異世界イッセー   作:規律式足

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 新作です。
 よろしくお願いします。



第一話 異世界帰還者の初デート

 

 兵藤一誠、それが俺の名前だ。両親、学校の奴らは俺のことを「イッセー」と呼び、俺の中に宿るドライグは「相棒」と呼び、グランバハマルで助けてくれた陽介さんは「兵藤君」と呼び、下着姿を見てしまったメイベルは「エロドラゴン」と呼び、風呂を覗いてしまったアリシアさんは「イッセー君」と呼び、意識の無い陽介さんを襲おうとしていたエルフさんは見るたびに襲いかかってくるぞ。

 

『エルフは口封じしようとしてないか?』

 

 異世界グランバハマルから帰還した俺は現在青春を謳歌している高校二年生。

 話したことのない見知らぬ生徒に「彼がイッセーか」「頑張れっ!!」とか言われたことがあるが、どれだけ俺の存在が知られているかわからない。

 意外と人気者?

 いやそれはないな。何せ俺は女子剣道部の部室を覗いたなんて嫌疑をかけられたくらいエロくて有名だ。

 

『嫌疑で終わったがな。実際に覗いてないだろ』

 

 俺が女子の部室の部室を覗くなんて破廉恥なこと、

 

『体質的に不可能だな』

 

 ゴメンなさい、現場にいました。女子剣道部の隣にある倉庫、そこの壁に空いた穴から覗こうとしてました。けど覗けませんでした、だって、

 

『発作を起こして意識を失ったからな。覗きよりも相棒を保健室に運ぶことを優先したあの二人には感謝しておけ』

 

 魂はエロを求めても身体はエロを拒絶する。

 全てはグランバハマルの日々が、記憶が、経験が、トラウマが、俺の身体を蝕むんだ。

 

『それでもエロを求める相棒はおかしい(しかし肉体はこちらに残されていたのになんで影響されるのやら)』

 

 そんな日々エッチなことに情熱を注いでいた俺に突然幸福は飛んできた。

 

「付き合ってください」

 

 学校からの帰り道、見たことの無い制服に身を包んだ初対面の美少女に告白されたんだ。

 

『不審を通り越して怖いわ』

 

 青春感じたね。

 

『相棒の頭はおかしい』

 

 俺の人生で初めての彼女。

 

『了承するとかマジかコイツ』

 

 名前は天野夕麻ちゃん。黒髪がツヤツヤでスレンダーな女の子。

 

『なお名前を聞いたのは告白を了承してから。やはり相棒の頭はおかしい』

 

 目の前に超絶美少女が現れて告白してきたら年頃のモテナイ男子なら即OKするだろう?

 

『せんわ』

 

 ギャルゲーが現実になったような体験。ドッキリ企画やら罰ゲームかと疑い天野夕麻ちゃんが去った後に精霊魔法で周囲を調べたけどその痕跡も無し。

 奇跡は今、この俺に舞い降りたのだ。

 

『グランバハマルでの奇跡体験がろくでもないことばかりだったのは忘却の彼方か?』

 

 その日から俺は彼女持ち。世界が変わって見えた、心のゆとりが凄まじく、勝利者の気分で学校生活を過ごしたね。

 

『クラスメイト達と教師が心配するくらいに挙動不審だったぞ』

 

 付き合って、初めてのデート。

 前々から練っていたプランを決行する時が来た。

 

『ドラグ・ソボールの映画とSEBAソフト探しの中古ゲーム店巡りは外しておけよ。ドン引きされるぞ』

 

 なぜっ?!

 

『バッティングセンターも無しだな。野球好きでも実際にバットを振りたがるのは少数だろ、本人に聞いてから選ぶべきだな』

 

 まさかの全駄目だし?!ドラゴンに?!

 

『自分の趣味の押し付けだけでは相手にとって楽しい時間にならないぞ』

 

 神器に封じられたドラゴンに女の子とのデートを諭される件について。

 

『ところで相棒』

 

 なんだドライグ?

