犬系女子との付き合い方   作:りんご(仮)

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大変長らくお待たせしました。ほぼ1万字(9800字)のためかなり時間がかかりました。本編23話の七夕回です!

投稿ペースがしばらく落ちますが死なない程度にはがんばります。今回は非常にこの作品においては重要な回かつ、アニメ本編29話の伏線が含まれています。ようやく主人公の設定がちゃんと固まった。29話で知りたいことをだいたい知れたので←これも投稿かかった理由に含まれてます。


だいさんじゅうろくわ

どうしてこうなってしまったのだろう。走って、走って走って、たどり着いた時には既に手遅れだった。変身の解けたみんなが力無く倒れていた。そしてみんなの元に駆けつけようとしたときに大きくて真っ黒な影に阻まれる。そして黒い影はこう言った。

 

「貴様のせいでプリキュアは死ぬのだ。恨むなら自分の運命を恨んでこの場絶望しながら果てるといい。さらばだ」

 

そう言って黒い大きな影は俺の胸を突き刺した。ああ、そうか俺は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜☆〜

 

「うわあああああああああ!!!!」

 

ばっ、と思わず飛び起きた。動悸が止まらずに気分が悪くなった俺は洗面所に向かって吐き出す。汗で服がびしょびしょになっていて呼吸が乱れていた。恐ろしくとんでもない悪夢をみていた。ガルガルに負けてプリキュアたちが・・・こむぎたちがやられる夢。

 

いやそもそもあれは本当にガルガルだったのか?ガルガルにしてはあまりにも強すぎていた。それにあの黒い影はなんだ?シルエットが見えなくて分からなかったけどそいつが指示をしていた。もしかしたら夢に出てきたガルガルは意図的に力を注がれたのか?いずれにしても夢にしてはあまりにもリアルすぎた。まるでこれから起こる未来を見てるようで・・・

 

「それにしても・・・」

 

︎妙な引っかかりを覚える。あの影はこう言ってた。貴様のせいでプリキュアが死ぬと。今までも悪夢は定期的に見ることがあり起きた時には夢の内容が全く思い出せず悪夢を見たことだけを覚えていた。そして今年に入ってからは大丈夫だったんだがけど今まで見た悪魔の中で一番鮮明に覚えている。あれは一体・・・・

 

「辰輝くん、すごい声がしましたけど大丈夫ですか?」

「・・・ああっ。ちょっと悪い夢を見てな」

「そうですか・・・無理はしないでくださいね。今日は年に一度の七夕祭りなんですから」

「そうだな。分かってる」

 

季節は7月、気温がどんどん上がっていきこれからは暑さ対策が求められる。そんな季節がやってきた。今日は年に一度の七夕祭り、商店街と近くにある鏡石神社で行われるアニマルタウンのお祭り。鏡石に願えば叶うという言い伝えと短冊に願いを込める七夕の二つがかかっている伝統のイベントだ。鷲尾町長に頼まれて今年も喫茶ドラコネットは屋台を出店することが決まってる。

 

「ソラも祭りを楽しんで良かったんだぞ。浴衣を着る機会なんてないだろうに」

「いえっ、楽しみたいのはアレなんですがあいにくこの街に私の知り合いはいませんし、何より一緒に住んでるなら手伝うのは当たり前ですよ。従業員以前に今は家族みたいなものなんですから」

 

ちなみにソラは浴衣ではなく黒いTシャツに白い文字の筆記体で喫茶ドラコネットと書かれた服を着ていた。じいちゃんが昔ノリで作った祭り用の仕事服である。俺もあれに着替えるか。今着てる服が汗びっしょりだし。

 

「さてとマスターも先に行って準備してますし、私たちも行きますか」

「そうだな」

 

