原作4巻締め回です。
「えー、では三大勢力和平協定調印、リアス・グレモリー眷属僧侶ギャスパー・ヴラディ開放、堕天使総督アザゼルオカルト研究部顧問就任を祝って、カンパーイッ!!」
「なんでアンタが仕切るのよライザー」
高らかにグラスを掲げて音頭を取る師匠と、それにツッコミを入れるリアス部長。
いつものことに参加者全員で笑いながら、手に持つグラスを近くにいる皆とぶつけ合う。
チンッという軽やかな音が恒例のお疲れ様会にメロディーを添えていた。
フェニックスという不死の身体ではあるが、希少な存在である彼らは他勢力が居る場にはあまり参加できない、故に駒王町の悪魔達と親しくとも会談には関われなかったが、フェニックスの涙という形で貢献してくれていた。
グレモリー眷属、シトリー眷属が揃うお疲れ様会に参加するのも当たり前だろう。
音頭を取るのは師匠本人の性格だろうけれど、いやまあこの場の若手悪魔の中では年長者ではあるし。
本来ならやるべきサーゼクス様が誰よりも早く鉄板の前に陣取っているのだから仕方ないことだろう。乾杯をした後すぐにお好み焼き作りに取り掛かっているのだし。
参加したいと強請ってきていた魔王様はこのお疲れ様会を存分に楽しむつもりのようだ。
「生地は潰さない!!」
「すいません!!」
嫁に叱られながらニコニコ笑ってお好み焼きを焼いているサーゼクス様。
眷属の皆さんも護衛でもあるが、リラックスして過ごしているようだ。
「しかし、オカルト研究部の顧問ですか」
「ん、セラフォルーの妹に頼んだら、この役職だ。本来は必要だったらしいが、丁度良い人材がいないから放置されてたらしくてな。ねじ込まれたよ」
もぐもぐとバーベキューを頬張りながらアザゼルは言う。今日もまたレイヴェル様が肉を焼いてくれているみたいだ。
「一応、部活動ではあるしね。ただ、いくら裏を知っているからと、一般教員を悪魔と関わらせるわけにはいかなくて」
リアス部長もそう続ける。
かと言って冥界で公募すると、眷属候補だと勘違いされてしまうので無理だったらしい。
「リアス・グレモリーは晩成する大器だが、俺を眷属には出来んしな。約束の神器指導も考えると良い立場だよ。空き教室をラボにして良いか?」
堕天使総督すら認める部長の器に誇らしい気持ちだ。部長もその言葉に嬉しそうに笑っている。
「別に構わないけれど、程々にして頂戴ね」
「おう、程々な」
絶対に程々ではすまないな。
ニヤリと笑うアザゼル、もうアザゼル先生か、にトラブルを予感した。
「そうそう、「白い龍」ヴァーリについての情報だ」
「「「ああ、あのフルボッコにされた」」」
「その反応は仕方ないが、かなりの強者だからなアイツ。兵藤一誠がおかしいだけだから」
実際に弱くはない。
才能から考えれば、グランバハマルで俺と同じように十年過ごせば、俺より遥かに強くなれるだろう。
それが俺が俺を弱く認識する理由の一つだ。才能ある存在が同じ経験をしたら勝てないだろうと、そんな風に思うのだから。
『いや帰還できなくね?』
まあ帰還は陽介さんが居たからできた奇跡だけど。
「んで、ヴァーリは悪魔達の眷属のように自分のチームを持っているそうだ。迎えにきたヤツがそうだな。仮に『白龍皇眷属』と呼んでおくとして、数名いるらしい」
永遠に強くなりたいヤツに同調する仲間達か、面倒くさそうだな。
「それで、白龍皇はその仲間達とまたここに攻めてくるのですか?」
木場が紙皿に焼けた野菜を乗せながら、そう訊ねる。俺が不在の時に襲撃されたら時間稼ぎが精一杯では、と気にしているようだ。
「いいや、もう攻めてこないだろうさ。一応のチャンスだった三大勢力のトップ会談での暗殺も失敗した。奴らの当面の相手は天界、冥界だ。全堕天使が悪魔と共闘するから冥界の守りは強固になったし、天界もセラフ連中が動く、居候の強い聖獣、魔獣もいるしな」
天界という環境を居心地良く感じる聖獣・魔獣はかなりいるそうだ。それには人間による土地開発によって住処を追われたり、住めない環境にされたりなどの理由もあるのだとか。
「戦争ですか」
あんなもんの何が良いのか、俺には分からない。単なる戦いとは異なる、どうにもならない不条理の波だというのに。
