異世界イッセー   作:規律式足

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 原作及びキャラ改変あり、閲覧注意。



第三十五話 アレはアレ ソレはソレ

 

 ミルたん不在により乱れる駒王町の治安。

 それを少しはなんとかするためにパトロールをしていたんだが、

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達に御慈悲をぉぉぉ!!」

 

『悪魔祓いの二人組だよな?何をしてんだアレ?』

 

 露頭で祈りを捧げる白ロープ姿の女の子二人という二天龍すらも困惑させる存在を見つけてしまった。

 ミルたんが不在だとここまで治安が乱れてしまうのか(泣)。

 あとここでの募金活動には許可が必要です。

 

「そろそろ警察が来そうですが、放置するわけには行きませんよね先輩」

 

「そうなんだよなあ。あの二人のことだから力尽くで抵抗されたら面倒なことになるし、って何で居るの小猫ちゃん?」

 

 振り返ればそこには、右手を上げた学生服を着た無表情ロリな後輩。

 つい自然な流れで会話してしまったけど、一緒に行動すると誘ったわけでないのに背後に居る後輩の存在は不自然なんだよ。

 

「ココ最近、先輩の強さの秘密を探るためにずっと尾行してました(ドヤァ)」

 

『気づいてなかったのか相棒?いくらなんでも鈍りすぎだぞ』

 

 なるほど最近感じていた妙な視線の正体は彼女だったのか、てっきり赤龍帝だから上層部から監視されてるのかと思っていたよ。爆弾みたいな神滅具保有者は監視されて当然だからね。

 そしていくら悪意が無いからといって気づいてたんなら教えてよドライグ。

 

「見事な隠形だね、まるで気づかなかったよ小猫ちゃん」

 

「悪魔としては私の方が先輩ですから(フンス)」

 

 あらかわいい。

(無い)胸を張るその仕草は無表情であっても可愛さが滲みでてくるね。

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒吐かないでゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうやって異教徒共の慈悲なしでは食事も摂れないのよ?ああ、パン一つさえ買えない私達!」

 

「ふん。もとはといえば、お前が詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

 小猫ちゃんの行動に恐れ慄いてる間に聞こえてきた会話で、悪魔祓い二人の状況は理解した。

 彼女達は活動資金が尽きたからあんな珍妙な行動をしていたのか。

 しかも展示会もどきの呼び込みに騙されて変な絵画を購入したせいで。

 いや任務先(悪魔の縄張り)で私的な買い物で活動資金を使い込んじゃ駄目だろ。

 

『任務先でなくても活動資金の使い込みは駄目だろ』

 

 ですよねー。

 

「放置するだけで倒せそうなエクスカリバー使い」

 

 そのとおりだけど木場が聞いたら泣くからその発言はやめるんだ小猫ちゃん。

 しかし本当にミルたんが不在だと治安が乱れるなあ、あんな詐欺は普段ならありえないのに。

 

「なんだと、異教徒め」

 

「何よ、異教徒!」

 

「さらには仲間割れまで。空腹は人としての尊厳まで奪うのでふね(もしゃもしゃ)」

 

 いつの間にか頭をぶつけあいながら喧嘩をしだす二人の少女。

 まあ全面的に紫藤イリナさんが悪いと思うけど、彼女に活動資金を預けたゼノヴィアの失策もあるよね。

 あと小猫ちゃん、空腹で喧嘩する悪魔祓い達を見ながら肉まん(どこから出した?)に齧り付くのは実に悪魔的所業だね。

 

『かなりいい性格してるよなコイツ』

 

 コメントは差し控えさせて頂きます。

 さて、空腹で崩れ落ちてから脅迫やら賽銭泥棒やらやたら乗り気な聖剣を用いた大道芸(木場が聞いたら泣くな)の話までしだした二人にいい加減話かけるとするか、そろそろ警察が来そうだし。

 

 

 

「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

 その気持ちがわかるから困る。

 グランバハマルから帰還した時に俺もこんな感じになったしなあ。

 