ちなみにこむぎたちには休憩になったら一緒に行動すると約束してるからそれまではいつものメンツで楽しんでくれと伝えている。さてと今日は忙しくなりそうだ。去年のことを考えるとな。俺とソラは家を出て鏡石神社に向かう。出店に向かうと各々準備を進めていてそこにはじいちゃんの姿もあった。と言っても粗方終わってるけどな。あまり準備することもないし。

 

「じいちゃん」

「おおっ、来たか。辰輝、ソラも」

「本当にヤーキターイを作るんですね」

 

この前、ソラが教えてくれたがヤーキターイはスカイランド、プニバード族に伝わるお祝いの時に作られる料理らしい。使うのはスカイランドで使う食材がメインらしいのだが、じいちゃんはこの世界での食材でそれをある程度、再現できるところまでやったらしい。ちなみに喫茶ドラコネットのメニューにはミスマッチという理由で採用されてない。だからこの時期にしか食べられない専用メニュー。それがヤーキターイなのだ。お祝いとか特別な時に食べるという意味もあるって言ってたしな。

 

「わしが作るから辰輝とソラで会計と袋詰めを頼む。とりあえずわしは今からヤーキターイを作っておくから」

 

そう言ってじいちゃんはヤーキターイを作り始める。人気なのが通常のヤーキターイで次点がクロワッサンタイプのヤーキターイだ。まあそもそも通常の時点で俺たちの馴染みのあるたい焼きと少し味が違うのだがその味がアニマルタウンの人たちにはものすごくウケがいい。その人気度もあり今年は町長が直々に説得に来たらしい。去年は出店店舗が少ないからドラコネットにも声がかかったけど今年はヤーキターイのこともあり再度お願いされたとか。

 

「一応ソラと俺は休憩時間があるからソラも回ってみるといいよ」

「そうですか、それじゃあお言葉に甘えますね」

 

時刻は夕方の6時になり続々と商店街にも人が増えてくる時間だ。今年の開催が日曜なのもあってものすごい人で賑わっている。俺とソラは袋に詰めるのと会計をこなしじいちゃんは一人黙々とヤーキターイを作っていた。スピード効率があまりにも良すぎてその姿はまるで職人・・・と言ったところだろうか。

 

そして去年はだんだん増えてきたあの感じとは違い今年はもはやこれ目当てで来てるのではと思われるくらいに人が殺到していた。隣の焼き鳥を売ってる肉屋のおっちゃんやフライドポテトを売ってる八百屋のおっちゃんも賑わってるねぇとにこやかに笑っていた。こっちは嬉しい悲鳴である。普段の喫茶店もこれくらい賑わってくれればいいけどコンセプト真逆だから仕方ないよな。静かで優雅なひと時が楽しめるのが一応ウチの売りだから。だからこそこういう時でないとはっちゃけられないわけで・・・

 

「5つで1000円になります」

「シュババババ・・・はいっ、こちらヤーキターイです」

「次の方どうぞ!」

 

じいちゃんの早業もそうだがソラの客を捌くスピードも大概だった。こういう経験はあまりないはずなのだが本人曰く瞬発力さえあればどうにでもなるらしい。手の動きに残像が見えるもん、怖い。そして・・・

 

「申し訳ありません!ヤーキターイ、完売しました」

 

売り切り御免という札をつけてものすごい速さで完売した。最初に言っておくが○食限定とか材料が少なかったわけでもない。単純に一人当たり5個とか6個とか買うせいで完売速度が去年以上に早かった。ちなみに材料は去年の倍用意してるので祭り2日分想定で設定してたのだが考えが甘すぎたらしい。マジかよ、俺はむしろ倍にするのはやりすぎだと言ったのだが倍でも足りない可能性があるとじいちゃんはぼやいていた。ひよって倍以上増やさなかった俺が悪かったのか。だがヤーキターイの人気度を正直甘くみすぎていた。売り切れとわかってからお客さんが別の店に散って行ったがなんか悪いことをしてしまった。

 

