異世界イッセー   作:規律式足

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 今回は正直微妙な出来です。
 次話の繋ぎだと思ってください。
 なお原作だと裸エプロンとかしてた時間です。



第三十六話 宣戦布告

 

 敵であり、今回の騒動の実行犯であるフリード・セルゼンからの連絡。

 なぜ俺の連絡先が知られているかに関しては、恐らくレイナーレ経由だと思われる。

 俺が悪魔に転化するきっかけとなった偽装告白からの襲撃。あの時に連絡先を交換していたからだ。

 よくもまあ一応は上司の携帯機器から情報を抜き出せたものだと驚くが、それができるからその世界最大の宗教組織相手に、その生まれからして寄る辺の無いフリードが今まで逃げおおせた理由なのだろう。

 

「罠、ですよね?」

 

 予想外の所から得られた欲しくて仕方ない情報。だがそれをこちらに渡す意図が分からない。

 小猫ちゃんが言うように、誘い出して襲撃をかけてくると予想できるが。

 

「何を考えているんだ?」

 

 それで仮に成功し討ち取れたとしても眷属を刈れる程度で、大局に影響が出るとは思えない。

 

「とりあえず行ってみよう。虎穴に入らずんば虎子を得ず、って言葉もあるし」

 

 木場の言葉に俺と小猫ちゃんは頷く。

 元よりエクスカリバー奪取のための教会襲撃すらも俺達からしたら理解できない所業。

 なんの為にやっているのか、もはや当人達から聞くしかないだろう。

 部長達に連絡はするが合流は避けるべきだろう。

 その実力がエクスカリバーの使い手に劣る訳ではないが、アーシアは回復要員で部長と朱乃さんは遠距離攻撃が主体。接近戦となると不覚をとる可能性がある。

 別れたばかりの悪魔祓い二人に連絡をして、潜伏場所である町外れにある森の中の洋館へと向かった。

 

 

「よっす、悪魔の皆さん。お久しぶり?はじめまして?今後とも宜しく?」

 

 持ち主が破産して解体すらされずに放置された、見た目だけは豪華な広い洋館。

 そこのホテルのような玄関の段差にフリード・セルゼンは座り、こちらに挨拶をしてきた。

 

「あの夜以来だ、久しぶり」

 

「はじめまして」

 

「よろしく、は君次第だね」

 

 その挨拶に対してこちらも返事をする。

 フリード・セルゼン。

 元ヴァチカン法王庁直属の十三歳でエクソシストとなった天才。

 悪魔と魔獣討伐で多大な功績を上げたが、同胞を手に掛けたことで異端認定。

 信仰心は無く、バケモノへの敵対意識と殺意、さらに異常なまでの戦闘執着があったという。

 だがその正体は、教会による人為的な英雄作成の為に作られた試験管ベイビーであり、生まれた時からあらゆる投薬や調整が施されていた。

 彼の抱える衝動は本人の意思ではなくその生まれからなのかも知れない。その特徴的な白髪だって遺伝子異常からきている可能性もある。

 墜ちた天才ではなく、廃棄された被検体。

 それがフリード・セルゼンなのだろう。

 

「ん~~?開幕ブッパされたらやべーとビクビクとバイブみてえに震えてやしたけど、戦意すら無さげ?どうしたの皆様、俺様ちんは敵でやんすよ」

 

 戦意を持てないのはその境遇を知ったという理由と、俺ならいつでも倒せるからという事実がある。

 前回の戦いで厄介だと判断したが、それでもグランバハマルの魔獣達ほどに強くも悪辣でも無いのだから。

 

「君の話が聞きたい。

 何が目的なのか知りたいんだ」

 

 特に似たような境遇である木場は対話を望んだ。聖剣計画の生き残りであるからこそ、フリード・セルゼンが他人とは思えなかったのだ。

 

「ま、あのクソカス変態ジジイが来るまでならよいか。狙いは上手くいってるし」

 

 頭をガリガリと掻きながらそう言った。

 狙い?

 そういえばイリナとゼノヴィアはいつ来るのだろうか?

 

「俺様ちんの目的は、否定だよ」

 

「否定、ですか」

 

 それだけではよくわからない。

 

「そうだよロリ娘ちゃん。

 教会の連中がやり始めて、天使共が認めた、あのクソッタレな計画に価値なんて無いと証明したいんだ」

 

 フリードという存在を生み出した人造英雄計画。

 聖剣の使い手を生み出した聖剣計画。

 共に倫理的な面で認められないその計画は、異端認定と摘発があったものの未だに継続されている。

 人造英雄計画は、フリードと最強の魔剣使いという確かな成果を上げてしまい、聖剣計画に至ってはその技術と手法はそのまま活用されている。

 そう、教会の明確な弱点。

 この計画は実力者が少ないという問題を見事に解決してしまったのだ。

 確かに魔王に引けを取らない戦力は居る。

 神滅具を操る最強の悪魔祓いと、堕天使幹部すら退けた先代の聖剣の担い手が。

 だがその者たちですらも、天然の本物の英雄達ですらも、

 先代魔王より遥かに強い、超越者と呼ばれる当代の悪魔達の足元にも及ばない。

 

