異世界イッセー   作:規律式足

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 長いです。
 会議描写疲れました。



第五十二話 三大勢力会談

 

 会っても嬉しく思えない天使長から、貰っても嬉しくない竜殺しの聖剣を貰ってから数日。

 前向きになったギャスパーが訓練に精を出したり、匙がその訓練に付き合ってくれたり、朱乃さんの距離が以前より近くなったり、リアス部長がお茶の本を読み出したり、アーシアが神器の使い方を模索したり、木場が聖魔剣とアスカロンの強度比べをしたり、ゼノヴィアが母さんから出産のエピソードを聞いて大泣きしたり、小猫ちゃんがいつの間にか背後に居たりと色々あったが、いよいよ今日が会談の日だ。

 

「さて、いくわよ」

 

 部室に集まるオカルト研究部の面々は、部長の言葉に頷いた。

 会場となるのは、駒王学園の新校舎にある職員会議室で、すでに各陣営のトップ達はそれぞれ割り当てられた場所で待機している。

 学園全体も強力な結界で囲まれ、もはや一つの閉ざされた異空間といった感じだ。

 結界の外にも警備として、天使、堕天使、悪魔の軍勢が囲んでいる。先の大戦以降でここまで戦力が集結したことは無いそうだ。

 軽く見てきてその光景に一応は圧倒されたが、グランバハマルの封印都市ルバルドラムの伝説級の魔獣千体に比べたら見劣りしてしまう。

 

『アハハハ龍王クラスガイッパイダァー』

 

 ヤベ、アレはドライグのトラウマの一つだったわ。陽介さんの過去話から興味を持って、獣を出づる大地に行ったらとんでもないものを見たからな。

 こっちの世界では上位の強者扱いされる龍王クラスが野生動物のように山程生息しているのを見たら、こんな風になるか。

 ちなみに雲の如く巨大なクラウド・ドラゴンにいたっては、生前の二天龍より強いらしい。

 それらを封印できるグランバハマルの古代魔法技術はとんでもないよな。

 

「ぶ、部長!み、皆さぁぁぁん!」

 

 部室に置かれたダンボール箱の中でギャスパーが叫ぶ。彼は会談には参加せずに部室で留守番だ。コカビエル襲撃時に不参加であったし、まだ完全に神器を制御しきれていない状態ではトラブルになりかねないからだ。

 

「学園内部に人員は配置されない予定だが、あまり出回らないようにな。それと予定になく、事前連絡がない状態で誰かの気配がしたら敵だと判断して、身の安全を優先して行動するんだ」

 

 旧校舎の部室という離れた場所に、この状況で置いていくのは心配だ。

 やはりサーゼクス様の眷属が控える俺の自宅に居てもらうべきだろうか?(三大勢力の軍勢が集まる状況のため、ウチの両親の警護が強化されている)。

 

「万全の警備だからそこまで警戒しなくても大丈夫だと思うわ」

 

 警備を疑うこと自体が不敬となる。リアス部長の立場ではそう言うしかないだろうが、どうしても嫌な予感が拭えない。

 できる限りの対策はしないと不安でしかたないのただ。

 

「万全って言葉は、事が起きるフラグにしか聞こえないんです。

 だからギャスパー、これを」

 

 念の為に用意して置いた、赤黒い液体の入ったフィルムケースサイズの小瓶を渡す。

  

「先輩、これって」

 

「何かあった時に使え」

 

 万が一の保険。

 使われないにこしたことは無いが。それでも何もしないよりはマシだ。

 

「わかりました」

 

 真剣な表情で受け取ったギャスパー。

 暴走の可能性という懸念はあるが、こんな表情ができるようになったのだから、もう大丈夫だと思う。

 

「何も起こらないと良いけどな」 

 

 部室をでる部長の後に続くが、ナニカが起こることを言葉とは裏腹に確信していた。

 

 

「失礼します」

 

 会議室へと入室。

 中は高校の一室とは思えない状況だった。

 特別に用意させた豪華絢爛な円卓に三方に別れて、それぞれの勢力の長達が座っていた。

 悪魔側、最強の魔王サーゼクス・ルシファー様と外交担当かつ四大魔王セラフォルー・レヴィアタン様。給仕係としてグレイフィア様、戦力がおかしくないですか?

