異世界イッセー   作:規律式足

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 すいません木場君のシーンは飛ばします。
 だって前話と大差ないので。
 またイッセーは騎士道に付き合いませんから。



第二十五話 フェニックスは炎凰に焼かれる

 

 

〈ライザー・フェニックス様の「兵士」三名リタイア〉

 

〈ライザー・フェニックス様の「騎士」「戦車」リタイア〉

 

「リアス、お前の眷属は少数ながら優れた者達ばかりだな。いやさすがは我が弟子というべきか」

 

 新校舎屋上。

 王であるライザー・フェニックスとリアス・グレモリーは眷属達の戦いを紅茶を飲みながら観戦していた。

 

「どうしたリアス、口に合わないか?レイヴェルの淹れた紅茶は旨いと評判なんだが」   

  

 これが婚約を賭けたレーティングゲームの最中とは思えない状況。

 だが眷属達が奮戦し手薄となった本陣へと突貫したリアス・グレモリーはライザー・フェニックスの提案にてこのような茶会に興じる破目になっていた。

 

「なんのつもりよ、ライザー」

 

 レーティングゲームは王が敗北すれば終わり。ならば自身を討てば終わりだというのに、目の前の男は時間を潰そうという。

 なんの罠かと疑いはしたが、何もしなくてても負けるだけだからと了承したが何故こんなことを。

 疑問に思うのはリアス・グレモリーだけではない。リアスの眷属であるアーシアもライザーの眷属である妹のレイヴェルまでも、ライザー・フェニックスの行動が理解できなかった。

 

「我が弟子が此処にくるまで待っているだけだ」

 

 リアスの問いにライザーはそう答えた。

 

「どういうこと?なんでわざわざイッセーを待つの?」

 

 リアス・グレモリーには未だに史上最強の赤龍帝と赤い龍に称される兵藤一誠の実力を正確に測れないでいた。だがそれでも兵藤一誠が自分より強いことは理解している。そして神滅具・赤龍帝の籠手の力の強大さも。ライザーがフェニックスであろうとそう簡単に勝てないとリアス・グレモリーは確信していた。

 

「お兄様、私にも理解できません。リアス様を倒して終わり。それでは駄目なのですか?」 

 

 僧侶であるレイヴェル・フェニックスも尋ねる。リアス・グレモリーが二つ名持ちの天才であろうと兄ならば勝てる。なぜわざわざ試合を引き伸ばすようなことをしているのか。

 

「あのなお前ら。このレーティングゲームはなんだ?なんの為に行われた?」

 

「私は婚約破棄のため」

 

「俺はグレモリー家の婿養子になるためだ」

 

 認識の差。

 それが如実に表れていた。

 リアス・グレモリーにとってはこのゲームでの勝ちはゴールだ。

 しかしライザー・フェニックスにしてはここがスタートなのだ。

 

「このレーティングゲームはな、リアスにとっては勝てば終わりだが、俺は勝ってからが始まりなんだよ」

 

 婿養子となる。

 それはごく普通の結婚とは大きく異なる。

 人間の一般家庭での結婚でも、相手の家に入るという点ではあるいは苦労が多いかもしれない。

 ましてグレモリーは貴族。

 そこに付随する権力を考えれば、グレモリー家一族及び付き従う一党の心境は良いに越したことはないのだ。

 だからこそライザー・フェニックスには正攻法しか取れなかった。これから家族として迎え入れる存在が手段を選ばない者なんて思われたらどんな不平不満が噴出することか。

 ただでさえ現時点でも、嫌がるお嬢様を自分に有利なゲームで打ち負かして無理やり嫁にする男という立場なのだ。

 たとえそれが上が決めたこととはいえ、否だからこそその悪印象は拭えないだろう。

 ましてやライザーはグレモリー家に自身の眷属にしてハーレムメンバーを引き連れていく。僧侶にして妹であるレイヴェルは母辺りとトレードして実家に残すつもりだが、連れて行った愛する眷属達が過ごしやすい場所とするためにも少しでもグレモリーに連なる者達に良い印象を持ってもらわねばならないのだ。

 そう避けれる戦いである赤龍帝とわざわざ戦うのもそのため。

 何せ、

 

「赤龍帝が温存されたままリアスを破って勝利したヤツを一体誰が認める、受け入れる」

 

