異世界イッセー   作:規律式足

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 なんか字数が増えたので分けます。
 今回で修行を終えるつもりが長くなってしまいました。修行パートが苦手な方は閲覧注意。

 今回のイッセーはチートオリ主感あって不快かもしれません(作者もそう感じた)。



第二十二話 修行その壱

 

 リアス部長の婚約を賭けたレーティングゲームが正式に決まってから翌日、俺達グレモリー眷属は修行のため山籠りすることになった。

 ちなみに学校についてだが生徒会の方でなんとか手を回して補習で済むようにしてくれるらしい。冷や汗をダラダラかいたソーナ・シトリー様が出発前にわざわざ訪れてそう説明してくれた。

 今回の騒動の一因であるという自覚が彼女にそんな行動をとらせたのだろう。リアス部長はソーナ会長をずっとジト目で睨みつけていたし。

 魔法陣から山の麓へ転移してそこからは徒歩。グランバハマルで嫌になるほどに慣れている俺は山の斜面も苦にならない。むしろ魔獣の襲撃がない分だけ余裕があると言える。

 

「余裕そうね」

 

「イッセーさん凄いです」

 

 部長とアーシアの反応の訳は俺が巨大なリュックを背負っているからだ。俺自身は収納魔法もあるし、今回は手ぶらだから荷物なんてないが。肉体に負荷をかけるために他の皆の荷物を運んでいるのだ。

 木場と小猫ちゃんも同じことをしているからこれも訓練の一貫なんだろう。特に小猫ちゃんは戦車という駒の特性ゆえにか俺以上の荷物を運んでいた。

 グランバハマルの経験のせいで危険無く山を登れることに妙な違和感を覚えながら歩き、目的地である別荘へと辿り着いた。

 

 修行期間中に滞在するこの別荘はグレモリー家の所有物で悪魔の住居らしく魔力で風景に隠れ人前には現れない仕組みなどがついているそうだ。

 背負っていた荷物をリビングに置き、動きやすい姿に着替える。女性陣も着替えるために二階へと向かった、俺の中の犬神壱郎が身体を勝手に動かしそうになるが、ジャージを抱えた木場の「覗かないでね」というふざけたセリフで正気にかえる。危うく初日で修行が終わるトコだったぜ。

 

 さて修行だ。

 兵士の駒の特性は一時的に他の駒に変わるプロモーション。だから他の皆がやることを一通りやってみることになった。

 

 木場との剣術修行。

 

「クッ」

 

「よっと」

 

 木刀を握り木場と打ち合う。

 騎士の駒の特性である速度を活かした高速の剣技は、グランバハマルで嫌になるくらい陽介さんに負けた俺には通じない。

 陽介さんって我流の割に何故か的確に剣を当ててくるんだよな。

 

『アレが一般人とかありえないだろ』

 

 SEGAで培った力とか本人は言っていたなあ。ちなみに俺は素早く動く相手を追いかけたりしない。来ると分かっているのだから、来た瞬間に迎撃するタイプの戦法でやっている。

 しかし木場って普通に強いな、グランバハマルに行ってないのにこの技量とか過去に何かあったのだろうか。眷属になる背景など俺はまだ知らないことばかりだ。

 

 朱乃さんとの魔力修行。

 

「魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて魔力の波動を感じるのですよ」

 

 黒いジャージ姿の朱乃さんから丁寧に説明して貰いやってみる。転化直後は転移にすら倍加が必要だった身体も今や兵士の駒八個分の魔力を生成してくれる。そして魔力操作は精霊魔法で慣れている。体に溢れる精霊力とは別のエネルギーを感じとり掌の上で真紅の球体を作り出す。

 

「できました!」

 

 そんな俺の横ではアーシアも同じように緑色の淡い魔力の塊を作り出していた。

 下積みがあるから出来る俺とは違い、初めてやって出来る彼女には才能があるみたいだ。

 

「あらあら二人とも才能があるみたいですわ」

 

 褒められることに慣れてない俺達は照れてしまう(グランバハマルではそんな経験がない)。

 

「ではその魔力を炎や水、雷に変化させます。魔力を変質させて生み出すこともできますが、初心者は火や水を操作する方がうまくいくでしょう」

 

 手本のように朱乃さんがペットボトルの水を操作してみせてくれる。内部で渦巻いてみせたり鋭い棘にして貫かせたりしてくれた。

 便利だな。

 発動の際に魔法陣の出る精霊魔法より扱い易いかもしれない。もっとも単なる物理現象だから威力に差はあるだろうけど。

 五指の先に集めた魔力を様々な現象へと変質させる。コレを倍加すれば必殺技になるか?

