異世界イッセー   作:規律式足

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 すいません。
 とりあえず謝罪させて頂きます。
 詳しくは本編を。



第三十九話 覚醒

 

 聖剣使い決戦はエクスカリバーを操りしフリード・セルゼンが勝利した。

 誰の目にも明らかな経験と覚悟の差。

 倒れ伏すゼノヴィアに慌ててアーシアが駆け寄り神器を発動してその傷を治す。

 

「なぜだ?」

 

 そんなアーシアの行動に血を流し朦朧とする意識の中でゼノヴィアは尋ねる。

 

「なんで、敵である私を。アーシア・アルジェント、私は君を内心で魔女だと蔑んでいたんだぞ」

 

 赤龍帝・兵藤一誠の怒りにより口に出さずに済んだ彼女の本音。それが敗北のショックでひび割れた心から漏れ出てしまった。

 

「私は、私が最初に奇跡を、癒やしを行った時に、主への祈りはありませんでした」

 

 聖女として祀り上げられたことも、魔女として迫害されたことも、決して忘れることのできない傷だ。

 だからゼノヴィアに対して思うところはある。

 

「ただ治してあげたかったんです。それだけなんです」

 

 けれども聖女にされ魔女にされ、自ら悪魔になったとしても彼女の在り方は変わることがなかった。

 

「すまない。本当にすまなかった」

 

「いいんです。今は力を抜いてください」

 

 涙ながらに謝罪の言葉を繰り返すゼノヴィアを淡い緑色の光が癒やしていた。

 

 

 

「素晴らしい!!なんと素晴らしい!!

 シグルド機関の人造人間が、英雄のクローン風情がこれほどの結果を生み出すとは!!」

 

 そんな心温まる光景を台無しにする異端者の歓喜の叫び声。

 皆殺しの大司教・バルパー・ガリレイは人の手で生み出した奇跡を目撃し、この場の誰よりも興奮していた。

 

「人造人間?」

 

 ゼノヴィアはその言葉に疑問を持ち、自身を打ち破ったフリードを見る。

 

「ああ、そうだ。

 教会を攻めた際にはシグルド機関を襲い、その研究成果を奪おう!!

 連中のように無為に生み出しては玩具にするより、私が有効に使ってやる!!」

 

「まて、バルパー。聖剣計画もそうだったが、そんな非道なこと、主がお許しには」

 

 アーシアに治されながらも何かに縋るようにゼノヴィアは告げる。

 だがその言葉にバルパーはキョトンとした表情で何を言っているとばかりに答える。

 

「神に愛されず、祝福されずに創られた肉人形風情をどうしようと罰せられるわけがない。管理している司教達も好きなように使っているだろうが」

 

 周知の事実であるかのように語られる実態。

 そんなバルパーの言葉にゼノヴィアは絶句してしまった。

 知った気になって、仕方ないと割り切っていた教会という組織の闇はあまりにも醜悪でドス黒かった。

 ギチリとフリードはグレートヘルムの中で歯を食いしばる。この場で怒りのままにバルパーを殺しても何も変わらない。その事実を誰よりも知っているのだから。

 

「お前はまだそんなことを言うのか!!

 同志達をあれだけ殺しておいて、まだ繰り返すというのか!!」

 

 木場祐斗はバルパー・ガリレイに憤り叫ぶ。

 聖剣計画の首謀者はさらなる犠牲を望んでいるのだから。

 

「同志?ああ貴様は聖剣計画の生き残りか。これは数奇なものだ、こんな極東の国で会うことになろうとは。縁を感じるな、ふふふ」

 

 その場にいる者全てを不快にさせる嫌な笑い方をするバルパー。その口調は何も知らない悪魔祓いと哀れな実験体を馬鹿にしていた。

 

「私はな、聖剣が好きなのだよ!それこそ夢に見るほどに。幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心踊らせたあの時から!だからこそ、自分に聖剣使いの適性が無いと知った時の絶望といったらなかった」

 

 聖剣はお前が嫌いだよ、とフリードが吐き捨てるように小声で呟く。

 

「自分では使えないからこそ使える者に憧れを抱いた。その想いは高まり聖剣を使える者を人工的に創り出す研究に没頭するようになったのだよ!そしてキミたち被験者のおかげで完成した」

 

「完成?僕たちを失敗作だと処分したのに」

 

 用済みだからと処分された被験者達。それのおかげだと言う意味が理解できなかった。

 

「研究の末、私は聖剣を扱える因子が存在することを突き止めた。だが多くの者に因子自体はあっても扱えるだけの因子が足りないと結論がでたのだ」

 

 なら足りない分を集めれば良いだけだと、バルパーはニチャリと醜悪に笑う。

 

「まさか、聖剣使いが祝福を受ける時に身体に入れられたのは」

 

 バルパーの言った物に心当たりがあるゼノヴィアが真相に気づき忌々しそうに歯噛みした。

 そうエクスカリバー使いは全員がゼノヴィアやイリナのように戦士として秀でていたわけではない。教会内での政治、権力闘争の末に選出された者も居た。そんな連中がエクスカリバー使いになれたのは、因子の結晶体を埋め込んだからなのだ。

 

「これが」

 

 そして木場祐斗がフリードから託された球体を見る。なぜ不思議と温もりを感じたのか?それはコレが同志達そのものだったからなのだ。

 

