異世界イッセー   作:規律式足

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 今回は兵藤一誠はしゃべりません。
 三人称視点でお送りします。



第三十八話 デュランダルVSエクスカリバー

 

 ゼノヴィア・クァルタは敬虔な信徒である。

 エクスカリバー使いにして、デュランダル使いである彼女は生まれた時から教会で育ち、その信仰心と素質から高く評価されていた。

 師と環境に恵まれた彼女は神の剣として、悪魔、吸血鬼、魔物など人々を脅かす存在を容赦なく討伐していった。  

 まさに教会が誇る次代を担う悪魔祓いの一人といえるだろう。

 だがそれゆえに、今まで正道を歩んできたゆえに、そして教会の手段を選ばないという事実を知識としか知らなかったがゆえに。

 彼女は今日、敗北することとなる。

 彼女は知らなかった。

 自ら手を汚しても、討伐する対象が討伐されるだけの悪しき存在であったがゆえに。

 目につく眉をしかめるような教会の所業も、仕方ないと納得できてしまうくらい敵は悪辣だったから。

 だから眼前のフリード・セルゼンも、そんな対象の一人だと彼女は誤解してしまった。

 

「気に入らねえな」

 

 そしてフリード・セルゼンは、ゼノヴィアがそんな正道を歩めた幸運な存在であると理解した。

 理解できるがゆえに、今この場所に居るなよと叫びたい。

 ゼノヴィアは間違っていない。

 彼女のやっていることは正しい。

 だからこそ、他所でやれとフリードは思う。

 そうすれば、見たくもないお綺麗な存在はそのままで生きていけたのだから。

 堕天使幹部コカビエルを知るがゆえに、彼女がこの騒動の後にどうなるのかをフリードは悟っていた。

 もっとも、そんな自身の死んだ先のことなど知ったことではないだろうが。

 

「征くぞ、斬り裂けデュランダル!!」

 

 触れたもの全てを斬り刻むと称される聖剣の暴君が振り下ろされる。

 フリードは統合されたエクスカリバーでその剛剣を受け、押し負けると察する。フリードは自身が飲み込んだ聖剣の因子を最大限に発動し聖剣の波動を強めると、振り下ろされた押される力を身体ごと流した。

 

「所詮は急造品かね」

 

 呟きは誰にも聞こえずに消える。

 だが、英雄のクローンではあるがまごうことなき剣の天才であるフリードは、たったの一合で、本物のデュランダルに統合されたエクスカリバーでは勝てないどころか、数度打ち合えば粉砕されることを理解した。

 

「ま、やりようはあるさね」

 

 されど戦いとは剣の性能に非ず。

 彼が一合で理解したことは、デュランダルとエクスカリバーの差だけでなく、ゼノヴィア・クァルタの剣士としての技量もである。

 才能ある聖剣使い。

 だが、たかがその程度。

 英雄のクローンでありながら優れた武器を与えられずに、手段を選ばず敵対者を屠ってきたフリード・セルゼンには、ゼノヴィア程度の強敵は獲物の範疇からでない。

 

「幻影ばかりか、フリード!!」

 

 統合された夢幻の聖剣の能力である幻影を用いてゼノヴィアを翻弄する。

 斬りかかってきた何人ものフリードを一振りで一掃するも全ては幻影。

 

「ほらよ」

 

「なんの!」

 

 聖剣の気配から本物と判断したフリードが右手に持つエクスカリバーを振り上げたので、デュランダルで受けようとするが、その刀身はすり抜けて空振る。

 

「グゥ」

 

 驚くゼノヴィアはさらに腹部から痛みを感じた。

 

「夢幻の聖剣と透明の聖剣の合わせ技」

 

 ゼノヴィアの胴体は見えた斬撃とは逆位置に斬られていた。

 フリードがやったことは簡単だ。

 左手に持つ聖剣と両手を透明にし、それにかぶせるように幻影の両手を映し出した。

 幻影の右手の振り上げに対応しようとしているタイミングで、透明な両手でゼノヴィアを逆袈裟に切り裂く。

 聖剣の気配を感じようと剣を合わせる程の近距離では意味がなく、聖剣の映し出したあまりにリアルな幻影は実体と区別がつかない。

 

「こんな、卑怯なやり方ぁ」

 

「剣の形したレーザー兵器持ち出してるヤツが寝言をこくな」

 

 ゼノヴィアの受けた傷は浅い。

 擬態の聖剣で刀身を鋸刃にでもすれば良かったかねとフリードは思いつつ、傷を押えるゼノヴィアに破壊の聖剣の破壊力を宿し天閃の聖剣の速度で振り下ろす。

 

「チィ」

 

 咄嗟に下がったゼノヴィアに当たらず、地面に叩きつけられた聖剣は砂埃を周囲に舞わす。

 

「強い」

 

 観戦しているグレモリー眷属の言葉が漏れた。

 聖剣という教会の敵対存在に対するメタ的な武装ではなく、祝福儀礼された剣と銃、聖水、釘、聖書などの倒せはする程度の武装で討伐してきたフリードは、その思考が柔軟であり手数が多い。