ヤーキターイに関してはこの世界の食材で再現するのがかなり難しいらしく今後のことを考えるハメになった。何より祭り限定なのがもったいないという声を多くもらうくらいには。というわけで休憩時間回すもクソもないまま閉店作業に入ることになったので俺は紙袋を持って商店街にいると思われるこむぎたちのところに向かうことにした。

 

「私はマスターの手伝いをしてますので先に行っててください」

「はいよっ」

 

そう言って俺はいろはに連絡する。鏡石の前にいるらしいからそこで合流しようという連絡があった。

 

「おーい、辰輝くんっ!こっちこっち」

「やっほー!たつき」

「みんな浴衣で来たんだな」

「似合ってる?似合ってる?」

「いいんじゃねーの?」

 

なんか一人だけめちゃくちゃ動きやすそうな浴衣着てるけどこむぎの性格を考えるとすごく無難だと思う。まあ似合ってるのも事実だが・・・

 

「辰輝くんは浴衣じゃないの?」

「ウチの屋台はちょっとハードだからな。浴衣だと動きにくいんだよ」

「そういえばみんなで喫茶ドラコネットの屋台に行こうと思ってたんだ。私、今年ことはヤーキターイ食べようと思ってたんだよね。去年はすごく並んでて諦めちゃったから」

「僕もだよ・・・喫茶ドラコネットには置いてない商品だから食べてみたかったのに」

「そんなに人気なんだ。というよりヤーキターイってなに?」

 

そう言ってまゆは疑問符を浮かべるがまゆは今年初めて七夕祭り参加したから無理もないか。まあこのメニューで出店したのは去年なんだが。

 

「見た目は普通のたい焼きなんだけど僕たちの知ってるたい焼きとはちょっと違うんだよね。けどすごく美味しいってとても評判だったんだよ」

「そうなんだ。私たちも行ってみようかな?ねっ、ユキ」

「まあ、あのマスターの作る料理は美味しいから行ってあげなくもないけど」

「まあもう売り切れたんだけどな」

「えーっ!?売り切れちゃったの!これからが祭り本番の時間なのに!?」

「俺も甘く見てたんだよ。材料は去年のほぼ倍用意したはずなのに。まっ、心配しなくても大丈夫だよ。ほらっ、こんなこともあろうかと人数分確保してたんだよ」

 

去年はいろはも悟も残念そうにしてたからそれを想定していてあらかじめ人数分(5つ)用意しておいた。俺とソラは店の準備の時に味見してるから必要なかったし。

 

「本当に!さすがだよ辰輝くんっ」

「1個ずつで悪いが一応みんなの分を用意しておいたからな」

「1個でも充分だよ。今年も買えなかったらどうしようって思ってたから」

 

こんなに人気あるのならじいちゃんにレシピ教わっておこうかな?地味に作り方知らないんだよなあ。じいちゃんの作るヤーキターイの味って。じいちゃん曰く本場で食べるヤーキターイはもっと美味しいらしい。一応再現はしてるもののこれは限りなくこの世界の食材で近づけたものであって実際はもう少し違うらしい。そもそもスカイランドの料理をこの世界での完全再現はじいちゃんでもかなり難しいらしい。見た目が似ていても味が異なる料理が多いんだとか。

 

「私やまゆちゃんは短冊に願い事書いたけど辰輝くんは書いた?」

「いやっ・・・まだだが・・・」

「辰輝はなんてお願いするの?」

「そうだな・・・・俺は・・・・」

 

俺はその瞬間に少しだが頭に痛みを感じた。今のはなんだ?一瞬何か黒い影が脳裏に浮かんだような・・・そしてアレはなんだったんだ?俺は誰と話していたんだ?何かの動物のようにも人のようにも見えたが・・・

 

「おーいたつき。たつきー」

「どうしたの?辰輝くんっ、ぼーっとして」

「いやっ・・・なんでもない。とりあえず俺の願いは・・・とりあえずはこの体質を治したいかな」

 