「まだ小競り合いレベルだな。奴らも俺達も準備期間と言える。そんなすぐに起こせるなら、各神話もとっくに攻めてきているさ。お前らは学園生活を満喫しておけ」
ま、兵藤一誠には準備なんざいらんけどな。とアザゼル先生は続ける。
そこは否定しない。
あの姿以上の強さなんて、早々到れるものではないのだから。
「幸いなことに、悪魔にはレーティングゲームがある。そこで競い合い学び合うことが肝心だな。やりようによっては最強を最弱が下す場合もある」
「イッセー先輩なら女性が脱いだら死にそうなんですが」
うん、ソウダネ。
「その体質は問題だが。その戦略で評価されるわけねえだろ。本人も意外と切り替えはできるみたいだしな」
向こうではこんな体質じゃなかったからしんどいですけどね。
「今後は和平協定から、天使や堕天使も観戦できるようになる。そのうち、参加もできるようになるだろうね」
手製の豚玉を頬張りながらサーゼクス様がそう言い出した。マンネリ化していたレーティングゲームによい刺激になりそうですね、とライザー師匠は楽しみが増えたと笑う。
「ただイッセー君には規制がかかるかもしれないね」
「相撲取りの雷電みたいにですか?」
「私達、四大魔王も参加はできないからね」
レーティングゲームが興行である以上は規制は必須だろう。
それを理不尽と思うほど、俺は青くはないのだ。
それからアザゼル先生は、ギャスパーの神器についてや木場の聖魔剣の持続時間などの話をして、朱乃さんへと顔を向けた。
「まだ俺らが、いやバラキエルが憎いか?」
朱乃さんの過去。その血を憎む理由。その対象が同胞にして、兄弟分にして、上司であるアザゼル先生は気になるのだろう。
「まだ何も言えません。許す、には踏ん切りがつかないのです」
「そうか。すまねえな、俺がお前ら親子の間に入るのも野暮だな。ただ、バラキエルはお前が異性と親しくしてると聞いて、見ていて恥ずかしくなるくらい取り乱していたからな」
「そう、ですか」
完全な拒絶をしない朱乃さん。
その反応に部長が驚いていることから、彼女は変わったのだろう。それでも、仲直り、というわけにはいかないようだ。
「おい、兵藤一誠。もうイッセーで良いか?お前、ハーレムを作るのが夢らしいな?」
「はい!そのとおりです!!」
この体質さえ無ければ畜生。
『貌の精霊さんを怒らすと後が怖いぞ。恐竜人間に変わっても問題ないか』
「俺がハーレムを教えてやろうか?これでも過去数百回ハーレムを形成した男だぜ?」
なんですとっ?!
『今はどうなんだろ?』
「生憎と師匠の枠は埋まっているんだよ」
しかし、そんなアザゼル先生を遮るようにライザー師匠が前にでた。
「何をやっているのお兄様」
「次はサーロインをレアで」
「貴女も食べるだけじゃなく、燒くのを手伝いなさい、小猫さん!!」
そんなライザー師匠を馬鹿にするように鼻で笑うアザゼル先生。
「フン、お前と俺じゃあ、年季が違うんだよ、年季が」
「なんだとお」
「ハーレム築いても、独身子無しとはコレ如何に」
「サーゼクス様、それを言ったらお終いです」
わちゃわちゃと盛り上がる宴。
そこには種族も身分も関係なく、なっていた。
「どうだ、ギャスパー?楽しいだろう」
「楽しいです!!」
ベンチに腰掛ける俺の膝の上に座りながらギャスパーは元気に返事をした。
ラッセーと場所取りで争って、頬に傷はあるし、髪はグシャグシャになっているが、その表情は勝ち誇っている。
「これが部長が共有したかった時間なんだ。これからも一緒に楽しもうな」
「ハイ!!」
「ガーガガー」
そこを代われとラッセーに噛みつかれながらも、ギャスパーは今までで一番の笑顔で笑う。
その首には空になった小瓶が紐を付けられ、ネックレスのようにかけられていた。
近日中に、若手悪魔の会合がある。
夏休みには冥界で過ごす。
悪魔になってから過ごす日々、これからも楽しみだ。
補足・説明
基本原作沿いな展開です。
性格的に自らアチラコチラには首を突っ込まないので。
ただオッパイドラゴンには成らずに、原作とも微妙に関係は異なる感じですね。
異世界記憶再生はどのタイミングでやるべきか。