異世界イッセー   作:規律式足

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 長くなりすぎました。
 明日からは少し字数を減らすというか、話を区切ります。



第五十四話 史上最強の赤龍帝

 

 俺と部長がギャスパー救出に行っている間に、どうやら状況は動いてしまったようだ。

 空から降ってきた堕天使総督。

 堕天使勢力を裏切った白龍皇。

 最上位クラスの女悪魔。

 そこから導きだされるのは、転移してきた今回の主犯をアザゼルが撃退しようとして、白龍皇に不意を打たれた感じか。

 厄介な状況だね。

 

「和平が決まった瞬間、拉致したハーフヴァンパイアの神器を発動させ、テロを開始する手筈でした。頃合いを見てから私と共に白龍皇が暴れる。三大勢力のトップの一人でも葬れば良し。会談を壊せればそれで良かったのです」

 

 女悪魔のその語りになるほどと納得する。

 その時に誰がやったか分からなければ、疑心だけで和平は不可能になるからな。

 よく考えられている。

 

「まったく、俺もやきが回ったもんだ。身内がこれとはな」

 

 白龍皇の裏切りに思うところがあるのだろう。アザゼルは自嘲気味に笑う。

 

「いつからだ?いつから、そういうことになった?」

 

「コカビエルを本部に連れ帰る途中でオファーを受けたんだ。悪いな、アザゼル。こちらのほうが面白そうなんだ」

 

「ヴァーリ、「白い龍」がオーフィスに降るのか?」

 

「いや、あくまで協力するだけだ。「アースガルズと戦ってみないか?」こんな誘われ方をされたら、自分の力を試したい俺では断れない。アザゼルはヴァルハラ、北欧神話と戦うことを嫌がるだろう?戦争嫌いだもんな?」

 

「俺はお前に「強くなれ」と言ったが、「世界を滅ぼす要因だけは作るな」とも言った筈だ」

 

「関係ない。俺は永遠に戦えればいい」

 

 なんというか、親子みたいなやり取りですね。ドライグさん。

 

『あー、そんな感じだな。神器持ちなんざ迫害されるのがデフォだから、アザゼルは目をかけてたんじゃないか?アイツお人好しだし。あと相棒も気づいてるだろうが悪魔とのハーフだしな当代白龍皇』

 

 そらきっと辛い過去とかあったんですな。

 

『なんか覚えある魔力だしな』

 

 さすが、悪魔大量返り討ちドラゴン。

 

『よせやい』 

 

 褒めてねーよ、照れんな。

 

「今回の下準備と情報提供は白龍皇ですからね。彼の気性を理解しておきながら、放置しておくなど、貴方らしくないですね」

 

 女悪魔はアザゼルを嘲笑した。

 苦笑するアザゼルを尻目にヴァーリは自身の胸に手を当て、俺に向かって言う。

 

「俺の本名はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだ」

 

 ルシファーは魔王の称号名じゃないのか。

 

『ルシファーって一族がいるんだよ。初代四大魔王は死んだけど』

 

 いやそれはお前のせい。

 

「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど、俺は旧魔王の孫である父と人間の母との間に生まれた混血児。「白い龍」の神器は半分人間だから手に入れたものだ」

 

 ギャスパーと同じなのか。

 

『希少さが薄まること考えるなよ』

 

「ルシファーの真の血縁者でもあり「白い龍」でもある存在。運命、奇跡というものがあるなら、俺のことかもしれない。なんてな」

 

 神器を抜き出す技術あるから、抜き取った神滅具をサーゼクス様に打ち込めばより最強では?

 

『神滅具が邪魔にしかならん存在だからアレ』

 

 自分のルーツを高らかに宣言した、ヴァーリは光の翼と共に悪魔の翼が幾重にも生えだした。

 

「嘘よ。そんな」

 

 部長も驚愕の表情を浮かべている。ルシファーの血族はそれだけ悪魔にとって特別なんだろう。そしてアザゼルは肯定した。

 

「事実だ。もし、冗談のような存在がいるとしたら、こいつのことさ。俺が知っているなかでも過去現在、おそらく未来永劫においても最強の白龍皇になる」

 

 そんな存在がなんで堕天使総督アザゼルに育てられたのやら、もしや生まれだけでなく境遇までギャスパーと同じなのでは?

