異世界イッセー   作:規律式足

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第四話 優しい人達(悪魔)

 

 これから行うのは交渉。

 悪魔にして貴族である者達と異世界に渡り冒険者となり帰還した赤龍帝との対談、お互いの要求をすり合わせつつもより自分へ多くの利益を得んとする決戦。

 の筈だったんだけどね。

 

「君が無事で良かったわ」

 

「よく堕天使に襲われて助かりましたね」

 

「もう大丈夫だ。ソーナ会長が、俺達がお前を守るからな」

 

 現在、悪魔である筈の彼女達から無事を喜ばれて、さらには心配されております。

 神器保有者は危険な存在だからと言う堕天使に襲われました。

 と、一言を告げただけで。

 

(なんでやねん)

 

 まだその堕天使を自力で撃退しましたよ、とすら言えてない。こっちは彼女達にどこまで情報を開示するか悩んでいるというのに。

 ていうかこの人達って悪魔なんだよね?

 

『気配はそうなんだがな。ソーナという娘と他の二人の気配が微妙に違う点が気になるが』

 

 やっぱり?

 確かに同じ種族なんだけど、なんか違和感があるんだよね。純度が薄いというか、後天的に変質したような感じに似ているような。

 

『吸血鬼の眷属化のようなものかもな。純血悪魔はかなり数を減らしたからその対策だろう』

 

 なるほど、人から悪魔になったからこその違和感なわけか。しかし種の存続の危機になるくらい数を減らしたとか何があったんだろ?日本人みたく少子高齢化かな。

 

『俺と白いのの喧嘩に割り込んだのが悪い』

 

 原因お前かい。

 

『俺と白いのが喧嘩の片手間に消し飛ばした軍団は全員純血悪魔だったからな、あれだけ死ねば保てまいよ』

 

 しかも片手間かい。

 

『ドラゴン相手に数任せは愚策という教訓だな』

  

 いや負けて封印されてるから効果はあったのではないでしょうか?ねえドライグさん?ねえドライグさん?

 

『そんなことより悪魔達に集中しろ』

 

 誤魔化しやがった、でもそのとおりだ。

 

「あの、それでですね」

 

 とりあえず堕天使を引き渡さないとね。

 

「ごめんなさい兵藤一誠君。この地に住まう悪魔として貴方を命の危険に晒したことを謝罪させてください」

 

 なんか貴族としても悪魔としてもおかしなことを言ってんですけどこの人ォーッ?!

 え、謝罪?

 貴族が謝罪??!

 貴族がそんなことをするわけないでしょうが。本当にこの人貴族なの?!

 

『悪魔は爵位とか名乗っていた筈なんだが、地獄の公爵とかそんな感じで(消し飛ばしたけど)』

 

 グランバハマルの貴族はこんなことしないのに。謝罪しても、[よくも高貴にして至尊たるこの私に頭を下げさせたな、この屈辱必ず果たしてくれる]って決意表明みたいな感じだったじゃん。

 

『清々しいほどに反省の心が無いな』

 

 貴族の謝罪は復讐宣言、これテストにでます。

 

『だが目の前のこの娘にそんな様子はないが、シトリーはあの時も居たほどの大悪魔の血統なんだが(消し飛ばしたが)』

 

「いえ自力でなんとか出来ましたので、謝罪して頂くことではありませんから」

 

 貴族からの謝罪は心臓に悪いのよ。

 

「眷属達にもリアスにも見回りを強化するように伝えるのでどうか安心してくださいね。お詫びとしてですが私達に出来ることがあったらなんでも言ってください」

 

 貴族が平民にお詫びなんてするわけないだろいい加減にしろ。

 いや本当にこの人貴族なの?

 見るからに心から心配してきて悪魔らしくもないのですが。

 

「じゃ、じゃあお願いしたいことがあるんですけど良いですか?」

 

 ジェネレーションギャップショックで倒れる前にやるべきことはやっておこう。

 

「撃退した堕天使なんですが、生かしてまま捕えたので引き取って頂けますか?その、殺すとか抵抗がありまして」

 

 ズルリと大根を引き抜くように収納空間から堕天使レイナーレを取り出す。人生初の恋人は目を回したまま意識をなくしていた。

 モンスターも人も命に差なんてないのは分かるけどどうしてもなー。 

 人型してるだけで躊躇ってしまうよ、いやゴブリンとかオークも人型といえば人型だけどなんか違うし。

 

「それは人として当然のことです、恥じることはありません」

 

 命を奪うことに抵抗あると言ったらソーナ・シトリーはものすごく優しい目をして微笑んでくれた。あの、この人悪魔なんですよね?天使じゃないよね?

 

『天使ならむしろ反逆者である堕天使に情けをかけるとは何事だ、と叱責してくるぞ』

 

 どっちが天使だよっ?!