 

『見栄えだけで魔力の無駄だ。精霊魔法と同威力を出すとなるとロスが多い』

 

 手厳しいなドライグ。

 場所の取らない基礎鍛錬に向いているけど実戦で使うには当てにできないな。

 

「アレ?」

 

 魔力の塊の一つが破滅の魔力へと変わっていた。これは部長の固有能力じゃないのか?

 

『悪魔の駒が原因だな。持ち主の魔力に染め上がるから転化した眷属にも影響を与えるのだろう』

 

 これは使えるか。  

 部長の眷属らしさが出るし、威力の調整も簡単だ*1

 

 小猫ちゃんとの組手。

 

「なんか殺る気満々じゃない?」

 

「ムカつく」

 

 小さい身体にとんでもないパワーを誇る小猫ちゃんは強い。さらに本人も、立ち技、寝技(やられたら死ぬ)、その他色々な格闘技も得意だ。意外と格闘競技ファンなのかもしれない。戦車の駒の特性であるバカげた腕力と強固な防御力も相まって見た目に反して凄く強い。さらに小柄な肉体の俊敏さと猫のようなスラリとした動きがその基礎ステータスを引き上げる。

 けど、グランバハマルで武装したオークやらゴーレムと殺り慣れてる俺には通用しない。

 赤龍帝の籠手で彼女の攻撃を受け止めて逸らして流す、グランバハマルで鍛えた肉体にはまだ及ばないものの体捌きは健在だ(グキリッ)。昔の感覚でやり過ぎると腰の捻りとかでこうなるけど。

 とりあえずアーシアのところへ行こう。

 

 部長と体力作り。

 

「ほ~らイッセー!気張るのよ!」

 

「おおっス!」

 

 険しい山道を岩と部長を背負って駆け登る。精霊魔法の身体強化はしていないが悪魔に転化したことによる体力向上でなんとか可能だ。

 まだ足りない。

 それが俺の本音。

 一番強かった時の俺は強化無しの肉体でドラゴンの頭を殴り潰せていた。

 とある理由からどうしても陽介さんに勝ちたかった俺はグランバハマルで馬鹿みたいに鍛えていた時期がある。二天龍としての誇りのため協力してくれたドライグの助力もあり、まさに至上最強まで強くなった。

 けどその時に比べたら今の実力は遠く及ばない。肉体スペックなら悪魔である今の方が上であるにも関わらずにだ。

 

『まあ鍛錬時間の差だな。同じだけ鍛錬すれば追いつけるだろうよ』

 

 それはあると思う。

 だが果たしてあの頃のがむしゃらさを今の精神で持てるのだろうか。

 あれだけやっても結局陽介さんには勝てず、さらにとある理由(初恋も破れた)で俺は心が完全にへし折れた。

 ましてやグランバハマルほどの強さが現状として必要ないのだから。

 

「恋をしたいな」

 

 つい呟いてしまった。

 あの初恋を、凍神の眠り姫を忘れるくらいの恋をしたいと俺は思っている。

 あの時の全てを賭けられるくらいの激情を俺は求めているのだ。

 俺に何より足りないものが、がむしゃらさであることを理解しているのだから。

 ちなみに集中しているあまり、その呟きを岩の上に座る部長が聞いていることに気づかなかった。

 彼女が胸中でその相手が自分なら良いのにと無意識に思っていることも。

 

 

「うまい、ウマイ、美味い、旨い」

 

 食事は素晴らしい。

 これこそが文化の極み。

 人はただの栄養補給を文化としての高みへと押し上げたのだ。

 テーブルの豪華な食事には山の恵みという華も添えられていた。木場や部長が山菜やら猪やら魚を獲ってきていたらしい。

 久しぶりに俺も狩りをするかな。

 グランバハマルでは必要に駆られてやっていただけだが今なら楽しめそうだ。

 

「あらあら、おかわりもあるからたくさん食べてくださいね。もっと私の味に染めないと(ボソッ)」

 