 手段を選ばないで勝ちを優先することも真剣にやっていると評価される場合もある。

 だが、勝って当然という認識が根付いているフェニックスはそうではない。

 戦略として赤龍帝との戦いを避ければ、必ず影に日向に罵られるだろう。

 赤龍帝から逃げた男だと。

 兵藤一誠がライザー眷属の兵士一人に負ける程度の弱い存在なら良かった。凄いのは赤龍帝の籠手で戦うまでもない存在だと周囲は判断するだろう。

 だが彼には悪魔に転生する前に中位堕天使を撃退し、悪名高い悪魔祓いフリード・セルゼンを撃退したという実績がある。

 赤龍帝の籠手の能力からして、戦いを避けた時点で臆病風に吹かれたと判断されるには充分なのだ。

 だからライザー・フェニックスは兵藤一誠に勝たねばならないのだ。

 リアス・グレモリーが兵藤一誠を眷属にできて、レーティングゲームを了承した時点でそう決まっていた。

 

「そう」

 

 ライザー・フェニックスのおかれている状況を見てリアス・グレモリーは俯く。自らの視野の狭さに恥じ入る気持ちもあった。

 

「気にするなよリアス」

 

 だがハーレム王ライザーはそんなリアスを慰める。自分に靡かなくとも女性が悲しむのは本意ではないからだ。

 

「赤龍帝兵藤一誠が忠誠を誓うのはお前の功績だ」

 

 悪魔の駒が冥界で創り出されて数百年、神滅具保有者を眷属化する機会は幾度となくあったがそれを成し得たのは冥界の歴史上リアスが初。

 その事実を彼女はもっと誇るべきなのだ。

 

「ちなみに形振り構わず戦うべき、と言われるだろうがこの茶会がその一環だからな。赤龍帝と戦うために体力を無駄にしないために休んでいるという策だ」

 

「不死身のフェニックスなら私と戦おうと大差ないと思うけど?」

 

 拗ねたようなリアスの言葉をライザーは苦笑しながら否定する。

 

「俺はグレモリー家の天才「紅髪の滅殺姫」を侮る気はねえよ。勝ちはしても散々打ち合いして何度も身体を再生してだろうさ。そんな消耗は避けたいよ。しかし、」

 

 このままだと袋叩きにされちまうかもな。

 

「どういう意味?」

 

「計算ではユーベルーナがリアスの他の眷属を撃破できる筈だったが」

 

 体育館前の女王対決はまだ続いている。

 雷光が迸り、爆破が鳴る、そんな爆撃戦のような大規模な戦闘。

 与えたフェニックスの涙で押し切れると踏んでいたライザーだが吹っ切れた姫島朱乃の撃破は難しいそうだ。自力では女王に次ぐ木場裕斗も兵藤一誠を消耗させるための眷属達を個別撃破しているようだ。

 そしてそんな計算違いの原因は、

 

「お前だよな、我が弟子」

 

 屋上に辿り着いた兵藤一誠だろう。

 

「はい師匠!!」

 

「イッセー!!」

 

「イッセーさん!!」

 

 リアス、アーシアがその名を呼ぶ。

 頼りとする男の名を呼ぶ。

 

「リアス・グレモリー。俺はお前が好きではなかったよ。俺が愛しているのは俺を愛してくれる眷属達だ」

 

 ライザー・フェニックスは言う。これで縁が切れるかも知れない相手に、最後になるかも知れない言葉、本音を言う。

 

「俺の眷属達は俺がハーレムを築いていることを承知で愛してくれた。けどお前はそうじゃない、なら俺はお前を愛せない。結婚相手だがハーレムメンバーではなかったさ」

 

 結婚は仕事で義務。

 一族と自分に利益があるのだからそれで構わなかった。

 

「愛なんて結婚相手じゃなくて、自分の眷属で育めば良かったんだよ」

 

 内縁の夫を許容しない程にライザーは狭量ではない。夫婦で互いに囲えば良いだろうと。

  

「ライザー」

 

 そしてリアスはそんなライザーの言葉に頷きそうになるも、

 

「それでも私の身体を子供ができるまで堪能する気だったわよね」

 

 ジト目で睨みながら彼女は言った。

 そんな相手に抱かれることを彼女は受け入れられないと思いながら。

 

「それは勿論」

 

 そしてライザーはハーレム王でドスケベだから否定しない。彼は据え膳食わぬ男ではないのだから。

 

「さてと、じゃあやるか我が弟子。リアス、俺が勝ったら敗北を認めろよ。レイヴェル、お前は雷光の巫女が来たら離脱しろ、余計な怪我をすることはない」

 

 切り替えるようにライザーは言う。

 赤龍帝対策が間に合わなかった以上はもう自力で戦うしかない。

 

「師匠、後少しだけお時間を頂けますか?」

 

 そんなライザーへと兵藤一誠のお願いがあり、

 

「いいぞ」

 

 彼はそれを受け入れた。

 