 

『天野夕麻が人外の存在、堕天使であることは気づいているよな?』

 

 当たり前だろ、そんなこと。

 力の揺らぎから人じゃない存在であることは一目瞭然じゃん。 

 

『なのになんで了承したんだよ』

 

 バッカお前。

 

「通りすがりの堕天使の美少女が俺に一目惚れしてわざわざ人間に偽装して告白してきた可能性を捨てきれないからだよっ!!」

 

『捨てちまえそんな可能性。百パーセント罠だろうが』

 

 ふん、所詮は喧嘩した挙げ句周囲に迷惑かけ倒して封印された赤龍帝か。

 

『喧嘩なら買うぞ、アアン?』

 

 たとえそれが罠だとしても、通りすがりの堕天使の美少女が俺に一目惚れしてわざわざ人間に偽装して告白してきた可能性が零に等しくても。

 

「美少女とデートできるじゃねえかっ!!」

 

『一周回って凄いぞ相棒。発作が発動して気絶しないよう中からサポートはしてやるから』

 

「ありがとな相棒。でも普段からして」

 

『気にするな相棒。だが断る』

 

 

 

 こうして、俺はデートの日を迎えた。約束の三時間前に現地到着した。人気ラーメン店新装開店時や閉店日に同じくらいかそれ以上に待つ人がいるから大したことはないね。

 途中なんか悪魔っぽいチラシ配りから実際に使用できる簡易契約召喚紙を渡された。悪魔社会も変わったんだなと昔のやり方を知るドライグがドン引きしてた。

 んで、夕麻ちゃんが到着したら言ってやったね。

 

「いや俺もいま来たところだから」

 

『三時間』

 

 男子の夢に茶々入れないで伝説の二天龍。

 この世の男子が一度は言ってみたいセリフの一つなんだよ。

 そして俺らは手を繋いで歩き出した(顔色青褪め)、憧れのブラリデートだ。

 ドライグ監修の元で練り直したデートプラン。洋服の店に入ったり、部屋に飾る小物を見たりしてデートを満喫した。

 

『(女と密着するたびに気絶しないよう肉体内部の調整とかクソ面倒臭いのだが。やはり普段からはしたくないな)』

 

 お昼は高校生らしくファミレス。グランバハマルの財宝を処分して金はあるけど使う気はないからな。夕麻ちゃんも美味しそうにチョコパフェ食べていた。女の子の笑顔は良い、それはグランバハマルを経ても変わらない想いだ。

 グランバハマルで陽介さんが(無理矢理)デートをさせられていたのを羨ましく思いながら見ていたけど、今俺もできているよ。

 

 そんなこんなで夕暮れ。

 グランバハマルだったら野営の準備とかで一番忙しい時間。

 約束ではそろそろお別れのタイミング、クライマックスは近づいてくる。

 もしや別れ際のキスとか期待できるかな?俺の心臓は興奮で張り裂けそうだ。

 

『(心臓の修復はイケるか?なんとか身体を操って治癒の呪符を収納空間から取り出させないとな。あらかじめだしとけよ、たく)』

 

 夕暮れの公園。

 町外れにある公園は安全のためかいくつかの遊具が撤去され寂しい空白がある。そういえば幼馴染の子とここで遊んだっけ。

 

「今日は楽しかったね」

 

 噴水を背に微笑む夕麻ちゃん。

 デートプラン練り直してくれてありがとうございましたドライグさん。

 

「ねえ、イッセーくん」

 

「なんだい夕麻ちゃん」

 

「私たちの記念すべき初デートってことで、ひとつ、私のお願いきいてくれる?」

 

 魔獣退治なら古代竜クラスでも覇龍を使えばなんとか倒せるし、ゴブリンなら千体規模なら今のままでも余裕。金銀財宝も収納空間に山程あるし、グランバハマルの魔法具に古代魔導具もいくつか。

 よし、なんでも応えられるな。

 どんな願いでも叶えようと身構えていると。

 

 

「死んでくれないかな?」

 

 

 やっぱり罠でした。

 奇跡なんてなかったんや。

 

『俺の一日の苦労を返せバカ相棒とクソ堕天使』

 

 その後は光の槍を出現させて襲いかかってきた本名堕天使レイナーレを光剣で殺さないように斬り伏せました。

 

「安心せい、峰打ちじゃ」

 

『どこだ峰』

 

「どうしよっかドライグ」

 

『始末しないのか?』

 

「自分の命狙われた程度のことで女の子を始末する気はないよ」

 

 そんなことはグランバハマルで慣れたっての。

 

 俺、異世界帰りの史上最強の赤龍帝兵藤一誠はこれからどうするか相棒と相談しつつ、グランバハマルと変わらない美しい夕焼けを見上げるのだった。

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