異世界イッセー   作:規律式足

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 注、白龍皇ではありません。



第十九話 白

 

 元聖女にして魔女にされて悪魔になったシスターであるアーシア・アルジェントが兵藤家に半ば養子のような形で暮らすようになって数日が経過した。

 

「いいお天気ですね。イッセーさん、今日は体育でソフトボールをやるんですよ。私、初めてなので今から楽しみです」

 

 アーシアと話しながら通学路を歩く。

 彼女は毎日が楽しくてしかたないのか興奮してるかのようにはしゃいでいる。

 そんな様子を見ていると助かって良かったと心から思えるのだ。

 俺が美少女と毎日通学できるようになるとは思わなかった。学校生活にラブコメを期待して入学したけれど内心では普通に諦めていたからな。

 けれど、アーシアとの通学は周囲の目を引くようだ。あの兵藤一誠が美少女と一緒に歩いている。それだけで同じ学校へ通う生徒達の好奇心を刺激してしまうのだろう。

 

「大丈夫か兵藤?」

 

「救急車を呼ぶ?」

 

「倒れてからじゃ遅いよな」

 

 好奇心、なんだよね?

 

『絶対に違うな』

 

 なんでだよもっと嫉妬しろよ、兵藤風情が美少女と親しくしていると妬めよ。

 俺はそんな奴らにドヤ顔したいんだ。

 

『なんだその欲求』

 

 羨ましいと思われたい年頃なんです。

 

「大丈夫ですか?一誠さん」

 

 ドライグと語り合う俺にアーシアが覗き込んでくる。美少女の顔が目の前に現れて心臓が止まりそうになる。

 

『比喩ではないから笑えん』

 

「なんでもないよ。アーシアも学校生活は大丈夫か?女子とも仲良くできているか?」

 

 そこがどうしても気になってしまう。

 俺も人のことはいえないが、アーシアは今までかなり特殊な環境で育ったきたからか戸惑うことが多いようだ。

 俺もできる限り面倒は見ているが、クラスの連中も面倒見の良いヤツばかりで一つ一つ丁寧に教えてくれている。その時のアーシアの素直な反応も好かれる要因なんだろうな。

 

 ちなみにアーシア転入の時の様子だが、

 

「元シスターのアーシアさんです」

 

「「「金髪美少女キター!!」」」

 

「会話はできますが日本に慣れてないようなので面倒を見て上げてください」

 

「「「よっしゃ任せろ!!」」」

 

「あと彼女は兵藤君の家でお世話になっているそうです」

 

「「「荒療治にも程があるだろ!!」」」

  

 と、こんな感じだった。

 アーシアの境遇に関しては表向きはお世話になる予定の教会が潰れていて途方に暮れていた所をうちの両親が保護した、という形になっている。

 オカルト要素を除いたほぼそのまんまな説明だがアーシアは嘘をつける性格じゃないからちょうど良いと思っている。

 しかし不満だな。

 アーシアみたいな性格の良い金髪美少女と一つ屋根の下で過ごす俺をもっと羨むべきだろう。

 

『日に何度も気絶してるヤツをどう羨めと?』

  

 男子の夢のシチュエーションなのに。

 なお、こんな風に美少女と二人仲良く登校している姿を目撃したらボディーブローやらローキックをかましてきそうな松田と元浜の二人なんだが、

 

「成長したな一誠」

 

「俺達がやってきたことは無駄ではなかった」

 

 と腕を組みながら満足げに笑っていた。どんな視点でこっちを見ているんだお前ら。

 けど、普段から世話になっているし、アーシアがクラスに馴染めるように動いてくれたから俺も二人に感謝している。

 だから部長とか小猫ちゃんにクラスメイトの女子を二人に紹介してもらえないか頼んでおこう。悪魔契約で知り合った人達は、アニオタと鎧武者と漫画家とミルたんと紹介できる人がいなそうな人達だし。

 

 

 その日の夜。

 俺は再び夜の住宅街を自転車で駆け抜けていた。嗚呼やはりチャリは素晴らしい、舗装された道路のなんと愛しいことか。

 

『相棒は自転車でも変になるよな』

 

 グランバハマルでの徒歩移動を思い出すから仕方ないだろ。次の街まで荒野を延々と歩き続けるとか、何度も自転車が欲しいと思ったわ。

 

『それが普通の時代の方が長かったんだがな』

 

 長命種らしい視点だなオイ。

 

「完了です」

 

 ポストに悪魔契約のチラシを投函したアーシアが俺の跨る自転車後部に座る。

 今日はアーシアのチラシ配りを手伝っている。

 普段なら使い魔にやらせる仕事ではあるけど、眷属なら一度は経験する仕事だからだ。

 それにただ乗せているだけではない、この街に来て一月と少しなアーシアへの道案内も兼ねている。

 俺の生まれ故郷を誰かに説明するのは楽しいことでもあるのだ。

 夜のデート?

