異世界イッセー   作:規律式足

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 これにて月光校庭エクスカリバー編、完結。
 四十二話でまだ3巻。



第四十二話 月光校庭のエクスカリバー、エピローグ

 

 コカビエル襲撃事件から数日後。

 事件の後始末やら、出張から帰ってきたミルたんからの依頼やら、ミルたんと彼と共に駒王町に進出してきた悪党どもにカチコミかけたりやら、ミルたんの件で上層部の方々と悲鳴をあげたりやら、ドライグと取引したと誤解した朱乃さんに「龍の因子を吸い取ります」と迫られて死んだりやら、なんか常に誰かに見られてる気がするやらで、あっという間に時間は過ぎた。

 というか寝る余裕もありませんでした。

 今日も今日とでリアス部長に報告書を提出したのでゆっくり休みたいなー、と思っていたのだが。

 

「えー、それではコカビエル襲撃事件を全員無事に乗り越えたことと、リアス・グレモリーに新たな眷属が加わったことを祝して、カンパーイ!!」

 

「なんでアンタが仕切ってんのよ、ライザー」

 

 駒王学園旧校舎前にて、ライザー師匠主催のお疲れ様会を開いていた。

 メインはバーベキュー。

 天気も良いからと昼間からの宴会だ。

 今回の騒動で何も協力できなかったことをライザー師匠は気にしていて、せめてお疲れ様会ぐらいはやらせてくれと申し出てくれたそうだ。

 眷属の皆さんは準備をしてくれたらレイヴェル様を残して帰還された。人数が人数だからあまりに多いと気を遣うだろうという配慮だろう。なんだかんだでそこら辺はきちんとしてる方たちなのだ。

 

「お疲れ様、兵藤」

 

「匙もな」

 

 今回の件で仕事以外で手助けできなかったことを匙はかなり気にしていた。でも、幼い弟妹のいる彼を、悪魔の天敵であるエクスカリバーと関わらせる気には、どうしてもならなかった。

 匙以外のソーナ眷属の皆さんも、結界を張るだけで戦わなかったことを気にしているようだ。もっと強ければという思い、それは今後に活かしてくれるだろう。

 

「楽しんでいるか我が弟子」

 

 主催者であるライザー師匠がグラス片手に声をかけてきた。

 頻繁に駒王町に遊びにくる師匠は、この場にいる者達とすっかり顔見知りになっていた。今だって一通り挨拶を済ませてからきたようだ。

 

「ええ、偶には外で祝うのも良いですね」

 

 疲れているし寝不足だから、正直休みたいけどそれは言えない。純粋に気を遣ってくれた師匠の善意を否定したくないのだ。

 

「コカビエル襲撃事件、俺もその場に居れば力になれたのにと、話を聞く度に悔やむな」

 

 フェニックスの再生能力は聖剣には作用しないから、即日強制帰還されたと思います。

 フェニックス一族の価値は高い。

 希少かつ安定生産可能な回復アイテム・フェニックスの涙の存在により、彼らの保護は冥界で優先されることの一つだ。

 たとえ実力があろうとも、前線に立つことは許されないだろうと思う。

 

「お兄様ー!!これはバーベキュー用のお肉ではなく、業務用冷凍焼き鳥ですわー!!」

 

「まずは塩で一通り」

 

「貴女も焼くのを手伝いなさい!」

 

「間違ってしまったか。すまんな我が弟子、俺は妹の手伝いをしてくる」

 

 肉の買い出しはライザー師匠自ら行ったのか?串物だからといって、バーベキューと焼き鳥を間違えるなんて。まあ別にバーベキュー串もあるから良いか。

 並んで焼き鳥を焼くフェニックス兄妹。

 すごく、シュールな光景ですね。

 他の皆は、部長はアーシアと朱乃さんとソーナ会長と談笑していて、ラッセーは小猫ちゃんと一緒に焼き鳥を食べてる。

 となるとあとは、

 

「フリードの遺体は見つからなかったか」

 

「うん。せめて弔いぐらいはしてあげたくて、探したんだけどね」

 

 しんみりした空気のこの二人か。

 グレモリー眷属「騎士」達。

 聖魔剣使いの木場祐斗と、デュランダル使いのゼノヴィア・クァルタだ。

 あとフリードのことなんだが、それは直接言うべきか。

 事件終了後、砕けたエクスカリバーは回収されて教会へと返還した。だがその報告の際に、ゼノヴィアはシグルド機関についてと神の死について、教会上層部に追求してしまった。

 その結果、ゼノヴィアは教会から異分子として追放されてしまったわけだ。

 たとえデュランダル使いでも容易く捨てる。アーシアもあんな扱いになるわけだ。

 

「ストラーダ様がなんとかしようと声をかけてくれたんだが、断ってきたんだ。私の事よりもシグルド機関をお願いしたかったからね」

 