 

『神器持ちは迫害がデフォ(二度目)だからなあ。あと悪魔もハーフの時点で身内認定されないだろ』

 

 なら、ヴァーリがルシファーの家名を名乗ることを認められてないのでは?

 

『本人に言ってやるなよ。それが優しさだ』

 

 しかし、朱乃さんもギャスパーもヴァーリも俺の周りにはハーフが多いなぁ。実は天使のハーフとかもいたりして?

 

『堕天するから種族的に無理』

 

「覚悟を決めてもらいましょうか、アザゼル」

 

 勝ち誇って嘲笑う女悪魔。旧魔王派なのは分かるが顔までは知らないんだよな。

 

「チッ、戦い中に膨れ上がったオーラの量、オーフィスの野郎に何を貰った?」

 

 アザゼルの問いかけに女悪魔は答える。

 

「彼は無限の力を有するドラゴン。世界変革のため、少々力を借りました」

 

 どういうことですか、ドライグさん?

 

『オーフィスのオーラをあの女から感じるから、力の一部でも授けられたんじゃないのか?そんな身体の切り売りみたいなこと出来たんだなアイツ』

 

 詳しくは知らないのか。

 

『龍王共よりも付き合いがないからな』

 

「俺は世界変革なんぞ興味ねえ、神器マニアだからな。組織運営なんざ、シェムハザがいなきゃできねえよ。けどよ、サーゼクスとミカエルはそこまで馬鹿じゃねぇと思うぜ。少なくともお前より遥かにな」

 

 アザゼルの言葉に女悪魔は顔を歪ませる。

 

「我々があんな連中に劣っているかどうか、堕天使総督である貴方を滅ぼして示してあげましょう!」

 

 逆上して叫ぶ女悪魔。けれどアザゼルは愉快そうにしているだけだ。切り札でもあるのかな?

 

『サーゼクスみたいに意図的に封じてないと、能力の上昇は後付でもない限りありえないぞ』

 

 その予想はドンピシャで当たり、アザゼルは懐から一本の短剣らしきものを取り出した。

 

「『切り札あったよ』」

 

「それは」

 

 訝しげに見る女悪魔へアザゼルは切っ先を向ける。

 

「神器マニア過ぎてな。自分で制作したりすることもある。まあ大半は失敗作だがな。神器を創り出した神は凄い、こればかりは他神話の主神に引けをとらないからな、だからそこだけは親父殿を尊敬しているんだよ」

 

 人格面とか尊敬できない存在だったのかな?

 

『言ってやるな相棒』

 

「安心なさい。新世界で神器なんてものは作らない。そんなものが無くても世界は、回ります。いずれは北欧のオーディンにも動いてもらい、世界を変動させなくてはなりません」

 

 敵対したいのか、手を結ぶのかどっちなんだ?

 

「それを聞いて増々お前らの目的に反吐がでるな。迂闊に他神話と絡んでも横合いから全て掻っ攫われるだけだ。つーか俺の楽しみを奪うヤツは消えて無くなれ」

 

 アザゼルの持つ短剣が形を変える。パーツが分かれて光が噴き出していく。

 この腕輪で一時的に禁手できるのだから当然可能か。

 

「禁手化」

 

 そこにいたのは黄金の全身鎧を身に着けた堕天使総督。赤龍帝、白龍皇、の禁手に似たドラゴンを模した全身鎧だった。

 背中からは十二枚の漆黒の翼、手には巨大な光の槍を握っていた。

 

「「白い龍」と他のドラゴン系神器を研究して創り出した、俺の傑作人工神器だ。「堕天龍の閃光槍」、その擬似的な禁手状態「堕天龍の鎧」だ」

 

 なんかアザゼルってとんでもないな。

 

『多才、という点では間違いなく世界随一だからなアイツ』

 

 ドライグ曰く、正確には禁手ではない、人工神器を使い捨てにしかねない暴走状態。けれどもそれを創り出せるのは傑物の証だろう。

 誰もが見上げるだけの神の域に、アザゼルは一歩踏み込んでいるのだから。

 

「ハハハ!さすがだな、アザゼルは!やっぱり、凄い!」

 

 というか、半悪魔が神滅具を身に着けた白龍皇より、堕天使総督が人工神器を身に着けている方がスペックでは上なのでは?

