異世界イッセー   作:規律式足

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 話の進みがゆっくりですいません。
 今回もあまり進みません。



第四十八話 もう一人の僧侶

 

 授業参観日の昼休み。

 

「英語の授業で紙粘土」

 

 俺とアーシアが飲み物を買いに出たとき、自販機の前で偶然部長と朱乃さんと遭遇した。

 すると話題は授業参観のことになるわけで、

 

「失恋、ね」

 

「イッセー君の失恋相手」

 

『すまん相棒』

 

 ドライグのフォロー後の失言により、アーシア含めた女性陣は俺の失恋相手のことが気になってしまったようだ。

 

「なんて、気にしても仕方ないわね」

 

「ええ、イッセー君が話したくないならそれでいいですわ」

 

 けど二人はあっさりと引き下がってくれた。

 てっきり根掘り葉掘り聞かれるのだとばかり。

 

「(無理に問詰めて嫌われたくないわ)」

 

「(想いが再燃するのは阻止しないと)」

 

 これが、余裕ある御姉様達の姿というものなのか(年齢は一歳しか違わないけど)。エルフさんなら洗いざらい吐かせるのに。

 

「「ふふふ」」

 

『いやこれは戦略の一貫では?まあ実害が無いからいいか』

 

 戦略?

 ドライグの言葉に首を傾げていると、

 

「あ、部長。それに皆も」

 

 そこへ木場が現れた。食堂にいかない弁当組がよく集まる場所だから当然か。

 

「あら、佑斗。お茶?」

 

 部長が訊くと、木場は廊下の先を指指しながら答えた。

 

「いえ、何やら魔女っ子が撮影会をしていると聞いたもので、ちょっと見に行こうかなと」

 

「じゃあ俺は戻るわ」

 

 木場の言葉に心当たりがありまくる俺は、スルーして教室に戻ると決めた。

 恐らく、いや間違いなく、その先には四大魔王の一角であるセラフォルー・レヴィアタン様が居られるだろう。多分ソーナ様の授業参観が目的で。

 四大魔王唯一の女性である、セラフォルー・レヴィアタン様。サーゼクス様の妻にして最強の女王と呼ばれるグレイフィア様と共に、最強の女性悪魔と称される存在で、四大魔王としては外交担当を務めている。

 だが場を弁えぬ格好やら行動や言動が多く、長き時を生きる悪魔達には理解できない存在として認識されている(他の三人の魔王様方も変人奇人の類だがまだマシ)。

 なので悪魔上層部の皆様方最大の胃痛の種であり、グランバハマル生活で彼らと価値観が近い俺もあの御方とは会いたいとは思わない。

 グランバハマルに行く前ならともかく、今の俺とは波長が合わない御仁だろうからな。魔法少女はミルたんだけでたくさんなのだ。

 魔王様が居られるならば悪魔として挨拶はすべきだろう。だがそれでも、避けられるなら避けたい相手もいるのだ。

 俺の考えに、実際にセラフォルー様を知る部長達は理解を示し(部長もなんとなくセラフォルー様だと察してた)、俺とアーシアは教室に戻ることにした。

 

 後日知ったことだが、魔法少女は予想通りセラフォルー様であり、確認しにきたソーナ様を追いかけ回したとか。

 あともう一つ、部長はサーゼクス様から重大な通達を受けたらしい。

 

 

 次の日の放課後。

 昨夜はリアス部長の御父上とサーゼクス様ご夫妻が兵藤家に来られ、録画した授業参観を鑑賞しながら酒盛りをしておおいに盛り上がりました。

 ネタにされる俺とリアス部長は赤面ものでしたが(アーシアは平気)、楽しい時間を過ごしました。

 そして、部長に先導されて駒王学園の旧校舎一階の「開かずの教室」とされている部屋の前に立っていた。中で誰かが生活していることは気配からわかっていたが、ここにグレモリー眷属最後の一人「僧侶」がいるらしい。