『今もだろ』

 

 場所は近くのファミレス。

 ボックス席周りに悪魔の簡易結界を張り、周囲に声が聞こえないようにする。

 

「傍から見たら無音で激しく動きながら料理を掻き込む変な美少女二人。爆笑もんですね」

 

 次からは幻術も併用しよう。

 今の状態だと目の前の二人がパントマイムしてるみたいに見えてしまうよな。

 かといって個室を使用できる食い物屋は近場になかったからなあ。

 話を聞くためと、一応は知り合いである二人の状況を放って置けないから声をかけたけど良い食いっぷりだ。 

 まあ食べたい時に食べることは大切だ。

 いつグランバハマルに転移させられて、二度と好きな物を食べられないかもと絶望するか分からないからな。

 

「お金は大丈夫なんですか先輩?」

 

「その質問はパフェを四つ平らげる前に言おうか小猫ちゃん?」

 

 彼女の前には空の器が並んでいた。

 

「ゴチになります」

 

「お金には困ってないから良いけど」

 

 グランバハマルで入手した財宝もあるが、ミルたんの件での悪魔上層部からの俺個人への報酬もかなりの額だからだ。

 

「ふぅー、落ち着いた。キミたち悪魔に救われるとは世も末だな」

 

 飢えた人にパンを渡して契約せまるのが悪魔だと思うけど。

 

「はふぅー、ご馳走さまでした。ああ、主よ、心優しき悪魔達に御慈悲を」 

 

 祈り、十字を切るイリナ。

 

「うっ!」

 

 頭痛が襲ったのか小猫ちゃんが顔を顰める。

 なぜか俺は平気なんだよな。

 

『勇者アリシアの神聖魔法に比べたらかすり傷にも感じんだろうよ』

 

 あの時は純粋な人間だったんだけどっ!!

 

「で、私達に接触した理由は?」

 

 腹を満たし落ち着いたゼノヴィアがそう尋ねてくるが。

 

「知っている顔が道端で空腹で崩れ落ちていたら食事くらい奢るけど」

 

 理由とかは別に。

 木場がエクスカリバーを壊すために行方知れずになってたら手掛かりになるだろうと接触したんだろうけど、本人はオカルト研究部で待機してるしなあ。

 パトロール中に見かけたから声をかけただけ。

 

「な?!」

 

「あ、でも紫藤さん。君を騙した業者の詳細な情報はちょうだい。

 グレモリーのシマで舐めたマネしやがって、落とし前をつけねえと」

 

 悪魔稼業は面子が重要なんだよ。

 

「騙されてないからっ!!」

 

「往生際が悪いぞ」

 

「過ちは認めるべきかと」

 

 詐欺にあった事実を認めぬ紫藤イリナとそんな彼女に突っ込む二人。

 美術品はそこら辺が面倒なんだよな。

 趣味での購入扱いとなると詐欺と立件するのも困難だ。

 まあ探し出して〆るけど。

 

「あと紫藤なんて他人行儀な呼び方じゃなくてイリナで良いから!!」

 

 他人どころか敵なんですが。

 

「さすがは女誑し先輩」

 

「黙んなさい大食い後輩」

 

 なんか妙な連帯感が出てきたけど食事も終えたし解散で良いか。

 

「なあ赤龍帝、君と取引がしたい」

 

 するとゼノヴィアから取引を持ちかけられた。

 

「宿泊費か?」

 

 そういえばどこに泊まる気なんだコイツら?なるべく周辺住民に迷惑をかからない場所にして欲しいな。

 

「そっちじゃない。いやそっちもだなお金ないし」

 

「うっ?!」

 

「ちなみにイリナがかつて住んでいた教会に寝泊まりしている。掃除されてないから凄く辛かった」

 

「ソコって堕天使が拠点にしてたんだけど。鉢合わせにならなくて良かったな」

 

 フリードとか居てもおかしくなかったろ。

 

