神の子を見張る者→グリゴリ
聖母の微笑→トワイライト・ヒーリング
堕天使総督アザゼルはドスケベである。
聖書の神が創造した知性体・天使。
アザゼルはその中でも最初期に生み出され、最高の出来を誇る個体であった。
与えられし異名は【神の如き者】。
まさしく神の傑作と言える存在であろう。
だがしかし、ある日のこと。
彼は人間の女性の乳房を揉んだ。
魂から溢れ出る衝動のまま、揉みしだいた。
そして堕天した。
それが後に、聖書の神率いる天界、魔王率いる冥界、と肩を並べる堕天使勢力【神の子を見張る者】の始まりであったとは当時誰も思わなかったであろう。
まず間違いなく乳房を揉まれた女性本人は。
そんな始まりの堕天使にして、始まりのドスケベであるアザゼルだが、現在彼は自らの執務室にて頭を抱えていた。
その原因は人間界のグレモリー領が一つ駒王町で起こった堕天使による騒動。
神滅具が一つ【赤龍帝の籠手】の保有者に襲撃をかけて返り討ちにあい、さらにその堕天使の部下が教会から追放された【聖母の微笑】保有者から神器を抜き取ろうと企て失敗。
よりによってこんな時期に、と報告を聞いたアザゼルは苛立ったものだ。
確かにアザゼルは戦力を集めている。
最近判明した危険極まりないテロリストから同胞を守るためにだ。
だが組織のトップのことを考えれば堕天使単独で渡り合うのは厳しい。
三すくみの勢力と呼ばれる聖書の勢力全てで同盟を締結する必要があるとアザゼルは考えていた。
その矢先にコレである。
こんな事件が発生してしまったら同盟など夢のまた夢である。
まあ幸いなことに事件をしでかした堕天使達は生存している、それだけがアザゼルには救いだった。彼にとって部下である堕天使達は舎弟か舎弟の子孫だ。やらかした連中にしてもその親から先まで思い出せるくらいだ。故に部下に対する態度が甘くなってしまうのだ。
(しかし赤龍帝ね)
報告書には当代の赤龍帝・兵藤一誠の情報が記載されていた。
経歴に関してはごく普通の一般人。
両親の血筋にも特異な点は無い。
目を引くのは赤龍帝の籠手に宿るドラゴン・ドライグと対話できていることだけだ。
最もそれだけで警戒には足るが。
対話ができるならば対価と引き換えに一時的な禁手化が可能。その状態なら堕天使幹部でも相手をするのは難しく、さらに暴走して覇龍まで発動したら一体どれだけ被害が出ることやら。
(あんまり面白そうじゃねえんだよな)
それがアザゼルから見た兵藤一誠の印象。
アザゼルは馬鹿なヤツを好む。馬鹿なヤツは何をしでかすか分からなくて面白いし、不可能を可能にできると期待ができる。
だが当代赤龍帝・兵藤一誠の今までの行動にそんな要素はない。返り討ちにした堕天使を殺さないなどの甘い点は好感をもてるが、せいぜいそのくらいだ。
(どうするかね)
これからについて悩んでいると執務室の扉を叩く音がした。
「失礼するぞアザゼル」
「バラキエルか」
入室してきたのは鍛え抜かれた肉体を誇る巨漢、雷光の堕天使バラキエル。
【神の子を見張る者】の創立メンバーにして最も信頼する同朋の一人だ。
「先日の件は助かったぞ。お前の娘である朱乃からの情報があったからこっちも無駄なく動けた。部下からの報告だともっと手間取って拗れていただろうからな」
姫島朱乃。
堕天使バラキエルと人間の女性の子。
訳あってリアス・グレモリーの眷属となっている彼女からの確認があったからこそ駒王町での二度目の騒動、【聖母の微笑】摘出を企む部下の暴走を迅速に後始末できたのだ。
姫島朱乃からしたら堕天使のスパイと疑われてもおかしくない行動。
だがリアス・グレモリーにしても堕天使の企みが戦争へと繋がるか調べなければならず悩み抜いた末に決断したのだろう。
何せ、姫島朱乃は父である堕天使バラキエルと堕天使一党を、母を救わなかったとして憎んでいるのだから。
「その件でだ」
しかめ面のままバラキエルは口を開く。娘との久方ぶりの会話が自らの陣営の企みの確認だったのだから父としては複雑なのだろう。
堕天使総督アザゼルは独身である。
だが実子のように面倒を見ている存在がいるため、父としての気持ちを少しは理解できるのだ。
独身なのに。
「娘が、朱乃がな、繰り返し言っていたのだ。兵藤君がすごく傷ついていたと。どういうつもりなのかと」
「? 後輩を心配できる良い娘に育ったわけだな」
知り合って数日の存在をそこまで案じるなどそうできることではないだろう。
【情愛】を司るグレモリーは良い影響を与えているようだ。
と姪に近い存在である朱乃(バラキエルもまた聖書の神が創造した個体であるため)の成長をアザゼルが喜んでいたのだが、突如バラキエルが吠えた。
「あの娘が、朱乃が!!今までそこまで男を気にしたことなどない!!これは大きな問題だろう!!」
「いやむしろ喜ばしいだろ、男嫌いより健全だ」
神器の中でもドラゴンを宿すタイプは異性を惹きつけやすいとデータが出ているが、本人の意志を捻じ曲げられる程ではない。
兵藤一誠が姫島朱乃の心の琴線に触れる要素があったのだろう。
「だから俺はこれからその兵藤一誠の為人を確かめに行ってくる。娘を誑かす男の素性の確認は父親の義務だ」
そこには殺る気満々の完全武装姿のダメ親父がいた。
「何もかも台無しにする気かアホウ」
だからアザゼルは躊躇わず執務机のスイッチをポチッと押した。
「ん?アアアアアアッ?!」
するとバラキエルの立っていた床が抜け底無しかと思うほどの穴が開く。
バラキエルは吸いこまれるように落ちていった。
「思いつきでつけたが便利だな」
飛空は出来ないように術式を組み込んだ空間を抜ければ他の幹部の趣味部屋もとい反省室。
そこでしっかり頭を冷やせとアザゼルは思った。
「はあ」
危うく戦争になりかねないやらかしをあのバラキエルがしでかしそうになるとは父親とは業が深い。
だが、あんなことをしでかしたら父娘関係の修復など不可能となっただろう。
悪魔に転生したての赤龍帝が堕天使随一の武闘派であるバラキエルに勝てるわけがないのだから。
バラキエルと朱乃の関係にはアザゼルも強い負い目がある。だからなんとかしてやりたいと考えているのだが、当の本人が台無しにしようとするなよとアザゼルは思った。しかし、
「俺は結婚できないんじゃない。結婚しないだけだから」
父娘関係。
それを見せつけられると独身な彼には思う所ができてしまう。
兄弟同然で趣味人ばかりの堕天使幹部にもパートナーを持つ者は少なからずいるのだ。
「そうだ、独身は貴族だ!!