 天使側、天使長ミカエルと初めて見る女天使。顔だけは良いな。

 堕天使側、堕天使総督アザゼルと「白い龍」ヴァーリ。

 全員、相応しい装いをしていて、学生服で来た俺達は良いのかと不安になった。まあ正装だから良いのか。

 ちなみに実は、サーゼクス様とセラフォルー様が、実質仕切っているのは悪魔上層部なんだからその代表が参加しろよと不満タラタラだったのは、悪魔上層部寄りの立場である俺ぐらいしか知らない明かせない事実だ。

 

「私の妹と、眷属だ」

 

 サーゼクス様からの紹介に全員で会釈する。

 

「コカビエルによる三大勢力間の開戦を防いでくれた功労者たちだ」

 

「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」

 

 思い返せば、エクスカリバー奪還の正式な礼はこれが初めてか。天使が悪魔に礼を言うこと自体が異例だからな。

 

「悪かったな。俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」

 

 アザゼルは悪びれずに言う。白龍皇の派遣という責任は果たしたから文句は言いづらいな。こちらとしてもフリードの事があるから、教会はともかくコカビエルを責める気にはならない。

 

「そこの席に座りなさい」

 

 サーゼクス様の指示を受け、俺達は壁際に設置された椅子に座る。その隣にはソーナ会長も居た。

 全員が腰かけたことを確認して、サーゼクス様が全員に告げる。

 

「全員揃ったところで、会談の前提条件を一つ。最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

 しかし、いくら秘匿しているからといっても、他神話の主神は本当に気づいて無いのか?

 ドライグから聞いた限りでは、どの主神格もサーゼクス様を除いて、この場のトップ陣より強者だというのに。

 

「では、それを認知しているとして話を進める」

 

 こうして、三大勢力の会談が始まった。

 

 

「我々天使としては、」

 

「このままでは、確実に滅びの道へと、」

 

「ま、俺らとしては拘る必要もないけどな」

 

 各種族トップの話。

 未来を左右する大事ではあるが、生きている時間感覚がまだ違う俺としては、正直実感の湧かない途方も無い話だ。

 日本の少子高齢化問題に近い感覚かもしれない。その事実から導きだされる無残な未来を、自分のこととして捉えることは存外に難しい。

 未来は遠く、何があるか分からない。

 なにせ、グランバハマルに居た時には、こんな状況になるなんて想像すらしてなかったのだから。

 

「さて、リアス。そろそろ先日の事件について説明を頼むよ」

 

「はい、ルシファー様」

 

 サーゼクス様に促され、コカビエルの騒動の一部始終を話しはじめた。

 その中の内容にフリードの現在については伏せられている。秘匿案件【M】絡みであるし、フリードに教会が何かしないとは思えないからだ。

 緊張から震えるリアス部長だが、それでも自身の役目だと見事にやりきった。

 

「以上が、私リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件の報告です」

 

 言い終えた部長は労いの言葉をかけられてから再度座る。お疲れ様です、部長。

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

 その問いにアザゼルは不敵な笑みを浮かべて話し始めた。

 

「ま、事前に転送してある資料に書いたとおりだな。

 堕天使中枢組織「神の子を見張る者」の幹部コカビエルが、総督である俺と他の幹部達に黙って行った事件だ。関与している堕天使はおらず、協力者も教会から追放された異端者共だ。

 事件に気づいた俺は、「白龍皇」を派遣しコカビエルを撃破後に捕縛。組織の軍法会議により『地獄の最下層』で永久冷凍刑に処した」

 

 あくまで単独犯か。他の堕天使から協力者を募らなかったのは、人望がないのか、何か理由があるのか。

 

「説明としては最低の部類ですが、貴方個人が大きな事を起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、俺は戦争なんて興味ない。

 つーか、先の大戦だってテメェらから攻めてきたんだろうが。異端は滅ぶべし、つってな。先代四大魔王も脅威になるからとか抜かして襲いかかってきやがって」

 

 堕天使という種族は、祈りも願望も必要としない新たな種族。故に他種族と自ら争う理由はないと思っていたが、そんな経緯だったのか。

 現在の天使と悪魔への敵対心は、戦争が続いた中で生まれたものなんだろうな。

 

