異世界イッセー   作:規律式足

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 かなり原作と展開を変えます。
 閲覧注意。



第三十四話 信徒

 

 悪魔祓いとの対談当日。

 ドライグの助言に従いアーシアは下がっているべきだと部長達に提案した。

 部長はその意見に賛成した。

 魔女認定されたアーシアに対して悪魔祓いがどんな反応をするかは明白であり、傷つくだけだから参加するべきではないと言ってくれた。

 だが当の本人であるアーシアは参加すると宣言した。己の行いにより魔女と呼ばれたことも、自分の意思で悪魔へと転化したことも後悔はない。恥じることがないのだから隠れ潜むのは部長に失礼である、と言ったのだ。

 部長と二人がかりで説得しようにもアーシアの意思は固く、決して自分の思いを曲げることはなかった。

 こうなっては仕方ない。

 アーシアが何か言われたら庇うと決めて、俺達グレモリー眷属は悪魔祓いとの対談へと臨んだ。

 

 ソファーには部長と朱乃さん、そして向かい側に悪魔祓いの女性二人が座っている。

 それ以外の眷属達は部室の片隅で見守るという形だ。

 対談というにはあまりにも険悪な空気。

 木場は当然として、話を聞いただけの俺ですら教会関係者に良い印象などないのだから。

 そんな空気の中で話を切り出したのは、教会側の紫藤イリナと名乗った少女だ。

 入室すると同時にはじめた自己紹介で、俺の園児時代の友人であったことが判明した。

 実は男だと思っていたとは言えなかったが、幼馴染が悪魔になってショックだったと告げられ複雑な気分になった。俺自身は悪魔への転化に不満など何一つないのだから。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

 宗教に疎い日本人でも知る、聖剣エクスカリバーは複数本ある。

 正確にはかつての戦争で猛威を振るった聖剣エクスカリバーは砕け散り、その破片を打ち直したのが現在のエクスカリバーとのこと。

 七本に作り変えられてさえ悪魔に脅威となるのだから元の聖剣エクスカリバーがどれだけ凄まじいものだったか分かるというものだろう。

 

「それで奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国の地方都市に関係あるのかしら」

 

 リアス部長の疑問はもっともだ。

 今の聖剣エクスカリバーは対悪魔武器としての価値はあるが、言ってしまえばそれだけの価値しかない。

 悪魔を嫌う勢力にしても、教会を襲って奪う程の代物ではないのだ。

 リアス部長の疑問は緑色のメッシュを入れている目つきの悪い女性、ゼノヴィアと名乗った悪魔祓いが答える。

 七本のエクスカリバーは拠点を襲撃され三本奪われ、残り二本は目の前の二人が所持し、残り一本は正教会が死守、最後の一本は行方知れずらしい。

 

「それで奪ったエクスカリバーを「神の子を見張る者」の幹部コカビエルが手下である墜ちた悪魔祓いフリード・セルゼンに使わせているわけね」

 

 木場からの報告がここに繋がるわけか。

 

「ずいぶんと詳しいな」

 

「堕天使と組んでいるの?」

 

 こちらに一切攻撃を加えないという誓いはどこへいったのか、こちらに敵意を向ける悪魔祓い達。

 やはりドライグの言うとおり信徒の誓いなど何の宛にもならないようだ。

 

「こちらを驚かせたいなら秘密裏に神父を潜入させないで早く連絡に来てちょうだい。一体誰が神父の死体の後始末をしてると思っているのよ」

 

 警察官の皆さんですね。

 後で菓子折りを持って礼を言いにいかないと。

 

「む、そうか」

 

 犠牲者の存在と、相手が狂人フリードだから情報が伝わったとゼノヴィアは理解したようだ。

 ただ木場の話だと、フリード自身は悪魔には敵意は無く、教会と天界を憎んでいたそうだ。

 まあそれはそうだろう。

 フリード・セルゼンという悪魔祓いの過去を聞いたら誰もがそう思う。

 

「それで私達に何をしろと?」

 

 他所の国でここまで好き放題しておいて何を要求するのやら。

 

「私達の依頼、いや注文は私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入しないこと。つまりそちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

 

 信徒は言葉が通じない。

 ドライグの言葉は正しいな。

 わざわざ接触をしてきてもこの態度。

 自分達が上位存在だと認識している神の使徒らしき傲慢ぶりだ。

 そこからさらに、教会本部は悪魔と堕天使を信用しない、だから手を組んでもおかしくないと言葉を続けた。だが、

 

「堕天使コカビエルと手を組めば、我々は貴女たちを完全に消滅させ」

 

