異世界イッセー   作:規律式足

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 プール回です。



第四十五話 プール

 

 俺は、これでもそこそこ腕はたつ。 

 修羅場も死線もグランバハマルでいくつかぬけてきた。

 そういう者にだけ働く勘がある。

 その勘が言っている。

 

「ほら、イッセー。私の水着どうかしら?」

 

 俺はここで死ぬ。

 

『プールなんだけどなあ』

 

 

 

 生徒会からオカルト研究部に依頼されたプール掃除。これは普段は運動部などから有志を募って行われていて、掃除が終われば一番最初にプールを使用できる特典と、駒王学園の美少女達の水着姿が堪能できる貴重な機会だからと(授業は男女別)実は隠れた人気を誇るイベントだった。

 ただプール掃除の権利を賭けた部活間での喧嘩が起きてしまい、今年はオカルト研究部に依頼されることになったのだ。ちなみに生徒会でやる案もでたが、匙だけが生徒会女子の水着姿を堪能するのは問題だと、多くの生徒からクレームがきたので無理だったとか(手伝い希望者も多くいた)。

 なので先日屋外プールの苔をデッキブラシで必死に擦り落としたのだが、真の戦いは今日だ。

 

『戦い?』

 

 日曜日の部活動の時間に行われる特典の限定プール開き。木場は用事があって来られないけど『逃げたな』、俺は参加しなければならない。

 なんとしても生き延びるぜ。

 

『無理くね?』

 

 そんな決意をした俺に部長が声をかけたわけだ。

 リアス部長は布地面積の少ない赤いブラジャーで、下乳が見えるなんてレベルじゃないくらい肌が曝け出されていた。艶めかましい曲線美も素敵ですね(白目)。

 

『気が遠くなりながらもガッツリ見る相棒の漢らしさよ』

 

「あらあら。部長ったら張り切ってますわ。うふふ、よほどイッセーくんに見せたかったんですわね。ところでイッセーくん、私のほうはどうかしら」

 

 すると朱乃さんも登場。

 こちらは真っ白な水着、同じく布面積は小さい。清楚さとエロさが組み合わさり、死にそうです。

 

「トテモステキダトオモイマス」

 

『言語機能まで殺られたか。まだシャワーすら浴びてないのに』

 

「イッセーさん、わ、私も着替えてきました」

 

 追撃とばかり『お前だけだ』に、アーシアがもじもじしながら立っていた。

 学校指定のスクール水着って、なんでこう特別感があるんでしょうね?というか胸の「あーしあ」は桐生あたりの入れ知恵か?

 

「アーシアかわいいぞ、よく似合っている」

 

 この娘なら何を着ても似合う気がするけどね。

 

「えへへ~。イッセーさんにそう言われると嬉しいです。小猫ちゃんも同じスクール水着なんですよ」

 

 うむ、小猫ちゃんもスクール水着か。なるほど、ここでさらにネタに走らなかったことは評価しようではないか。ただ胸の名札の「こねこ」が平仮名なのは、わざとなのだろうか。

 

「卑猥な目で見られないのは、それはそれで複雑な気分です」

 

 いや君まで見だしたらマジ死ぬから。

 しかし水泳の授業が男女別な訳になるのも納得だ、どんな水着であっても、こんな美少女ばかりでは男子の理性がもつわけがない。

 ちなみに覗き防止も兼ねて、女子が水泳授業の時は男子はグラウンドで延々とマラソンです。

 

「それでね、イッセー。悪いのだけれど」

 

「はい?」

 

 部長から小猫ちゃんとアーシアの水泳指導を命令された。まあ別に良いですが。

 

 

「はい、いち、に、いち、に」

 

 柔らかな小猫ちゃんの手を持ってバタ足練習に付き合っていた。

 その手の感触と、バタ足をする彼女の背中臀部脚部がね、直視できないくらい綺麗でヤバいの。

 練習前に感受性を殺す技術を発動しておかなかったら即死だったな。

 

『グレモリーからしたら相棒のリハビリのつもりなのかもな』

 

 手を引きながら二十五メートルプールを後ろ向きに歩く。小猫ちゃんはバタ足だけでなく、息継ぎの練習もしながら懸命に足を動かしていた。

 

「ぷはー。先輩、付き合わせてゴメンなさい」

 