「ま、まあそうだな。その可能性もあったな」

 

 全く考えてなかったなコイツラ。

 

「部長に連絡して滞在場所を融通して貰わないか?年頃の娘二人が廃墟に寝泊まりしてることは見過ごせねえよ」

 

 ウチには泊めてやれないけど。

 

「部長もお人好しですからね」

 

 俺と小猫ちゃんの言葉にゼノヴィアは複雑そうな顔をした。こんなことを言うのが悪魔だからな。

 

「あ、ああそっちは後で頼む。

 取引したいのは、コカビエル打倒と聖剣奪還についてだ」

 

「それは悪魔が関与しちゃダメなんだろ?」

 

「正直言って私達だけでは三本回収とコカビエルとの戦闘は辛い」

 

「滞在すら厳しいのでは?」

 

『三日と持たんだろうな』

 

「君達は黙ってなさい」

 

 茶々入れる二人を注意する。その言葉には同意するけど。

 

「最低でもエクスカリバーを破壊して逃げ帰れれば良いが、奥の手を使っても無事に帰れる確率は三割だ」

 

「コカビエルを打倒しなくてソレか」

 

「ああ、絶望的だと思う」

 

 というか壊される前提のエクスカリバーに涙が誘われるよ。

 

「それでも高い確率だと覚悟を決めてこの国に来たんじゃない」

 

 イリナはそう言うが、あまりにも希望的観測が過ぎると思うが。

 

「自己犠牲は信徒の本懐。だが無駄死して堕天使にエクスカリバーを提供するだけになっては困る。

 だから私は成功率を上げるため、ドラゴンと手を結びたいと思う。君の強さは身に沁みたからね」

 

「悪魔ではなくドラゴンとして、か」

 

「君だって仲間のためなら悪魔陣営を離れて戦うのだろう?なら今回はそうして貰えないか?エクスカリバーもコカビエルも君の仲間を脅かす脅威だ」

 

「ちょっとゼノヴィア!!イッセー君とはいえ悪魔なのよ!!」

 

「上からもドラゴンの力を借りてはいけないとは言われてない」

 

「そんな屁理屈。貴女の信仰心はどうなっているの!!」

 

「私の信仰は柔軟でね」

 

 悪い話ではないか。

 正直言って、堕天使にもエクスカリバーにも悪魔祓い達にも早々にお帰り頂きたいからな。

 

「先輩先輩」

 

「どうしたの小猫ちゃん」

 

「ついでに木場先輩の件も」

 

 あ、なるほど。

 

「その取引は受けても良いけど」

 

「本当かっ?!」

 

「まあイッセー君だしなあ」

 

 嬉しそうなゼノヴィアと葛藤するイリナに引き受ける条件を告げる。

 

「聖剣は壊しても良いんだよな?なら俺の仲間に破壊させて良いか?」

 

「「?」」

 

 俺の言葉の意味を二人は理解できず首を傾げた。

 

 

 

「話はわかったよ」

 

 俺に呼び出された木場は嘆息しながらコーヒーに口をつけた。

 悪魔祓い二人の現状を聞いて顔を引き攣らせたが、本懐を果たす好機であることに変わりはない。

 

「そうか「聖剣計画」の生き残りか」

 

「エクスカリバーと教会を恨んでいるのね」

 

 木場の境遇を二人に話せば、エクスカリバーを壊したがる理由に納得を示した。

 

「当然だよ」

 

 恨むなという方が無茶だろうに。

 

「でもね、木場君。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣に呼応できる使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末することが許されると思っているのか?」

 

 憎悪の眼差しをイリナに向ける。

 成果があれば犠牲が許容されるような言い方はどうかと思うな。

 イリナとて性根が腐っているわけではない。だから木場のその境遇を知り反応に困っていた。

 

「その事件は教会全体でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された」

 

 ある意味ソイツが木場の直接的な仇か。

 しかし責任者を裁いて、研究成果を全て活用するとか教会はとんでもない組織だな。

 