 いや仕事です仕事。

 そう脳内で割り切ることで自転車の後部に座って俺の腰に手を回して抱きつく彼女に気絶しないよう耐えれるんだ。

 

『ローマの休日の話題までふられているのにスルーとか大丈夫かコイツ』

 

 アーシアの憧れるシーンがあるから今度見てみるかなと思いつつ自転車を走らせる。

 今夜も夜風が気持ちいいぞ。

 

 

 その後、チラシ配りを終えた俺達は駒王学園のオカルト研究部の部室に戻り、アーシアが悪魔契約の初仕事を行った。その時に俺は付き添いを名乗りでた、何せ俺の場合は変態やらミルたんが出てくるから心配になったのだ。

 幸いなことに魔力が充分に足りたアーシアは俺と違って一回で転移に成功した。だが油断はいけない、この先にどんな人(変態)がいるかは分からないからな。

 気合いを高めて契約に臨んだが、そこに居たのはグレモリー眷属の超お得意様の漫画家(♀)で座り仕事で腰が痛いからなんとかしてという依頼だった。病院に行こうよと思ったけど、病院での待ち時間や何度も通うのが嫌だそうだ。温かい光がアーシアの掌から放たれ依頼人の腰を包み込む、しばらくそうしていたら痛みが無くなったのか元気に飛び起きた。笑顔で礼を言う漫画家にアーシアはとても嬉しそうに笑った。

 人を癒やす事は悪魔になっても出来るんですね、とアーシアは呟いた。聖女でなくなっても誰かを救える、その事実がとても嬉しかったそうだ。

 

 

 深夜、アーシアと共に帰宅した。

 両親は既に寝ているようだが事情は説明してあるから大丈夫だ。うるさくしないようには気を使うけど。

 

「すみません、先にシャワーいただきますね」

 

 そう言ってアーシアは風呂場へ向かった。うーん、俺がSEBAゲームの名作スミレ大戦の主人公・犬神壱郎なら身体が勝手にと風呂場に向かうトコなんだが、それをしたら好感度が下がるどころか死んじゃうしな。

 

『下がらんと思うぞ、むしろバッチコイ』

 

 といっても体質を除いても純真なアーシアにそんなことをするのは抵抗あるよな。綺麗なモノを汚したくないというか、守るべき存在とかそんな感じで。

 

『アルジェントよ、哀れな』

 

 部屋に戻りアーシアが上がるまで待つ。自転車で町中を走り回ったから寝る前に汗を流したいからな。

 しかし、仕事が終わって部室へ帰ったけど部長がなんか思いつめた表情をしていたな。アーシアの初仕事ではないなら何かトラブルでもあったのか。

 力になりたいと思うけど、俺に出来ることは相手を倒すことくらいだしな。

 カッ!!

 その時に俺の部屋の床が光る。また異世界転移かと身構えるが其れは見覚えのある魔法陣だった。

 グレモリー眷属の紋様?

 連絡ならスマホで来るのだが緊急なのか?  

 そこまで考えた所で眩い光の中から人影が現れる。

 女性のシルエット、紅の髪をした。

 

「部長?」

 

 魔法陣から姿を現したのは紛れもないリアス部長。しかしこんな時間に何故?用事ならさっき部室でも。

 リアス部長部室の時から変わらない思い詰めた表情でズンズンと詰め寄ってくると、開口一番に衝撃的なことを言う。

 

「イッセー、私を抱きなさい」

 

 あ、俺死んだ。

 

『なんでこの言葉が即死呪文になるんだ相棒』

 

 青褪める俺に部長はダメ押しの一言を告げる。

 

「私の処女を貰ってちょうだい。至急頼むわ」

 

 その一言で彼女、リアス・グレモリーの事情は大体察してしまった。

 グランバハマルでの冒険者時代に似たような経験があるからだ。

 だから彼女の意図は分かるけど。

 それって間男(俺)始末されますよ。

 望まぬ縁談を台無しにするための力無き貴族令嬢の取る手段の一つ、処女を捨てる。

 汚れれば縁談が破談となるという作戦。

 だがそれで済まないのが貴族社会。

 令嬢の目論見は失敗し、相手となった間男は醜聞の元になると存在ごと消すのが常識なのだ。

 しかし、

 これしか手段がないとばかりに、今にも瞳から零れそうな涙を浮かべて迫る少女にそれを指摘することは人として無理だった。

 

「ほら、ベッドへお行きなさい。私も支度するから」

 

 待って、制服を脱がないで!!