 だがそんな教会にも良心のある人物はいる。先代デュランダルの使い手である、ヴァスコ・ストラーダという人物だ。

 老齢でありながら未だに教会最強戦力と称される人物で、その実力は人間でありながら魔王に匹敵するらしい。悪魔祓い達の教官でもあり、多くの者達に慕われてる存在とのことだ。

 ゼノヴィアだけではなくアーシアのことも気にかけているそうだ。

 シグルド機関について知らされた彼は、独自に動いてくれるらしい。ただ、最近シグルド機関出身の最強の魔剣使いの所在がわからなくなっているそうだ。何もなければ良いのだけど。

 

「けど、悪魔になって良かったのか?」

 

 いくら神の存在が否定されたからと言っても大き過ぎる決断だろう。

 

「いいんだ。確かに私の人生は破綻して、自暴自棄になったことは否定しない。でも」

 

 そこでゼノヴィアは俺の方を向いて笑う。

 

「私の足跡は汚れない、なら良いんだ」

  

 どうやら彼女なりに前は向けているようだ。なら大丈夫だ。

 ただ、イリナとは悪魔になるとだけ告げて別れたそうだ。神の死を伏せて伝えたから、かなりギクシャクしてしまったそうだ。

 

「それで木場、フリードのことだけど」

 

 話しかけた本題に移ろうとしたところで、

 

「チャースッ!ピザバットでーす。ご注文の品のお届けに参りました」

 

 宅配ピザ屋さんが現れた。

 

「おう、こっちだこっち」

 

 師匠、宅配ピザまで。

 

「お支払いは」

 

「カードで頼む」

 

「ありがとうございましたー」

 

 すると配達を終えた彼がこちらにきた。

 

「どーしたん、御同輩にデュランダル使いのお二人さん?せっかくの宴会だってのになんか暗くない?ピザ食う?サイドメニューも豊富よ?」

 

「亡くなった同胞を思うとどうしてもね。ん?」

 

「せめて彼に一言考え無しの発言を侘びたかったんだがな。え?」

 

「そういえば、ピザ屋でバイトするって言ってたか」

 

 質問に答えた後に一拍おいて、二人は配達した彼が誰だか気がついたようだ。

 

「「フリードッ?!」」

 

「チャース。つーか赤龍帝先生は俺のこと伝えてねーの?」

 

「忙しくてね、今から伝えようとしてた。報告書もさっき提出したばかりだしね」

 

 フリード・セルゼンのまさかの登場に、木場とゼノヴィアは驚愕していた。

 そう、木場とゼノヴィアだけ。

 

「部長?」

 

「イッセーから報告されてたわ」

 

「朱乃さん?」

 

「イッセー君の仕事内容は把握してますわ」

 

「アーシアさん?」

 

「お散歩の時にお会いしまして」

 

「小猫ちゃん?」

 

「その場に居ましたから」

 

「「「それはおかしいだろ」」」

 

 全員を問い詰める木場。

 だって、伝えようにも木場は駒王町を駆けずり回っていていなかったし。

 

「フリード、君はどうやって助かったんだい?悪魔の慈悲も断るって」

 

 あの怪我なら死んで当然。

 なのに生きて再会できた訳を、木場はフリードに尋ねた。 

 

「あー、それは話すよりも。赤龍帝先生、頼んます」

 

「はいよー。記憶再生」

 

 フリードに頼まれて俺は魔法を発動した。

 場面はあの日フリードが学園を出た所から。

 

 

 

 

「ここまでか」

 

 呟いてから力尽き、フリードはその場にドサリと倒れ伏す。

 人目を避けて移動していたが、どうやらビルの隙間の路地裏が彼の最後の場所となるようだ。

 

「ま、悪党の死に場所には相応しいねえ」

 

 最後に少しばかり良い事はしたが、それで自身の悪行の罪滅ぼしには到底たりないなと彼は思っていた。

 冷たいアスファルトに自身に残る僅かな熱を奪われながら、ゆっくりと歩み寄る死を感じていた。

 

「大丈夫かっ?!」

 

 そんなフリードに話しかけた人物がいた。

 出張帰りらしい大荷物を持ったスーツ姿の筋骨隆々な巨漢は、荷物を置いてから汚れるのも厭わずフリードを抱え起こした。

 

「意識をはっきりと保つんだ!これから病院まですぐに運ぶ!」

 

「いいンスよ」

 

 善意から行動しようとする彼をフリードは止めた。この時はまだ、彼は自身の生存を望んでいなかった。

 

「俺はね、いっぱい酷いことしたんス。いっぱい悪いことしたンス」

 

 クローンという生まれであるフリードに、自由は無かった。唯一仕事のどう殺すかということだけが、選べることだったのだ。

 だから面白く残虐に手間をかけて、だから任務を拡大解釈してより多くの獲物を狩る、そうやって限られた自由を満喫していたのだ。

 決して埋まらない、渇望を誤魔化すために。

 

「だから死んで、あっちで裁かれないと」

 