 小猫ちゃんが申し訳なさそうに言ってくる。

 まあ特典の限定プール開きだから遊ぶのが普通ではあるけど、俺もあんまり水泳は得意じゃないからな。

 グランバハマルだと水辺とは魔獣の狩場だ。動きが阻害される水の中は死地に等しい。

 だから俺と陽介さんは、どうしても川を渡らなければならない時は―

 

「水の上を走ったんだよな」

 

『お前らおかしいから』

 

 飛ぶより精霊力の消費が軽いし。

 それか水上を凍らせて渡ってた。

 いやまあ陽介さんが水蛇の魔法が得意だから、魔獣に襲われても一方的に狩れたけど。

 

「? なんの話ですか」

 

「気にしないで」

 

 俺は笑って誤魔化した。

 小猫ちゃんが二十五メートルを泳ぎきったら次はアーシアへ、それを二人が疲れるまで(といってもアーシアが先にバタンキューしたが)付き合った。

 時折勢いあまって抱きつかれたり、溺れまいとしがみつかれたが、感受性を殺している俺は死ななかった、生き残れたんだっ!!

 

『うん、喜んでおけ』

 

 女子の泳ぐ練習に付き合っても死なない。これは大きな一步だと言えるだろう。

 

 

 

「きゅぅぅぅ、疲れましたぁ」

 

 プールサイドに敷いたビニールシートの上で、アーシアが寝転んでいる。

 プールでの運動は陸上運動より体力を使うから、運動が得意ではないアーシアにはキツかったろう。

 小猫ちゃんもプールサイドの日陰で本を読んで休んでいる。

 今日はもう終わりかな。

 彼女達の練習に付き合っただけだが、充分に涼を取れたから満足だ。

 部長と朱乃さんからはオイル塗りをしてくれないかと冗談混じりに言われたが、謹んで辞退した。

 感受性を殺す技術で殺しきれないくらい魅力的なんですと言ったら、二人とも顔を赤らめて、なら仕方ないと引き下がってくれた。

 なぜかそのままプールへ飛び込んだ二人を見送ってから、念の為だしておいたビート板をプール用具室へと片付けることにした。

 

「おや、兵藤一誠か。どうしたんだ?」

 

 するとそこにはゼノヴィアがいた。

 そういえば遅れてきたんだっけか。

 

「片付けだけど、お前こそどうした?」

 

「うん。初めての水着だから着るのに時間がかかった。似合うかな?」

 

 女子更衣室で着替えなさいや。

 部長や朱乃さんほど露出は激しくないが、体の凹凸を強調しやすいビキニ水着だった。

 この娘も、スタイル良いよな。

 やはり運動量が違うからか?

 いや、あれだけ怠惰を極めていたメイベルも体つきが良かったし。本人の体質か?

 

「似合うよ。うん美人だ」

 

「素直に称賛されると照れてしまうな」

 

 純粋な戦士かなと思いきや、年頃の少女らしいとこもあるんだな。

 

「教会だと水着とかお洒落もダメだったのか?」

 

「基本的にはな。まあ当時は私自身も興味なかったんだ。周囲の修道女や女戦士達は、そんな娯楽に厳しい規律に不満があったみたいだがな」

 

 娯楽とかの意識は生まれ育った環境によるからな。グランバハマルだと海水浴とか自殺扱いだろうし。

 

「けどせっかく教会を抜けて、悪魔になったんだ。これからは女らしい娯楽を得たいと思うんだ」

 

 まあアーシアも割とそんなトコあるし。

 するとゼノヴィアがかしこまった表情になった。

 嫌な予感がするんだが。

 

「兵藤一誠。折り入って話がある」

 

「イッセーでいいよ。もう仲間だし」

 

「ではイッセー。私と子供を作らない?」

 

「何言ってんだお前」

 

『何言ってんだコイツ』

 

 赤龍帝ダブルツッコミ。

 

「やはり私みたいな女らしくない者は嫌か?」

 

 俺達の言葉に涙目で傷ついた表情になるゼノヴィア。

 

「いや、短い期間だけど一本気質なゼノヴィアの性格は好ましいし嫌ってはいないけど。子作りという言葉から正気を疑った」

 

 あと女らしくない、ということもないだろ。

 

「そうか嫌われてないのか、良かった。

 では順を追って話そう」

 

 ゼノヴィアは語る。

 自分はキリスト教の本部であるローマで生まれ育ち、聖剣が使える因子を生まれ持っていたため、幼少の頃から神のため、宗教のため、修行と勉学に励んできたと。

 アリシアさんもそんな感じだったな。

 

『なおメイベルはだらけて生きていた』

 

「子供の頃から夢や目標や将来が、全て神や信仰ありきのものだったんだ。だからそれらが無くなった今、私はどうしたらいいのか分からなかったんだ」

 

 社畜かな?