 今なんとかしようと考えるから。

 

「部長、落ち着いてください!!」

 

 服に手をかける彼女の両肩を掴んで静止する。というか縁談は嫌なのに俺の前で服を脱ぐのはなんで平気なの?そういえば呼び出された時もシャワー浴びてたなこの人。

 

「イッセー、私では駄目かしら」

 

 潤んだ瞳で縋るように言われたら答えたくなるのが男って生き物だけどさあ(泣)。

 かなり意識を遠のきそうになるのを必死に抑えて、打開策を考えている。

 というか普段気丈で強気な人がこんな弱々しい反応するとぐっとくるよ畜生!!(錯乱)。

 

「色々考えたのだけど、これしか方法がないの」

 

 貴族の御令嬢は皆そう言うのよ。

 

「既成事実ができてしまえば文句もないはず、そう考えたらその相手は貴方以外思い浮かばなかった」

 

 これ告白じゃないですか現場のドライグさん。

 

『終わったら呼んでくれ、今ドラグ・ソボールを読んでるから』

 

 興味無しかい赤龍帝。

 これだから卵生生物は(差別発言)。

 

「貴方の体質は知っているけど、私がなんとかするから」

 

 なんとかってナニ?

 

『(読書中)』

 

 迫りくる部長。

 肩に置いた手をずらされて抱きしめられてしまった。

 

「イッセーは初めてよね?こんな体質だし」

 

 アカンアカンアカンアカンアカン、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。

 感触とか匂いとか柔らかさと色々とヤバいヤバいヤバいヤバいから。

 あと女性経験はグランバハマル時代はカウントしませんよね?帰還時二十六歳でしたから自分。

 

『落ち着けアホウ』

 

 なんですか?一度見捨てといて。

 

『目の前の女はお前にとってパニックで何も言えなくなるような程度の存在か?流されて関係もって良い存在か?』

 

 いや、違う。

 この人は、リアス・グレモリーは。

 今にも泣きだしそうな少女は俺にとって。

 

「部長、リアス・グレモリーさん」

 

「イッセー?」

 

「やめましょうこんな事」

 

 そう言うとショックを受けたように彼女は俯く。

 

「そうよね、私なんか」

 

「魅力的じゃないとか拒絶するくらい嫌いとかだからじゃないです」

 

 そんな彼女の勘違いを俺は否定する。

 

「なら、どうして」

 

「まだ一月足らずの関係ですけど、貴女が俺にとって大切な人だから。こんな形で関係を持ちたくない、そう思ったんです」

 

 それが俺の本音。

 この一月の間で知った彼女の性格は俺にとって非常に好ましいものだった。

 まだ主としてだけど、いずれはと。そう思うくらいに。

 

「イッセー」

 

「衝動のままにではない。心から想い合えた時になったら結ばれたい。そんな存在なんですよ」

 

 自暴自棄になっている彼女を諭すように想いを告げる。いつもの威風堂々とした彼女で居て欲しいから、そんな彼女と共に歩んで行きたいから。

 

「わかったわ」

 

 すると彼女はリアス・グレモリーは力を抜いて、こちらを向く。その瞳に涙はもう無かった。

 

「こんなことをしてごめんなさい、イッセー。でも貴方の言葉はとても嬉しかった」

 

 思い留まってくれて良かったああああ。

 

「だからこれはお礼」

  

 彼女が顔を寄せたかと思うと、俺の頬からチュッと音がした。

 いやこれはまさか、部長のくちび、

 

「今夜はこれで許してちょうだい。また明日部室で会いましょう」

 

 部長は別れを告げ魔法陣の放つ光の中に消えていった。同時にこちらを窺っていた、この世界で感じた気配で最も強い存在も去っていった。

 そして、俺は、

 

『なんだやればできるじゃないか相棒。この調子なら体質改善も夢では』

 

 燃えた、燃え尽きたよ、真っ白だ。

 

 身体は限界を超えていた、極限まで精神力を消耗していた、俺はベッドに腰掛けてそのまま灰になるかのように力が抜けていき意識が遠のくのであった。

 

『相棒。相棒?いやこれガチで死?こんな理由で?オイ起きろ相棒?!こんな終わりってマジか?

 誰かアアア?!アーシア・アルジェントオオオ!!救急車アアア!!』

 

 ドライグの叫びが深夜の兵藤家に響く。

 風呂上がりのアーシアが慌てて部屋に飛び込み治療してくれたが間に合わず、最終的に友のピンチに気づいて駆けつけたミルたんが異世界で手に入れた謎のキノコを俺に食わせることで助かったそうです(口移しではないです。強引に叩きこんだ)。





 補足・説明。

 詰め込み過ぎるかなと作者は思いますがどうでしょうか?でも分割すると話が進まないんですよね。

 お得意様の漫画家
 オリキャラ、グレモリー眷属の超常連
 美人ではあるが基本発狂した姿だから美人に見えない。この人のせいでオカルト研究部員はプロアシスタントになれるくらいの漫画技能が身についた。

 アーシアへの契約
 治癒が中心になる模様、需要はあるので。
 
 リアスのイッセーへの好感度
 かなり高め

 ミルたん
 あの赤い帽子の人から貰ったキノコが役に立って良かったにょ

 スミレ大戦→サクラ大戦
 犬神壱郎→大神一郎
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