アニマルタウンと呼ばれることもありこの祭りも動物同伴で参加してる人が多い。そのため動物専用の食べ物を売る屋台があるくらいには。なので周りの動物たちから嫌悪されると流石に心にくる。だから俺は短冊にこう書いた、動物に懐かれにくいこの体質が治りますようにって。まあ所詮は気休めでしかないんだけど書かないよりかはマシか。

 

ちなみにこむぎやユキは既に夢が叶ってるしまってるため特に書くことがないらしい。こむぎはむしろ新たに叶えたい何かを探してたけど。とりあえずそれは一旦置いて俺たちは鏡石神社で出店巡りをしてから奥にある像が祀ってるところにきた。確か動物を供養するために昔の人が作ったって聞いたが・・・クラスメイトの烏丸によるとこことは別に遠吠神社があるらしい。確か見晴山にあるんだっけ?整備されてないところにあるから誰も近づいてないって話を聞くが・・・

 

「昔、この辺りには狼がたくさん生息していたんだよ。けど100年余り前に絶滅してしまったから」

「それってつまり誰も遊ぶ子がいなくなったってこと?」

「そうなるな」

「でもこむぎ聞いたよ?向こうからワオーンって」

「夢でも見たんじゃない?」

「夢・・・」

 

こむぎがどんな夢を見たのかは知らないが俺もその夢で黒い影はその言葉と共に吠えていた。そうアレは確か・・・そう思ってたら鏡石神社のメインイベントが始まるらしい。ライトアップして鏡石を照らすやつ。

 

「それじゃあ行こっか辰輝くん」

「悪い・・・少し疲れたからここで休んでから向かうわ」

「えっ!?だ、大丈夫なの辰輝くんっ!」

「心配するな、まゆ。人が多くて捌くのが大変だったから少しくたびれただけだ」

 

そう言って先にみんなに商店街に行ってもらい俺は少し休むことにした。俺は誰にも言ったことないが昔から不思議な夢を見る。おぼろげでもやがかかってるところが多かったが最近気がついたことがある。俺の夢を見る時の俺がいた場所・・・あれは多分俺が覚えてないだけで知ってる場所だ。もしかしたら頑張れば思い出せるのかもしれない。昔の俺に何があったのか・・・

 

俺は頑張って記憶を呼び起こそうとした。けどこれが俺の記憶なのかどうかは定かではない。だがなんとなくだがこの記憶が俺の体質の大きな謎に繋がってるのは確かだ。俺が思い出そうとしたその時だった。

 

「っっっっっ!!!!!」

 

な、なんだこの記憶は。俺は突然膨大な何かの記憶が流れ込んでいた。数年かそこらではない。まるで数百年の記憶とも呼べる膨大な量が俺の脳内を埋め尽くす。もちろん普通の人がそこまでの記憶量を入れるほどのキャパはない。頭にとんでもない激痛が走る。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁあああ」

 

頭が割れる、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。これ以上は脳に負荷がかかりすぎて耐えられない。ダメだ思い出そうとするほど頭が痛くなりそれを自分で止めることもできない。

 

「たつきー、全然来ないから様子を見に来たけど・・・たつき!しっかりして!ねぇたつき」

「こ・・・むぎ」

 

こむぎの名前を呼ぶ。それがもはや今俺ができる精一杯だった。このままだと俺の脳内が壊れてしまい多分死ぬ。けど俺はそれを自制できるだけの体力が残っていない。祭りで出店を頑張ってたこともあり俺はいつもより体力は少ない状態だ。このままだと本当に・・・

 

「たつき!えっとえっと・・・そうだ!たつき、じっとしててね」

「こむぎ、何を・・・・むぐっ!」

 

それは犬の本能による行動なのか。それともこむぎの思いつきなのか分からない。けどその瞬間、その一瞬がとても長く思えるくらいには時が止まった。そう俺はこむぎにキスをされていた。本来は好きな人同士がする行為であるその行動をこむぎは俺を助けるためだけに使った。

