異世界イッセー   作:規律式足

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 長くなったんでわけます。
 レーティングゲームの描写難しい。
 ワールドトリガーのランク戦を書ける人は本当に凄いですね。



第二十四話 フェニックスを倒せ

 

 決戦当日。

 

「よし」

 

 俺は自室で気合を入れていた。

 決戦は深夜零時ちょうど。

 合宿後に一日休んで、今日が本番だ。

 初のレーティングゲーム、リアス部長の人生を賭けた戦いだ。

 いや人生が賭かっているのは師匠、ライザー・フェニックスも同じだ。

 彼の栄達の機会を潰す、そこに罪悪感と申し訳なさが無いとは、言い切れなかった。

 お師匠、ライザー・フェニックス本人から[全力を尽くせ]と携帯にメールが送られてくるまでは。

 さすが男として格が違うぜ。

 俺は弟子として男として彼に敬意を抱いた。

 憂いは無い、迷いも無い。

 女性の望みを叶えてこそ男なのだ。

 

 

 レーティングゲーム開始直前。

 リアス・グレモリー眷属は旧校舎の部室に集結していた。服装は学生服だ、部長にとって大事な場所であるオカルト研究部を示すのに相応しい格好だからだ。

 木場は手甲と脛当を装備していて、小猫ちゃんはオープンフィンガーグローブ。

 俺も何か装備しようと思ったが、

 

『私以外を身に着けるっていうのっ?!この浮気者っ!!』

  

 という反応をドライグが、

 

『してないだろ、捏造するな』

 

 しろよたまには。つまらないヤツだ。

 収納空間にグランバハマルの武具もいくつか所持していて中には神器レベルの代物もあるにはあるが、武器で精霊魔法を超える代物は無いし、防具で赤龍帝の籠手を超える物も無いんだよな。

 古代魔導具は強力なオーパーツだけどエルフさんに回収されるからあんまり持ってないし。

 

『ダンジョンで手に入れるたびに追いかけ回されたのはトラウマだよ』

 

 ジェットババアみたいな感じになってたよなあの人。何度も陽介さんを投げつけて逃げたなあ。

 

『それでも逃げ切れたのは数回だけだった』

 

 部長と朱乃さんはお茶を飲みながら、俺はアーシアと並んで椅子に座り、ドライグと軽口を言い合いながら開始までの時間を過ごした。

 師匠のことだから俺に有効だからと眷属の服を脱がせたり意図的に密着させるような戦法はとらない、いやとれないと思うが対策はしないと。

 戦闘に意識を切り替えれば大丈夫だが、念の為に陽介さん直伝の切り札【感受性を殺す技術】を使用できるようにしておこう。

 

「皆さん、準備はお済みになられましたか?開始十分前です」

 

 部室の魔法陣から現れたグレイフィアさんがそう告げる。そして全員で立ち上がり、試合の説明を聞く。

 戦闘フィールドは異空間、レーティングゲームのためだけに作られた使い捨ての空間だ。

 後は転移してからか、事前にどんな場所か分からないのは厳しいか。

 転移の光に全員が包まれる。

 さあいよいよだ。

 

 

 転移先は先程まで居たオカルト研究部部室。

 戦場は駒王学園ということか。

 地の利はこちらにあるということだ、此処なら現在地をわざわざ地図で確認する必要もない。

 

「皆様、このたびグレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の審判役を担うこととなりました、グレモリー家使用人のグレイフィアでございます」

 

 校内放送からグレイフィアさんの声が響く。

 

「我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます」

 

 そこからは説明が続いた。

 戦場は駒王学園。

 転移先が自分達の本陣。こっちはオカルト研究部部室で、向こうは新校舎生徒会室。

 兵士の悪魔は、相手の本陣周囲にいかないと特性である他の駒まで能力を上昇させる「プロモーション」が使用できない。

 兵士が女王になれば素の実力が劣っていても他の駒を打倒できる。

 

「全員、この通信機器を耳につけてください」

 

 朱乃さんが全員にイヤホンタイプの通信機器を配る。これで味方同士のやり取りをするそうだ。

 タイマンバトル形式のレーティングゲームもあるらしいが、こんな機器を用意されるとサバイバルゲームみたいだと思ってしまう。

 というか悪魔って貴族制なのにこんなとこは取り入れているよな。

 

「開始のお時間となりました。制限時間は夜明けまで、双方の王が無事である場合は残った駒の数で勝敗を決めます」

 

 となると逃げ回っていては駒の数で劣るこっちは敗北するか。

 いや最初から、俺はライザー・フェニックスに勝たねばならないんだ。

 キンコンカンコーン。

 学校のチャイムが開始の合図として鳴り響いた。

 

 

『開幕ブッパで新校舎ごと消し飛ばさね?』

 

 なあドライグ、実はお前今回の件を凄く面倒臭がっていたな。ノリ気でないのは察してはいたがここまでとは。

 