 

『戦いは数値じゃないから』

 

 倍加やら半減は数値が前提だろうが二天龍。

 

「ヴァーリ、テメェも相手してやりたいところだが。お前は「赤い龍」と仲良くやってな」

 

 身内の後始末は自分でしてほしい。

 

「でも、アザゼルと戦ったほうが楽しそうだ」

 

『実力が近いからな』

 

 まあ俺相手じゃ楽しめないよな。

 

 

 そこからの女悪魔とアザゼルの戦いは一方的だった。当たり前だろう、無限の龍神から力も授かってようやくアザゼルと同格だったのが、人工神器によって突き放されたのだから。

 戦い、というか蹂躪の間に交わされた言葉で、人工神器の核に五大龍王の「黄金龍君」ファーブニルが封じられて使用されていることがわかり、ドライグが「やっぱりドラゴンは狩られるだけじゃん」と遠い目になったりしたが、ドラゴンは生命力強いから核にうってつけなんだろう。

 

「私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引く者!カテレア・レヴィアタン!貴方如き忌々しい堕天使に負けはしない!」

 

 あの方が、カテレア様だったのか。

 悪魔上層部の皆さんが、旧魔王派で一番同情されていた、魔王少女の被害者。

 

『尊敬する一族をネタキャラにされたら、そらキレるよな』

 

 実力は先代様よりも有るから、誰も文句言えないのが性質悪いよね、セラフォルー様。

 

「来いよ」

 

「なめるなッ!」

 

 決着か。

 最大の力を込めた一瞬の交差。

 その身体から鮮血を吹き出したのはカテレア様の方だ。

 

「ただではやられません!」

 

 だが彼女は往生際が悪く、自身の腕を変化させアザゼル諸共自爆しようとする。

 

「それは駄目なんですよ」

 

 闇剣顕現、からの一閃。

 悪魔側からの離反者で堕天使総督に被害がでたら、こちらの都合が悪くなる。

 決着寸前の両者に割って入り、繋がれた触手をその自爆呪術ごと斬り裂いた。

 

「カテレア様。貴女の死を望む悪魔は、冥界にいないのです」

 

 実力あれば魔王にしたのに、が上層部の皆さんの本音だったんだよな。この方に関してはセラフォルー様の愚痴ついでに散々聞いたんだ。

 

「な、赤龍帝っ?!!」

 

「さっきの剣技といい、その闇剣といい。見誤ってたか兵藤一誠」

 

「縛動拘鎖」

 

 精霊魔法の鎖で雁字搦めにして、フェニックスの涙をカテレア様の傷口にぶっかけてから、その意識を断つ。

 

「後は引き渡せば、この騒動もお終いかな?」

 

 簀巻き状態の褐色美人を肩に担いで地面に降り立つ。外見なら断然こっちがレヴィアタン様だよな。と思いながら。

 

「おい、兵藤一誠。実力を隠してやがったな」

 

 してやられたと、何故か楽しそうにアザゼルは言ってきた。普通なら逆ギレして問い詰めるのに、未知を楽しむ度量が堕天使総督にはあるよね。

 

「隠す、というか。見せる機会がないだけだよ」

 

 最低でも五大龍王クラスじゃないと、マトモな戦闘にならないらしいからな。

 

「あー、今まで過小評価して悪かったな」

 

 アザゼルは鎧が解除されて、宝玉だけになった人工神器を握りながらそう言った。

 

「いや別に。強さとか心底どうでもいいから」

 

 力なんて、襲いかかる理不尽を跳ね除けられるだけあれば良い。そこに評価はいらないのだ。

 

「ヴァーリとは大違いだな。」

 

 アザゼルはふぅとため息をついた。

 

「さて、ヴァーリ、どうする?俺はまだまだやれるぞ?鎧が無くともお前と戦える」

 

 アザゼルは手に光の槍を出現させて、切っ先を向けながら言う。

 うん、後はよろしくー。

 

「しかし、運命って残酷だと思わないか?」

 

 お年玉貰ってウキウキ気分でドリーム○ャストを買いに行こうとして、トラックに轢かれて、グランバハマル行きした人もいるから、確かに残酷だよね。

 

『相棒と違って同情しかないよな陽介』

 

「俺のように魔王プラス伝説のドラゴンみたいな、思いつく限り最強の存在がいる反面。そちらのようにただの人間に伝説のドラゴンが憑く場合がある」

 

『全くだ。そのせいでグランバハマルでどんなに苦労したか』

 

 可哀想なのは俺の方じゃない?でもドライグいなかったら遭難して初日で死んでたよな。

 