 

『天の使いであって、慈悲深いとは限らんから』

 

 慈悲深く心清らかであってよ天使。

 

「そして生かしておいてくれてありがとうございます。現在聖書の勢力、天使、堕天使、悪魔、は大規模な戦闘は無くとも水面下で争っています。個体数の少ない堕天使の捕虜は良い交渉材料になります(ただ外交担当がお姉様という問題がありますが)」

 

 この人初めて悪魔らしいこと言った(感動)。なんか不安になる含みも感じたけど。

 

『結果としてこの堕天使を生かしておいたのは正解だったかもな。下手したら戦争の引き金になりかねんかった』

 

 戦争か。

 あんな経験は、もうしたくないよ。

 自分だけが生き残れる闘争の場なんて屠殺所と変わらないよ。

 堕天使レイナーレをそのまま引き渡しつつ戦争を思い出す。どちらの勢力にも思い入れの無い、仕事だから参加した戦場、俺が得たものは徒労感だけだった。

 

「けどよ兵藤、どんな状況で襲われたんだ?」

 

 するとそろそろ話も終わるかなというタイミングで匙元士郎君がそんなことを尋ねてきた。

 おのれ痛いトコを、流石悪魔。

 

『自業自得だ阿呆』

 

「ハニトラッス」

 

「「「?」」」

 

「帰り道で突然告白されて、別の日にデートした別れ際に襲いかかられました」

 

 せっかくデートプランを考えたのに。

 

『俺がな』

 

 その言葉を聞いた瞬間、匙元士郎君はこちらに近づいてきた。そしてガシリと両肩を掴むと、

 

「何かあったら力になるから、俺が俺達がお前の助けになるから。だから生きてくれよ、どんなに辛くても生きるんだぞ!!」

 

 そう叫んだ。

 彼の両目から滂沱の涙。心から俺に同情して心配して泣いてくれていた。

 主であるソーナ・シトリーはそんな彼を慈しむように見ていて、真羅さんは床に転がしてある堕天使レイナーレを軽蔑の眼差しで睨みつけていた。

 この人達は本当に悪魔なんだろうか。

 グランバハマルの人間より人ができているよ。

 

「あ、ハイ」

 

 俺はそんな彼らから向けられる善意に頷くしかないのであった。

 

 

 元の世界ではじめてとなる人外存在との交渉。それは意外な形で、というか一方的に善意を向けられた形で幕を閉じた。

 処理に困っていた堕天使を引き渡せたし、こちらの情報も神器保有者であること以外は何も流してないから大成功な終わりなんだけど。なんかこうおさまりが悪いというか、不完全燃焼というか。

 グランバハマルの貴族を相手にする気持ちで行ったのに心優しい人達過ぎて違和感がとんでもないです。

 もしかして悪魔社会ってクリーンなトコかなと予想してしまうが、彼女らが例外的に善良な存在である可能性も頭には入れておこう。決めつけは足元をすくわれる要因だからな。

 けど、ソーナ・シトリーとその仲間・部下である彼らとは親しく付き合えそうだ。そんな彼女の親友であるらしいリアス・グレモリーもこの調子なら大丈夫そうだ。

 

 あと最後にいくつか説明された。

 ソーナ・シトリーをトップとする生徒会はこの土地の管理者ではなく学業が終わるまで滞在している立場であること。本来の管理者はリアス・グレモリーのオカルト研究部であるということ。

 なので今回の件は自分達からも伝えるが、後日リアス・グレモリーに呼び出されて説明してもらうことになるであろうということ。

 自分達悪魔には他種族を悪魔化して眷属にする術があるということ。もしかしたら神器保有者である俺をスカウトしてくるかもしれないが、リアス・グレモリーは良い娘だから無下にはしないでほしいと言われた。ただ種族が変わる大事だから利点は告げられても無理強いはされないだろうとのこと。

 その時に匙君から自分も神器持ちであり会長に保護されたと説明された。両親を交通事故で失い幼い弟妹を養わないといけない状況を助けてもらったそうだ。

 悪魔とは一体?(遠い目)。

 しかし匙君の元ヤンキー云々はこの時期のことからかな?

 

『どっかの誰かさんの交通事故とは大違いだな』

  

 心からすいません。

 他の眷属も似たようなトラブルから悪魔となった娘達ばかりで。リアス・グレモリー眷属もそんな感じらしい。

 普通は裏で手駒にするために画策とか暗躍するのが悪魔なんじゃないですかね?(白目)。

 

 こうしてジェネレーションギャップに精神を焼かれる時間は終わったのであった。

 あと携帯の電話帳に3人ほど追加がありました。





 補足説明。
 
 兵藤一誠がグランバハマルで関わった貴族はオーバーロードのリ・エスティーゼ王国の貴族みたいな感じでした。
 つまり罪なき領民を強引に妾にして泣き叫ぼうと犯し飽きたら違法娼館に売り払うような存在です。
 そう身構えていたらあんな感じなので逆に疲れ果てました。
 なお遺跡探索メインの異世界おじさんは辺境を渡り歩いていたので貴族との関わりがありませんでしたが、一誠は情報収集のため都市部に居たため関わらざる得ませんでした。そのせいで戦争に従軍したこともあります。

 匙元士郎の反応。
 原作では兵藤一誠が変態三人組の一角であり、後から悪魔になった上で有名になったので反発気味でした。けれど当作の兵藤一誠には同情心しかありません。
 また彼に駒王学園で友人が居ないという切実な理由もあって今後親しく付き合っていきます。
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