『こういったチマチマした戦いは性に合わん。最大火力のぶちかましこそドラゴンよ』

 

 だから周囲の被害が甚大なんだろうが。 

 勝てば良いだけの実戦じゃないんだぞ。

 ゲームが開始してはまずは準備、今回のレーティングゲームは戦場を使い込む長時間を見据えての戦い。本陣周囲の森に罠をしかけ、拠点となる施設を占拠していく方針だ。

 なので俺は小猫ちゃんと体育館を抑えに行き。

 木場は遊撃、朱乃さんは頃合いを見て砲撃、回復役のアーシアは部長の側に控える。

 

「皆、私のワガママに付き合ってくれてありがとう。勝手を承知の上で私は我を通す、自らの欲望を肯定してこその悪魔なのだから!!

 相手はフェニックス家の中でも有望視されている才児ライザー・フェニックス。さあ、消し飛ばしてあげましょう!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 全員で返事をしたと同時に駆け出した。

 己の主の夢のために。

 

 

 

「やっぱり強いですよねイッセー先輩」

 

「経験だよ、経験」

 

 何せ俺は才能だけなら歴代で最も劣っていたらしいからな。グランバハマルから帰還時にアレコレ弄られたから今は正確に分からないみたいだけど。

 体育館で遭遇したライザー眷属四名。

 チャイナドレスの戦車。

 ロリ体型で棍使いの兵士。

 双子でチェーンソー使いの兵士達。

 彼女達は俺が無手で撃退した。

 弱くはない、とは思う。

 けど俺の相手には足りない。

 軽快な動きの格闘技も、チェーンソーという恐怖心を煽る武器を用いた双子の息のあったコンビネーションも、その合間を縫うように突き出された棍も悪くは無かった。

 ハーレムメンバーでありながら戦闘者足りうる実力はある。けれど、殺し合いになれば彼女達はグランバハマルの村人にすら殺されるだろう。

 確かに肉体性能ならグランバハマルの村人の方が下だが、彼女達は連中のような狂気的な必死さがない。

 生きるのに必死な連中はたとえ殴られてもしがみついて噛み付くぐらい平気でやる。だから俺は一撃で意識を奪う打撃を必死に身につけたんだ。

 一人一撃。

 全員赤龍帝の籠手で殴打し意識を奪った。

 

〈ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、「戦車」一名、戦闘不能!〉

 

「いくよ、小猫ちゃん」

 

「ここで下がって、朱乃さんに体育館ごと消し飛ばして貰う作戦だったのでは?」

 

 そう、敵本陣に繋がる拠点を敢えて吹き飛ばすという作戦ではあったけど、

 

「向こうもそれが狙いみたいでね」

 

 撃破した兵士の棍を視線の方へと投げつける。

 上空でこちらに狙いをつけていた魔導師姿でフードをかぶった女性、ライザー眷属女王「爆弾王妃」ユーベルーナさんは魔力を散らして回避した。

 

「ライザー様が警戒されるだけのことはあるようですね」

 

 必殺の不意打ちを未然に防がれたユーベルーナさんは言う。

 

「不意打ちには慣れてるからね」

 

 グランバハマルライフの二割は不意打ちだったと言える。

 

「イッセー先輩って何者なんです?」

 

 自分では気づくことすらできなかった相手に攻撃した俺にたいして、前々から気にしていただろう疑問を小猫ちゃんは口にした。アーシアの時も、合宿の時も、彼女は俺の強さを不思議に思っていたのだから。

 

「ただの赤龍帝だよ」

 

 だから俺は俺の秘密を告げる。

 

「異世界帰りのね」

 

 格好良くポーズを決めて。

 

「真面目な話なんですけど」

 

 だけど可愛いらしい無表情系ロリな後輩の反応は軽蔑するような冷めた表情でした。

 なあドライグ?やっぱり異世界って信じられないのか?

 

『眉唾ネタではあるな。人間からしたら冥界やら天界も異世界扱いだが、オカルト側からしたら単なる地名だし』

 

 どうやら異世界という単語自体がオカルト勢にはツチノコやらスカイフィッシュとかそんな扱いらしい。

 だって小猫ちゃんだけじゃなくユーベルーナさんから何言ってんだコイツみたいな視線を向けられているのだから。

 

『陽介もこんな扱いだったな』

 

 精霊と会話できると言ったら爆笑してたよねエルフさん。そういったことを積み重ねるから嫌われるんだよ。

 

「不真面目な先輩は置いといてなんとかしないと」

 

「可愛い後輩と心の距離が広がって悲しい」

 

「肉体的には離れてないとすぐに気絶するでしょう、儚い先輩」

 

「その呼び方は止めて」

 

 距離的に遠距離攻撃だな、精霊魔法を使うべきか。

 俺が構えようとすると、

 

「貴女の相手は私がしますわ」

 

 控えていた朱乃さんが俺達の間に入ってきた。

 

「リアス・グレモリー様の女王「雷の巫女」ね。レーティングゲームデビュー前から名を知られるこちらも貴女とは戦ってみたかった」

 

「いいえ。イッセー君これを見ても嫌わないで(ボソッ)」

 

 ユーベルーナさんの言葉を朱乃さんは否定する。そして切なげに俺を一度見てから覚悟を決めた表情となり全身に力を込めた。 

 すると合宿時に見せてもらった彼女の雷は、力を増して変化する。

 

『ん?懐かしいな』

 

 知っているのかドライグ?