 デュランダル使いゼノヴィア。

 フリードの初の実戦、まだ十に満たない同じクローンの同胞たちの屍に塗れて討伐した一匹の魔獣に比べれば、彼女は強くとも弱い。

 

「こんなもんかよ」

 

 これが第一線の戦力ならば、教会が戦力確保に必死になるのも当然かもしれない。

 事実、他の四人のエクスカリバー使いも大したことはなかったのだから。

 

「舐めるなぁ!!」

 

 ゼノヴィアの叫びと共に振るわれた痛みを堪えての渾身の一刀。

 その一撃は、隙を見せていたフリードのエクスカリバーを握った右手を切り飛ばした。

 

「油断したなあ!!」

 

 勝ちを確信したゼノヴィアの喜声。

 しかしそれは、フリードにとって次のステージへの布石にすぎない。

 

「大好きな聖書には書かれてなかったか?」

 

 バスリ、バスリ、とした音がなりゼノヴィアの整った肢体に幾つもの丸い穴が空く。

 

「エクスカリバー使いはエクスカリバー以外の武器も使いますって」

 

 再度驚愕するゼノヴィアが口から血を吐きながらフリードを見れば、左手に持つ黒光りする拳銃が薄く煙をふきだしていた。

 

「そんな」

 

 右手を囮にして攻撃を誘い、体勢が崩れたところを銃で撃つ。

 悪魔祓いの致命的な弱点。

 それは肉体強度が人間に過ぎないこと。

 伝説的なデュランダル使いのバケモノジジイでもない限り、その身は銃弾一発で致命傷だ。

 けれど、そうだとしても。

 右手を切り飛ばされて平然と反撃できるフリードの精神は常軌を逸していた。

 聖剣対決ではデュランダルの圧勝。

 打ち合えば壊れるのは必定。

 ならば聖剣同士を打ち合わせずに勝つ。

 

「さて、前座はおしまいっと」

 

 これで自身を討伐したのは教会ではなくなったとフリードはホッとした。

 

「いくら私に勝とうとも、右手の無い剣士に何ができる」

 

 地面に崩れ落ちたゼノヴィアはフリードを睨みつけながら言う。

 けれど、フリード・セルゼンの最後の戦いはこれからなのだ。

 

「なんとでもなるし、本番はこっからだ」

 

 左手でエクスカリバーを拾い上げたフリードは柄にプラリと握られたままぶら下がる右手を放り捨て、エクスカリバーの擬態の聖剣の力を発動する。

 すると握られていたエクスカリバーは柄から幾条もの紐のように解け、肘から切り落とされた右手に突き刺さりながら潜りこむ。

 

「んがっ、司教に尻の穴掘られた時より痛えや」

 

 ズブリズブリと体内に入り込んだ聖剣は、右肩から飛び出て顔を覆う兜と白銀の剣でできた片翼を形作る。

 

「聖剣一体、てか?」

 

 それは異形。

 聖剣の刀身を右手にした怪人。

 肘から接合面から触手のような茨が蠢き、頭部には十字軍の使用したバケツのようなグレートヘルム、そして背には羽のように並んだ剣で出来た片翼。

 擬態の聖剣の能力をフルに使った、聖剣と人の融合体がそこに誕生した。

 

「うそ」

 

「馬鹿な」

 

「ほう」

 

「す、素晴らしい」

 

(やればできるもんだな)

 

 様々な感情と反応がする中、フリードはそう思った。当の本人にしてみたら右手の代わりにならないかなー程度の感覚で実行したのだ。 

 しかしやってみれば、

 

「フンッ」

   

 試しに軽く振るうだけで聖なる力と衝撃が吹き荒れる。

 こうすることが正しい形であるかのようにしっくりと身体に馴染んだ。

 

「さーて、本番を始めようか?」

 

 なあ御同輩。

 

 フリード本人も意図せずに到達した領域。

 聖剣と生身の融合という境地。

 力のみを求めたイカれた信仰の行き着く先。

 この力は強い、この力はすごい。

 あまりにも醜悪な到達点。

 だからこそこれは、

 木場祐斗という希望が打ち砕く価値がある。

 フリード・セルゼンは体内で聖剣が蠢く痛みに顔を歪めながら、自分の終わりという希望へ刃を向けた。

 

 





 補足・説明。 

 木場君との決着までやりたかったけど切りが良いのでここまでで。
 こっからハイテンションジジイの興奮語りを書くのはなんだかなーと思いまして。

 聖剣一体
 当作品オリジナル(既出でしたらすいません)の擬態の聖剣の活用方法。
 聖剣をぶつけ合わないでフリードを勝たせる過程で思いつきました。銀魂の紅桜的なアレです。
 肉体に聖剣を通すから他の能力もかなり使いやすくなってます。ちなみに普通の人間がコレをしたら痛みでショック死します。フリードは今日死ぬからいいや認識だから平気なだけです。
 
 次回、フリード戦決着。

 3巻に終わるまで何話つかってんだろ。
 予定ではあとエピローグ含めて三、四話かな?
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