異世界イッセー   作:規律式足

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 『』は基本的に主人公兵藤一誠が宿す神器、赤龍帝の籠手に封じられた二天龍の片割れである赤龍帝ドライグのセリフとなります。基本的には兵藤一誠との脳内会話になりますが、周りの人と話している時もあります。
 また『()』は赤龍帝ドライグの口に出してない思考と基本的には表現しています。
 ただ作中では別の時にも使用する場合があります。
 そして一誠がドライグの呟きをスルーしてる時も多いですが無視してるわけではありません。かなりの年数を共にしているので毎回反応する必要がないのです。



第二話 行くべき先は

 

 人生には転機というものがある。

 とあることがきっかけで自分の人生を大きく変えることがある。

 俺、兵藤一誠にもそんな転機があった。

 

 七つの頃、近所の公園に現れた紙芝居のおっちゃん。彼の語るおっぱい童話を通してこの世の条理不条理を学んだこと。

 

『警察に捕まっていたが今頃どうしているのだろうなあの変態』

 

 生まれた瞬間、この身に至高の神器と呼ばれる神滅具の一つである赤龍帝の籠手を宿していたこと。

 

『おい待て、時系列的にも重要度的にこっちを先に上げるべきだろ。なんで紙芝居が先なんだ』

 

 中学三年生のあの日。

 道路に落ちていたエロ本を拾おうとして飛び出してそのままトラックに轢かれ、異世界グランバハマルに旅立ってしまったこと。

 

『俺は完全にとばっちりだったな』

 

 そんな転機を乗り越えて今の俺がある。

 その歩みに欠片一つの後悔もない。

 

『紙芝居と道路飛び出しは後悔しろ』 

 

 

 そしてまた新たなる転機が訪れた。

 神が創り出した超常のアイテム【神器】を己が身に宿して生まれたばかりに堕天使に危険視され、命を狙われたのだ。

 無論、最初から分かっていたことだがね。

 

『俺がな』

 

 異世界グランバハマルにて体得した精霊魔法【光剣顕現】にて襲いかかってきた堕天使を返り討った俺はこれからどうするのか、頭を悩ますのであった。

 

 

「それでどうしようかドライグ」

 

『襲いかかってきた以上、神器の詳細は知られてなくともこの街に神器保有者が居るという情報は堕天使陣営に伝わっていると考えられるな』

 

「殺りたくないけど口封じは必要か?」

 

『無意味だな。時間稼ぎにもならん』

 

「グランバハマルに居た時みたいな殺伐ライフは遠慮したかったけど、この世界のオカルトファンタジーにいよいよ関わる時が来たのか」

 

『【神滅具】である【赤龍帝の籠手】を宿している以上は遅かれ早かれだったろうさ。問題は何処に所属するか、だな』

 

「フリーの個人傭兵ポジは、やっぱり無理?」

 

『勧められんな。こっちの世界ではどうしても相棒の身内という枷がある。関係ないと放り出しても良いのなら話は別だが無理だろう』

 

「それはそうだけど」

 

『堕天使陣営は今回の件で不可。天使陣営は信心皆無な相棒では無理。ならば悪魔陣営しかあるまいよ』

 

 信心皆無。

 元より無宗教な日本人であることと、グランバハマルのガチモンの宗教家と関わったこと、さらに実際に神に等しい存在と敵対し戦ったことで祈る気も敬う気も全くおきないのだ。

 ドライグが言うには俺をグランバハマルへと送り込んだ神もろくでなしだったそうだし。

 

「悪魔陣営で父さんと母さんの身の安全を確約してもらって傘下入りが妥当なトコかな?」

 

『ついでにこの堕天使も引き渡せるから都合が良いな。恐らくだがここら一帯は悪魔陣営の縄張りだろう』

 

「引き渡したら処分とかされないかな?」

 

『処分される可能性は高いが見逃せば再び襲いかかってくるだけだろうよ。運が良ければ生きて悪魔陣営から堕天使陣営に引き渡されるな』

 

「運が良ければ、かあ」

 

『情けをかけることは相棒の勝手だが、コイツが今まで同じように神器保有者を始末している可能性は高い。今この瞬間生きているだけで充分に恵まれているからな』

 

「分かっているよ。随分手慣れていたしな」

 

『別に殺せとは言わん。相棒は正義の味方でも復讐の代行人でも無念を汲む者でも無いのだからな』

 

「うん」

 

『自分の心の踏ん切りがつくところまでやればよいだろう』

 

「わかった、助かる可能性があるんだからそれで良いよな。それでこの街の悪魔っていったら駒王学園にいる人達だよな」

 

『その通りだ。何人か心当たりがあるだろう』

 

「オカルト研究部のリアス・グレモリー先輩と生徒会長の支取蒼那先輩。あとはその部員と生徒会役員のメンバー」

 

