさんからケーキを受け取りたいんだけど・・・
「あのっ、ユキ。できれば抱っこやめたいんだけど・・・うわっ、ちょっユキ!何をっ!」
ユキはガサゴソと俺の腕から肩、そして頭の上へとよじのぼる。そのまま頭の上に器用に張り付いた。一番は離れてくれるのが良かったんだけどまあこれならケーキ運べるしまあいっか。
「相変わらずユキは辰輝くんに懐いてるわね。人間嫌いのユキが動物に懐かれにくい体質を持つ辰輝くんにここまで懐くのには何か理由があるのかしらね」
「どうでしょうね・・・少なくともあの日のまゆほど気を遣ったつもりはないんですけどね」
俺は特別に何かをしたわけでは無い。頑張ってユキから認めてもらえたのは間違いなくまゆが努力したからだ。俺はただまゆの背中を軽く押しただけなんだけど。せっかくだからユキを連れて剛さんや陽子さんに見てもらうのもありなのかもしれない。まあ当の本人は嫌がりそうではあるけど。
「まゆ、来たぞ」
「辰輝くん!あっ、もうっユキ。いないと思ったら辰輝くんといたんだね」
「頭の上に乗ってるのすごく可愛い」
「ユキがいなくなってるのかの調査なのに肝心のユキがいなくてどうするんだよ。てか・・・」
なんでこむぎは犬の姿なのだろうか。あの時、約束したのは人の方のこむぎだったような。
「あっ、こむぎちゃんは後から来るっていろはちゃんが」
「そ、そうなんだあははは・・・」
「ワンワン・・・・」
あーなるほどな。何も考えずに犬の姿のままのこむぎを連れてきたのか。バカかお前らは。
「そういえばいろは。ユキの調査に当たって例のものを使うって言ってたけど剛さんから借りられたのか?」
「例のもの?」
「あっうんっ、お父さんに頼んでバッチリ用意してもらったよ!じゃじゃーん『フクロウカメラ』」
「フクロウカメラ?」
「首がぐるぐる回るから動くものをずっと追いかけて撮影できる超優秀な見守りカメラだ」
ユキがいなくなってるのかの調査に当たってフクロウカメラがあれば便利なのでは?と思っていろはにあらかじめ相談しておいた。無事に借りられて良かったな。ただ・・・
「ユキ本人はあまりお気に召して無いみたいだけどな」
とそんな感じで雑談を交えつつユキがいなくなってるのかの調査のはずだったんだがなんだかんだで俺の膝にいたりしてどこかに出て行く気配はなかった。ちなみにいろはが触ろうとしたら威嚇されていた。確かに動物に懐かれにくい体質を持つ俺がユキにここまで気を許されてるのはかんがえれば考えるほど珍しい。気がついたらいたら夕方になってた。
「ユキちゃんもこむぎも気持ちよさそうに寝てるね」
こむぎもユキの調査に協力してくれたので絶賛居眠り中である。いつもはいろはの膝の上だから今日は自然と俺の膝に寝ていた。
「ごめんね二人とも、せっかくの休みの日なのに付き合わせちゃって」
「そんなの気にすることないよ。私もユキちゃんのことが心配だし友達でしょ?」
「友達・・・うんっ、うんっ!友達そうっ、友達っ!」
そう言ってまゆは嬉しそうにしている。いろははどうしたんだろうと首を傾げてたが前の学校では上手く馴染めなかったからいろはみたいな存在は本当に貴重なんだ。だからいろは、まゆのことこれからもよろしくな。
「なんか視線を感じる・・・ユキちゃん。えっと・・・一緒に遊ぶ?」
「プイッ」
「あっ・・・行っちゃった。でもつれないのも可愛い」
「カメラ見るのすっかり忘れてたね」
しかしユキはあれから一度も部屋を出てない。となるとまゆの考えすぎの可能性もある。基本ユキは遠くに行かないと聞いてるし今日も家の周りをうろうろしてただけみたいだったから・・・
「ワンッ、ワンワンワンワンワン!?」
「っっ!!辰輝くん!」
よりによってこんな時にガルガルかよ。寝ていたこむぎがいきなり起きて俺といろはに強く吠えてきた。
「いろは、そういえば1個だけでフクロウカメラは足りるのか?(早くこむぎを連れて行ってこい)」
「アーウンッ、ヤッパリカメラが一台ダケジャ足リナイヨネ」
演技下手すぎるだろ、動揺しすぎだバカ。もう少し自然に振る舞えねぇのか!だってじゃねぇよ。とにかくまゆとお留守番しとくから早よ行け。
「コホンっ・・・家に戻ってお父さんにもっと借りてくるよ」
「そんな、悪いよいろはちゃん」
「すぐ戻るから・・・」
そう言っていろははこむぎを抱えて出ていって数秒後、なぜか引き返してきた、人の姿になったこむぎが。
「まゆ、遅くなってごめんね。わたしもいろはと一緒に行ってくるから。また後でねー」
「待って!こむぎちゃん、私も行くっ」
「おいまゆっ!」
まゆは慌ててスマホだけ手にとってそのまま行ってしまった。このままだとまゆも巻き込みかねない。プリキュアになれるあの二人ならともかく丸腰のまゆを一人にするのは最悪な状況になった時にまずい!
