異世界イッセー   作:規律式足

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 先に申し上げますが。
 今話にて問題ある仕草があります。
 不快に感じた方はすいません。
 しかしどうしても入れたいシーンなので。
 


第十四話 赤龍帝・兵藤一誠

 

 彼女の祈りが報われたらいいのにと思った。

 辛い境遇であろうと誰も恨まない彼女に救いがあって欲しかった。

 そう。

 神がソレを与えないなら、

 悪魔たる自分が与えよう。

 ただ、それだけの話。

 

 

 

 オカルト研究部に戻った俺がしたことは主であるリアス・グレモリー様に報告。

 未だにこの地で好き放題している堕天使共の情報を彼女に伝えた。

 

「リアス・グレモリー様、貴女に仕える眷属悪魔としてお願いと提案がございます」

 

「あのシスターのことね、ダメなものはダメよ」

 

 報告内容にはアーシアの過去も含まれる、元より情の深いリアス部長はなんとかしたいと内心では思っているだろうが、眷属の命を背負う主として許可することができないのだ。だがそれを理解していても俺は言う、それこそが通すべき筋だから。

 

「願いはアーシアの救出です。

 ですが提案は悪魔として利があることです」

 

 アーシアを助けることのメリットの提示。それを持ち出せば悪魔としても貴族としても彼女は無視することができない。

 

「転生したてなのになんでイッセーはこんなに悪魔らしいのよ」

 

 呆れたようにリアス部長は言うが、俺からしたら貴女達は悪魔らしくなさ過ぎなのだが。

 仕草で先を促されたため提案内容を述べる。

 

「まず一つ目はアーシア・アルジェントを部長の眷属として勧誘することです。確か悪魔の駒は全て埋まっておられませんよね?彼女の性格と治癒の力は部長も気に入ると思います」

 

「そうね、イッセーから聞いてるだけで良い子なのは間違いないもの。でも本人が断ったらどうするつもり?」

 

 無論その可能性は高い。

 命を失う瀬戸際か、命を失わない限り、異種族への転化など受け入れることはできないだろう。

 

「二つ目は、彼女を人のままレーティングゲームの医療スタッフとして雇うこと。傷の絶えないレーティングゲームに彼女の治癒の力は有用でしょう、ゲームを取り仕切るアジュカ様も後ろ盾になってくれるかもしれません」

 

 悪魔の医療スタッフは有能である。

 試合中の傷を万全な状態へと治してくれるらしい。だがその治療はフェニックスの涙という生産数の限られた霊薬に依存しているとのこと。ならば治療の手段は多い方がよいだろう。

 

「確かに悪魔も癒やす神器【聖母の微笑】があれば試合中も使うフェニックスの涙の消費を抑えられるわね。アジュカ様もレーティングゲームの為なら了承するでしょうね」

 

 兄の同僚にして親友である事からアジュカ様の人となりを知っているのだろう。ややゲンナリとした顔で頷いていた。

 

「最後に悪魔以外の異形種も受けられる診療所を建ててそこにアーシアを勤めさせることです。如何に頑丈な異形種であろうと怪我をしないわけではないでしょう。そんな時に治療してもらえるとなれば、現在友好的とは言い難い妖怪達と関係を築くきっかけになると愚考いたします」

 

「仮にアーシアが悪魔と直接関わりたくないと言ってもできる手段ね。他神話との友好は現魔王であるお兄様の望み、成し遂げれば私の功績になるわけね」

 

 フー、と俺の提案を聞き我が主は頭を抑えながらため息をついた。

 助けたいのはリアス部長も同じ、そしてそこにあるメリットが明らかにされる。

 となると残る問題は堕天使勢力との関係についてだ。長年の冷戦状態から戦争が起きることだけは避けたいのだろう。

 

「朱乃、【神の子を見張る者】はアーシア・アルジェントについては知らないと言ってきたのね」

 

「確認しましたが間違いありませんわ」

 

 今回の一件、部長は部長で動いていてくれた。俺が再度襲われた時点で情報収集をしてくれていたのだ。

 

「堕天使全体の計画で【聖母の微笑】を確保しようとしてるならいくら不満があろうと一若手悪魔でしかない私は退くしかない。けど下の連中の独断なら話は別ね」

 

 二天龍の力を以て堕天使勢力と戦争しますとも伝えたがそこは信用して貰えなかったようだ。

 まあ仮に戦争するとしたら、形貌変駆の魔法でそこら辺に居る生き物を魔炎竜やグランバハマルの魔獣に変化させて堕天使領内で暴れさせ、混乱した所で幹部連中を討伐するという予定だった。さらに後詰戦力としてミルたんにも助力を乞うた上でだ。

 

『いざ戦うとなると本当に容赦ないな。悪魔かお前は』

 

 悪魔ですが何か?

