A,諦めろ
昔々、あるところに猫屋敷さんという親戚がいました。竜崎家と猫屋敷家は交友が深く小さい時から家族で集まることも多かったです。
その中に1人の女の子がいました。自信がなくて引っ込み思案で今にも消えてしまいそうな・・・それはまるで溶けてしまいそうな雪を見てるようで・・・
中学生になってからは毎日が目新しくて忙しくて最近はビデオ通話もあまりしないから猫屋敷家との交流も減っていた気がする。だから猫屋敷家の人に会うのは少し楽しみだなってガラにもなく思ってしまうのは猫屋敷家にいる白いもふもふの猫がいるからだろう。そんなわけでやってきたのはコスメショップこと『Petty Holic』猫屋敷家の新しい家である。昔は会いに行くにも距離が遠かったけどこれからはもっと身近な存在になるのか。
「あらっ、誰かと思えば辰輝くんじゃない。久しぶりね、背伸びたんじゃない?」
「お久しぶりですすみれさん。そうっすね、ちょっと伸びたかも」
「話はあなたのおじいさん・・・龍郎さんから聞いてるわよ。今日はありがとね、手伝いに来てくれて」
「まあ親戚ですしまだアニマルタウンに来て右も左も分からないだろうからじいちゃんが力になってこいって。あっ、すみれさんこれお土産のクッキーです。よかったらまゆと食べてください」
「ありがとね、もしかしてこれ辰輝くんが?」
「ええまあ・・・お口に合えばいいのですが・・・」
「ふふっ、後でいただくわ。あっ、そうそう。まゆなら2階の自分の部屋にいるからここはいいからまゆのことを手伝ってあげて。まゆ、ずっとあなたに会いたがってたから」
「そうですか。じゃあまゆの手伝いに行ってきますね」
まゆのお母さんこと猫屋敷すみれさんに挨拶を済ませる。貴行さんとも話がしたかったんだけど今はまだ海外だったんだよな。まあ仕方ないか。俺は階段を登って二階の奥にあるまゆの部屋に着く。
コンコン
「・・・・・・」
コンコン、コンコン
「・・・・・・」
ノックをするのが礼儀なんだけどそういえば作業してる時のまゆってノックしたところで全く気がつかないんだよな。というより物音が聞こえないんだけどそもそも部屋にいるのだろうか。とりあえず開けてみるか。
「まゆ、いるのか?」
「ふにゃあ〜ユキ、いい匂い。癒される、幸せ・・・」
目の前には猫を抱きしめて匂いを堪能している幼なじみがそこにいた。これ、下手したら前会った時より悪化してるくね?ユキ・・・飼い猫に対するスキンシップは激しいのは記憶にあったが猫に抱きついて匂いを嗅いでる・・・もやはあれは吸ってるのではないのだろうか。とそんなことを考えていたら・・
「ぎっにゃあああああああああ」
ユキが思いっきりまゆの顔面を引っ掻いた。まあ露骨に嫌がってたのは分かってたけどまゆの顔を引っ掻くレベルだったのか。ユキは気難しくてあまり人に懐かないところがある。それでもまゆに対しては心を許してるところはあるけど、まあ側から見てもあれはやりすきだよな。ちなみに悟いわく、スキンシップが過剰だと猫は怒るらしい。例えば撫でるにしても毛並みがボサボサになるまでやられると嫌がるとか。何事もほどほどが大事とは言うが目の前で悶えてるコイツはとにかく両極端だ。
「大丈夫か、ユキ」
「ニャー」
「久しぶりだな、俺のこと覚えてるか?」
とてとてと歩いてきて足元に擦り寄ってくる。あんまり会ってない割に俺はユキに嫌われてはないんだよな。なんならまゆ以外でここまで心を許してるのも珍しいらしくすみれさんやまゆのお父さん・・・貴行さんより俺に懐いてるらしい。まあ可愛いし懐かれてるなら悪い気はしないからいいが・・・
指をぺろぺろ舐めてごろにゃーするユキ。あざとかわいいかよ。マジで撫でまわしたいけど俺は動物の嫌がることはしたくないのでまゆほどのスキンシップはしない。というよりまゆは基本的にやりすぎである。
「でさ、ユキ。あれ放っておいていいのか」
「フイッ・・・」
どうやら過剰に自分の匂い吸われてちょっとご機嫌斜めらしい。
「おい、大丈夫か?まゆ」
「・・・その声、もしかして辰輝くん?」
「おうっ、思いっきり引っ掻かれてたように見えたが」
「大丈夫・・・いつものことだから」
それは世間一般的な意味では大丈夫ではない。よく見たら手も足も目立ってはないが引っ掻かれた跡がある。マジでいつものことかよ。少しは遠慮してやれ。
「それにしても久しぶり・・・だねっ。元気・・・してた?」
「元気だが仮にも俺は従兄弟なんだからもう少し普通に話してくれよ」
「だ、だって辰輝くんに久しぶりに会えるって考えたら緊張しちゃうし、男の子となに話したらわからなくて。辰輝くん、小物作ったりメイクとかしないでしょ?」
「それはまあそうだけど・・・」
このコミュ力で転校して馴染めるかいささか不安が残るがまあなんとかなるだろ。最悪まゆが求めてきたら助け舟くらいは出そう。というより下手したらユキよりも打ち解けられてなくね?