 

『ああアレは』

 

「私は「雷光の巫女」よ!!」

 

 彼女の宣言が駒王学園を模した異空間の空へ響き渡る。聖なる光を帯びた雷を纏う、悪魔と堕天使の翼合わせもつ乙女がそこにいた。

 

「綺麗だ」

 

『堕天使幹部バラキエルの固有能力である、って聞けよオイっ?!』

 

 意識を切り替えた筈なのに思わず見蕩れた。

 その美しい外見が理由ではない。

 今まで秘していた力を使う。

 彼女の強い意志が、想いが、見蕩れてしまう程に美しい。

 

「イッセー君。私は」

 

「朱乃さん。此処は任せました!!」

 

 不安げにこちらを伺う朱乃さんにグッと親指を上げて笑いかける。

 彼女が何をそんなに怯えているかは正確にはわからない。けれど俺が朱乃さんを嫌うことなんてありえないのだから。

 

「はい!!」

 

 俺の言葉に朱乃さんは普段の落ち着いた感じではなく年相応の花の咲くような笑顔で答えた。

 

「私も残ります、色男先輩」

 

「ねえ、呼び方一々変える必要ある?」

 

 そして誰が色男だ。

 

「裕斗先輩をお願いします」

 

「了解、任されたよ。あ、そうだ朱乃さん!!」

 

 収納魔法から一振りの剣を取り出して、空へ浮かぶ彼女へ投げ渡す。

 

「使ってください!魔力を刀身にチャージできる古代魔導具です」

 

 見たところ、雷光を発動する前の朱乃さんはユーベルーナさんと互角だった。しかし出力と威力は上がっても使い慣れてない力では戦いはどうなるかわからない。ならグランバハマルで見つけてエルフさんから隠し通した騎団長級響導魔具を装備すれば有利になる筈だ。

 

『合宿の時に剣の心得はあったからな』

 

「負けないでください、朱乃さん!!」

 

『相棒がぶっ倒していけば良くね?』

 

 お黙り!!

 こっちはお師匠との戦いを控えているだろ。

 

 

 リアス・グレモリー眷属が兵士・兵藤一誠が去った後の体育館外。

 上空にて対峙する両眷属女王達と、万が一に備えて控える戦車。

 だが兵藤一誠から剣らしきモノを受け取ったグレモリー眷属女王・姫島朱乃は、

 

「ふふふふふふ」

 

「えっと、どうしたの貴女?」

 

「怖いです」

 

 ソレを俯いたままじっと見つめ笑いだしていた。

 

「はじめて殿方からプレゼントを貰ってしまったわ!!」

 

「「ええー」」

 

 状況的にはよろしくないが、同性として理解できる二人は不快には思わずされどその表情にドン引きした。

 何せ剣である。

 渡した兵藤一誠とてプレゼントではなく切り札として託したのだろう。

 まあそれでも、嫌われると思っていた堕天使の力は肯定され、さらにプレゼント(剣)まで貰った彼女の乙女心は今まさに天元突破していた。

 

「さあ、やりましょうユーベルーナさん!!」

 

 ライザー眷属女王「爆弾王妃」ユーベルーナはそんな「雷光の巫女」の様子に、助けを求めるように塔城小猫を見た。

 無論、敵に情けをかけれない彼女はそっと顔を逸らした。

 





 補足・説明。
 
 朱乃さんについて
 部室で会った時から一目惚れしてた彼女。
 今回で弾けました。
 ただ雷光を使用した一番の理由は親友であるリアスのためなのは事実です。
 最後にやらかしてますが。

 古代魔導具
 剣型の魔導具で、魔力を刀身に溜めることで鍔が展開しエネルギーブレードが発生します。剣としても属性は帯びてませんが、聖剣魔剣レベルの代物。
 どの属性でもエネルギーブレードにできるので、眷属の誰が使っても便利です(アーシアが使えば治癒魔力の刃がでる)。

 ユーベルーナさん
 リアスとの結婚には内心で反対していた。  
 彼女が身籠っていたらライザーは婚約破棄をしていたでしょう。原作では不明ですが当作品ではフェニックス家に仕える中級の純血悪魔という設定。
 朱乃さんにドン引きした。

 小猫ちゃん
 先輩に実力の理由を聞いたら巫山戯られて不機嫌なロリ。朱乃さんにドン引きしてユーベルーナさんに同情している。


 最後のシーンで朱乃さんアンチかなと少し不安です。
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