 まあこんな周りくどい手段を用いなくても、覇龍より先の状態になれば堕天使勢力を確実に単独で滅ぼせるのだけど。

 

『あの形態は強いけどヤバ過ぎなんだよなあ。というかせめて悪魔の駒に適応しないと使えないからな』

 

 

「最後に聞くわイッセー。賢い貴方ならたとえメリットがあろうとアーシア・アルジェントを救うことはトラブルにしかならないと理解してるわね。なのにどうしてそこまで助けようとするの?」

 

 どうしてか。

 決まっている。

 

「気にいらないからですよ。あんな良い子を辛い目に遭わせるだけの神と、利用しようとする堕天使達が」

 

 だから俺は、

 

「アーシアを助けた後に、空の上の聖書の神に向かって中指突き立てながら言ってやりたいんです「莫ーーー迦」って」

 

 地球上で最も古い侮辱のジェスチャー。

 誰かに向けるべきではないソレをしてやりたい程に救いを与えぬ神に俺は憤っているのだ。

 

「プッ」

 

「フフ」

 

「アハハ」

 

「フゥ」

 

 俺のその言葉に部長は吹き出して、朱乃さんは笑みを浮かべ、木場は同意だとばかりに笑い出し、小猫ちゃんは呆れたようにため息をついた。

 

「良いわねソレ。アーシア・アルジェントを助けた後に私も一緒にしようかしら」

 

「あらあら下品ですわよリアス」

 

「僕もやるよイッセー君。きっと爽快な気分になれるから」

 

「皆さんがやるなら私も」

 

 誰かに向けてやって良い仕草ではない。

 でも理解している上でやろう。

 神に向けてやってやろう。

 我らは悪魔。

 天に唾を吐き、悪逆を為す存在。

 

『いや、その神だけど多分。まあだとすれば問題ないから良いのか?』

 

 何かに気づいた様子のドライグがゴニョゴニョ言っているけどどうしたんだろうか?はっきり言わないと分からないのだけど。

 

 

 グレモリー眷属全体での方針が決まり全員で教会へ突撃する。

 連絡を受けたソーナ・シトリー様が駒王学園の校門で眷属勢揃いで見送ってくれた。

 話を聞いた匙君などはその目に涙を浮かべながら必ず助けてこいと激励してくれた。

 他の初めて見る人達もそんな感じだ。前に聞いたところソーナ様の眷属は神器に人生を振り回された人達ばかり、アーシアの境遇も他人事に思えないのだろう。

 胸に熱くこみ上げてくるものを感じながら俺達は教会へと向かう。

 

 

 既に空は暗く、街灯の光が道を照らす時間となっている。教会が見える位置まで到着したところで用意されていた図面を広げた。

 教会の敷地はその規模の割に広い。

 聖堂と宿舎まで備えるのだから今まで何度も拠点とされてきたのだろう。

 聖堂か宿舎、二つの建造物のどちらかになるが。怪しいのは聖堂とのこと。

 木場の話によれば、聖堂の地下で儀式を行うのがはぐれ悪魔祓いのセオリーらしい。

 神の否定。

 それを象徴とする行為だからと。

 極めて同感だが、仲良くはなれない。

 敵の敵だからといっても連中も敵なのだから。

 聖堂の地下にてアーシアに何か、情報によれば恐らく神器の抜き取りという儀式をするのなら入口の大広間に戦力を集めているのだろう。

 中位堕天使であるレイナーレははぐれ悪魔祓いの手勢を従えていて、それを従っていた堕天使達が引き継いだのだろうと予想できる。

 しかしアーシアが地下に居るなら都合が良い。

 

「俺に行かせてください部長」

 

「イッセー、ここは全員で行くべき所よ」

 

 止める彼女の気持ちは分かる、でも。

 

「貴女にお見せしたいんですよ。

 史上最強の赤龍帝の力をね」

 