「私の発想と手腕により聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。それなのに教会の連中は私だけを異端として排除したのだ、研究資料だけは奪ってな。何が因子を抜いただけの者達を処分する必要はないだ。あんな調べつくした道具などになんの使いみちがある」

 

 この期に及んでなおバルパーは被験者達の処分が異端認定された理由だと認識していない。それほど当たり前にこの男は命を使ってきたのだ。

 

「襲撃したエクスカリバー使い達全員に結晶体が埋め込まれていた。ミカエルめ、あれだけ私を断罪しておいてその結果がこれだ。まあ研究を引き継いで因子だけを抜き取るようにしたのだろうがな」

 

 それで救った気分になるのだから度し難い。敵対陣営である悪魔達はその誤魔化しのような行為に吐き気を覚えていた。

 

「まあ因子結晶にどれだけ適合できるかは個体にもよるがな。シグルド機関を手中に収めればフリードのように複数個に耐えられる個体を生み出せるだろう」

 

 フリード・セルゼンにしてもバルパーには道具に過ぎない。そう悟らせる言葉だった。

 

「バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけ命を弄べば気が済むんだ」

 

 怒りが魔力を生み出し木場祐斗の身体を包みこむ。さらなる犠牲者を嬉々として生み出そうとするバルパーに殺意をこめて睨みつける。

 

「ふん、知ったことか。フリードという成功体のおかげで私の研究はさらなる飛躍を遂げた。

 聖剣と人体の融合。それをさらに突き詰めれば、私自身も聖剣と一つになることが出来るっ!!

 それはなんとも素晴らしき未来かっ!!」

 

 新しい夢を見つけて子供のようにはしゃぐ初老の男。手段を選ばぬ夢追い人はこうも醜くなれるのかと示しているかのようであった。

 

「皆」

 

 託された球体を、それがなんであるか完全に理解した木場祐斗は、哀しそうに、愛おしそうに、懐かしそうに、撫でる。

 

「記憶再生」

 

 だから兵藤一誠はその魔法を使用した。その球体に宿る意思が仲間に想いを託せるようにと願って。

 

「え?」

 

 四角いプレートのようなものには、入り混じった記憶が映し出された。

 同志達の出合い、非道な実験、嘆きと悲しみ、けれどそんな中でも結ばれた絆と、心温まる触れ合い、そして共に口ずさんだ聖歌。

 そして、毒ガスで事切れる瞬間全員が一人動けた木場祐斗となった少年に生きて幸せになってくれと叫んでいた。

 

「そうか、僕は願われていたんだ皆に。

 幸せになってくれと」

 

 涙が頬を流れる。

 生き延びてしまったという木場祐斗の申し訳ないという想いはこの時に解消されたのだ。

 そして、そんな彼の想いが伝わったのか結晶体が淡い光を発し始める。

 校庭を包み込む程の光はやがて、ハッキリと人の形となっていく。その因子とされた少年少女へと。

 自分達の願いを生き残った同志が正しく理解したと悟った彼らは、口をパクパクとリズミカルに動かす。それは宗教に縁のない兵藤一誠すらも聞いたことだけはある歌。

 

「聖歌」

 

 アーシア・アルジェントが最初に分かった。

 木場祐斗も過去を思い出し共に歌い出す。

 辛い人体実験の中で希望と夢を保つために行ったこと。皆と歌う一時が同志達の救いの時間だったのだ。

 少年少女は青白い輝きを放ちだす。そして残された同志に言葉を託す。

 

『僕らは、一人ではダメだった』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど』

 

『皆が集まればきっと大丈夫』

 

 その場の全員にも声が聞こえた。

 そしてそんな聖歌は悪魔達に痛みを与えることはなかった。その事実と込められた心に、悪魔達は知らずに涙を流していた。

 目の前の尊いものに心震わされて。

 

『聖剣を受け入れるんだ』

 

『怖くなんてない』

 

『たとえ、神がいなくても』

 

『たとえ、手を差し伸べられなくても』

 

『神が見ていなくても』

 

『僕たちの心はいつだって一つ』

 

『『『だから救ってあげてくれ』』』

 

『『『世界に一人で立ち向かう』』』

 

『『『彼を』』』

 

 彼らの魂が天にのぼり、一つの大きな光となって木場祐斗の元へと降りてくる。

 やさしく神々しい光が木場祐斗を包み込んだ。

 

『相棒』

 

 兵藤一誠へと赤龍帝ドライグが語りかける。久しくみたその光景がなんなのか気づいて。

 

『あの「騎士」は至った。

 神器は所有者の想いを糧に変化と進化をしながら強くなっていく。だがそれとは別の領域がある。所有者の想いが、願いが、この世界に漂う「流れ」に逆らうほどに劇的な転じ方をした時だ、そう、それこそが』

 

 楽しそうに笑うドライグ。

 兵藤一誠は自身の至った時を思い出し、その差に精神的ダメージを負う。

 

『禁手だ』

 

 闇夜を裂く光が木場祐斗の手に握られていた。

 





 補足・説明。
 
 フリード戦までいかないで力尽きました。
 明日も投稿するのでどうか勘弁してください。
 ここからさらに盛り上がるシーンへといくと、なんかこの話のウリが無くなる気がして。
 そんなんだから話数が嵩むんですよね。
 
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