「ならばどうしてここ数十年神器の所有者を掻き集めている?報復のための戦力増強を図っているのかと思っていたが」

 

「先の大戦で生き残ったトップは貴方だけですからね。「白い龍」を引き入れたと聞いた時は、強い警戒心を抱いたものです」

 

 両者の言葉に、アザゼルは「ヴァーリに関しては悪魔側のやらかしだろうが」とよく分からない言葉をぼやきながら答えた。

 

「神器研究のためさ。アレは面白いからな。なんならお前らに資料だってくれてやってもいい。戦力のために研究してるわけじゃねえからな。

 俺はいまの世界に満足してんだよ」

 

「信じがたいですね」

 

「鵜呑みには出来ないね」

 

「本当にね☆」

 

 それぞれの反応にアザゼルは面白くなさそうに耳をかっぽじっていた。

 信用がないのはトップの中で最も老練な気配を漂わせているからかな。

 

「チ、神や先代ルシファーよりマシではあるが、お前らはお前らで面倒くさい連中だ。わかったよ、今後はより情報を開示して研究するさ。んで、三大勢力で和平だ。もともとそのつもりだったんだろう?」

 

 和平ね。

 

『国家間に友情は無いってアニメで言ってたな』

 

 そこはアニメではなく、経験から語ってドライグ。

 まあ国家どころか種族が違うしなあ。

 

「ええ、私も悪魔側と堕天使側に和平を持ちかける予定でした。このまま敵対し続けても我らに先は無い。天使長である私が言うのも何ですが、戦争の大元である神と魔王は消滅したのですから」

 

 堕天使側は本当に巻き込まれただけなのか。

 

「ハッ!あの堅物ミカエル様が言うようになったな。あれほど神、神様と、至上主義だったのによ」

 

「黙れ厨二病堕天使、失礼。失ったものは大きい。けれどいないものをいつまでも求めても仕方ありません。神の子を見守り、先導していくのが一番大事なことだと、私達セラフのメンバーの意見も一致しています」

 

「ハハ、ぶっ殺すぞ。しかし今の発言で「堕ち」ないなんて、俺らの時とは大違いだな。「システム」を受け継いだだけはあるな」

 

 なんか主旨とは違うところで殺意が増してる。

 

「我ら悪魔も同意見だ。魔王がなくとも種を存続させるため、先に進まねばならない。戦争を望まない、これは現政権の総意だ」

 

 サーゼクス様の言葉にアザゼルも頷く。

 

「神がいない世界は間違いで、神がいなければ世界は衰退すると思っていた。

 だから先の大戦から秘匿していたが、そんなことは無かった。俺もお前達もこうして生きている、そうだ」

 

 アザゼルは腕を広げながら、高らかに言った。

 

「神がいなくても世界は回るのさ」

 

 他にいっぱいいるしね。

 

『グランバハマルの神(腐れ外道)とか他神話とか健在だしな』

 

 アザゼルの宣言にその場の者たちは呑まれたが、俺とドライグは『だから何』って感じだった。

 その後、会議は今後の戦力やら、各陣営の対応、これからの勢力図などの話し合いになった。

 アザゼルの宣言は、一つのふんぎりになったのか先程までよりスムーズに決まっていった。

 時代を進める。

 その意識が共有されたからなんだろう。

 

「こんなところかな」

 

 どうやら一通り重要な話が終わったようだ。

 するとミカエルが、俺に視線を向けてきた。

 

「さて、話し合いもだいぶよい方向へ片付いてきましたし、そろそろ赤龍帝殿のお話をきいてもよろしいでしょうか」

 

 神社での一件か。

 その時のことは悪魔全員で共有しているため、アザゼルだけが興味深そうにこちらを見ていた。

 

「アーシアとゼノヴィア、元信徒である彼女達が神へ祈りを捧げた時、その頭痛を無くすことは可能ですか」

 

 その言葉にアーシアとゼノヴィアが目を見開いて驚いていた。

 

「悪魔である彼女達へダメージをいかないようにする、ですか。てっきり私は追放理由について訊かれると思っていました」

 