 なんとなく気づいていたけど、

 彼女達グレモリー眷属は、俺の実力を理解していないみたいなんだ。

 先日のはぐれ悪魔祓いフリード・セルゼンはなんとなく察していたのに。

 

 

 

 

「やっぱりあの悪魔ちん強過ぎだって」

 

 ブルブルと震えながらフリード・セルゼンは呟く。その震えは恐怖からではない。

 吐く息の白さから伝わるように物理的にこの場所が寒いのだ。

 来ると予想できた悪魔達。

 それが全員か数人か一人かは分からなかったが、来ることは確信していたので彼は適当なトコでトンズラする気だった。

 試験管ベビーとして生まれ、薬物投与により強化され、過酷な鍛錬を課され、悪魔を討伐し続けて、精神面に異常が発生(これは教会に不都合になっただけだが)した身体の、残りどの程度か分からない余命を無駄にドブに捨てる気は、フリード・セルゼンにはないのだから。

 だが予想外なことが起きた。

 グレモリー眷属は全員で来て、

 先日相対した成り立ての悪魔は一人で突入して、

 たった一言魔法を唱えただけで、広い聖堂に集結していた堕天使二体と配下であるはぐれ悪魔祓い含めた信棒者共を凍りつかせたのだ。

 

「やっぱり氷嵐魔法は馴染むな」

 

『あれだけメイベルに氷結封印されればな』

 

 先日は気づかなかったが、あの悪魔が左手に装着した籠手は神器。しかもかつて教会で覚えさせられた危険物一覧に記載されていた神滅具、その一つである赤龍帝の籠手だ。

 こら勝てねぇわ。

 中位堕天使とその配下程度でなんとかできる筈がない。ましてや目的の儀式の準備すらリーダーが早々に捕まったことで中途半端なのだから。

 

「そんじゃ俺様ちんはトンズラトンズラ」

 

 死ぬことに恐怖も躊躇いも無い。

 だが、ただ死ぬのは嫌だった。

 こんな逝かれた世界に。

 あんな酷いことをした教会に。

 せめて傷跡一つでも遺して死にたいのだ。

 

「見逃されたかな?」

 

 こちらの方向に一瞬視線を向けた赤龍帝。

 自分の境遇に大体の予想をつけたから見逃したのか。

 まあどちらでも良い。

 なんだか近いうちに再び会いそうな気はするのだから。

 逃亡の中で脳裏によぎるのは魔女にされた聖女アーシア。あんな環境でも心の光を失わなかった少女。

 

「お前みたいなお馬鹿は幸せになっちまえよ。アーシアたん」

 

 そこが陽だまりの下か、闇の中なのかは分からない。それでも彼女には自分とは違う、笑顔溢れる先があることをフリード・セルゼンは確信していた。

 

 

「うそ」

 

「あらあら」

 

「ここまでとはね」

 

「寒いです」

 

 それぞれの反応をしながらグレモリー眷属も聖堂の中に突入する。

 そこは一面、氷の世界。

 神聖なる聖堂は氷嵐に彩られより幻想的な空間となっていた。

 さらには宙に浮かんだまま凍りついた堕天使二体と配下たるはぐれ悪魔祓い達が氷像というオブジェになっていた。

 

「(やっぱり精霊魔法って強過ぎない?)」

 

『(だから日頃からそう言っているだろうが)』

 

 悪魔屈指の冷気使いたる現魔王の一人ならば同じことは可能だろう。

 だがそれは容易く行使した力がそのレベルであることを示していた。

 グランバハマルならこの程度、覗きの度におこることなのだが。

 

『メイベルとのエンカウント率が高かったからな』

 

「ゴホン、イッセーが赤龍帝の言うように史上最強の赤龍帝なのは納得ね。さ、後は地下に行くだけよ」

 

 気を取り直してリアス部長は言う。

 やっぱり実力は疑われていたようだ。

 俺達は祭壇の下に見つけた階段を降りた。

 階段の先には奥へ続く一本だけの道、両脇には地下室らしき扉があった。

 気配は一番奥からだけ。

 そこにアーシアが居るのだろう。

 奇襲を警戒して進みながら一番奥の大きな扉に辿り着き、顕現した光剣にて切り開く。

 そこで目に入ったのは、悪魔の仕事で頻繁に呼び出す契約者の漫画家さんと同じような顔して、目を血走らせながら一心不乱に床に呪文を書き込む堕天使の男性と儀式に使用するだろう十字架の横で縄に縛られたまま座っている、所在なさ気な様子のアーシアだった。