「ライバル同士のドラゴン神器とはいはいえ、所有者二人の間の溝はあまりに深すぎる」

 

 そうですね。

 

『ソウデスネ』

 

 グランバハマルという溝は次元の壁並に深いよ。

 

「君のことは少し調べた。父は普通のサラリーマン。母は普通の専業主婦で、たまにパートにでている。両親の血縁に特異な点は何一つない。さらに友人関係も特別なものは無かった。君自身も弱点のような奇妙な体質以外はごく普通の男子高校生だった。赤龍帝の籠手以外、何もない」

 

 その通りだ。

 両親も友人達も、皆普通で、普通に良い人達ばかりなんだ。

 俺にとっては何より大事なそれらを、白龍皇ヴァーリは嘲笑う。

 

「つまらないな。あまりにつまらなすぎて、君のことを知った時、落胆より笑いが出た。「ああ、これが俺のライバルなんだな。まいったな」って」

 

 知らんがな。

 そもそも取り憑いたマダ、ドラゴンの宿命に振り回されてるなんて馬鹿らしいだろうに。

 

『ねえ今、マダオって呼びそうにならなかった?』

 

 哀れむようにヴァーリに付き合ってられないと、カテレア様を担いだまま背を向けてサーゼクス様のところにいこうとしたら。

 

「そうだ!こういう設定はどうだろうか?君は復讐者になるんだ!!」

 

「『?!』」

 

 その言葉は聞き流すことが出来なかった。こいつは今、なんと言った?

 

「君はさっき仲間のハーフヴァンパイアを殺そうとした時に、予想しなかった動きを見せた!君は怒りで覚醒するタイプだ、だから!!

 俺が君の両親を殺そう!!

 そうすれば、この退屈な二天龍の戦いも少しは楽しくなるだろう!!」

 

 凪いでいた。

 真っ白になっていた。

 自身の心なのに、自分の感情なのに、魂から湧き出るこの感覚を俺は表現できなかった。

 通り越して、通り越して、通り過ぎて、打ち抜けた。

 理不尽には飽きている。

 不条理なんて日常だった。

 そんなグランバハマルの日々でも。

 こんなにキレたことは、ない!!

 

「殺す」

 

 その瞬間、世界が震えたと後にアザゼルは語る。新校舎にて強固な防壁を敷いていた、トップ陣も、三大勢力により創り出された結界により隔たれていた軍勢も、総毛立った。

 

「貴様の境遇は想像できるよ。ヴァーリ・自称・ルシファー。

 ルシファーの血を引いて神滅具を宿していながら、堕天使側についた半悪魔。それだけでさぞや哀れで可哀想な生涯だったんだろう」

 

 その俺の言葉に闘争に酔っていたヴァーリの額に青筋が浮かぶ。アザゼルもなんで知っていると驚愕の表情だ。

 

「ああ、俺の両親は普通さ。父さんは朝から晩まで家族のために働くごく普通のサラリーマンで、母さんは朝昼晩と俺達家族のために美味い飯を作り家を支えてくれる普通の主婦だ。でもな、」

 

 カテレア様を放り投げ、戦いに狂ったクソに向き合いながら怒鳴る。

 

「異世界に渡って、頭のイカれた息子を抱きしめて受け入れてくれた、世界最高の親なんだよっ!!」

 

 実力を隠すとか、グランバハマルがどうとか、異世界がどうとか、もう知ったことか。

 降りかかる理不尽はかつてのように、いつものように、ぶち壊すっ!!

 

「我が主、リアス・グレモリー様」

 

「イッセー?」

 

 俺は平穏をくれた優しい主へと跪き願い出る。

 

「これより、二天龍が片割れ白龍皇を全力で討伐いたします。どうか、この一時だけ、貴女の眷属から外れることをお許しください」

 

「?! 大丈夫なの!!」

 

「なあに、すぐに」

 

 過去現在未来において最強の白龍皇か。

 

「すみます」

 

 ならば、こちらは過去にして未来である史上最強の赤龍帝だ。

 

「やるぞドライグ。全力だ」

 

『その前に相棒、言っておく』

 

 ?

 

『相棒の両親はな、俺に礼を言ったんだ。お前が寝ている(気絶)時に、この俺にな。

 息子を支えてくれてありがとうと、守ってくれてありがとうと、何度も何度もな』

 

 ?!