 

『リストラされた社員だろ』

 

「それでなぜ子作り」

 

「それで部長に言われたんだ。悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望む者。好きに生きてみなさい、と」

 

 なるほど。

 

『悪魔に限らず大半の連中はそう生きてるがな』

 

「だから私は、新たな目標、夢として子供が欲しいと思ったんだ」

 

 なんだかなー。

 言いたいことは分かったし、宗教上の貞操意識があったからなんだろうが。 

 

「それでその相手が俺だと」

 

 ゼノヴィアはこくりと頷いた。

 まあ、相手として赤龍帝だとかとか、身近な男だとか、ハーレム願望持ちとか理由はあるんだろうけど。

 

『いやコイツは多分相棒に惚れてるんじゃないか?』

 

 この短期間でか?ないだろ。

 

『相棒も陽介に似てきたな』

 

 どういう意味じゃい。

 

「それで、どうだろうか?」

 

 おずおずと訊ねてくる仕草は普段とのギャップから可愛らしい。そのまま抱きしめたいと思うが、

 

「悪い、今は無理だ」

 

 体質的にも状況的にも無理だから。

 

「そ、そうか」

 

 落ち込んだように項垂れるゼノヴィア。

 その様子に心が痛む。

 

「ゼノヴィアが嫌いだからじゃない。ゼノヴィアに不満があるわけじゃない。けど俺にとって子作りってのは特別なことなんだ」

 

 愛し合った夫婦でも出来ないことだってある。俺の両親も、俺が生まれるまで凄く苦労して色んな経験をしたんだ。

 

「ゼノヴィアの考えは分かった、とても素敵な夢だと思う。正直相手として選ばれて嬉しかった。だけどさ、だからこそきちんとしたい」

 

「きちんと」

 

「一度ウチの母さんの話を聞いてみないか?その上でよく考えてから言ってほしい」

 

 男の俺では分からないことばかりだろしな。きっと母の話は女性として知るべきことだろうから。

 

「なあイッセー」

 

「?」

 

「つまりそれは私に妻になってくれ「なんの話かしらぁ?」」

 

 アカン。

 

『南無南無』

 

 ガチャリと開かれる用具室の扉。そうだよね、大分話し込んじゃったからね、何かあったと思うよね。

 部長達は魔力を漂わせながら笑み引きつらせた表情で現れた。

 

「イッセー?どういうことかしら?」

 

「はい!!同胞たるゼノヴィアから子作りを要請されたところ、断った次第でありますサー!!」

 

『どんなテンションだお前』

 

 下手な誤魔化しはヤバい。

 それだけは確かだ。

 

「そうね、ゼノヴィアならそうなるわね」

 

 心当たりがある部長は頭痛を堪らえるように頭を抑えながら、その説明で納得してくれた。

 

「イッセーもちゃんと理由を言って断ってたし、怒るのは筋違いよね」

 

 助かったあ。

 

『そうは問屋がおろさない』

 

「でもね、イッセー」

 

 ?!

 

「あんな風に真剣に言われるゼノヴィアが羨ましかったんだから」

 

 部長は水着姿のまま俺に抱きついた。

 そしてその衝撃で俺は死んだ。

 

「なんだろう、胸のドキドキが止まらない」

 

『チョロい女ばかりなのか、それともドラゴンのオーラのせいか。いや、強者が誠意ある態度を取れば、雌は惹かれるものか』





 補足・説明。
 このイッセーはハーレムを目指していますが衝動に流されるのはヨシとしていません。
 あと子作りは両親の苦悩を知っているので真剣に考えてほしいと思っています。

 ゼノヴィア
 原作より好感度高めかな?神の死の時の言葉がかなり効いています。
 チョロイン過ぎかなーと悩んではいます。
 
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