異世界イッセー   作:規律式足

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 悪魔祓い→エクソシスト



第十二話 悪魔祓い

 

「二度と教会に近づいちゃダメよ」

 

 まず言われたことはソレだった。

 先日の心優しいシスター、アーシアと遭遇したことを俺は主であるリアス・グレモリーに報告した。

 何よりも眷属の身を案じる彼女の姿勢は俺には好ましく映る。

 教会は敵地、天使たちはいつも監視している。

 その理屈は分かった。

 ならばなぜシスター・アーシアは一人で悪魔の治める地に居たのだろう。

 悪魔の治める地に敵対勢力の補充を我が主は気づくことができなかったのか。

 その事実にリアス部長もまた疑問を感じていた。俺が悪魔になるきっかけ、堕天使の襲撃とて本来は起こり得ないこと。別に閉じられた空間ではない、町を覆う外壁があるわけではない。教会への増員にしても悪魔に話を通す義理もないしする筈もない。 

 だがその全てをこちらが察知できないこともまたありえないことなのだ。

 誰かが手引きしているとしか思えない。グランバハマルでの冒険者としての経験から俺はそう思った。

 無論それは身内ではない、学生と悪魔の二重生活をする知り合い達にそんな余裕はない。

 恐らく悪魔の統治方を熟知している何者かがこちらに知られないように他勢力を招きいれているのだろう。だがそこまで推測できていて肝心のその者の目的が推測すらできない。

 俺、兵藤一誠はまだ推測が出来るほどに悪魔という存在を理解していないのだ。

 

「レイナーレという堕天使を引き渡す前にもっと調べるべきだったわね」

 

 自分が感情のまま消し飛ばしてしまわないようにと、堕天使の本部へと引き渡すことをリアス部長は優先してくれた。それは俺の意志を尊重してくれたからだ。

 

「皆も自分の身を第一として行動して頂戴。どうにも堕天使のイッセーへの襲撃の辺りから私に伝わる情報がおかしく感じるわ」

 

 統治のための情報は悪魔上層部から伝えられる。大学進学を控えた彼女が統治の全てを行えるわけがないからだ。あくまでリアス・グレモリーはこの地で最も強い悪魔であるという扱いなのだ。

 

「何もおこらないと良いのだけど」

 

 悔しげな彼女こそが誰よりもそうならない事を予感していたのかもしれない。

 

 

 そんな状況であれ仕事は仕事。

 本日の変たもとい依頼人の元へと転移する。

 事前情報によると一軒家に住まう男性が依頼人だ。またガニュー特戦隊の服を着てポーズをとる程度のことなら良いのだが。

 

『それをなんで平然とできるんだ相棒』

 

 殺気。

 転移直後に魔法陣が放つ光に目が眩む中、こちらへと振り抜かれた光の刃を俺は躱す。

 

「あり?わざわざ悪魔を呼び出す常習犯を脅して、転移してきた間抜け悪魔を首チョンパという俺様ちんのナイス過ぎるアイディアが失敗した?」

 

「まあ慣れてるし」

 

 転移先がデストラップであるのはダンジョンのお約束で常識。この間もミルたんと遭遇したしね。

 声の主は白髪の青年。

 身に纏う装束の十字の文様からして悪魔祓いという存在か。

 

「俺のお名前は、フリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属している末端でございですますよ。あ俺様ちんが名乗ったからって、って聞いてないでやんすね悪魔ちん」

 

「ん?聞いてる聞いてる」

 

 依頼人はもう事切れているか。

 テーブルにうつ伏せになっている男性は胸から血を流していた。悪魔が出てきた時点で用済みだからと心臓を一突きされたようだ。

 それ以外の外傷は銃で手足を撃たれているな。参ったなグランバハマルでは銃の類なんて古代魔導具くらいしかないからロクに交戦経験がないぞ。

 

「それで悪魔祓いのフリード君がなんのよう?」

 

「悪魔祓いのお仕事なんざ一つだけでしょう。お前らクソ共悪魔共を抹殺してお疲れマックが日常よ」

 

 やはり解せないな。

 

「現魔王の妹である我が主の治める地にお前みたいのが素通りしているのはおかしい。捕らえて黒幕を吐かせるか」

 

「随分と見下してくれるね悪魔君、俺様ちんのぶっ殺したい気持ちがグングン上昇中よ」

 

 口元が釣り上がり狂笑を浮かべるフリード。

 けれど、

 

「壊れた振りしないと自分を保てない可哀そうなヤツの相手とか萎えるんだけど」

 

 グランバハマルでお前みたいなヤツを嫌になるくらい見てきたよ。

 

「殺す」

 

「捕らえる」

 

 軽口を止め無表情となるフリード・セルゼンが刀身が光の剣と拳銃を構える、俺は赤龍帝の籠手を装着する。いつもの光剣顕現は悪魔が使うには悪目立ちする魔法だからだ。

 

「死ねよ悪魔、塵になって、宙に舞え」

 

 フリードは狭い室内を中々の速度で刃を振るう、造作無く躱して拳銃の射線から飛ぶ。なるほど銃声音のしない光を飛ばす拳銃か、跳弾の心配がいらないのは助かるな。銃口からの射線を見切れば良いだけだ。

 テンションは下がっても殺意は上がったようで攻撃に鋭さが増す。初の悪魔祓いとの戦い、できれば経験を積みたいものだ。

 

「やめてください!」

 

 そこへ先日聞いたばかりの声が響いた。

 そうか、居たのか。

 悪魔祓いは襲いかかろうとした姿勢のまま動きを止め視線だけをシスター・アーシアへと向けた。

 