「それより。少し背が伸びたよね?」
「そういえばすみれさんもそんなこと言ってたな。やっぱそう思うか?」
「うんっ、背が伸びて・・・男らしくなったと思う。カッコ・・・いいよ?」
どうしよう、ところどころ途切れ途切れになってるから恥ずかしがってるだけなのかただの世辞か分からないせいで素直に喜べない。
「まあ俺はともかくまゆも可愛くなったんじゃないか?」
すみれさんの娘なだけあっておしゃれとかにはすごく気をつかってるだろうし。いろはは逆にその辺あまり関心はないからな。気はつかってはいるのだろうけど・・・
「ほ、本当に!本当にそう思う!?」
「お、おうっ・・・」
「そっか・・・そっかあ、えへへへ」
あっ、いつものまゆに戻ってしまった。お世辞抜きにしてもまゆの容姿は普通に俺たちの年齢からしたらかなりレベル高いんだよなぁ。見た目だけなら少し大人びて見えるもん。見た目だけならな。お前らも見た目に騙されちゃダメだぞ。見た目が良くて初めて中身も求められてくるんだからな!
「ニャッ!」
「びっくりしたっ!なんだユキ、猫パンチなんかして。遊んで欲しいのか?」
「ニャー」
「うーん・・・遊んでやりたいけど今日は引っ越しの手伝いという名目で来てるからな。また今度な」
そう言ったらユキは興味を無くしたかのようにベッドの上にある座布団に座って寝てしまった。また今度遊んでやるからな。
「てことでまゆ、荷解き手伝ってやるからさっさと終わらせるぞ」
「う、うんっ。そうだね」
そんな感じで引っ越しの荷解きを始める。家具とかいろんなものを設置しながら他愛もない話をしてたらふとまゆが口にした
「そういえばさっき犬を連れてお散歩してる女の子がいてさ」
「うんっ」
「ユキにあいさつしてたんだよね。しかも自己紹介してた。あいさつはまだいいとしても動物相手に自己紹介してるのって珍しいよね」
「あ・・・うん。ソウダナ」
「どうかしたの?辰輝くん」
「いや別に・・・」
ものすごい心当たりのある人物だった。動物になりふり構わずあいさつして自己紹介するなんてそんなの幼なじみであるいろは以外考えられない。
「それよりすごく疲れたよ。ちょっと休憩にしない?」
「なら
「本当に!食べる食べる」
「すみれさんにクッキー預けてあるからどこに置いてあるか聞いてきたら?」
「じゃあお母さんに聞いてくるね、よいしょって・・・っっっ!!足が痺れっ・・・」
「ちょっ、まゆっ!」
「うわっ!」
まゆはバランスを崩してこっちに倒れてくる。受け止めようとしたが俺も座ってたせいで受け止めきれずにまゆに押し倒される形で倒れてしまう。
「いたた・・・怪我はないか?まゆ」
「う、うんっ。ごめんね辰輝くん。辰輝くんこそ怪我してない?」
「心配するな、問題ないから離れてくれないか?」
「あのっ・・・えっと・・・離れようと思っても長いこと床に座ってたから足が痺れて・・・」
「ったく・・・なにしてるんだよ」
「しばらくこのままでいい?足の痺れが抜ける少しの間だけでいいから・・・」
そう言ってまゆは何故かぎゅっと抱きしめてくる。相変わらずぽんこつなところは昔とちっとも変わってないがまあ逆に昔と変わってなくて安心も半分はしてた。いきなりグレられてても困るしな。それにしてもさっきからユキがゴミを見るような目でこっちを見て・・・あっ、近づいてきた。
「ニャッ・・・ペシッペシッ」
「ちょっ、ユキさん。なにゆえ猫パンチを。ちょっと、ユキさん!?」