 なんか不穏な発言が聞こえたけど気のせいだなうん。だから木場と小猫ちゃんは逃げるな。大丈夫、変な素材は入ってないから。

 和風エプロンが似合う姿からつい嫁に欲しいとか社交辞令を言いそうになるが、言ったらなんか終わりそうな気がするからやめておく。

 ただ、

 

「本当に美味しいです。ありがとうございます」

 

 食べる相手を思って作られたその味に、泣きだしそうになるくらいの優しい味に心から礼を言う。

 

「ウフフ」

 

 その言葉に朱乃さんも顔を真っ赤にしてから伏せてしまった。

 

「これで女性恐怖症とか信じられないよ」

 

「塩焼きが甘いです、マヨ追加」

 

「むううう、私もスープを作ったんですよ」

 

 当然そのスープも美味しい。

 アリシアさんの味付けに近いかな?

 宗教は違うけど教会だから似たような料理を作るのかもしれないな。

 

「もう一杯ちょうだい、美味しいよ」

 

「はい」

 

 アーシアは嬉しそうにおかわりをよそってくれた。ちなみに俺がグランバハマルで一番苦手な人がアリシアさんだったりする。

 あの人を見ると震えが止まらないのだ。

 

『ガチで消滅されかかったからな。汚らわしきものを浄化する魔法で』

 

 誰が汚らわしきものじゃい。

 

「さてイッセー、今日一日どうだったかしら?」

 

 部長がお茶を飲んだあと訊いてくる。

 俺はいったん箸を置いて(腹八分目)正直な感想を口にした。

 

「悪魔になってからの伸びしろを実感しました」

 

 そう転化したこの肉体を俺はまだ万全に扱えていない。すこしやれることを学べばグランバハマルの経験からいくらでも出来ることを増やせるのだ。

 

「さすがは赤龍帝から至上最強と言われるだけあるわね。予想以上の実力にこっちが驚いたわよ」

 

 すいません、実力は全く見せてません。

 

「アーシアも才能があるし、これからが楽しみね。ただ逃げ時や逃げ方も意識しておいて、強者であっても退き時をあやまると討たれるわ」

 

「了解です」

 

 逃げるのは超得意だ。

 何せグランバハマル生活で散々逃げたからな。その重要さも理解している。

 

「さ、食事を終えたらお風呂にしましょう。ここは温泉だから素敵なのよ。イッセーも一緒に入るの?」  

 

「ハッハッハ、是非!と叫びたいですが死ぬから止めておきます」

 

「本当に死ぬからねイッセー君は」

 

「覗きができない珍生物先輩」

 

「あらあら残念ね」

 

「あうう、桐生さんから教えてもらった仲良くなれる方法ができません」

 

 とりあえず学校に行ったら桐生にアイアンクローの刑だな。アーシアに何を教えてる殺す気か。

 

「イッセー君、なら僕と裸の(((殺気!!)))やっぱりやめとくね」

 

「せっかくだし背中の流し合いとかやるか?煉獄の湯を思い出すな」

 

「ごめん、命の危機だから」

 

「冗談もほどほどにな」

 

 こんな発言をするからホモ扱いされんだぞお前は。

 

 こうして修行初日は過ぎていった。

 正直学校サボって行楽してるような気分が拭えないです。

*1
威力の調整は経験豊富な一誠だから簡単にできるのであって普通は難しい。また主の力を悪魔の駒から再現できるのも理論上は可能なだけで出来た者は今まで存在しない





 補足・説明。 

 グランバハマルでの兵藤一誠の初恋相手はメイベルです。
 ダメ人間だが唯一自分を対等な存在として扱ってくれた存在なので惚れました。
 なおアリシアさんは冒険者として有名なイッセーをかなり警戒気味(勇者という立場にされたので)であまり打ち解けてません。
 異世界おじさんが指輪をメイベルに渡してることからなんとか武力で勝ろうとしたが全戦全敗という結果に恋を諦めた。
 というか世界に七つしかない天星石の指輪を二つも渡すなんて男として完全に負けたと思ってしまった。
 実はメイベルは真剣なイッセーに半ば靡いていた事実は最後まで気づかなかった。

 メイベルのヒロイン化は未定です。
 いやその年齢がね。
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