 もう一人の「僧侶」、長らく俺やアーシアにとって謎にされていた部員。同じく新顔のゼノヴィア以外のメンバーは全員知っている。

 俺が悪魔になる前から眷属として所属していたけど、訳あって先日の婚約騒動、襲撃事件にも姿を現さなかった。

 その理由は、リアス部長と本人の意思によるものではなく、「僧侶」の能力が上層部から危険視され封印されていたからだ。

 貴族である悪魔において、如何に上層部であろうとも眷属悪魔について口出すことは滅多にない。だがそれでも強権をふるう程の存在だったんだろう。

 だが、赤龍帝の眷属化をはじめとする功績によりリアス部長は評価され、今ならば封印状態の「僧侶」を扱えるだろうと認められたそうだ。

 そしてその「開かずの教室」の扉だが、「KEEP OUT!!」のテープが幾重にも貼られていて、さらに呪術的な刻印もされていた。

 

『上級悪魔でも封印できるくらいだな』

 

 どうやら「僧侶」はそれだけのことをされる存在ではあるようだ。

 

「中にいる子はここに住んでいるのよ。深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出ていいのだけれど、本人がそれを拒否しているのよ」

 

 なるほど、氷結封印で氷像にされていたり、封魔の鎖で拘束されていたり、魔槍の類で壁に張り付けにされているわけではないのか。

 情の深い部長がそんなことをするわけも、認めるわけもないもんな。

 部長が魔法陣を展開して封印を解きだす、木場もテープを剥がし、朱乃さんも術式の解除を手伝っていた。

 

『闇剣なら一振り』

 

 うん、苦労している部長達には言わないでね。精霊魔法は本当に性能がとんでもない。

 

「中にいる子はグレモリー眷属内で一番の稼ぎ頭だったりするのよ」

 

 部屋から出ないで契約って出来るのか。これが在宅勤務というヤツなのかな?

 

「パソコンを介して特殊な契約を執り行っているのです。直接私達と会いたくない人間というのもいるのですよ。その手のタイプとパソコンを介して解決しているのよ。パソコンでの取引率は新鋭悪魔の中で上位に入る程の成績をだしているの」

 

 いやその契約相手は悪魔だからではなく誰とでもそんな感じでは?

 そして取引成績も引き篭もって仕事をしているからではないだろうか。本人の手腕ももちろんあるんだろうけど。

 

「さて、扉を開けるわ」

 

 すべての封印が消え去りただの扉となった。開かれた先には、

 

「イヤァァァアアアッッ!!」

 

『うっせ』

 

 悲鳴を上げる中世的な少年が居た。

 ? なんだこの気配。人間からの転生悪魔ではなく朱乃さんや小猫ちゃん(異種族なのは察している)のようなタイプだと分かるけど、知らない気配だ。

 

『あー、吸血鬼だな。しかもハーフか珍しい』

 

 こっちには居るんだな吸血鬼。

 知名度の高い怪物だけどグランバハマルには居なかったよな。

 

『あの世界で、弱点ありまくる怪物が存在できるわけない。とっくに狩りつくされたんだろ』

 

 その可能性は高いか。

 日光と聖なる存在に弱いとか、下手したら村の子供でも襲撃かける存在だよな。

 

「ごきげんよう。元気そうで良かったわ」

 

「な、何事なんですかぁぁぁ?」

 

「あらあら。封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。さあ私達と一緒に出ましょう?」

 

「やですぅぅぅぅ!ここがいいですぅぅぅぅ!外に行きたくない!人に会いたくないぃぃぃぃっ!」

 

 全員悪魔だから人ではない。

 という意味ではないか。

 どうやら中の人物は対人恐怖症気味な引きこもりでもあるわけだ。

 覗きこんだカーテンが締め切られた部屋は、可愛らしく装飾された女の子みたいな部屋で、ヌイグルミもいくつかある。

 一際目立つのは部屋の一角の棺桶だが、まあ吸血鬼らしいし。

 あらためて件の僧侶を見れば、金髪と赤い双眸をした人形みたいな端整顔立ちをした美少年だった。なぜか駒王学園の女子制服を着ていたが。

 

「流行ってんのかね。男が女物を着るの」

 

 ミルたんを筆頭に、この街の変態の皆様は色んな格好されているよなあ。

 

「あ、ギャスパー君が男だとわかるんだ」

 

「恐るべき観察眼」

 

「見慣れているからね」

 

 見慣れたくなかったけど。

 

「と、と、ところで、この方達は誰ですか?」

 

 ハーフ吸血鬼転生悪魔女装金髪美少年がそう訊ねてきた。

 

「あなたが此処にいる間に増えた眷属よ。「兵士」の一誠、「騎士」のゼノヴィア、あなたと同じ「僧侶」のアーシア」

 