心なしか少し怒ってる気がする。考えろ猫の心理を・・・悟が言ってた。猫の機嫌のサインはしっぽを見ればわかると。俺はしっぽの方を見てると逆立ってるのが分かる。やっぱり怒ってるじゃーねかユキ。えっ、なんで怒ってるの?もしかしてご主人・・・まゆを取られたと思って心配してる?ハハハ、ユキにも可愛いところがあるじゃねーか。これがいわゆるツンデレというやつか。
「というよりまゆ、俺はなんでユキに猫パンチされてるんだろうな」
「あっ・・・ユキっダメだよ!辰輝くんに猫パンチしちゃ・・・ぎぃゃああああああああ、目がぁああああああ」
「ケッ・・・・」
と思っていたら俺以上のヘイトを飼い主であるまゆにぶつけてきた。本日二度目の顔への攻撃である。身体をゴロゴロさせながらまゆは悶えていた。ひどい絵面である。
「一応もう一度聞く・・・大丈夫か?」
「うぅ・・・もうダメかもしれない・・・」
よくわからないがユキに引っ掻かれたまゆは生気を失った瞳でそんなことを言っていた。あまりにも不憫すぎる。仕方ない、代わりに俺が取ってこよう。
そんなこんなでおやつ休憩を取ってとりあえずある程度の引っ越し作業は終わらせることができた。もう日が暮れそうだな。戻ってじいちゃんの仕事の手伝いしないと。
「じゃあ俺はそろそろ帰るけどよかったらウチの喫茶店にも顔を出してくれ。サービスするからさ」
「うんっ、そのうち顔を出すね、ユキは・・・連れて行けないよね」
「喫茶店はダメだけど2階のウチに置いとくくらいならまあ・・・別に家自体はペット禁止ではないしな。面倒見る人がいないから飼えないだけで・・・」
「やっぱり・・・アニマルタウンに住んでる人はみんな動物が大好きなんだね」
「そうだな俺の友達も動物好き多いし・・・それなら俺の家の隣にペットサロンの店があるから時間あったら寄ってみなよ。もしかしたらユキに似合うアクセサリーとか売ってるかもな。今日はご機嫌ナナメだし」
「多分、辰輝くんと遊べなかったからじゃない?ユキ、辰輝くんのこと大好きだし。すごく懐かれてるよね」
「それは多分・・・」
「多分?」
「いやっ・・・なんでもない。じゃあ俺はそろそろ行くからな。そうだ、もしPretty Holicのチラシとか出来たら持ってきてくれ。ウチの喫茶店に貼って宣伝しとくよ。若い人はあまりこないがマダムたちにはいい宣伝になるだろ」
「本当!?じゃあ出来たら持っていくね」
「おうっ、じゃあなまゆ、ユキ」
「ニャー」
「辰輝くん、ユキが撫でていけだってさ」
「へっ?おうっ・・・そっか、じゃあ遠慮なく。気持ちいいか?ユキ」
「ニャッ」
「今度はユキにも差し入れ持ってくるからな」
いまいちユキがなにを喜ぶか分からないし猫にプレゼントしたら喜ぶものは悟に聞いてみるとするか。そんなことを思いながらまゆとユキと別れて『Pretty Holic』を後にした。
それから真っ直ぐと家に戻るのだがこの日、俺の運命は1匹の犬が1人の女の子に変わったことから大きな何かが動き出そうとしていた。
登場キャラ
猫屋敷 まゆ
アニマルタウンに引っ越してきた辰輝の従兄弟。コミュ症であると同時に辰輝に少なからず想いを寄せてるため余計にコミュ症になりがち。慣れてないとテレビ電話越しですら緊張する。色々言いたいことがあるが今のところ完全にみゃー姉ry)キャラクターボイスを担当してる人のせいで奇声を発しても問題ないと判断した(これプリキュアだぞ)
猫屋敷 ユキ
今作のダークホース。もし人間だったら即まゆから奪い取るという考えを持つくらいには辰輝のことが好き。好きな人に構ってもらえなくて嫉妬してる意外な一面もある。まゆのことは飼い主としては好き。人間化してないおかげで今のところまだ飼い主と修羅場には至ってない