「クッ・・・ユキ、ちょっと出かけてくる。すぐ戻るから。おい待てよ、まゆ!」
ある程度走ったところでまゆには追いついたが既にこむぎといろはの二人は見失っていた。
「ハァハァ・・・二人とも走るの早い」
「まゆ!」
「辰輝くんっ・・・」
「いきなり家から飛び出すなんて思ってなかったから。とにかくあの二人なら心配するな。すぐ戻ってくる。とりあえず家に戻って待たないか?」
「う、うんっ・・・そうだよね。ごめんね辰輝くん・・・・辰輝くん?」
この感じ・・・やばいな近くにいるっ!いろはとこむぎと合流するまでなんとか逃げないと。
「まゆ、急いで戻ろう。なんか嫌な感じがする」
「嫌な感じ?」
「ああっ・・・まゆ、俺の手を握れ」
「・・・ええっ!な、なんでいきなりそんなっ!ど、どうしちゃったの辰輝くん!私、まだ心の準備が・・・」
「なんでこんな時に恥ずかしがってんだよ!恥ずかしがる仲でもないだ・・・」
「辰輝くん・・・どうしたの?」
「遅かったか・・・クソッ。来るぞまゆ!何があっても動揺するな!」
刹那、森の方から翼の生えた生物が出てきた。どんどん周りが暗くなっていく。そうか、こいつフクロウのガルガルか。
「ひっ!?なにあれっ」
「話は後だ、逃げるぞ!」
「ガルガルゥゥゥゥウウウウ!!!!」
俺はまゆの手を無理やり握ってその場から走り出した。いろはとこむぎに連絡したいが俺はスマホをまゆの部屋に置いてきたままだし・・・
「ガルガルゥゥゥゥウウウウ!!!」
「しまっ!!?」
俺はまゆを抱きしめてそのままサイドに思いっきり身体を回転させる。あぶねぇ今の受けたらマジで洒落にならんぞ!
「まゆ、大丈夫か!」
「私は大丈夫だけど・・・た、辰輝くんっ、後ろっ」
「クッ・・・・まゆ、このまま走って逃げられるか?」
「っっっっ・・・ダメっ、足がすくんで」
俺一人ならまだ時間稼ぎくらいならなんとかなるがまゆを連れながらは無理だ。どうする?どうすればいい、あの二人はまだか!こむぎ、いろは。早くきてくれっ!
「ガルガルゥゥゥゥウウウウ!!!」
「心配するな、まゆ。何があっても守ってやる」
だが俺に出来ることなんて何もない。この身が盾になるかすらも分からない。ここまでなのか・・・すまない・・・いろは、こむぎ。やっぱり俺は・・・
「ガルガルゥゥゥゥウウウウ!!!」
そしてフクロウのガルガルは雄叫びをあげながら爪を立てた。ダメだ避けられないっ、もうダメかと思ったその時だった。間一髪のところを防いでくれた。
「来てくれたのか!二人と・・・も」
いやっ、違う。これは、この人はワンダフルでもフレンディ・・・どちらでもない。目の前にいたのは白い長い髪を靡かせた一人の女の子たった。そして彼女はそのままフクロウのガルガルにパンチして蹴り飛ばした。
そういえばキラリンベアーがニコガーデンに戻った時にいろはとこむぎに会う前にもう一人別のプリキュアと会っていたと言っていた。キラリンベアー曰くめちゃくちゃ強いプリキュアだったらしいが・・・
「ガルガルゥゥゥゥウウウウ!」
「あいつまだ!」
フクロウのガルガルが攻撃しようとしたら彼女その攻撃を片手で防いだ。あれはワンダフルが使ってるのと同じぷにぷにバリアなのか?色こそ違えどその技のスタイルはワンダフルにそっくりだ。
「・・・これ以上関わってはダメっ」
「「・・・・っっ!!」」
そのセリフ一つで俺たちは瞬時に理解した。同じセリフで忠告をした人物が一人だけいたこと。やっぱり思ってた通りだ。この前喫茶ドラコネットに来た彼女がプリキュアの可能性が高い。真実を確認しようとしたが彼女はそれ以上何もいうことなくそのまま飛んでいったフクロウのガルガルを追いかけて行った。
「一体あの子は・・・」
もし仮に・・・仮にあの子がそうだとして結局何者なのかが分からない。なぜ俺とまゆを助けてくれたのか?ただの偶然?いやっ、偶然ならあんなピンポイントで助けれるのか?やっぱり何か
とりあえずユキに関してはフクロウカメラを3台稼働して適度に見守るということで話は落ちついた。なんだかんだで家にいることがほとんどみたいだからまゆの思い過ごしだと思う。そして後日、日曜日。俺はいろはたちに召集されてニコガーデンに集まっていた。あの子の名前はどうやらキュアニャミー、いろはやこむぎと同じプリキュアらしい。そんなわけで手がかりがほとんどない状態でキュアニャミー探しが始まるのだった。
次回はこのままアニメ本編13話の話をやります。投稿はゴールデンウィーク明けです(8日か9日更新予定です)