「成果があるから犠牲は許容される。ズラリと並ぶ試験管に浮かぶ兄弟達は今も生み出され玩び続けられている」

 

「そんな」

 

 大のためなら小を犠牲にする。

 常に大の側に立つ連中はそう宣い、非道を都合よく肯定する。

 

「待ってくれフリード。聖剣計画はまだ続いているっていうのか?」

 

 人造英雄計画はまだ分かるが、聖剣計画は成果無しでは無かったのだろうか。

 

「あー、そっちは。と、お喋りはお終いだな。

 つーわけでさ、木場ちん」

 

 近寄ってくる気配にフリードは話を切り上げて、自身の真の目的を告げる。

 

「人為的に一つとなったエクスカリバーを振るう、最高品質の人造英雄。

 全力で襲いかかるソレをぶっ殺して、教会がやっていることに価値はねぇと証明してくれや」

 

「え?」

 

「頼むよ。

 これは廃棄された失敗作であるお前にしか出来ねえことなんだ」

 

 それは狂人と呼ばれた者とは思えない、縋り付くような表情だった。

 

「赤龍帝ちんはコカビエルの旦那とその下僕の相手をお願いしますわ、余裕っしょ?」

 

「フリード、君は」

  

「さあやろうか!!悪魔ども!!

 俺様ちんのエクスカリバーの前に滅んじまいな!!」

 

 戦意が弾けて光が走る。

 聖剣がエクスカリバーが一振り「天閃の聖剣」が木場へと振りおろされる。

 持ち主の速度を飛躍的に上げるエクスカリバー。

 それは「騎士」の駒で転化した木場すらも圧倒する。

 

「フリード!!僕は!!」

 

「お後は剣で語り合いましょ」

 

 火花散る鍔迫り合い。

 まさに剣士の領域か。

 

「イッセー先輩」

 

「いざとなったら動く。けどフリードはやらかしたね。今の木場は全力でやれる精神状態じゃないよ」   

 

 がむしゃらに復讐に囚われてた方がまだマシだったかもしれない。

 フリードに絆されて剣が鈍っている。

 それでは望んだ結果は得られない。

 

「まいったね」

 

 そしてエクスカリバーを一つにという発言で呼び出された意図も分かった。  

 そう、これはやはり罠。

 フリードの狙いは。

 

「なんだ、まだ遊んでいるのかフリード」

 

「こちらも準備は整っているぞ」

 

 月をバックに現れる十枚羽の堕天使と、館から出てきた神父の格好をした初老の男。

 

「お疲れさまです旦那方、そちらの成果はどんな感じで?」

 

「フン」

 

 つまらなそうに俺達を見てから抱えていた少女を放り投げる。俺は傷だらけの幼馴染が地面に叩きつけられる前に受け止めた。

 やはり狙いはエクスカリバー。

 イリナとゼノヴィアは合流するタイミングを狙わたのだ。

 

「一匹逃したがエクスカリバーは回収した」

 

 鋭い目をした堕天使幹部は手に持つ二振りの剣を見せつけてくる。

 

「おおこれでエクスカリバーは真の形へと戻る!私の研究は果たされる!!」

 

 バルパー・ガリレイの目的は聖剣の統合。

 ならばコカビエルは、

 

「おい赤龍帝。お前は雑魚よりはマシのようだから余興として後だ。

 貴様の主に伝えろ。

 この地の悪魔の拠点である駒王学園でエクスカリバー再誕の儀式を行い、さらに一暴れするとな」

 

「何が目的で?」

 

「戦争」

 

 俺の問いかけに堕天使幹部はそう言った。

 

「滅びぬための唯生きるだけの生活には飽きたんだよ。魔王の妹達の拠点であれば、サーゼクス達も動かざるえまい?」

 

 長命種らしい悩みが今回のきっかけなわけか。

 

「今、やってもよくないか?」

 

 俺が戦意を見せれば、コカビエルは楽しそうにニヤリと笑った。

 

「なんだ、当代赤龍帝もヴァーリに劣らぬ存在じゃないか。今やるのは勿体ないだろう、戦いとは相応の舞台で踊るものだ」

 

「ほんじゃま、また後でね?バイビ」

 

 フリードはそう言って照明弾を弾けさせる。

 圧倒されボロボロになっている木場を悲しげに見てから、ついでに何か球体を投げ渡して。

 

「何もできませんでした」

 

 まんまと嵌められた。

 誰もいなくなった洋館で傷ついたイリナを抱えた俺と同じことを小猫ちゃんは思ったようだ。

 

「皆」

 

 フリードの託した謎の球体。

 なぜかそれは木場祐斗に暖かな感覚を与えていた。

 

 最終局面は間近。

 後は戦うのみだ。





 補足・説明。
  
 いつでも勝てる自負から動けない赤龍帝。
 フリードの想いを蹂躪してしまうのではと恐れてしまいました。

 フリードの目的。
 計画の無価値の証明。
 この程度が到達点だと世に示したいのです。
 木場の覚醒が必須ですね。
 
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