 

『誇れ相棒。あの人達は、この赤龍帝も認める世界最高の両親だ!!』

 

「ああ!!」

 

 ならばこそ、躊躇いも容赦もなく、白龍皇を討ち滅ぼす。

 

「形貌変躯!!」

 

 貌の精霊よ、我が肉体を最強の時代の姿へと変じさせたまえ。

 

【やってまえ】

 

 今なんか聞こえなかった?

 

『気のせいだろ』

 

 精霊魔法の発動により放たれた光が止んだ時。そこには転生悪魔兵藤一誠ではなく一人の人間がいた。

 その瞬間、この場の全て、否、世界中全ての強者が、この人物が居る方角を見たという。

 顔立ちこそ兵藤一誠の面影はあるが、その体は二周りは巨大に、筋肉質なものだった。

 さりとて無駄にデカイ魅せる筋肉ではない、極限まで絞られた動くための、戦うための筋肉だ。

 ヘラクレスか?

 堕天使総督は知りうる限り、最強の肉体を誇った大英雄を思い浮かべていた。

 

「やるか」

 

 禁手と覇龍は使えない。

 それは使うには、この場は、此処に居る人達は砂糖細工のように脆すぎる。発動の余波だけでサーゼクス様以外は消し飛ぶだろう。

 

『こっちだとこれほどとはな。グランバハマルはやはり何もかもが頑丈だったようだ』

 

 だな。

 

「何回だ、ドライグ?」

 

『念を押して、三回だな』

 

「三十秒もか。なあ白龍皇?」

 

 史上最強の赤龍帝は嗤いかける。これから討伐する害敵へと。

  

「それまで死んでくれるなよ」

 

「『?!』」

 

 言ったその時には白龍皇からは消えたように見えただろう。移動音なく接近し、赤龍帝の籠手を装着した腕で殴り飛ばす。

 棒立ちだった白龍皇は反応すら出来ずに新校舎をブチ抜き、グラウンドへと激突した。

 

「ハハハ、見ろアルビオン。兵藤一誠の力が桁違いに上がったぞ!!」

 

『笑っている場合か!!今のヤツはクロウクルワッハに匹敵する程のパワーだぞ!!』

 

『BOOST』

 

「あと二十秒。存分に余生を噛みしめろ」

 

 コイツはボこる。

 徹底的に、望んだ闘争の果てに、自身の無力さを思い知らせて、ブチ殺す。

 

「ハアアアア!!」

 

 触れれば勝機があると、半減できると、この世界の指折りの速度で白龍皇が飛びかかってくるが。

 触れたら瞬殺される理不尽とは、飽きるほどに、折れるほどに殺りあった!!

 

『なぜだ、なぜ当たらない!!ヴァーリが触れることすら出来ないだとっ!!』

 

 陽介さんの詰将棋のような、こちらを読み切った動きに比べたら、余りにも、稚拙!!

 触れようとする無様な姿にドラゴンの鱗を砕く威力の百を超える拳打を叩き込む。

 強固な筈の白龍皇の鎧はガラスのように粉々になる。

 

「ぬううぅおおぉぉ!!」

 

 それを瞬時に修復するのはさすがだな。

 

『BOOST』

 

 だが、あと十秒だな。

 

「凄い、凄いぞ!!

 こんなに強かったのか!!まるで勝てるイメージが湧かない!!これなら本気でやらないと殺される!!」

 

『逃げろヴァーリ!!コイツはお前の勝てる相手ではない!!』

 

「逃げないさ、強者から逃げたら今までの全てが嘘になる!!」

 

『そんなことを言っている場合か!!』

 

「相方の助言は聞くべきだったな」

 

 話し合う白龍皇に拳を振り上げる。

 砕かれた鎧がバラバラとグラウンドに飛び散っていった。

 

「油断したなあ」

 

 だが、気絶したと思われたヴァーリはニヤリと笑い、背中の翼を輝かせてこちらに突っ込んできた。

 

「このタイミングなら触れることができるだろう!!」

 

 なるほどね。

 

「だが無駄だ」

 

『Penetrate』

 

『「?!」』

 

 突っ込んできたヴァーリは、そのままスルリと俺の身体を透過した。そしてその頭部を赤龍帝の籠手をつけた掌で掴む。

 赤龍帝には三つの力がある。

 倍加、譲渡、透過。

 本来封印されていた三番目の力は陽介さんのやらかしで解き放たれている。

 

『BOOST』

 