「フリードが言っていたクソカス変態ジジイか。その者の名は?」

 

「バルパー・ガリレイ。「皆殺しの大司教」と呼ばれた男だ」

 

 木場祐斗が討つべき存在。

 それが明確に定まった瞬間だった。

 

「それでは、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

 未だかつてここまで酷い扱いの聖剣が果たしてあっただろうか。

 

「はい、コレ」

 

「なんだ?」

 

 解散する感じになったので空間魔法で茶封筒を取り出して渡す。

 

「生活費。必要だろう?」

 

「か、感謝する」

 

 また街角であんな騒ぎされたら困るし。

 

「この対価に何を払えばいい?!ま、まさか私の身体かっ?!」

 

 止めろ殺す気か。

 

「は、女にゃ困ってねえよ」

 

 一度言ってみたかったセリフをついに言えたぜ。

 

「ダウト」

 

「この上なく困っているよね」

 

『生死の境を彷徨うレベルだろうに』

 

 意味が違うわっ!!

 

「ありがとうね、イッセー君。この恩はいつか返すから。主も恩返しなら悪魔相手でも許してくれるわ」

 

 君はもっとしっかりなさい。

 

「とりあえずなんとかなったか」

 

 二人を見送ってからファミレスの椅子に座る。

 あれこれと部長に連絡しないとな。

 

「ありがとうイッセー君」

 

 木場が礼を言う。

 怨恨を手助けする形になったからな。

 

「仲間だろ。

 それに礼なら小猫ちゃんにな。思いついたのは彼女だ」

 

 俺だけだったら気づかなかったと思う。

 

「小猫ちゃん」

 

「仲間ですから」

 

 ハニカムように誇らしげに笑う彼女に俺と木場は癒やされるような気持ちになった。

 

「けど、今回の件は気になる点もあるよな」

 

「そうだね」

 

 木場があの二人にあえて伏せたフリードの教会への憎悪。

 

「連中の目的は、なんなんだ?」

 

 フリード個人ならその目的は既に達せられている。

 教会はエクスカリバーを奪われ、使い手を殺され、面目を潰されている。

 しかし後ろ盾である堕天使幹部コカビエルの目的はなんだ?

 皆殺しの大司教とやらまで率いて何をしようとしているんだ?

 エクスカリバーを奪ったあとになぜこの街に潜伏する。魔王の妹が二人も居る、応援を呼べばすぐにでも冥界が援軍を出すこの場所を選んだんだ?

 

「探すしか、ないかな。

 エクスカリバーを壊したいけど、フリードの本音も知りたい」

 

「手間はかかりますが地道にやりましょう。

 あ、兵藤先輩。何かいつもの便利な魔法はありませんか?」

 

〔パーポーペー〕

 

 スマホに連絡?

 

「魔法は必要なくなったよ」

 

 小猫ちゃんの質問に答える前に、探す必要自体がなくなってしまった。

 

 見知らぬアドレスからのメール。

 その題は「赤龍帝ちんへ♡」。

 フリード・セルゼンから送られてきた潜伏場所を告げる内容だった。

 

「デートの誘いだ」

 

「部長達から刺されますよ」

 

 格好良く例えて伝えたつもりが、そのまんま受け取られてしまった。

 恥ずかしい。

 





 補足・説明。
 
 匙君不参加。
 誘う理由ないので、危ないし。

 小猫ちゃんストーカー化。
 気がつけばずっと居ました。
 イッセーの力の秘密を気にしてます。いやグランバハマルなんだけど。

 ゼノヴィアの取引。
 イッセーか強いからこそですね。

 女に困ってない。
 周りに常に女性は居るけど命の危機。

 スマホ着信音。
 メイベルのあの歌。
 記憶再生から録音してわざわざ設定した。

 デートのお誘い。
 敵からの呼び出しを格好良く表現したかった。
 日頃の行いから小猫ちゃんだけでなく木場君もそのまんま受け取られた。
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