 紹介されたので「オッス、オラ赤龍帝」と挨拶するが、女装君は「ヒィィィ、人がいっぱい増えてる!」って怖がるだけだった。対人恐怖症がすごいなコレ。

 

「お願いだから、外に出ましょう?ね?もうあなたは封印されなくてもいいのよ?」

 

 部長が優しく言うが。

 

「嫌ですぅぅぅ!僕に外の世界は無理なんだぁぁぁっ!怖い!お外怖い!どうせ、僕が出てっても迷惑かけるだけだよぉぉぉぉぉっ!」

 

 なんでそこまで怖がるのか。

 見たところスペックは高そうなんだけどなあ。

 でも無理強いはよくないか。

 

「リアス部長がこう言っているんだ、出ろ」

 

 あ、ゼノヴィア。

 彼女が引っ張っていこうとした時、おかしな現象が起こった。何か波動のようなものが通り過ぎたと思ったら俺と彼以外の全員が静止したのだ。

 

「なんだコレ?」

 

『空間の固定、か?また珍しい能力、いや恐らく神器だな』

 

 知っているのかドライグ。

 

『そういった物がある、ということくらいはな。俺自身に通じたことがないから詳しくは知らないが』

 

「な、なんで平気なんですかぁぁぁっ?!」

 

 叫びながら部屋の片隅に移動してブルブル震える少年。

 なんで平気なんですかドライグさん?

 

『実力差』

 

 概念系能力あるあるのアレか。

 ルールを対象に押し付けようにも跳ね除けられてしまう感じ。

 

「おかしいです。何か一瞬」

 

「何かされたのは確かだね」

 

 そして時は動きだしていた。

 アーシアとゼノヴィアは驚いて、他のメンバーはため息をついていた。やっぱり付き合いのあるメンバーは詳細を知っているのか。

 

「怒らないで!怒らないで!ぶたないでくださぁぁぁい!!」

 

 この能力からロクな境遇でなかったことは推察できるが、今のセリフはカチンと来たぞ。

 

「オイ」

 

「ヒっ」

 

「イッセー?」

 

 苛立った俺の声にビビる少年と、俺の様子に驚く部長達。

 

「能力の暴走を咎める気はない。

 だが、俺達がそんなことで仲間を害するように思うのは止めてくれ。

 部長が今までそれを理由にお前をぶったことなんてないと思うが」

 

 多分ではある。

 でも俺の知るリアス・グレモリーは、やる気を出させようと強引な行動はしても、眷属に手を上げたりはしない人だ(発破をかけるためにはやるか?)。

 

「あ、はい」

 

 頭が冷え冷静になった少年は、申し訳なさそうに俯いた。

 

「それで、彼の能力とは?」

 

 知っているだろう朱乃さんに訊けば答えてくれた。

 

「視界に映したすべての物体の時間を、一定の間停止することができる神器を持っているの。興奮すると制御ができないみたいで」

 

 そら封印もされるか。

 下手に外に出して発動したら、交通事故などを引き起こしかねないよな。

 

『空間固定ではなく、時間停止か。紛らわしいわ』

 

 どうせ効かないから一緒だよ。

 リアス部長は少年を後ろから優しく抱きしめ、俺達に言う。

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属「僧侶」。いちおう、駒王学園の一年生なの。そして、転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 部長はとんでもない眷属を引き当てる才能でもあるんだろうか?

 

『おまいう』





 補足・説明。

 失恋話を流す御姉様達。
 失恋で終わるならそれが一番だから追求はしません。

 セラフォルーとの遭遇は避けました。
 イッセー的にはかなり苦手な存在ですね。
 またセラフォルーにしてもイッセーはつまらない存在です。悪魔上層部と同じくノリが悪いので。
 原作オッパイドラゴン企画者達とこのイッセーは基本的に波長が合わない感じですね。サーゼクスは別口で仲は良いですが、サタンレンジャーをやられたら顔を引き攣らせます。

 グランバハマルの吸血鬼
 遥か昔に絶滅しています。
 女、子供すらも傷ついたオ○ク(異世界おじさん)をよっしゃ、と笑いながら襲いかかる世界で生き残れる筈がありません。他の魔獣達からしてもエサか玩具扱いなので。

 ギャスパー登場。
 女装には変態で慣れてるイッセー。
 なので特にリアクションはありません。
 性格やらは次回からですね。
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