『グループ単位の集団と階級から先ず間違いないな。それとグレモリーと支取=シトリーは七十二柱の悪魔に名を連ねる存在だ』

 

「もしかして大物?」

 

『名門貴族程度の立場はあるだろうよ。王はアレだ(あの二天龍の争いで死んだよな?赤龍帝の籠手に封じられてからは見たことないし)別の名前だしな』

 

「どうしたドライグ?でも貴族かあ」

 

 貴族と聞いて先ず悪印象を抱いてしまう。十年にも及ぶグランバハマル生活では基本的に顔を隠して冒険者として生きてきた。その際にどうしても関わらないといけなかった権力と名誉と安全にしがみつく連中を思いだしてゲンナリとする。宗教家もそうだが付き合って気分の良い存在ではなかったのだ。

 

『なら敵対か?今の相棒が全力でやれば周囲の被害を気にしなければ一神話ぐらいなら滅ぼせるぞ』

 

 歴代の赤龍帝にも傑物はいた。それこそ人外最強である各神話の主神にすら脅威とされる存在も。

 それらを押しのけて史上最強と言われる俺なら力尽くでなんとかできるかもしれないが。

 

「どんなに強くてもそれ以上に強い存在って絶対に居るじゃん」

 

 力を振りかざせばより強い力に倒される。

 グランバハマル生活で俺とドライグはそれを深く学んだのだ。

 

『そうだな』

 

 お互いの脳裏によぎる姿は二人。

 陽介さんとエルフ。

 どんなに強くなろうともあの二人には必ず打ち倒されてしまうという嫌な確信があった。 

 それこそ強さに絶対の自信があった伝説の二天龍である赤龍帝ドライグが心折れてしまうくらいに。

 

「じゃあ悪魔陣営と接触しようか」

 

『相手はどちらにする?』

 

 流れる冷や汗と記憶を振り払うようにやるべきことを優先する。

 

「生徒会かな?どっちが統治してるかわからないけど生徒会の方がそれっぽいし」

 

 両者とも学園の有名人(悪魔)だからこちらは一方的に顔を知っているが、知り合いのいない場所に突貫するのは正直気不味い。けれど生徒会ならまだ敷居は低いと感じた。

 

『同じ敷地内で活動しているなら無関係ということはあるまい。なら相棒が接触しやすい方で良いと思うぞ』

 

「けどなー」

 

『?』

 

「聞いた話によると生徒会もオカルト研究部も女子ばっかりなんだよ、しかも美形の」

 

 大丈夫かな、俺。

 

『喜べよ、未来のハーレム王(笑)』

 

 精神世界でないと姿形の見えないドライグ。

 けれどそのセリフの時はザマアと嘲笑っているんだろうなと思った。

 いや確かに告白を断ればこんなことにならなかったけどさ。

 人目のつく町中で担いで運ぶ訳にはいかないので、気絶している堕天使レイナーレをグランバハマル製魔獣も縛れる拘束鎖で縛り上げてから収納空間にしまう(中に入った知的生命体は精神を病むけど気絶してるから平気だろう)。

 あとは面倒をかけるし、お願いする立場だから和菓子屋で菓子折り(小判最中)を購入した。

 

『その菓子はネタに走り過ぎじゃないか』

 

 小判最中、それは「御代官様金色の菓子にございます」という時代劇のネタにちなんだ和菓子。確かにネタに走った自覚はあるけど。

 

「これから引き渡すことで一度デートした存在が死ぬかもしれない。そう考えると気が沈むんだよ」

 

 割り切ろうにも割り切れない。

 強引に巫山戯ないと心がもたないのだ。

 

『悪魔は情に厚い、それこそ天使・堕天使よりよっぽどな。相棒が望めばなんとかなるかもしれんぞ』

 

 生かすことが正解だと、実は思ってない。

 でも死なれると気分が悪い。

 何も出来ないくせに同情だけはする、身勝手な感情だと自覚はあるんだ。

 ドライグの言葉に僅かに救われながら駒王学園へと向かった。

 

 なお今日は休日でもう夜じゃんと校門の前で気づいた。幸いなことに居るみたいで良かった。

 




 
 補足説明。
 
 兵藤一誠は中学三年生から十年ほど異世界グランバハマルに居ました。だが帰還時にグランバハマルの神が他神話に自分の存在がバレたら面倒だと時間を戻し、グランバハマルに旅立った三日後に帰還したことになってます。なので精神年齢はプラス十年ほどされてます。ぶっちゃけ肉体の不具合はそのせい。

 エルフさんの一誠の呼び方は「ヒョウドウ」。正体不明の仮面の冒険者として割と有名人なので。ただ知り合いになってからは呼ぶより斬りかかる方が多かったです(笑)。
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