「お嬢さん」

 

 了承を得た兵藤一誠は座るリアス・グレモリーの前に膝をつき、一枚の紙を渡す。

 それはチラシだった。

 グレモリー眷属は、悪魔ならよく見知った契約紙。あなたの願いを叶えます!と書かれ魔法陣の描かれたチラシ。

 

「あ」

 

 渡されたそれを理解したリアスは言葉が詰まる。

 なんで兵藤一誠が渡したのか理解する。

 悪魔において契約は絶対。

 それは何よりも優先すべきことなのだ。

 

「この戦いに勝って!私に恋する相手と想いを成就する機会を与えて!」

 

「承知しました」

 

 少女の願いを悪魔は聞き入れる。

 

「対価は貴方の涙。確かに頂戴いたしました」

 

 リアスの頬に滴り落ちる雫を人差し指で受け止める。

 

「だからもう泣かないでください。貴方の勝ち気な威風堂々とした笑顔を眷属の皆は好きなんですから」

 

「イッセー!!」

 

 堪えきれず叫ぶ。

 溢れる想いが愛しい男の名を呼んだ。

 

「お待たせしました、ライザー様」

 

「見事だ我が弟子。ハーレム王としては一段格を上げ、悪魔として、眷属としては満点だ!!」

 

「はい!師匠!」

 

「学べ、育て、飛べ、お前のハーレム王としての道はこれからだ!!

 そして俺とリアスの件も教材として活用せよ!!」

 

 弟子にエールを送る師匠。最後の自虐ネタは正直笑えないが。

 

「師匠、俺は貴方に全力ではやれません。史上最強の赤龍帝たる俺に貴方の実力は足りてないから。けど本気で向き合います、貴方という尊敬できる男に!!

 いくぞドライグ!!」

 

『ようやくか相棒っ!!』

 

「『バランス・ブレイク』」

 

「『赤龍帝の鎧!!』」

 

 それは神器の先。

 聖書の神の創り出した力を進化させたモノ。

 それは赤き鎧。

 暴威を振るった二天龍を模した鎧。

 その姿は人型のドラゴンであった。

 

「対価も無くその力を扱うか!!恐ろしい限りだな我が弟子、いや兵藤一誠よ!!」

 

 ライザーは不死鳥の炎を翼にして空へ舞い上がる。

 

「それを理解し退かぬ貴方の胆力に敬意をいだきます。ライザー・フェニックス、貴方は男の中の男だ!!」

 

「当たり前だろう!俺はハーレム王ライザーだああああ!!」

 

 炎が赤龍帝に襲いかかる。

 不死鳥フェニックスの炎はドラゴンの鱗にも傷を残す業火。だが、 

 

「効きません」

 

 それは凡百のドラゴンだ。

 ライザーの炎は兵藤一誠を焼くことが出来なかった。相手が悪い、そうとしか言えない。

 ただの赤龍帝ならば通じた炎。

 だが異世界帰りの赤龍帝はただの赤龍帝に非ず。彼らの経験した灼熱地獄はこんなに温くない。魔炎竜にも神化魔炎竜にも古代魔導具によるナパームが如き炎熱にも精霊魔法による意志ある炎にも、何度もこんがり焼かれ続けた彼らにはこの程度の炎は通用しないのだ。

 

「いきます」

 

 兵藤一誠による拳一閃。

 それは振り下ろされたドラゴンの一爪に等しい。それだけでライザー・フェニックスの身体は上半身と下半身の二つにわかれた。

 

「(ヤベ)」

 

『(威力調整が難しいな)』

 

「グウウオオ」

 

 不死鳥の不死性がその損傷を瞬時に治す。くらった一撃から目の前の存在が比喩ではなく人型のドラゴンであると理解した。

 爪牙の一振りが必殺。何物も通さぬ無敵の鱗。地形を一変させる火力。

 まさに最強生物。

 それがドラゴン。

 だが、

 ライザー・フェニックスは諦めない。

 未だ勝機は彼にある。

 

「なあ、兵藤一誠?」

 

 一振りで身体を削られ、そのたびに治しながらライザーは問いかける。

 

「なんですか?」

 

 心を削る一手を。

 

「その禁手、鎧はどれだけ維持できる?」

 

 不死鳥の不死は精神に依存する。

 つまり心折れなければ倒されることはない。

 レーティングゲーム、竜対策の間に合わなかったライザーの考えた策。それは、

 

「俺はどれだけ死のうとも、決して倒れない!!」

 