 

どれくらい長い間していたのかわからない。けどこむぎがキスするたびに求めてくるたびに頭の痛みはどんどん引いていく。そして長い長いキスは終わってお互いに口を離した。こむぎは悲しそうな顔をして呼びかけてくる。

 

「たつき、大丈夫?」

「ああっ・・・助かった」

 

気がついたら頭の痛みが引いており意識もはっきりしていた。無理に思い出そうとした結果、俺は耐えられないくらいの頭痛に襲われた。こむぎに・・・キスされて痛みが止まると同時に思い出そうとしていた記憶は全て忘れてしまった。きっとまだその時ではないのだろう。これ以上思い出すのは良くない気がする。

 

「たつき、辛いなら病院行ったほうが・・・お母さんにお願いして診てもらう?」

「陽子さんは・・・動物専門の人だ。だから見てもらうなら別の病院になる。まあけどそうだな。そうした方がいいのかもしれないな」

 

一応症状があるなら知っておいた方がいいかもしれないけどその原因が俺の中になる何かなのだとしたらきっとこれはそう簡単な問題ではない。

 

「こむぎ・・・」

「なあに?」

「なんでキスしたんだ?」

 

というより流石のこむぎもキスの意味を知らないほどバカではないはずだ。

 

「えっとね、いろはとねこの前、お家で映画を見たんだ。テレビでやってたから、それで主人公の男の子がたつきみたいに頭を痛めていて女の人がキスしたら痛みが引いていていろはに聞いたらキスは治療の一種だって言ってたの。だからたつきにもキスしたら治るかなーって」

 

こむぎが言ってたのは去年話題になっていた恋愛映画でありこの前、テレビで初めて放送されていたのを思い出す。とても有名な映画でヒロインが主人公を救うためにキスするシーンがありそのままお互いが感情を自覚して最後には幸せになるって話だったな。あんまり明るい話ではないけどすごく感動する作品だから人気があるのは聞いたことがある。本来は治療でキスなんてしないんだが・・・

 

「いろはには映画は作りものだから間違っても現実でしちゃダメって言われたけどたつきの苦しんでる姿がその映画の主人公と重なったから」

「そっか・・・」

 

もちろんキスで頭痛は本来治らないし本当は好きな人同士がする行為なんだけどそれをそのままこむぎに教えたらいろはだろうがユキだろうがなりふり構わずやる可能性がこむぎにありそうだったからいろはは濁した可能性がある。

 

「たつき、本当に大丈夫?まだ痛いならこむぎがキスしてあげるけど」

「しなくていいから!本当に大丈夫・・・」

 

きっと俺の顔はこれ以上にないくらい真っ赤になってるだろう。仮にこむぎに本当の意味を教えたとしてもこむぎなら問題ないと答えるだろう。こむぎは俺のことを好いてくれてるのは知っている。スキンシップも明らかにライン超えてるし最初はクラスのみんなに嫉妬もされたが最近の反応はいろはに対するスキンシップと俺に対するスキンシップが同じだからまあ犬飼こむぎだしということで片付けられている。しかしどうしたものだろうか、俺の鼓動がおさまる気配がない。分かってはいる、こむぎの感情は飼い主とペットの関係と同じ感情。こむぎはまず恋愛感情すら知らないだろう。ライクとラブを教えてもきっと理解してもらえない。言ったところで俺やいろはのことをどっちの意味でも好きとこむぎなら答えるだろう。そうっ、こむぎは俺を助けるためにキスした。それだけなんだ・・・

 

だから・・・どうかおさまってくれ俺の鼓動。ここでこむぎのことを好きになってはいけない。俺が好きなのは犬系女子であって犬が人になれる女子ではないのだから。昔好みのタイプを聞かれたことがあるが、言動や性格だけならこむぎは俺のストライクゾーンド真中だ。ユキもそうだが動物に好かれない余り動物系の性格の女の子が好きになるくらいには拗らせてる自覚はある。だから一度のキスで勘違いしてはいけない。こむぎはきっとそういう意味では俺を好きになることは今後ないだろうし。本来が犬であるこむぎを好きになるのはよくない。そう俺は結論づけた。