「これで終わりだ」

 

「禁手も使わず、三度の倍加で何が終わりだと言うんだ!!」

 

 陽介さんに勝つ為に磨き上げて、初見で破られた俺の奥の手。

 

『「ブーステッドギアギフト。ダメージブースト」』

 

 それは相手のダメージを倍加する必殺技。

 ロクに攻撃を当てれない陽介さんに、一撃当てたら勝てるようにと開発した奥義。

 発動した瞬間に魔炎竜に変身されて無効化されたけどな。

 

『思い出すな泣くぞ』

 

 だが、それは彼以外の全ての存在には文字通りの必殺技となる。

 

『「ぐはぁっ!!」』

 

『ま、エネルギー攻撃は半減されて無意味な白龍皇に丁度いい技だけどな』

 

 世界すら半減できる白龍皇とて、自身の受けたダメージまで半減はできないだろう。身体がぐちゃぐちゃになるわ。

 

「格付けは済んだな、白龍皇」

 

『お互い最強の所有者同士。もはや二天龍も今日限り』

 

「これからは、俺達赤龍帝が」

 

『ただ一匹の天龍だ』

 

 全身から血を噴き出した白龍皇を投げ捨て、コンビ解散を宣言する。

 これからはソロデビューだ。

 

「まだだ、まだ終わってない。

 アルビオン、『覇龍』をやるぞ」

 

『今の状態で発動できるわけないだろう!!』

 

「兵藤一誠を見誤ったのは事実。だが、二天龍から外すとまで、黙っていられるかっ!!」

 

『そうだな。それは、それだけは、耐えきれないなあっ!!』

 

「『我、目覚めるは、覇の理に、』」

 

「あのさあ」

 

 倒れ伏す白龍皇の悪足掻きに、俺は死の宣告のように冷たく言い放つ。

 

「ダチじゃねーんだ、待つわけねーだろ」

 

 空間魔法からアスカロンを取り出して大上段に構える。

 

「『必殺、天龍剣』」

 

 赤龍帝のオーラを込めた一刀がヴァーリを滅ぼそうとしたその時、鍛え抜かれた俺の耳に一人の必死な声が聞こえた。

 

「待ってくれ!!ヴァーリを、俺の息子を殺さないでくれ!!」

 

 チッ。

 堕天使総督アザゼル。

 僅かな期間で好ましく思えた人物の願いは無視できない。

 何よりも。

 

「義父に感謝しろ、親不孝者。

 これは彼に代わってのゲンコツだ」

 

 親のために怒る俺が、子を想う父親の言葉を無視できないよな。

 手を緩めたアスカロンはそのまま収納空間へとのみ込まれ、かわりに赤龍帝の籠手がついてない手でヴァーリの顔面を殴り飛ばした。

 

『それ、ドラゴンの顔をパンッするゲンコツ』

 

「迎えにきたぜぇ、ええええ?!!」

 

 その勢いのままヴァーリは突然現れた侵入者に激突して吹き飛ぶ。

 絡みあった両者はゴロゴロ転がり吹き出た転移術式らしき闇の中に呑まれて消えていった。

 あ、せめてアザゼルに詫びの一つは言わせたかったのに。

 どこぞに消えたヴァーリを探しだすのは面倒だろう。だがまあ、

 

「決着か」

 

『些か締まらないがな』

 

 三大勢力会談襲撃事件。

 主戦力撃退により、解決。

 こちらに駆け寄る、リアス部長をはじめとした皆には色々説明しないとな。

 さぁて、これからが大変だ。

 

 二天龍の決着。

 その日世界は、グランバハマルを知る。





 補足・説明。
 
 話を区切れば良かった。カトレアのとこで切れたけど、ヴァーリフルボッコを予告したから長く。やはり予定や予告は書いちゃ駄目ですね。予定通りなんて書けないし。

 イッセーの状態。
 グランバハマル最強時の肉体に赤龍帝の籠手装備のみ。精霊魔法の身体強化すらしてません。
 なのでまだ強化を三から四段階あります。
 感想でいくつか言い当てられていたから冷や汗ダラダラでした。
 生身で邪竜を殴り倒せるくらい強いです。

 ダメージブースト
 かすり傷も必殺になる、イッセーの奥の手。
 異世界おじさんがこれを初見で破ったため、ドライグの心は圧し折れた。
 当然、倍加を増やせばダメージも増えるから超強力。
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