異世界イッセー   作:規律式足

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 読者の皆様の博識さにビビる作者がいるらしい、私ですが。
 エクスカリバーですが、原作3巻で3勢力の戦争に、妖精、精霊、西洋の魔物、東洋の妖怪、人間が力を貸した、とあるので、聖剣や魔剣はその時に借りたのかなーということにします。
 オリジナル設定、オリ展開ありです、閲覧注意。



第三十二話 聖剣振るう狂人

 

 どしゃぶりの中、傘もささずに歩く少年。

 かつて教会で人工的に聖剣の担い手を創り出そうとした聖剣計画の犠牲者にして、リアス・グレモリー眷属が【騎士】である木場祐斗。

 命の恩人(悪魔)である彼女と仲間達に心配をかけ、さらに自身の未だに拭えぬ復讐心を吐露してしまい、この天気と同じように気持ちは重く沈んでいた。

 リアス・グレモリーに彼は全てを貰った。

 場所、名前、仲間、強さ、使命、【情愛】を司る悪魔である彼女はそれらを惜しみなく彼に与えた。

 その日々は幸せであった。

 満たされた時間だったのだ。

 だが、聖剣に対する憎悪を忘れることができない。あんな物叩き壊したいと思う。

 ソレ一つで、天使複数体以上の働きをする器物【聖剣】。たかが剣のくせに、聖剣計画被害者の命全てよりも価値のあるモノ。

 そんなものが在ることが許せない。

 そんなものが価値があると崇められることが許せない。

 聖剣などと呼ばれておいて凡百の武具より多くの命を吸ったソレが、尊いモノであるかのように扱われることが許せない。

 だからこの手で壊したい。

 だから聖剣を否定したい。

 

(出来るわけ無いのにね)

 

 木場祐斗の冷静な思考はそう理解していた。

 あの写真を見てから兵藤一誠の幼馴染のことを調べたが教会の本部たるバチカンに居を移したことが分かった。如何にエクスカリバーを壊したくとも、都市そのものが悪魔に対する兵器であるあの場所に攻め入ることは不可能なのだ。

 ようやく見つけた、見つけてしまった憎きモノは手の届かない場所。

 振り上げられた手は、燃え上がった憎悪は、行く宛もなく宙ぶらりんとなってしまった。

 ぴちゃり。

 木場祐斗の前に雨音とは違う異音が聞こえた。

 見ればそこには神父。

 誇らしげに十字架を胸につけ、憎き神の名の下に血塗られた身でありながら聖を語り、父と名乗る者。

 木場祐斗の嫌悪する対象の一つであり、現在この地に居るのがおかしい存在だ。

 捕らえて情報を吐かせる。

 裏事情を知らぬ一般信徒に手荒な真似をすることはないが、相対する神父は戦闘訓練を積んだ悪魔祓いであることは体型からして察することができる。

 ならば被害が出る前に対処しようと身構えた所で、神父は腹部から血を滲ませ口から血液を吐き出すとその場に雨に塗れるアスファルトに倒れ伏した。

 雨により血の匂いが誤魔化され重傷であることに気が付かなかったのか?と木場祐斗は疑問に思う。

 神父という悪魔の敵とそれを討ち取る何者かの存在がいる。その事実を主であるリアス・グレモリーに伝えようとして、その気配に気づいた。

 

「やほー、グレモリーの騎士である悪魔ちん」

 

 いつの間にか現れたその聖職者の格好した少年は倒れ伏した神父の身体をガサゴソと漁りながら、まるで友人であるかのように軽く話しかけてきた。

 

「ん~~?しけてやがんな雨だけに。やっぱりエクスカリバー程のドロップアイテムはもってねえか。お、財布みっけ、なんでキャバ嬢の名刺持ってんだコイツ?」

 

 その人物には見覚えがあった。

 直接の面識こそなく終わったが、調べたから知っていた。

 兵藤一誠とアーシア・アルジェントがグレモリー眷属に加わるきっかけとなった堕天使騒動。その堕天使達の尖兵であり一人だけ逃げおおせた墜ちた神父にして血塗られた天才悪魔祓い。

 教会の失敗作。

 狂人、フリード・セルゼン。

 あの兵藤一誠があの場の堕天使より強かったと語っていた危険人物だ。

 

「何を、しているんだ?」

 

「慰謝料請求、というか回収」

 