 

「たつき・・・」

「だからだいじょう・・・・ぶ?」

「・・・たつき、顔が熱いよ?もしかしてやっぱり具合悪いんじゃあ」

 

そう言ってこむぎは心配そうに上目遣いで見つめられる。こむぎにまたキスされるのではないかと思ってたわけで実際熱が出てるわけではない・・・はずだ。にしてもなんでこむぎ相手にこんなにドキドキしてるんだよ。しっかりしろ俺。

 

「とにかく大丈夫だ。あとこむぎ、俺の頭が痛くなって倒れたことは他の誰にも言わないでほしい」

「えっ、なんで?」

「・・・心配かけなくないからだ。とにかくこむぎ、このことは二人だけの秘密にしよう。ゆびきりげんまん、知ってるか?」

「うんっ!知ってるよ、約束破ったら針千本飲ませるやつでしょ?」

「こむぎは物知りだな。だから約束だこむぎ、今回あったことは胸の中に留めておいてくれ。俺とお前だけの秘密だ」

「分かった。けどだったらこむぎとも約束して」

「約束?」

「うんっ、たつきがまた苦しくなったらこむぎが助けるから。だから無理しないでっ」

「そうだな・・・こむぎはこのことを秘密にする。俺は無理をしない。これでいいか?」

「うんっ、もし約束破ったらなんでもいうこと聞いてもらうからね!」

「針千本よりはマシだな!よしっ」

 

そう言って俺たちは約束のゆびきりをした。ゆびきりげんまんなんてするのはいつ以来だろうか。最後はいつしたっけ?小さい頃とのいろはの約束かな?あるいは・・・

 

「そうだ、私の願い決まったよ!」

「唐突だな。どんな願いにするんだ?」

「えっとねそれは・・・っ!たつき、ガルガルが出た!」

「なんだと!」

「こっちだよ!大丈夫、何があってもこむぎがたつきのことを守ってあげるから」

「・・・ああっ」

 

男として女に守られるのはどうかと思うが俺は力もなければプリキュアでもないから今は素直に甘えることにしよう。大丈夫だ、アレはただの夢であって未来の出来事ではない。そう簡単にこむぎたちが負けるはずがない。俺はそう信じてこむぎの手を取って商店街の鏡石の前に向かう。その途中でこむぎの戻りが遅いから心配してくれてまゆが様子を見に来てくれていた。割とすぐ近くにいたけど見られてないよな?まあ今はそんなことを言ってる場合ではないが。

 

「こむぎちゃん!」

「まゆっ、ガルガルは!?」

「上にいるよ!」

「ガルガルゥゥゥゥウウウウ!!!」

 

今回のガルガル、あの見た目は白鳥か!白鳥のガルガルは羽で攻撃して辺り一帶を風で吹き飛ばそうとしていた。

 

「みなさん、大丈夫ですか!?」

「ソラちゃんっ!」

「ここは危険です!とりあえず急いで避難してください」

 

ソラのその言葉はチャンスだった。ここでプリキュアに変身すれば大騒ぎになるかもしれない。今はそれどころではないがとりあえずメエメエにも口酸っぱく言われてる以上変身するなら物陰に隠れる必要がある。

 

「辰輝くんも行ってくださいっ!」

「ソラはどうするんだよ!」

「私なら心配ありません。こういう状況は慣れていますので」

「しかし・・・」

 

ソラは言っていた。ソラの故郷のスカイランドでは魔物が出ることもあるからそれを単独で対処できるくらいには強いと。けど流石のスカイランドにもこんなタイプはいないだろう。仮にソラがガルガルを倒せるだけの力があっても相手は元が動物。そう単純なことじゃない。しかもあのガルガルは額に宝石がついてる。つまりキラリンアニマルの可能性が高い。