 その言葉には我慢ができなかった。

 

『相棒っ!!』

 

 死が風の形をとって吹き抜けた。

 後にその場に居た者達はそう表現した。

 ドライグの静止の叫びより早く、俺の怒気は漏れてしまった。

 その結果、その激情を向けられた悪魔祓い二人は怒れるドラゴンの姿を幻視し全身から冷や汗を吹き出しながら硬直してしまい、巻き込まれた部長達ですらその空気に呑まれていた。

 

「失礼」

 

 慇懃無礼な態度で悪魔祓い達に頭を下げる。無論これは形だけ、謝罪の体をした威圧だ。

 

「ついうっかり感情を抑えきれませんでした。

 謝罪いたします。

 それでもう一度言って頂けますか?

 誰が、

 誰を、

 消滅させるって?」

 

 ああ、自分でも意外だったよ。

 自分の中でオカルト研究部の皆がこんなに大切な存在だったなんて。

 グランバハマルではこんな感情を抱いたことなんてなかったのに。

 

『いやそれは知り合った連中が守る必要ないくらい強かったのと、陽介もそうだったが相棒も周りの敵意に慣れきってただけだろ』

 

 お黙り!!

 事実陳列罪で逮捕すんぞ!!

 

「う、あ」

 

「イッセー君、なんだよね?

 幼稚園で一緒だった」

 

 怒気に殺意を乗せて言えば、終始強気だったゼノヴィアは何も話せなくなり、紫藤イリナは過去と今の差異から疑問を口にした。

 

「そうだよ、昔幼稚園で一緒に仲良く遊んだ兵藤一誠さ。だが今の俺は、リアス・グレモリー眷属の転生悪魔で、」

 

 赤龍帝の籠手を悪魔祓い達に見せつけるように発現させ名乗りをあげる。

 

「史上最強の赤龍帝だ」

 

 仲間たちに手を出せばどうなるのか。

 それをわからせるように。

 

「噂には聞いていたが、これほどの存在とは」

 

「上は神滅具を持っているだけの転生悪魔だと言ってたのに」

 

 そんなに評価低いのか自分。

 

『今まで対戦相手に恵まれてないからな、フェニックス戦でオチがついてしまったのもある。

 よし、強さを証明するために龍王であるティアマットを狩ろう』

 

 それはドライグが借りたアイテムを返したくないだけだからだろ。

 

「あー、うん。

 あくまでも君たちが堕天使と手を結んでいたら、という話だ。そうでないならやる理由はないな」

 

 白々しいがそれも事実か。

 もとより部長の決定に従うつもりだったしな。

 けどこれだけは言わせて貰う。

 

「敵同士である事を忘れるな。

 下手な挑発は宣戦布告と受け取る。

 悪魔陣営から離れて、一人の赤龍帝として教会と戦争するのも一向に構わないんだよ」

 

 どうせ下手な介入は戦争になるぞと脅す気だったんだろ?望むところだよ。

 そう考えて言ったんだけど。

 

「私のイッセー、超カッコイイ」

 

「あらあらまあまあ」

 

「イッセーさん」

 

「とんでもないよね」

 

「普段からこうしてくれたら、いや今までどおりの方が良いです」

 

 仲間たちはこんな反応で。

 

「これが、漢か。悪魔でなければな」

 

「イッセー君が大人だ」

 

 なぜか悪魔祓いの二人も顔を赤らめてるんですけど?!

 

『禁欲生活で男慣れしてないんだろ。女戦士やら女騎士はよくあることだぞ(あとドラゴンのオーラはメスを惹き付けるしな)』

 

 真面目な話をしてたんだけどなあ。

 

 会談の空気が緩んでしまいこのままの流れで終了となった。

 部室から出る時にアーシアの存在にゼノヴィアが気が付きトラブルになるかと思ったが、俺が前にでて庇ったら何も言わずに(羨ましそうな表情で)去っていった。

 

「木場、大丈夫か?」

 

 悪魔祓い二人が居なくなった部室でやぶ蛇になりかねないことを承知で木場に尋ねる。

 憎いエクスカリバーが目の前にあり、さらに使い手も良い態度ではなかった。

 憎悪のまま斬りかかってもおかしくないなと、心配していたのだ。

 

「イッセー君が、何を心配していたのかは察しがつくよ。でもさ、少し思うところがあってね」

 

 あの日俺のアルバムを見てから表にでていた木場の聖剣への憎悪。

 しかし、球技大会の後にフリード・セルゼンと相対したことで憎悪以外の感情で悩んでるように見えた。

 