 それは教会だからで納得できるし。

 そもそも信仰集める偶像と、悪魔討伐の戦力を、不都合になったら切り捨てるなんて、当たり前過ぎて訊く意味がない。

 愛を説く教会。

 だが組織に愛など存在しないのだから。

 大方、システムとやらが関係してるんだろ?興味ないよ。

 そこからミカエルにより弁明に似たシステムの説明が語られたが、心底どうでも良かった。

 申し訳無い、はもう聞き飽きたよ。

 ただ、その説明でアーシアとゼノヴィアの心が軽くなったようなのは良かったが。

 今が幸せだから良い。

 そう言い放つ二人はとても眩しいものだった。

 

「天使長ミカエル、二人が納得したので追放に関しては良いですが。今も祈る二人の頭痛はなんとかできませんか?先日頂いたアスカロンを返却しても構いません、どうかお願いしたい」

 

 融和の証として貰えるなら、そちらのほうが良い。調整してくれた朱乃さんには申し訳無いが、アスカロンよりも二人のことだ。

 

「自身より、仲間ですか。貴方は良い悪魔ですね。わかりました、なんとかしましょう。二人くらいならなんとかなるでしょう」

 

 なんとかなるんかい!!

 そんなツッコミを内心に留めた俺に、アーシアとゼノヴィアが熱い視線を向けていた。

 

「俺のとこの部下も、赤龍帝と元聖女を殺そうとしたらしいな。報告は受けている」

 

「別の意味で思い出したくないんですが」

 

 オチがコメディだったし。

 

「レイナーレだがな、悔しがってたぜ。逃した魚はデカかったてな。どうだ、よりを戻さねえか?」

 

 その言葉にグレモリー眷属全員がブチギレそうになっている。

 偽告白からの襲撃。

 普通に最低極まる行為だ。

 

「女を千年くらい磨いてから出直してこい、と言ってください。今の彼女は俺の周りの娘達の足元にも及ばないので」

 

 蒸し返す気はないし、それで腹も立たない。

 けど擦り寄られてきたら普通に不快だ。

 

「ダハハハ、そらそうだ。伝えておくぜ!!」

 

 アザゼルは大笑いしながらそう言った。

 

「さて、そろそろ俺達、三大勢力以外に世界に影響及ぼしそうな奴らへ意見を訊こうか。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」

 

 二天龍はやはりそれだけの影響があるのか。

 アザゼルの問いかけに白龍皇ヴァーリは笑む。

 

「俺は強い奴と戦えればいいさ」

 

 戦闘狂ってヤツか。理解できない思考で嗜好なんだよな。アザゼルは今度は俺に向く。

 

「じゃあ、赤龍帝、お前はどうだ?」

 

 そんなことは決まっている。

 

「眷属悪魔として、主と共に歩み、現政権に貢献し、契約者の願いを叶える。そんな日々を過ごしたい」

 

 いらん騒動ばかりだが、現在のグレモリー眷属としての生活こそが俺の理想なんだ。

 

「悪魔としてか、赤龍帝としては良いのか?」

 

 周囲から意外そうな目を向けられるが、ドライグ自身がなあ。

 

『もう、二天龍とかどうでもいいよ。だってそこのサーゼクスとか、本気だしたら纏めて滅ぼせるじゃん。今まで威張り散らして恥ずかしい』

 

『何があった赤いのっ?!』

 

 グランバハマルの日々に加え、ミルたんとサーゼクス様の存在がトドメになったからなあ。

 もう強者とかどうでもいいみたい。

 そんな空気が緩んだタイミングだった。

 ギャスパーの時間停止が駒王学園全体に影響を及ぼしたのは。

 

 

 

 これがきっかけ、ここがスタート。

 神無き世界の幕開けとなる、一連の大騒動は今この瞬間からだ。

 世界の停止から紡がれる、新たな神話。

 さあ創世の始まりだ。





 補足・説明。
 
 堕天使について。
 乳もみから生まれた種族が戦争をやる理由が分からないので、粛清したい神と駆除したい四大魔王に襲われた結果、なし崩しに誕生した勢力扱いです。
 両者の計算違いは、アザゼルのカリスマと実力。組織運営ではおかしな実力持ちです。

 アーシア、ゼノヴィア。
 イッセーは追放には納得してるのでいきなり本題からです。4巻ラストを前倒ししました。システムとか心底どうでもいいです。あとアスカロンいらない。
 二人の好感度はかなりアガリました。
 
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