 一瞬気不味い空気になってしまったが、こちらの侵入にすら気づかない堕天使男性を赤龍帝の籠手を着けた左腕で殴って気絶させ「レイナーレ様の馬鹿」ツッコまないぞ。

 縛られたアーシアを開放した。

 

「イッセーさん。どうして」

 

「君に報われて欲しかったんだ、ただそのつもりで来たんだけど」

 

 全員の気合いというか気負った割りにあっさりと終わってしまったことに気不味い空気だ。なにせ俺以外殆ど何もしてないし。

 

『実力からしたら当然だろう。いかに悪魔の弱点である光を操ろうとリアス・グレモリーどころか木場裕斗一人で殲滅可能な連中だぞ』

 

 あの堕天使レイナーレが中心人物で最強戦力なら仕方ないのかな?

 

『厄介だったのは後ろ盾の【神の子を見張る者】と、この程度の連中が侵入できた異常さだけだ。勝ちはどんな形でも勝ちなんだから飲み込んでおけ』

 

 ドライグの諭すような言葉になんとか頷く。

 そう、いくら簡単に終わったとはいえアーシアの命が危険に晒されていたのは事実なんだ。

 だから救えた事実を喜ぶべきだ。

 

「ありがとうございます、イッセーさん!!」

 

 リアス部長達との話を終えたアーシアがこちらに駆け寄り、輝くような笑みで礼を言ってくれる。

 報酬にしては貰い過ぎだな。

 貰い過ぎた分は彼女に返してあげよう。

 俺はそう思った、そう思えて、笑えたんだ。

 

 

 

 後片付けを済ませ、教会から出てグレモリー眷属全員で例のジェスチャーを空に向けてしてやった。

 神やら天使に喧嘩を売る?

 悪魔に転生した時点で今更過ぎる話だ。

 なんてことをと慌てふためくアーシアを宥めてから皆で揃って帰路についた。

 そこでは新しい仲間達と今までできなかった軽口が自然と言えるようになっていた。

 

「陽介さん、俺はこうやって生きていくよ。貴方もどうか幸せに生きてください」

 

 遠き世界に居るもう会えない友に言葉を贈る。帰還してきてからの惰性の日々と別れを告げる気持ちも込めて。

 

 リアス・グレモリー眷属悪魔。

 異世界帰りの赤龍帝・兵藤一誠はここから始まるのだ。

 





 いつも誤字脱字をありがとうございます。
 いつもテンションのまま書き上げるので見落としばかりですいません。


 補足・説明

 一応言っておきます。
 当作品はギャグ小説です。
 シリアス展開もギャグへの繋ぎだと思ってください。
 そして今話、前半と後半の落差の激しさに戸惑ったらすいません。
 いやまじで苦戦とかないですね。原作で苦戦したフリード君はあっさり逃げますし。

 儀式について。
 レイナーレが早期捕縛で儀式の準備が終わってませんでした。アーシア連れ戻してさあ実行しようとした時に儀式場ではじめて気づいた堕天使ドーナシーク(おっさん)が必死に書いてました。
 ちなみにカラワーレは年上美人でミッテルトはゴスロリです。二人揃って氷像になりました。なおこの後に神の子を見張る者に生きたまま引き渡されました。

 フリード・セルゼンについて。
 境遇を知ったら改変したくなりまして。
 どんな末路かはまだ未定です。

 中指を突き上げるジェスチャー。
 好きな漫画の好きなキャラクターの好きなシーンのオマージュです。元ネタは「爺が命乞いなんてすっかよ」とセリフが続きます。下品で問題ある仕草ですがどうしてもやりたくて。
 なお原作既読の方はご存知の通り、ジェスチャーの先に〇は〇ません。
 ただマッチポンプ狙いでスタンバってた某聖女スキーさんは使い魔を通して見ておりブチギレてます。

 ミルたん。
 やり遂げたな悪魔さん。

 堕天使総督アザゼル
 詫びを入れて戦争回避だな。

 雷光のパパ
 久方ぶりの娘からの連絡が部下のやらかしの件でちょっと泣いた。待て朱乃、兵藤君とは誰だ。 
   
 教会
 多分原作で一番人類を殺害してる組織。
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