「それに赤龍帝に圧倒されて怯んだ女の子達に喧嘩を売るのも格好悪いしね」

 

 それはそうかも、下品だが失禁してもおかしくないくらいビビってたよな。

 ガチでキレてしまって、お恥ずかしい。

 

「あの時のイッセー君は怖かったけど仲間を守ろうとする気概を感じられて格好良かった。僕が女の子だったらその場で惚れてたね」

 

 あの、ポッと頬を赤らめながらそう言うの止めてくれませんか?木場君は王子様系だけど線の細い女顔だから見た目からして洒落にならないのよ。

 

「む、確かに。ギャー君がいたら被害者が増えてましたね」

 

 小猫ちゃん、小猫ちゃん。

 ギャー君は多分封印されてる僧侶の子だと思うけど、君の時点で男の子だよね。

 

「私のイッセー、超カッコイイ」

 

「あらあらまあまあ」

 

「(ボー)」

 

 貴女達三人は早く再起動してください。

 

  

 しかし堕天使幹部コカビエルとフリード・セルゼン、さらに協力者に聖剣計画の首謀者相手にあの二人か。

 実際に戦ったから分かるけど、同じエクスカリバーを装備してるならフリードが勝つ可能性が高いな。

 役目のためなら死んでよいと言ってしまえるあの二人では、生き残るために手段を選ばないフリードに遅れを取るだろう。

 

「(あとぶっちゃけ堕天使幹部の実力ってどんなもんなの?)」

 

『かなり微妙だぞ。トップの堕天使総督アザゼルが神の如き傑物であることは事実だが、幹部となるとな』

 

 微妙て。

 

『天使、堕天使は悪魔特攻の聖なる光が使えるから実力を測りにくいんだよ。むしろ冷静に比べたら弱点攻撃されても対等に渡り合ってる悪魔が一番強いだろ』

 

 あー。

 

『上級悪魔以上で龍王以下、ってとこか?当代は知らんが魔王より強いってこともないだろ』

 

 それは基準が広すぎて確かに微妙だ。

 

『この世界の人間の英雄でもこれくらいの実力のヤツはいたしな。歴代赤龍帝も暴走覇龍状態は魔王級くらいの実力だし』

 

 暴走覇龍状態か。

 それだって陽介さんが変身した神化魔炎竜よりは弱いし。強さを何かに当てはめるのは難しいな。

 

『とりあえずミルたんより遥かに弱くて、相棒よりも弱くて、リアス・グレモリーより強くて、エクスカリバー使いの二人より強い。それがわかれば良いだろ』

 

 だね。

 

 こうして悪魔祓いとの対談は終わった。

 教会と堕天使との戦いには介入しない。

 そう悪魔側は方針を定めた。

 正直、幼馴染の紫藤イリナが笑いながら使命のためなら死んでよいと言った時は悲しい気持ちになって辛かった。そんなの間違っていると批判して止めたかった。

 でもそう言ったところで揉めるだけなのが明白過ぎる。

 宗教がそういうものなのは知っているから。

 

「どうしたもんかね?」

 

 ミルたん不在で治安乱れる駒王町をパトロールしながら俺は何かしたいが何もできない現状にそう思ったのだ。

 

「「迷える子羊にお恵みを〜!!」」

 

『相棒、アレは良いのか?』

 

 もう少しだけ見なかったことにさせてお願い。

 介入するなと言い、死を覚悟している筈の乙女二人の奇行なんてもうしばらくは認識したくないです。

 

 ミルたん、早く帰ってきて。





 補足・説明。
 
 木場君の落ち着きにはフリードの叫びが影響しています。自分だけが復讐者では無いと知り頭が冷えました。またフリードに何かできないかとも思っています。

 ブチギレイッセー。
 グランバハマルでもあまりありませんでした。
 知り合いが強過ぎて庇う必要がないので。
 村人に吊るされたり磔には異世界おじさん共々されてましたが。

 ゼノヴィアとイリナ
 男慣れしてない+恐怖による吊り橋効果+イッセーの表情+溢れる強者感+ドラゴンのオーラでこんなことになってしまいました。
 もともとチョロインな所もありますし。
 なので流れでアーシアに暴言を吐きませんでした、イッセーを怒らせたくないですし。
 なお流れ弾で朱乃さんのMっ気が刺激されてます。

 木場君
 実は乙女な顔に。

 コカビエルの実力推察
 かなり微妙。
 悪魔特攻能力あるのに悪魔に勝ててない天使・堕天使の幹部ですから。
 他勢力からしたらどうなるやら。
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