 

「ガルガルゥゥゥゥウウウウ」

「危ないっ!」

 

ソラは俺を抱き寄せてそのまま伏せた。

 

「とりあえずまずはみなさんの安全優先が先ですね。やむ追えませんがここは私が・・・」

 

そう言ってソラは腰についているペンに手を伸ばして取り外す。気になってたんだけどソラはなんで腰にペンをつけてるのだろう。こむぎたちが持ってるパクトじゃあるまいし。というよりまだなのかこむぎたちは。

 

「周りの人はとりあえず遠くに離れてますね。スカイミラー・・・」

 

ソラが言いかけたその時だった。

 

「助けに来たよ!」

「大丈夫?」

「ああっ・・・」

 

ソラが何か言いかけたところでワンダフルとフレンディが来てくれた。ソラがいることもあってとりあえず今は他人のフリをするのが無難だろう。白鳥のガルガルは叫びながらどこかに行ってしまった。みんなあのガルガルを追撃するのだが去り際にフレンディがここをお願いと言ってそのまま行ってしまった。

 

「ソラ・・・」

「とりあえず・・・あの人たちに任せれば大丈夫そうですね。ねっ、辰輝くん」

「あ、ああっそうだな・・・」

「とにかく今は私たちの出来ることをやりましょう。他の人たちの安全確認と倒れた笹や機材を元に戻しましょう」

 

そう言ってソラがお祭りの運営スタッフに声をかけたり状況を判断しながら行動していた。本当にこういうことに慣れていることがソラを見てれば良く分かる。指示が的確かつ正確なのだ。そしてソラが怖がってる子供達を励ましていた。

 

「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。きっと動物を助けてくれる優しくて強いヒーローさんたちがなんとかしてくれますから」

「うんっ!」

 

そしてみんなの協力があって外れていた短冊も元に戻した。悟から電話があって無事に浄化して助けられたらしい。よく考えたら今回の白鳥・・・キラリンスワンが戻ったことによってキラリンアニマルは全員揃ったってことになるんじゃあ・・・

 

「やったな、みんな」

 

これできっとニコガーデンが完全復活する。メエメエの話によると全員のキラリンアニマルが戻りニコ様が復活すれば俺の体質もニコ様の力なら治せるという話らしいし。原因が掴めればという話らしいが・・・

 

とにかく願い事に書いた短冊はかないそうだ。きっとな。

 

「そういえばソラは書かなくてもいいのか?短冊に願い事」

「そうですね・・・私の願いは既に叶っていますが一応書いておきましょうか」

 

そう言ってソラは短冊に願い事を書いて吊るした。そこには「強くて素敵なヒーローになる」と書かれていた。




というわけで辰輝くんの初キス奪ったのがいろはでもなくユキでもなくこむぎでした。なんだかんだで初デートも初キスも恋愛感情ないこむぎが掻っ攫ってしまいました。主人公の過去の記憶、初期からずっとある動物に懐かれにくい体質、この辺をこれからゆっくり掘り起こそうと思います。

そういえばまゆちゃんが本編でキュアスタ始めると言ってましたがこの作品は唯一キュアスタやってる人物がいるんですよね。そうこの作品の主人公キュアスタやってるんですよ。だから一番嬉しかったのがわんぷりの世界線にもキュアスタが存在するのがしれたことですね。

次回もよろしくお願いします。次回はまゆちゃんの視点の話を挟んでからその次に喫茶ドラコネット編の中ではアニメ本編ラストの24話の話をします。次回もお楽しみに。


わんだふるぷりきゅあ、メインキャラは誰が一番好きですか?

  • 犬飼こむぎ/キュアワンダフル
  • 犬飼いろは/キュアフレンディ
  • 猫屋敷ユキ/キュアニャミー
  • 猫屋敷まゆ/キュアリリアン
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