 行くならば、聖書の地獄ではなく、閻魔大王がいる方に行きたい。

 コカビエル襲撃騒動で、わざわざ場所を冥界ではなく日本にするよう進言したのはそういった理由もあるのだ。

 

「裁きを望むか。だが君は他にやりたいこととかないのか?」

 

 巨漢の問いかけに、死ぬ寸前で取り繕う余裕すらないフリードはうわ言のように答える。

 

「誰かを助けたい、助けることのできる存在に、なりたかったなあ」

 

 悪魔祓いではなく、ヒーローアニメのような感じで。それがフリードの本心だった。

 

「なら、先ずは助からないとな」

 

 そう言って彼はフリードを肩に担いだ。

 

「え?」

 

「安心しろ、異世界で赤い帽子をかぶったヒゲのおじさんから貰ったキノコはまだある。悪魔さんも生き返ったから君も助かるさ」

 

「アンタ、一体」

 

「そうだ」

 

 するとその人物、ミルたん(シゴトノスガタ)は良い事を思いついたとばかりにフリードにとある提案をした。

 

「ミルたんの使い魔にならないかにょ?」

 

 

 

「と、まあこんなコトがあったんスよ」

 

 それからフリードは謎のキノコで無事蘇生。何故か、食べただけで切り落とされた腕までニョキニョキ生えてきた。

 そしてチラシから召喚された俺がミルたんから説明を聞いて、フリードの件を上層部に連絡。

 ミルたん絡みの面倒ごとに悲鳴を上げた皆さんは、泣きながら各所への根回しや手続きをしてくださり、フリードは戸籍ゲット。

 さらに形貌変躯の魔法でフリードを本人の希望する使い魔に改造して、その足で駒王町に進出してきた悪党共に三人でカチコミ。

 その内容をすべてを報告書にまとめて提出して、今に至るというわけだ。

 

「そっか」

 

「色々気になるが、無事で良かった」

 

 フリードの生存を喜んでいた二人、というかその場の全員も最後ら辺はもうドン引きしていた。

 ミルたんの魔法少女へのトランスフォームシーン、「キイー」と叫びながらマシンガンを乱射する使い魔フォームになったフリード、そして連日の寝不足による血走った目で長ドスを振り回す俺の姿に。

 

「昼間はアルバイターで夜は使い魔怪人なフリードを、今後ともどうかヨロシクね♡」

 

 そう挨拶してフリードは仕事に戻っていった。

 それから宴会はひたすら盛り上がった。

 フリードの無事を確認して気が軽くなった、木場とゼノヴィアの雰囲気が明るくなったからだ。

 宴会中にありがとうと木場が俺に抱きついてきて生徒会女子が鼻血を出してぶっ倒れたり、ゼノヴィアも抱きついてきて俺が死にかけたりとハプニングはあったが、それでも日が暮れるまで楽しい時間を過ごした。

 これから三竦みの勢力による会談がある。

 そんな大事の前の僅かな時間を、大切な仲間達と存分に楽しんだんだ。

 

 

 

 教会の天才悪魔祓い・狂人フリード。

 その生まれから凶行に走っていた彼は、追放をきっかけに贖罪のために死ぬと決めた。

 エクスカリバーを強奪して戦い抜いた彼は、魔法少女と出会い、使い魔になることを決断した。

 彼は地獄に行くだろう。

 地獄に行って裁かれるだろう。

 けれどそれまでの僅かな期間、誰かを救って生きることを彼は決めた。

 そして彼は、

 終焉を超えし者(セガユーザー)・嶋㟢陽介。

 史上最強の赤龍帝(グランバハマルの被害者)・兵藤一誠。

 魔法少女(バグ)・ミルたん。

 と共に、

 千貌の使い魔(マキゾエ)・フリード。

 として世界を救うことになる。

 そんな恐るべき未来が一年以内にくることを、彼はまだ知らない。

 

「なんかメッチャゾワゾワする、嫌な予感がするんだけど。もしや人生の選択間違えたかな?」

 

 





 補足・説明。
  
 エピローグの宴会回です。
 フリードがどうなったのかも明らかに。
 悪魔の慈悲には縋らないけど魔法少女ミルたんなら良いかな認識で。
 未来に関してはぶっちゃけ未定です。
 何せ書き溜めもプロットもないですから。

 フリード使い魔形態。
 Fと書かれた白いマスク、全身タイツに手袋、パンツ、ベルト、ブーツの下っ端怪人スタイル。
 ミルたんは球体に羽が生えた飛頭蛮もどきを希望したが、フリードの希望を優先した。
 武器はサブマシンガン、手榴弾、拳銃、釘バット、貌の精霊が面白がって錬金術みたいにいくらでも用意できる形式。さらに非殺傷設定で相手は死なない。
 駒王町の夜に銃声がしたら九割はコイツのせい。
 なおミルたんの意思でどんな貌にも変身可能。
 
 未来
 リゼヴィムのやらかすアレ。
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