 如何なるダメージも根性で耐える、というシンプルなもの。だがそれこそがフェニックスを真の不死へといたらせる。

 そしてリミットを問うことで、兵藤一誠の心を揺さぶる算段だ。これは不死身と無敵、この戦いは心をどれだけ削るかにかかっている。

 

「二ヶ月です」

 

『なんで陽介のポカのせいで神化魔炎竜と二ヶ月もタイマンしてたんだろうな俺ら』

 

「(本当にな)」

 

 しかし現実とは無情。

 兵藤一誠がグランバハマルで経験した地獄はライザー・フェニックスの想定を凌駕する。

 

「なあっ!!」

 

「残りの駒の数ではタイムリミットが来たら貴方の負けですね師匠」

 

 動揺するライザーに畳み掛けるイッセー。

 もはや勝敗は決した。

 

「まだだ、まだ終わらない。戦ってくれた愛しき者達の為に俺は死力を尽くさねばならない!!」

 

「お見事です師匠」

 

『認めてやろう、俺達の敵であったと』

 

「心折れぬ限り落ちぬが不死鳥と言うならば」

 

『その心を焼いてみせよう』

 

「これこそが」

 

『真なる焔』

 

「『炎凰殲滅』」

 

 精霊魔法による焔。

 この世界における最も強大で純粋な炎。  

 赤龍帝の倍加にて増幅された精霊力にて形作られた焔の鳳はその巨体を翼を広げ、ライザー・フェニックスに向かって駆け抜ける。

 

「「「「美しい」」」」

 

 それは誰の言葉であったか。

 神話の顕現が如き一幕を見た全ての者達がそう思った。 

 そして相対するライザーの心すらも焼いた。

 羽ばたきの後に残ったのは仰向けで屋上に寝転がるライザーの姿のみであった。

 

「見事だ兵藤一誠」

 

「最後まで諦めない貴方もですよ。ライザー・フェニックス」

 

 戦いは終わった。

 兵藤一誠は赤龍帝の鎧を解除し、臨戦態勢を解く。もはや必要ないのだからと。

 

「グレモリー家の婿養子の座は惜しいが、良い物を見れたから良しとしよう。お前という弟子も得られたしな」

 

 朗らかに笑う男。

 本当はそれどころではない。手に入る筈のものが目の前で取り上げられて悔しい筈なのに、ライザーは笑える。敗者の矜持として勝者を曇らせたくないから。

 

「本当に、得られるものばかりな戦いでしたよ」

 

 短なこの期間は良き一生の思い出だ。

 二人の男は満足げに笑いあった。

 

 が、ここで終わらないのが彼らしさ。

 

「イッセー!!」

 

 感極まったリアス・グレモリーは様々な感情がごちゃまぜになりその衝動のまま兵藤一誠に抱きつき。

 

「ありがとう」

 

 感謝と恋慕の気持ちで自らの唇を兵藤一誠へと重ねた。

 

『あ』

 

 臨戦態勢を解いていた兵藤一誠はその衝撃に耐えきれず心臓が止まり、そのダメージにシステムが反応し光に包まれて転移していった。

 

〈リアス・グレモリー様の「兵士」リタイア〉

 

 無情なアナウンスが審判役の彼女らしくない困惑気味な声でそう伝えた。

 

 静寂。

 痛みすら感じてくる静けさがその場を満たしていた。

 

「な、」

 

「あー、投了で」

 

 気不味くなったライザーがそう宣言する。

 

〈ライザー・フェニックス様の投了によりこのゲームは、リア〉

 

「なんでよーーーっ!!」

 

 異空間にリアス・グレモリーによる乙女の叫びが幕引きの音頭となって響き渡ったそうな。

 





 是非ともリアスの叫びの後に異世界おじさんのアニメオープニングを流してほしいです。

 補足・説明。

 ライザー・フェニックスの理由。
 婿養子後の生活の見据えて。
 グレモリー家の生活が針のむしろなんて嫌ですから。だからこその戦法でした。使用人もリアスを大事なに思う人が居るでしょうし。
 赤龍帝を倒す理由。
 戦ってないからと結婚式に乱入とかを避けたかった。また数年後に反旗を翻されたら困るため。
 縁談はグレモリー側からだから理不尽ですが、けど三男坊が婿養子だから当然のリスクではある。ハイリスクハイリターンという形。

 精霊魔法
 使い手は少ない。
 というか使えるだけで凄い。
 悪魔は 魔力を変換して現象をおこすので、精霊魔法は神器経由でないと使用できません。
 ライザーをして負けて仕方ないと思わせる一撃。

 オチについて
 これがやりたくてこの作品を書いた。
 他にも書きたいシーンはありますが、このシーンを思いついたから書き出しました。
 かなり満足。
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