そして俺は総督だ!!
何を気にすることがある!!
真の勝者は俺なんだ!!」
なお実の兄弟のような存在である四大天使もまた未婚であるが、アレらはまた別系統の代物。
「アーハハハハハ!!」
度重なるストレスからアザゼルは高笑いをするのであった。
「どうしたアザゼル?」
息子同然の存在に声をかけられるまで。
「気にするな、大人には色々あるんだ」
現白龍皇ヴァーリ・ルシファーは世話になっている人物の奇行にさして反応もしない。彼からしたらアザゼルの奇行は今にはじまったことではない。
「赤龍帝が見つかったらしいな」
「お前にまで伝わったか」
そしてアザゼルの取り柄の一つが過去の所業を気にしない点である。
「どうなんだ我がライバル殿は?」
「覚醒して直ぐに堕天使を返り討ちにした。その後に悪魔に転生したことを含めて将来有望ではあるな」
だがその程度でしかない。
白龍皇ヴァーリ・ルシファーには勝てる筈もないとアザゼルは思う。その血筋、本人の才能と気性、それらを合わせて過去現在未来永劫において最強の白龍皇になると確信していた。
「最強の白龍皇か。二天龍の争いに期待できなくなる嫌な名称だ」
うんざりしながらヴァーリは言う。
戦闘狂とはロマンチストでもある。
宿敵との運命的な決戦を彼は期待していたのだ。
「まあいい、まだ様子見だな。俺は少し出かけるぞアザゼル」
「どこへだ?まさか赤龍帝を」
実際に確認しにいくのかと言おうとするが。
「ラーメンを食いにな。小泉さんと約束しているんだ」
ラーメンかよ、そして誰だよと口から出かかったがアザゼルはなんとか飲み込んだ。
ラーメンオタクに話を振るのは危険だ。ヤツラは延々と語り続けるのだから。
「いってらっしゃ~い。あ、夜食用にカップ麺を頼むわ。カッ〇ヌードルの醤油な」
出かけるヴァーリについでに買い出しを頼むアザゼル。どうせ彼はしばらく執務室に缶詰めだからだ。なお商品を指定するのはラーメンオタクにカップ麺を頼むと話が長いし最悪棚一つ買ってくるからだ(昔やらかされたことがある)。
「ふ、さすがははじまりの堕天使。はじまりのカップ麺を選ぶとはよく分かっているじゃないか」
どこにでも売っているからと頼んだ商品にヴァーリが妙な感心をしてから執務室を去っていった。
「ふう。さて仕事と」
そうして堕天使総督アザゼルの小休止は終わったのである。
なお余談だが、ヴァーリが一緒にラーメンを食べる相手が美少女高校生と知り、先程のバラキエルと同じ行動をしてしまい、副官シェムハザの手により反省室に落とされるのはこれより少し後のことである。
補足・説明
堕天使側のお話です。
アザゼルからの兵藤一誠の印象。
現段階で面白みのない存在です。
彼はもっと弾けた人物が好みなので。
そしてヴァーリと同時期に赤龍帝となり哀れだと思っています。
なおイッセーからしたらアザゼルは敵の首領でしかありません。
バラキエルさん。
危うく堕天使壊滅のきっかけになりかけた。
父親だから仕方ないが、アザゼルが止めなければ父娘関係は終了してました。
独身は貴族
デュアル!パラレるんるん物語、というアニメ作品から生まれた至上の名言。
作者はこの言葉を胸に抱いて生きている。
なお原作とは全く関係がない。
ラーメン大好き小泉さん
ヴァーリのラーメン友達。美少女高校生で、ラーメンへの愛と行動力が半端ない。ヴァーリとは同好の士で時間が合えば一緒に食べに行く。
なおイケメンと美少女のラーメンオタク二人組としてかなり有名。無論二人に恋愛感情は存在しない。
カッ〇ヌードル
はじまりのカップ麺(チ〇ンラーメンはインスタント麺)、つまりアザゼルと同類。