「おんやあ、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。結界は張り終わった?」

 

「! いやぁぁぁっ!」

 

 そういえば俺にもあんな風に死体に反応した時期があったよな。

 胸に穴の空いて血を流す遺体を見て彼女は悲鳴を上げていた。

 

「クッソウザ。これだから温室育ちのガキは嫌いなんだよ。悪魔に魅入られたダメ人間はこうやって処すのが俺らのお仕事なんですよー」

 

「そ、そんな」

 

 フリードの説明にシスター・アーシアが言葉を無くして立ち尽くす。そしてこちらの存在に気が付いてしまったようだ。

 

「イッセーさん?」

 

「どうも」

 

 苦笑しながら手を上げる。

 こんな形の再会は嫌だったね。

 

「あらお知り合い?」

 

「案内ぐらいつけてあげなよ」

 

「あー地元民だったらしいしね君?レイナーレ様に殺されて悪魔に転生したんでしょ?」

 

 情報が錯綜してるな。

 捕まったレイナーレが人間に負けたと言わないために誤魔化したのか?

 

「イッセーさんが悪魔?」

 

「成り立てだけどね。まだ一月に満たないよ」

 

 どうせ遅かれ早かれだ。

 残念ではあるが仕方ない。

 

「アハハ!悪魔と人間は相容れません!特に教会関係者と悪魔ってのは天敵さ!それに俺らは神にすら見放された異端の集まりですぜ?」

 

「教会ではなく堕天使陣営か、ややこしい」

 

「悪魔ちんの事情なんて知んないよーだ」

 

「それはそうだな」

 

 こっちもそれは同じことだ。

 しかし所属は分かったがそれでも不思議だ。そんな立場の連中がどうやって侵入したんだ。

 

「え?」

 

「なにしてんのアーシアたん?」

 

 その行動に俺は呆気に取られた。

 シスター・アーシアは俺とフリードの間に割って入りこちらに背を向けて庇うように手を広げていたのだ。

 何だこれは?彼女は何をしている?

 俺は意図の読めない彼女の行動に混乱してしまっていた。こんな風に庇われるなんていつ以来のことなんだ。

 

「はい。フリード神父、お願いです。もう止めてください、この方を許して見逃してください」

 

「いやね、見逃すも何も悪魔ちんの方が俺よりも強くない?」

 

 シスターが俺を庇う?そんな事があり得るのから?種族としてからもう俺達は敵同士なんだぞ。

 

「悪魔と契約したからといって人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなのおかしいですっ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ?!ばかこいてんじゃねえよ!!お前教会出身だよな?!何を習ってきたんだよ!!」

 

「イッセーさんは優しかった!!悪魔にだっていい人はいます!!」

 

「いねえよ馬鹿が!!」

 

「私だってこの前までそう思ってました!!でもこんなこと主が許すわけありません!」

 

 本当に強いなこの娘は。

 けど、フリード・セルゼンには逆効果だ。

 彼にはその言葉は通じるわけがないんだ。

 

「堕天使の皆さんに殺さないように命じられてるけど、そこまでこいて許されると思うなよ?

 そこの悪魔ちんを殺ったら手足の一つくらいは覚悟しておけ」

 

「やれるものならやってみな」

 

 もう情報収集はいい。

 コイツを倒してアーシアを保護する。

 

〈イッセー聞こえる?!〉

 

「部長、何かありましたか?!」

 

 念話の類か?そんな魔法もあるとは。

 

〈そちらに堕天使複数人が向かっているわ!今すぐ魔法陣から帰還して!!〉

 

「俺なら全員倒せます!!」

 

〈ダメよ!!〉

 

「けど、このままだとアーシアが」

 

「あー、帰るの悪魔ちん?なら帰った帰った。アーシアたんならもうよいよ。どうせその娘はこれからもっと酷い目に合うんだし」

 

 どういう意味だ。

 ならば引くわけにはいかないだろうが。

 

「イッセーさん、いいんです」

 

 ムカつくなあ。

 俺は力があるのに何もできてないだろ。

 なんで女の子に気丈な表情させてんだよ。

 

『振り切れなかった相棒の過失だ』

 

 ドライグ。

 

「また、お会いしましょう」

 

『あんな表情させておいて、お前にここに留まる資格はないぞ』

 

 畜生が。

 ああそうだ俺はグランバハマルで力を得た。

 でもその力を自分のためだけに振るっていて、誰かのためになんてつかってなかったんだ。

 だからこうして、助けられない。

 広範囲に広がった転移魔法陣にのまれ強制帰還。泣きそうになるのを我慢して微笑むアーシアの顔を俺は見つめることしかできなかった。





 補足、説明
 兵藤一誠の欠点は、力を振るうことが躊躇いがちな点です。グランバハマルでは命の危険があったからこそ迷えず戦えましたが。こちらではそうじゃありません。自分が戦ったらどうなるのか、それを常に考えてしまい。今回アーシアを取りこぼしました。

 リアス・グレモリーの立場
 学生やってて大学進学控えていて悪魔の契約やっているのに領主なんて出来るか!!
 という作者の考えから、彼女の立場はあくまで町で一番強くて血筋の良い悪魔、という形です。パトロールなどはボランティアみたいな感じですね。
 トラブルなどは管理している上層部から連絡を受けて対応しています。なのでそこにどこぞの聖女マニアが介入しているせいで今回の不手際となっています。
 無理がある設定ですが、こんなイメージでお願いします。

 転移デストラップ
 転移した先にラスボスがいたりする罠。グランバハマルとミルたんの件で経験済

 ガニュー特戦隊→ギニュー特戦隊
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