 一通り死体から遺品を剥いだのかポイっと捨てる。その手には指令書らしき紙と携帯機器があった。

 

「ウキウキ☆逃亡潜伏ライフに勤しんでた俺様ちんに、このおっさんが突然襲いかかってきてな。だから返り討ちにしてやったのよ」

 

 正当防衛、正当防衛とヘラヘラとフリードはそう言ってのけた。

 

「詳しく話を聞かせて貰うよ。我が主、リアス・グレモリーの前でね!」

 

 確かに教会の悪魔祓いがフリード・セルゼンを見つけていたら討伐しようとするだろう。

 だがそれだけでないことは明白。

 さらに木場祐斗には聞き捨てならない情報を拾ってしまった。

 エクスカリバー。

 あの壊したいと願ったモノを討たれた神父は所持していて、目の前の墜ちた悪魔祓いが奪い取ったと。

 

「あのおっかない赤龍帝ちんとやり合う気はねえんだけどな。あのクソカス変態ジジイとコカビエルの旦那は身の程知らねえ馬鹿だっての。けどよ」

 

 戦意がフリード・セルゼンから溢れだす。

 その手には一振りの長剣。

 

「教会のクソッタレに一泡吹かせてる途中なんでな、まだ捕まる気はねえよ御同輩!!」

 

 聖なるオーラをその剣が発したことでソレが何なのか木場祐斗は理解した。

 

「君に御同輩と呼ばれる筋合いは無いっ!!」

 

 叫びとともに神器【魔剣創造】を発動して聖剣エクスカリバーと打ち合える魔剣を生み出す。

 

「あるさっ!!」

 

 ギィィィンッ!!

 雨粒を吹き飛ばしぶつかりあった銀光が火花を散らす。

 

「俺様ちんは、人工的に英雄を生み出すために作られた、試験管ベイビーに薬物投与された、教会による人造薬物強化人間っ!!」

 

 お互いの振るう剣が光る軌跡を夜に描く。

 

「お前さんは、掻き集められた剣に関する才能と神器を有した少年少女に、あらゆる実験を繰り返された後の生き残りっ!!」

 

 激情と共に交わされる刃は語り合い。

 

「真っ白く綺麗に着飾り、優しげな表情で善人ぶって、御大層なそれっぽい救いの言葉を語る、クソッタレな教会と天使を憎む御同輩だろうがよっ!!」

 

 木場祐斗はこの時とある感覚にとらわれていた。

 言うなればそれは波立たぬ水面を覗きこんだ時のようなもの。

 目の前にいる人物が別の誰かではなく、

 水面に映る自分に見えた。

 

「君は」

 

「大物が動いたぜ、堕天使幹部のコカビエルの旦那がなっ!!隠れ潜んでいたクソカス変態ジジイを引っ張りだして事を起こしたっ!!」

 

 けれど木場祐斗はリアス・グレモリーに救われたが。

 

「ならエクスカリバーをボードにして、このビッグウェーブに乗るしかねえだろっ!!

 教会の、天界のクソッタレ共に吠え面かかせるためになっ!!」

 

 フリード・セルゼンは未だ闇の中、誰にも手を取られず一人泣き叫んで刃を振るっていた。

 

「なあ御同輩」

 

 肩に聖剣エクスカリバーの刀身を乗せながら、木場祐斗は怨敵と思えなくなった少年に声をかけられる。

 

「お前はこのバカ騒ぎでどう踊る?」

 

 その誘うような笑みにフリードが自分の末路の一つの形であったと、木場祐斗は悟った。

 その姿に思わず手を伸ばしかけたところで、

 

「あ、うちの協力者のクソカス変態ジジイは聖剣計画の首謀者だから」

 

 手に持つ魔剣を振り切った。

 

「そういうのは先に言ってよ」

 

「勧誘する気は端からねえよ」

 

 この言葉を最後に二人は剣を数度交わし合い、フリードの逃亡により幕引きとなった。

 




 
 補足・説明

 思ったより長くなったのでここで切ります。
 改変されたキャラ、フリード・セルゼン。
 こんなの彼じゃないと思う方はすいませんでした。
 なお彼は教会の被害者でありますが、薬物の影響で愉しんで人を殺した悪人であることに変わりはありません。教会から狂人だと捨てられたことで初めて自分のしでかしたことに思考を初めたタイプです。
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